イシダタミ
Monodonta confusa Tapparone-Canefri, 1874
レア度:いつでも見られる
形態:小型の円錐形巻貝で、2.5㎝程度になる。全体的に丸みが強い。貝殻表面は縦横の溝で刻まれて、まさに石畳のようである。全体は暗緑色で、黄褐色または赤褐色とともに市松模様をつくる。開口部(内壁)の下側に切れ込みがあり、尖った牙のようにみえる。属名はこの特徴による(Mono = 1、odont = 歯)。若貝は螺旋部分が低く、印象が異なる。
生息域:北海道(東部を除く)から九州に分布し、潮間帯の岩礁に生息する。葛登支では護岸壁と平磯でみられる。
生態:食性は植食で、主に付着珪藻を摂食する (楊・櫻井 2017)。肉食性巻貝やヒトデ類と接触すると、殻を左右に振り回したり、速度を上げて逃げる (Lam 2002)。雌雄異体。殻高11㎜ (2齢) で成熟する (中野・名越 1984)。生殖腺の観察から、北海道では6–10月に放卵・放精していると推測されている (楊・櫻井 2017)。陸奥湾では、7–8月に放卵が観察されている (Kojima 1962)。子は、そのままプランクトンとして3日ほど海中を浮遊した後、着底する (佐々木 1985)。本種は繁殖期には高潮線附近に数個体ずつ集合して分布するが、非繁殖期には平均潮位から低潮線下に移動することが知られる (Kojima 1962)。
干上がっても耐える
ひっくり返ったイシダタミ
引用文献:
Kojima, Y. 1962. On the spawning of a top-shell, Monodonta labio (Linne). Venus, 22: 200–203.
中野大三郎・名越誠. 1984. イシダタミガイ個体群の成長と死亡. 貝類学雑誌, 43: 60–71.
Lam, K. K. 2002. Escape responses of intertidal gastropods on a subtropical rocky shore in Hong Kong. Journal of Molluscan Studies, 68: 297–306.
Donald, K. M., Kennedy, M. & Spencer, H. G. 2005. The phylogeny and taxonomy of austral monodontine topshells (Mollusca: Gastropoda: Trochidae), inferred from DNA sequences. Molecular Phylogenetics and Evolution, 37: 474–483.
楊彩嘉・櫻井泉. 2017. 北海道寿都町沿岸におけるイシダタミ Monodonta confusa の生殖周期と食性. 東海大学紀要 生物学部, 6: 17–23.