2025. 9. 19
第2節では、Jespersen の持つ英語観が表明されている。当然、言語は人と同様に複合的なものであり、一つの短い表現では言い表せまい。Jespersen もそのこと自体は認めている。しかしそれでもなお、英語について考えたり英語を他言語と比較したりしていると次のような見方に至るのだという。
it[=English] seems to me positively and expressly masculine, it is the language of a grown-up man and has very little childish or feminine about it.
私には、英語は明確に「男性的」に思われる。それは大人の男性の言語であって、子供っぽさや女性っぽさはほとんど持ち合わせていない。
英語が「男性的」であるというのは、この段階では Jespersen の印象に過ぎない。曰く、英語の音声・文法・語彙、さらには英語に存在する(しない)語や言い回しがその印象を作り出し且つ強めている。また英語で書かれた写本についても、イギリスの女性の書き手は、他国では男性の書き手しか用いないような方法でものを書くという。
言語全体の男性性や女性性ではないものの、男性と女性でことばの使用にどのような違いがあるかという観点では社会言語学の分野で様々な研究がなされてきた(cf. 岩田・重光・村田 2022: 73-85)。例えば Tannen (2001: 77) は、女性は言語をつながりの確立や関係性の構築の第一手段と捉える一方で、男性は独立の保持、交渉や社会階層内での地位の維持の第一手段と考えると指摘している。
参考文献
岩田祐子、重光由加、村田寿美『改訂版 社会言語学:基本からディスコース分析まで』東京: ひつじ書房、2022年。
Jespersen, Otto. Growth and Structure of the English Language. 10th ed. Oxford: OUP, 1997[1905].
Tannen, Deborah. You Just Don't Understand: Women and Men in Conversation. Reprint ed., William Morrow, 2001[1990].