シンポジウム

国語科のカリキュラムを考える

「コンテンツ・ベース」と「コンピテンシー・ベース」の対立を超えて

2022.05.29/9:30-12:30

趣旨

本シンポジウムの軸となる問いは、カリキュラムを考えるうえでの「コンテンツ・ベース」と「コンピテンシー・ベース」の対立を、教科に閉じない視点をも手がかりにしながらいかに乗り越えるか、というものである。

2010年代後半から日本の教育界では、「コンテンツ・ベース」から「コンピテンシー・ベース」へ、といった言い方がさかんになされてきた。しかし、国語科ではそのインパクトをあまり受けてこなかったように思われる。それはおそらく、国語科ではもともと、「『走れメロス』を教える」といった作品主義(一種の「コンテンツ・ベース」)が存在したと同時に、「読むこと」「書くこと」という区分に表れているような技能への意識(一種の「コンピテンシー・ベース」)も一応存在したからであろう。

けれども、今国語科に限らないところで起きている議論は、さらにその先を行くものである。

国際バカロレアにも取り入れられた「概念型カリキュラム」は、教科の枠を超えつつ、けれども無色透明な(完全に教科内容と独立した)スキルでもない形で、カリキュラムの設計を考えようとしている。

また、教科の枠を超えた「プロジェクト」や「探究」をカリキュラムの柱に置く学校も出てきているが、そのなかで「国語科」という枠組みの意義や課題をあらためてどう捉えるかが、実践的にも問われている。

さらに、国語教育学がこれまで扱ってきたもののなかでも、「メディアリテラシー」といったものは、国語科以外の内容と結び付くと同時に従来の国語科の構造にある種の見直しを迫るものであり、カリキュラムの問題を考えるうえで、示唆的である。

こうした議論を国語科あるいは国語教育学でどう受け止めていくのかということを、本シンポジウムでは3名の登壇者と共に、考えていきたい。

登壇者

遠藤みゆき
(関西学院大学)


中村純子
(東京学芸大学)


澤田英輔
(軽井沢風越学園)


コーディネーター

渡辺貴裕
(東京学芸大学)