雑誌「モンキー

連載 「今日もOSARU日和」

竹下 景子

(公益財団法人日本モンキーセンター親善大使)

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連載 第8回 「今日もOSARU日和」

もうひとつの動物園

竹下 景子

(公益財団法人日本モンキーセンター親善大使)


この記事は、日本モンキーセンター発行の雑誌「モンキー」6号1巻 (2021) 4‐5頁に掲載した内容を転載したものです。

「バックヤード」ってご存知ですか。よく映画で見かける、家の裏手の芝生なんかが植えられている庭のこと。って、私もそう思っていました。でも、それだけじゃないんですね。バックヤードは動物園にはなくてはならない施設。日本モンキーセンターに通うようになって初めて知りました。

非公開ですが許可をいただいて敷地内を見学し、飼育員の藤森唯さんと武田康祐さんからお話を伺いました。

バックヤードは 3 つのエリアに分かれています。

① 動物病院。入院室もあるそうです。生き物を扱っているのだから病院はあって当たり前。誰だって怪我もすれば病気にもなる。40 歳以上の寿命がある動物なら、なおのことでしょう。そういえばシロガオサキのモップくんも昨年、お腹の具合が悪くて入院しましたね。私も心配したけれど、獣医さんや飼育員さんたちの働きには思いが至らなかった。反省。

怪我で右足の膝から下を切断したシシオザルのシッコクは今、アジア館にいます。ハンディキャップを感じさせない活発さとか。よかった !

② 屋内飼育施設。歳をとって、また、病気や障害があるため群れに入れなくなる場合があります。逆に、成長にともなって両親とくらせなくなった個体もいます。彼らの生活エリアがこちら。それぞれが独立したケージで、十分な広さを確保するのは難しそうです。

ここでの最高齢は推定 50 歳オーバーのボウシテナガザルのドント。驚異の美魔男と愛されています。

ボウシテナガザル(Hylobates pileatus)のドント。(撮影:藤森唯)

シロテテナガザルのイレブンはバックヤードで生まれました。持病もあって自分のケージが彼の全宇宙です。陽にほとんど当たらないので「色白」だそうです。気候がおだやかなときにしか窓を開けられない屋内では、外の景色はもちろん風もあまり感じられません。ひとりぼっちで単調な毎日を過ごすのは、かわいそうかなと思いました。

シロテテナガザル(Hylobates lar)のイレブン。(撮影:藤森唯)

ムネアカタマリンのサキちゃんは、ツイッターで人気者。ご寄附でタオルのプレゼントが届いたこと も。タオルが何より大事だなんて、「スヌーピー」に出てくるライナス みたいで、カワイイ !

ムネアカタマリン(Saguinus labiatus)のサキ。(撮影:藤森唯)

卒業組はベルベットモンキーのブルー。アフリカ館でクチヒゲグエノンのキャロル、サイクスモンキーのライト、女子二人に囲まれて異種同居中です。ノホホンとできるのも人柄、いえ猿柄でしょうか。

シロテテナガザルのジェシカもギボンハウスでキュータロウとラブラブな生活を送っています。

ベルベットモンキー (Chlorocebus pygerythrus) のブルー。( 撮影:藤森唯 )


③ 屋外飼育施設。展示エリアでくらせないカニクイザルやヤクシマザルがいます。カニクイザルは、その数なんと 69 頭。バックヤードに移動となったのは、特定外来生物に指定されたからです。脱走して野生のニホンザルと交雑しないように。大所帯で一つのケージは、狭くて気の毒に思いました。屋外のため寒さ対策は課題です。私が訪れた時は、グループケージの四方がプラスチックダンボールで覆われていました。その一部は透明なもので、日差し取りの窓になっていました。こちらはご寄附で。すべて飼育員さんの DIY の成果だそうです。ブログを見ると、確かに皆ケージに取り付いてる。冬の日差しは 貴重ですもんね。

限られたスペース、変化の乏しいバックヤードでのくらしに刺激を与えるべく、飼育員さんは日々、心を砕いています。おサルたちの幸せのために。その愛情と献身が私の胸を打つのです。

カニクイザル(Macaca fascicularis)の施設。(撮影:藤森唯)

さて、ここで朗報です!念願だった、屋内でくらす動物たちがおひさまの下で運動できる「おひさまエリア」が完成間近 ! 工事現場の方々の笑顔も陽に照らされて、目の前に建った屋内施設から延びる連絡通路と運動のためのケージが、キラキラ光って見えました。あれもこれも日頃の皆様からのご支猿のたまものです。ドントやイレブンは準備運動を始めたでしょうか。外の世界を初めて体験するイレブンは一体どんな気持ちでしょう。あゝ、ワクワクが止まらない。

最後に秘密、教えちゃいます。マダガスカル館のある丘の上からバックヤードが見渡せる。「おひさまエリア」で元気に遊ぶ彼らの様子が近い将来見られるかもしれませんよ。待ち遠しいなぁ。

新しくできたバックヤード施設。( 撮影:藤森唯 )

連載 第7回 「今日もOSARU日和」

雨降りの動物園で

竹下 景子

(公益財団法人日本モンキーセンター親善大使)


この記事は、日本モンキーセンター発行の雑誌「モンキー」5号4巻 (2021) 88‐89頁に掲載した内容を転載したものです。

2020 年 10 月 17 日。動物慰霊祭に参列しました。涙雨の中、飼育員の奥村文彦さん作詞作曲の「応猿歌」が私たちをいざなってくれました。おサルたちを愛してやまない気持ちが歌詞にも歌声にも満ち満ちて。別れは寂しいものだけど、送る側にはさまざまな思いも残していくけれど、たくさんの愛に包まれて幸せな一生だったのだろうな、と思いました。全国からお供え物を贈ってくださった皆さま、降り止まぬ雨にもかかわらず長時間ご同席くださった皆さま、この場を借りて私からもお礼を申し上げます。ありがとうございました。

そして、うれしいニュースも。南米館にくらすタマリンやマーモセットのための屋外運動場「おでかけタマリン」が完成。テープカットに参加させていただきました。中に入ると意外に広い。さんさんと降り注ぐ太陽のもと、可愛いタマリンたちがのびのびと遊ぶ姿を思い描いてその場をあとにしましたが、その後のツイッターで樹々の間を元気に走っている映像を見ました。みんなみんな楽しそう。よかったネ。

雨の中開催された創立 64 周年・動物慰霊祭

南米館ではジェフロイクモザルの黒いつぶらな瞳が心に残りました。モンキースカイウェイで見かける彼らは、長い手足と別の生き物みたいに動く尻尾の印象が強烈で、正直あまり可愛いと思ったことがありませんでした。でも、この日は雨で肌寒かったからでしょうか、みな静かに思い思いの時間を過ごしているようでした。中の 1 人と目が合いました。チロ、かな。黒い顔に目の周りがピンク。ひときわ黒い目がこっちを見ています。まあるい優しい目。私の中のジェフロイクモザル好感度が一気にアップしたのは当然です。あなたに会えてよかった。これからも元気でいてください。

ジェフロイクモザル (Ateles geoffroyi)のチロ。( 撮影:寺尾由美子 )

アフリカ館にもいました ! 黒いお顔で黒い瞳の美人、いえ美形サルが。ベルベットモンキーのハツ、ハンテン、ハッピの三姉妹。以前、ツイッターでベルベットモンキーのファンはそんなに多くない、とあったのを思い出しましたが、ベルベットモンキーの魅力が分からないアナタの目は節穴です。あ、ワタシの目か。スミマセン。個性あふれるアフリカ館の住人の中で、ベルベットモンキーは確かに地味な存在でしょう。でも、よく見ると、ふんわり丸い頭とその下にある顔を仕切るみたいに白い頬毛がフサフサ顔周りを包んで、黒い顔をいっそう黒くしかも小顔に見せている。コガオ、ああ、うらやましい。そして 2 つの黒い目がクルクルともの言いたげに動きます。食事の仕方もそれとなく上品だし。ハツちゃんらぶに落ちました。

ベルベットモンキー(Chlorocebus pygerythrus)の三姉妹。左から、ハツ、ハンテン、ハッピ。(撮影:星野智紀)

最後に、飼育員の荒木謙太さんのご配慮で、特等席からアヌビスヒヒたちを見る幸運に恵まれました。ヒヒと同じ目線で、しかも間近なところから。これって、もはやボーナスですよね。ガラス窓を開けると気配を察して若い子たちが集まって来ます。その視線の先には、もちろん荒木さん。そう、みんなおやつを期待しているのです。中には鉄柵に取り付いて最後まで離れなかった子もいましたっけ。そう、イナリちゃん。あなたはまるで従順な子犬のようでした。見上げるように見つめて、でも決して手を出したりはしなかった。アヌビスヒヒっておとなしい ! 毛色が日光のかげんでオリーブ色やもっと複雑な色に見えるのと同様に、鼻筋の通った鉄仮面みたいな風貌も、角度を変えればその小さな眼に友情や信頼が宿っているのが見えてくる。 80 頭近くの群れでくらすヒヒだもの。ヒヒの社会に権力はない、と書いた学者もいます。アヌビスヒヒたちの間に穏やかな草原の風が吹き渡って行くのを見たような気がしました。

雨の日の動物園もいいものです。

アヌビスヒヒ(Papio anubis)のイナリ(手前)。(撮影:荒木謙太)

おまけ情報

奥村文彦さん作詞作曲の「応猿歌」

竹下 景子 (たけした けいこ)

俳優。愛知県出身。1973年NHK銀河テレビ小説『波の塔』でデビュー。映画「男はつらいよ」ではマドンナ役で3作品に出演。テレビ・映画・舞台への出演のほか、「世界の子どもにワクチンを日本委員会」ワクチン大使、国連WFP協会親善大使など幅広く活動 。新たに2019年3月3日より、公益財団法人日本モンキーセンター親善大使を務める。

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