課題研究
テーマ:デューイにおけるケア論と正義論
テーマ:デューイにおけるケア論と正義論
<趣旨>
本課題研究は、ジョン・デューイの倫理思想において、これまで相対的に軽視されがちだった「ケア」と「正義」の関係性について取り上げ、それらの相互関係を学際的な観点から再定位することを目的とする。デューイの倫理学は、経験・成長・協同を基軸に、個人と社会の相互生成的な関係を重視する点に特徴を有しているが、その内部には倫理的配慮としてのケア論と公共性の形成に不可欠な正義論という二つのテーマが、潜在的に複雑な構造をもって内包されている。
今日、デューイの倫理思想から影響を受けたケア論や正義論に関する研究は、教育、看護、福祉、政治など幅広い領域で重要な論点となり、ウェルビーイングの向上とも関連づけて議論されている。しかし、こうした二つのテーマを理論的に先導したデューイの倫理思想の文脈において体系的に連結する試みは、十分とは言えない。とりわけ、キャロル・ギリガンからネル・ノディングズへ至る系譜で提唱されているケア倫理、およびローレンス・コールバーグからジョン・ロールズへと至る正義論では、思想的対立が煽られ、ケアがもつ情緒的・関係性志向の倫理および正義が要請する規範的・制度的枠組みとの間には、しばしば緊張関係があると指摘されてきた。これに対して、デューイの倫理思想では、この二項対立の図式を固定化するのではなく、経験を再構成する過程において両者を動的に媒介しうる可能性を探究している。すなわち、個人の具体的経験に根ざしたケア的な感受性および民主的共同体の文脈における正義の公共的要請を、相互補完的に捉えようとする枠組みが俯瞰的に導出されうる。
本課題研究では、ケア論と正義論の関係性について多角的な観点から報告者が提題を行い、デューイの原典に基づく議論をふまえ、その思想的射程と今日的課題への示唆を総合的に検討する。これにより、デューイ倫理学の再評価とともに、ケアと正義の統合的な理解に基づく社会実践の理論的基盤を明らかにすることを目指したい。
発表資料(準備中)
司会者: 柳沼 良太(岐阜大学)
提題者① 阿部 康平(同志社高等学校)
「デューイにおけるケア論と正義論 」
提題者② 萩野 奈幹(國學院大學)
「教育におけるケア論と正義論―デューイとノディングズの隔たりを超えて―」
提題者③ 伊藤 博美(椙山女学園大学)
「ケアリング倫理と今日的課題」