情報活用教育
コンソーシアム
本協会では、AI時代に求められるデータ活用力を中心に「社会で求められる情報活用能力育成のガイドライン」をとりまとめました。ガイドラインでは、初年次での教育と2年生以降の専門教育との連携を前提に、授業の進め方、教材の例示などビデオによる解説を行うことにしました。また、高校の情報Ⅰと大学の情報教育が接続対応できるよう教材の例示を準備しました。
【社会で求められる情報活用能力育成のガイドライン(2021年版)】はこちらをご覧ください。
【ガバナンスに対する理解促進策】はこちらをご覧ください。
【データ活用力育成に向けたモデル授業の推進】はこちらをご覧ください。
【高校の情報Ⅰと大学の情報教育が接続対応できるよう教材例示】
1.プログラミング心構えの教材事例
「人生シミュレーションのフローチャート作成」授業モデル案(教材)
本授業モデル案は、プログラミング学習の前段階として基礎知識を確認するため、「問題発見・解決を思考する枠組み」にしたがって、学生が自分の将来設計を考えるためにプログラミングの基本的な事項(アルゴリズム、プログラムの基本構造)を復習することを目指します。
そのため、利用対象者として、高校の「情報Ⅰ」でアルゴリズムやプログラムの基本構造を学修し、大学において「問題発見・解決を思考する枠組みを説明できる(到達目標A-1)」を修得した学生を想定しています。「プログラミング学習の前段階として基礎知識を確認する」授業モデル案(シナリオ)
本授業モデル案は、学生が低年齢の子ども向けのプログラミング教材を開発する経験を通じ、プログラミングの基本的な事項(アルゴリズム、プログラムの基本構造)を復習し、大学でのプログラミング教育を円滑に始められることを目指します。プログラミングの基本的な考え方を伝えるアナログゲームの開発は、「問題発見・解決を思考する枠組み」に基づいて行います。
そのため、対象者は、高校の「情報Ⅰ」で既にアルゴリズムやプログラムの基本構造を学修し、大学で「問題発見・解決を思考する枠組みを説明できる(到達目標A-1)」を修得した学生を想定しています。
2.モデル化・シミュレーション演習の教材事例
「UMLによるプログラミング」演習課題(教材)
プログラミングは現実世界(オブジェクト)を仮想世界へと射影することである。このため、プログラミングの前にはオブジェクトを抽象化し、「何を処理すべきか(データ)」、「どのような処理を行うべきか(アルゴリズム)」を意識する思考過程が必要である。この授業では、現実世界を仮想世界へ反映するオブジェクト指向モデリングについて学修し、UML(統一モデリング言語)形式でモデル図(ダイアグラム)を作成する演習を行う。オブジェクト指向の概念とUMLについて理解し、現実世界をUMLで表現(モデリング)できるようになることを目指します。シミュレーションモンテカルロ法編問題解答例(教材)
本教材は、クラスに同じ誕生日の人がいる確率、円周率を求める、モンティ・ホール問題を題材に、モンテカルロ法によるシミュレーションの方法を学びます。
また、シミュレーションに必要な乱数の発生方法、各種グラフの描画方法についても学びます。このPython学習シートは、モンテカルロシミュレーション編の他に、基礎編、タートルグラフィックス編、ソートアルゴリズム編があります。「Society5.0におけるモデル化とシミュレーション」授業モデル案(シナリオ)
本授業モデル案は、文系を含む大学の1・2年生を対象に、3日構成の授業プラン全てに約10分の事前学習映像を入れています。Society5.0の時代になり、リアル空間の変化がサイバー空間へリアルタイムに伝わりアップデートされるようなシミュレーションを想像することを目指します。「SNS上で情報が広がる様子をモデル化とシミュレーションする」授業モデル案(シナリオ)
本授業モデル案は、モデル化とシミュレーションに必要な基本的な知識と技能の修得と共に、社会での実例を題材に、企業がSNS上で発信した新製品発表の情報がどのように拡散していくのか、実際の課題と問題発見・解決思考の枠組みを活用し、モデル化・シミュレーションを通じて仮説検証できることを目指します。
そのため、対象者は、高校の「情報Ⅰ」でモデル化とシミュレーションを学修し、大学において「問題発見・解決を思考する枠組みを説明できる(到達目標A-1)」を修得した学生を想定しています。
3.プログラミング演習の教材事例
「マイコンを使ってプログラミングの基礎を学ぶ」プログラミング実習(3)(教材)
本教材は、文系学生1・2年生を対象に、3回程度の授業でプログラミングを扱うことを念頭において作成した。LED等を搭載した安価なマイコンを使うことで、プログラムの動作をあきらかにするとともに、単純な動作であっても学生自らのプログラムによりマイコンを動作させたという達成感を得られるようにすることを目指します。「グラフィック開発環境(Squeak/Etoys)でのプログラミング」スクリプトとフローチャート(教材)
自分の意思を人に正確に伝達するためには言語による論理的な表現が必要であるが、それと同様にコンピュータに対する意思伝達のための論理的な表現がプログラミングである。論理とは、いくつかの作業の順番(手続き)を考えながら、一貫性を持たせ、矛盾なく組み立てることである。この授業では、プログラミング環境におけるアルゴリズムの表現を通して論理的思考能力を高めることを目指しています。システム構築の現場で使用されるテキスト記述によるプログラミング言語は、初学者になじみのない環境と規則で躓くことが多いため、比較的簡便なグラフィック開発環境Squeak/Etoysを使用しています。「プログラミング学習用ソフトウェアwPENを用いた授業例」(教材)
本授業例では、プログラミングとは何かについて、問題を解くための手順のアルゴリズムはプログラミング言語で記述するが、どの言語も基本部分は共通しており、ここでは、wPENを利用した逐次処理、条件分布、繰り返し、図形描画の演習を通じて、プログラミング言語の文法を学びます。
なお、大学入試・センター入試用疑似言語で記述したプログラムを実行できるため、情報Ⅰと接続した初学者向けのプログラミング学習環境になっています。「エラーメッセージの読み方」(ipynbファイル)
エラーメッセージを読むことは、メッセージを読まずにエラーの発生が想定される所を手当たり次第に修正することに比べ、はるかに効率的に修正を行うことができます。それだけでなく、理解が十分でない箇所を再認識し、学んだことを振り返るよい機会に繋がるものと考えます。
本授業事例は、初学者に対してエラーメッセージの読み方を説明することで、エラーメッセージに対する抵抗感を少なくして、エラーメッセージを読む習慣を付けさせ、そのエラーメッセージからどのような問題が発生しているのか、問題を解決するためにはどのような対策を行うべきなのかを論理的に考えることができるようになる切っ掛けを与えることを目指します。基礎編問題解答例(教材)
Pythonのプログラミングは、理系文系問わず社会のDXやAI活用のために知っておきたい基礎知識・技能です。
本教材は、全学科を対象としたプログラミングの基礎教材で、プログラミングの経験が無い学生を対象にしており、できるだけ学習の負担が少なくなるように、最小限の文法とプログラミング作法を学ぶ内容になっています。また、この教材は画面提示の他にプリントした課題として配布することも想定しており、1テーマA42ページの構成になっています。
なお、プログラムの処理系はGoogle colabのPythonですので、Netの環境があればコンピュータへのインストールは不要で、手軽に学習を始めることができます。このPython学習シートは、基礎編の他に、タートルグラフィックス編、モンテカルロシミュレーション編、ソートアルゴリズム編があります。タートルグラフィックス編問題解答例(教材)
本教材は、学生に親しみのある日本の伝統文様をPythonのタートルグラフィックスのプログラミングで描画する内容です。伝統文様の描画プログラムを考える過程で、伝統文様を要件定義し、単位文様を設計して、その単位文様をどのように並べるかを設計するなど、システム開発の基礎的な内容も学べます。
また、描画のアルゴリズムは1つではないので、本教材を基にプログラミングが得意な学生には別の描画手順の課題を出し、別の文様に挑戦させることもできます。このPython学習シートは、タートルグラフィックス編の他に、基礎編、モンテカルロシミュレーション編、ソートアルゴリズム編があります。「アルゴリズムとプログラミング」授業モデル案(シナリオ)
本授業モデル案は、情報Ⅰでの学習項目のプログラミングを復習する位置づけから、Pythonを用いたプログラミングを通じて、問題解決のためのアルゴリズムを修得させることを目指します。
授業は、90分×5回程度を考えており、「プログラミングの基礎」、「配列データの探索アルゴリズム」、「関数と整列アルゴリズム」、「図形描画のアルゴリズム」、「再帰アルゴリズム」で構成してます。
4.アルゴリズム学修の教材事例
ソートアルゴリズム編問題解答例(教材)
本教材は、選択ソート、交換ソート、クイックソート、ヒープソートについて、アルゴリズムと性能の特徴、プログラムへの実装を理解することを目標にしています。プログラムは、リストの変化をグラフアニメーションで表現する機能も付加し、別添のソースコードをコピー&ペーストしてすぐに実行できます。
また、データの動きを表現した動画もYouTubeから見ることができます。このPython学習シートは、ソートアルゴリズム編の他に、基礎編、モンテカルロシミュレーション編、タートルグラフィックス編があります。
5.データサイエンス・AI活用教育に向けた教材及び教育方法
「データサイエンスの活用体験」授業モデル案(シナリオ)
本授業モデル案は、ほぼすべての大学生が直面する就職活動に焦点をあて、データ分析により、どの人材を採用すべきかという問題を解決する経験を通じて、データサイエンスの知識・技能を活用できるようになることを目指します。データの分析は、「問題発見・解決を思考する枠組み」に沿って行います。
また、対象者は、大学で「問題発見・解決を思考する枠組みを説明できる(到達目標A-1)」を修得した学生を想定しています。一方、本授業で扱う統計分析は、高校までに学修した相関分析や基本統計量(平均値や中央値等)で対応できるため、大学で統計分析の授業を履修していない学生も対象者として想定しています。「実課題との関連でAI(人工知能)の活用体験をさせる」授業モデル案(シナリオ)
本授業モデル案は、データサイエンスやAIの仕組みや技術を学ぶと共に、社会科学分野での活用事例を取り上げ、AIの活用体験と適切な活用の議論・考察を通じて、問題解決の場面に応じて適切な手法を選択し、分析結果の解釈ができることを目指します。
そのため、対象者は、「問題発見・解決を思考する枠組みを説明できる(到達目標A-1)」を修得した学生として、初年次向けのAI理解教育を想定しています。
【初年次向け反転授業のビデオ授業ガイドと教材例示】
以下の教材は、初年次教育において私情協が提案する「社会で求められる情報活用能力育成のガイドライン」の概要を学ぶ際に反転授業の提示として活用することを想定しています。到達目標Aである「問題発見・解決を思考する枠組み」にしたがって、問題解決の手順を動画で学び、対面授業では学生間でディスカッションをしながら問題解決を体験することを目指します。
1.社会で求められる情報活用能力育成の背景
2.初年次向け反転授業を導入したビデオ授業ガイド
3.初年次向け、AI理解教育の授業シナリオ作り
【専門科目と連携した情報活用教育のための授業設計・運営ガイド】
1.文系(経済学分野)
以下の授業モデル案は、社会で求められる情報活用能力育成のガイドラインに対応し、経済学部3年生以上を対象に専門の講義科目(日本経済論など)の中で、3回程度のチーム学習を想定しています。現実の経済社会の課題に対し、適切な情報源(データベースなど)から問題の背景を深堀りし、経済学の知識を活かした解決策を提示するPBLを目指します。
2.理工系(機械工学分野)
以下の授業モデル案は、社会で求められる情報活用能力育成のガイドラインに対応し、工学部3年生を対象に日本のエネルギー戦略・課題について、オンライン形式の授業を想定しています。エネルギービジョン実現に必要な条件や開発プロセスのシミュレーションを実行し、SDGsを想定したロードマップを提案することで、問題発見力・構想力、問題解決力、情報活用基礎、情報技術応用力、チームワーク力の向上を目指します。
3.家政系(被服学分野)
以下の授業モデル案は、社会で求められる情報活用能力育成のガイドラインに対応し、家政学部3年生を対象にファッション・アパレル分野と環境(SDGs)に関する課題・問題点について、オンライン形式の授業を想定しています。「つくる責任」や「使う責任」をキーワードに、reduce、reuse、recycleのモデリング・シミュレーションを通して、未来に向けて何ができるのかの考察を通じて、問題発見力、構想力、問題解決力、情報活用能力、チームワーク力の向上を目指します。
4.医療系(医学分野)
以下の授業モデル案は、初年時情報リテラシー教育でカバーできない医療情報の活用法について、情報リテラシーが重要となる専門分野の授業(例えば、公衆衛生学、医療情報学、診断学、臨床推論、クラークシップなど、医療情報の活用が診断・治療に有益な疾病・疾患に関する講義・実習への部分的導入で、中等度の難易度を想定)の一部への導入を図ります。医療情報の活用に必要な情報リテラシーを体験することで、それらを情報の検索・収集、批判的吟味、意思決定に用いることの重要性を理解して利用できるようになることを目指します。
5.社会科学系(経営学分野)
以下の授業モデル案は、社会で求められる情報活用能力育成のガイドラインに対応し、経営学分野の2年生以上を対象に多様化・複雑化する社会的問題を洗い出し、経営学の理論や枠組みから問題解決案の提案を行います。身の周りで関心のある社会的問題を発見し、オープンデータなどを整理・分析して解決するビジネスモデルや事業計画を提案するPBLを目指します。
6.医療系(薬学分野)
以下の授業モデル案は、社会で求められる情報活用能力育成のガイドラインに対応し、薬学部1年生を対象に薬剤師として情報社会で活躍するため、信頼できる情報・誤った情報などについて、グループワークの討議・発表を通じて確認し、適切な情報を相手にわかりやすく提示するスキルの育成を目指します。