2025. 10. 15
ここまで数回にわたって扱ってきたゲルマン語の「語頭アクセント」の特徴であるが、それはなぜ獲得されたのか。Jespersen によれば、機械的な説明と心理的な説明の2つの説明が可能だという。該当箇所を引用する。
The question naturally arises: why was the accent shifted in this way? Two possible answers present themselves. The change may have been either a purely mechanical process, by which the first syllable was stressed without any regard to signification, or else it may have been a psychological process, by which the root syllable became stressed because it was the most important part of the word.
次のような疑問が自然に生じてくる。すなわち、アクセントがこのように移動したのはなぜであろうか。考えられる答えは二つある。一方では、この変化は純粋に機械的な過程によるものであり、語の意味とは無関係に第一音節にアクセントが置かれるようになったというものである。他方では、それは心理的な過程によるものであり、語の中で最も重要な部分である語幹音節が語の内部での重要性故にアクセントを受けるようになったというものである。
多くの場合には第一音節と語幹音節が同一であるから、この問いに答えるには両者にずれが生じる例を見なければならない。Kluge はゴート語の完了形に見られる重複に着目した。例えばゴート語の hahait "called", raiorþ "reflected", lailot "let" は、古英語では heht, reord, leort のように語幹部分の母音に省略が見られることから、ゲルマン語の語頭アクセントは機械的なプロセスであると論じた。しかしながら Jespersen は、前に繰り返された部分を発音する際には語幹の意味を意識しているはずであって、やはり意味的に重要な部分を強調する方策として「語頭アクセント」を捉えているようである。
参考文献
Jespersen, Otto. Growth and Structure of the English Language. 10th ed. Oxford: OUP, 1997[1905].