年会長挨拶

 第64回大気環境学会年会長

福島国際研究教育機構 / 産業技術総合研究所

兼保 直樹

 

第64回大気環境学会年会を2023年9月13日(水)~15日(金)の3日間、茨城県つくば市の産業技術総合研究所(中央地区)において開催いたします。昨年の堺大会で3年ぶりの対面形式の年会が復活しましたが、つくば大会でも可能な限り対面参加を中心とした開催を検討しています。

よく言われるように、COVID-19の時代に入って、これまで「当たり前」と思われていたことが実は必ずしも当たり前ではなかった例に気付かされることがあります。学会についていえば、世界のどこからでも気軽にオンライン会議に参加できるようになった一方、多くの人が実際に集まって議論を交わす場があることは、実はとても貴重で、ときには得がたい体験の舞台になっていたことが、あらためて実感されます。

 学生の皆さんにとって、見知らぬ人の前で初めて自らの研究発表を行うのは、多くの場合は学会の場だと思います。そこでは、全く想定していなかった質問を食らって、強気で相手に切り返すのも、頭が真っ白になって教官に助け船を出されるにしても、後から思い返せばそれが「研究の場に初めて出た」かけがえのない経験になるでしょう。リアルな会合に参加して得られる高揚感やドキドキ感は、今後メタバース的な技術の進展があったとしても、オンラインで実現するのは難しいのではないかと思います。

 そのためにも年会の実開催は続いて欲しいと願いますが、感染症の流行とは別の面から開催が難しくなってきている状況があります。A~J会場といった10あるいはそれ以上の数の会場を使用してきたこれまでの年会の形は、教室を潤沢に使える「大学」and/or学生(会場係などとして動いてもらえる)を多く抱えた研究室のあるところ、といった暗黙の条件が存在していたように思われます。学会の会員数が減少しつつあるなか、今後その条件を満たす開催地を探すのは大変になっていくでしょう。

一昨年、つくばでの年会開催を学会理事会から打診された際、産業技術総合研究所の共用講堂内にある5つの会場での開催を念頭に、「開催場所の制約の範囲内で実施できるように、開催形式についてはこれまでのパターンにこだわらず柔軟に対処するよう本部と協議する」との条件でお引き受けしました。今回の年会は、少ない会場数と少ない人数で回す以外にも、申し込み方法や参加費支払い方法を始めとして多くの面で省力化、簡素化(経費節減ともいう)を行っており、従来のパターンに慣れた古株の方々には戸惑われることも多いかと思います。しかし、実開催によるドキドキ感を絶やさないためにも、これまでの「当たり前」は必ずしも当たり前ではなかったこととして、ご理解を頂きたくお願い申し上げます。まだ残暑が残る中、研究の本質を突くような質疑の応酬がつくばの地で繰り広げられることを願っております。