数理ウェーブ

日本数学コンクールフォローアップセミナー 数理ウェーブについて紹介します。

過去の数理ウェーブの履歴

2022年度


演者 藤井雅望さん灘中学校 3年

タイトル「ピラミッドから見る、さまざまな数列について


講演者 山本修真さん東京都立西高等学校 2年

タイトル「多項式係数斉次線形差分方程式の超幾何解を導くアルゴリズムとその適用によるRamanujan Machineの予想の証明


2021年度


講師 伊師英之(大阪市立大学大学院理学研究科 教授)

タイトル「日本数学コンクールのこれまでとこれから」

日本数学コンクールは1990年11月の初回以来約30年間,小中学生および高校生を対象に名古屋大学が開催してきたイベントです.「自由にゆったりと考える」「楽しい数学の発見」「多彩な才能の評価」「人材の育成」を目標に掲げ,数学教育に独自の貢献をしてきました.2022年度からは名古屋大学と大阪公立大学数学研究所との共催イベントとして再スタートします.論文賞をベースとする開催方法に変わりますが,自由に一般化を考える,正解を用意しない,数学に落とし込むことそのものを問う,といった問題も出題するという伝統は受け継いでいきます.そのような「日本数学コンクールらしさ」を,2020年度の問題を例にとって説明し,これからの日本数学コンクールの理想と展望を語ります.


講師 大沢健夫氏(名古屋大学 名誉教授)

タイトル「割り算の話」

コロナ禍により私たちの生活は今まで以上にコンピュータを中心とする情報技術に大きく依存するようになりました。中でもテレワークの普及はコンピュータ技術の進歩に支えられていますが、最初の電子計算機とされる ENIAC の誕生が1946 年であったことを思えば、変化の激しさには驚嘆の念を禁じえません。

ところで今から 400 年前と言えば日本では江戸時代初期で、ヨーロッパでも科学はまだそれほど発達しておらず、やっとコペルニクスの地動説が認められだした頃でした。大科学者のガリレイが「それでも地球は動いている」という言葉をつぶやいたとされるのは 1633 年の宗教裁判のあとでした。日本は鎖国 (1639-1854)により学問的にも孤立状態でしたが、それでも数学は独自の発達を遂げ、「和算」という形で残っています。その発端となったのが、ちょうど 400 年前に出版された二つの数学書、「割算書 (わりざんしょ)」と「諸勘分物 (しょかんぶもの)」です。これらの著者たちの紹介を糸口にして、和算における円周率や素因数分解の研究と、それに類似のニュートンやオイラーの数学をご紹介したいと思います。

2020年度

「ガウスの2次形式の話ー2019年度のシニア問題をめぐって」

2019年に出題した「二次方程式で遊ぼう!」という問題は、ガウスの2次形式の理論の一部を原理的には高校生にも計算できる形で出題しました。その辺の解説をする予定です。


「17種類の文様の話」

一定のパターンが繰り返されるかたちの文様は, 包装紙, 壁紙, 着物の柄など, 私たちの身の回りのあちこちに見ることができる.その様式は無数にあるように見えるが, 対称性(シンメトリー)に注目すると17 種類しかない. このように, 色や形の奥にあるものを数学的に考える方法について解説する.

2019年度


講演者:森翔汰(名古屋大学大学院多元数理科学研究科 博士後期課程)

テーマ:音声分析から対称性へ

あなたは「動画を通じて情報を発信したい」と願っているとしましょう。さらに、正体を隠すため自分の声を加工します。資金節約も狙って、加工用の機械は自作することにします。すると、いずれ「離散フーリエ変換」というキーワードを目にすることとなります。これは「対称性」と大きな関係のある概念です。今回の講演では、その数学的な背景について議論します。


講演者:伊師英之(大阪市立大学大学院理学研究科 教授)

テーマ:相関係数と高次元幾何学

二つのデータ(たとえば国語のテストの点数と、数学のテストの点数)の組が100個与えられて、それらの間の相関関係を知りたいとします。座標平面上にデータに対応する100個の点を打って、それらの分布の様子を観察することは一つのアイディアですが、実は、その代わりに2本の100次元ベクトルの位置関係を考えた方が、知りたい情報が得られることがあります。いわゆる相関係数の背後にある、このような考え方を説明します。

2018年度


講演者:森 翔汰(名古屋大学大学院多元数理科学研究科 修士課程)

テーマ:『破産問題の一例』

あなたと友人が勝敗のつくゲーム(オセロやチェスなど)で賭け事をしている場面を想像してください。毎回同額のお金を賭け、どちらかの所持金が底をつく(破産する)まで同じゲームを繰り返します。あなたは白黒つけたい性格のため、最後まで賭けを行いたいのですが、最終便の時間も気になります。そこで、いつまでに(多分)終えられるかを計算することにしました。以上の内容を、歴史的な問題「破産問題」と絡めながら、数学的に議論します。


講演者:奥田真吾(三重県立津高等学校 講師)

テーマ:『畳の敷き方』

広さm×nの長方形の部屋にk畳半の畳を敷き詰めるとき、その敷き詰め方の総数を考えます。ただし畳の広さは、1×2または2×1を1畳、1×1を半畳とします。半畳を考えない問題、すなわちm、nの少なくとも一方が偶数のときについては統計物理と関係があり、既に解決されています。一方mとnが両方奇数のときには、必ず半畳を考えざるを得なくなります。半畳の畳を1枚だけ使用する条件では、果たしてどのように考えればいいでしょうか。本年度の日本数学コンクールで出題したこの問題を、3×3、3×5、3×n、5×5等について解説します。

2017年度


講演者:松岡勇気 名古屋大学大学院多元数理科学研究科 博士後期課程

テーマ:『p進数とクンマーの合同式』

ベルヌーイ数と呼ばれる漸化式で定義される数たちがあります。ベルヌーイ数は元々自然数のべき乗の和を計算するために導入されたものですが、これらの間にはクンマーの合同式と呼ばれる不思議な関係が成り立ちます。一方で素数pに対して、p進数と呼ばれる実数とは異なる数の世界が存在しています。今回のお話ではp進数の世界から見たクンマーの合同式の解釈について説明します。またリーマンのゼータ関数との関係についても触れたいと思います。


講演者:伊師英之 名古屋大学大学院多元数理科学研究科 准教授

テーマ:『マイナス10進法の世界』

日常生活では専ら10進法が使われていますが、12進法や60進法の名残はところどころに見られますし、コンピュータの世界では2進法や16進法が基礎になっています。これらをまとめてN進法の一般論を考えると、Nが負の整数でもうまくいくことが分かります。この講演ではマイナス10進法を考えることによって、正負両方の数が統一して計算できることを実演します。

2016年度


講演者:鈴木咲衣 京都大学白眉センター/数理解析研究所 特定助教

テーマ:『結び目の数学』

ひもを結ぶと結び目ができます。靴ひもの蝶ちょ結び、荷造りのひもの堅結び、ひもで綺麗な模様を形作る装飾品など、結び目は日常生活でもしばしば現れるとても身近な存在です。そんな結び目の研究が近年、数学の一分野として急速に発展しています。「結び目で数学?何をするの?」と思うかもしれません。でも、数学は自由。数や多項式だけではなく、結び目でも数学ができます。この講演では、結び目の数学を基礎からゆっくりお話しします。


講演者:大沢健夫 名古屋大学大学院多元数理科学研究科 教授

テーマ:『分割と配置の数理』

三角形の面積の公式(底辺x高さ÷2)と角錐の体積の公式(底面積x高さ÷3)を小学校の算数の授業で習いますが、後者が成り立つ理由については微積分の考え方が必要になるとして省略されることが多いようです。19世紀の天才数学者ガウスはこれに疑問を持ち、手紙の中で問題として提起しました。のちにヒルベルトがこれを重要な23の問題の一つに含めましたが、デーン(ヒルベルトの弟子)がすぐに解決しました。二つの等積な多面体が分割合同になるための条件を求め、それにより体積の公式は面積とは同様には導けないことを解明したのです。デーンはのちに組み合わせトポロジーの分野で基本的な定理をいくつも発見しましたが、その考え方はガウスの問題に通じるところがあり、「分割と配置の数学」とでもいうべき明快なものです。この話題について、エピソードなども調べてお話しします。

2015年度


講演者:久本 智之 名古屋大学大学院多元数理科学研究科 助教

テーマ:『二次曲線から楕円曲線まで』

数学の歴史上、二次曲線ほど長いあいだ調べられてきた図形はありません。古代 ギリシャ人は既に、円錐の切り口に現れる図形として統一的にこれらの 曲線を捉えていました。この講演では二次曲線の歴史について振り返り、そこから近代の数学がどのように生まれていったのか、少しお話できればと思います。


講演者:大沢 健夫 名古屋大学大学院多元数理科学研究科 教授

テーマ:『補助線と複素数』

図形の問題を解く時、うまい補助線を引いて合同な図形や相似形を見つけるということをします。線を引くことによって見えなかったものが見えるようになります。見えるものは平面図形ですが、それを立体の影と認識できる場合もあり、それが問題を解く鍵になることもあります。この種の幾何学を射影幾何といいます。射影幾何ではポンスレ(1788-1867)の閉形定理が有名ですが、この定理の証明は補助線を引くだけでは見えません。それは点や線の位置関係を高次元の空間内で記述する必要があるからです。そのために役立つのが複素数です。

2014年度


講演者:澤田 晃一郎  京都大学大学院理学研究科 修士課程1年

テーマ:ハノイの塔にまつわる問題 

「ハノイの塔」は、3本の柱といくつかの円盤からなり、条件に従って円盤を動かす単純なパズルです。再帰的なアルゴリズムについて理解するために用いられたりもする、よく知られたパズルですが、少し設定を変えるだけで興味深い問題を見出すこと ができます。この講演では、そのようなハノイの塔にまつわる問題を紹介します。


講演者:伊師 英之  名古屋大学多元数理科学研究科 准教授

テーマ:組合せ問題と巨大数 

組合せ論の問題のなかには、答そのものや、答を出すプロセスの計算量が天文学的数字を遥かに超えるものがあります。本講演では、その種の問題のなかでも著しく巨大な数が現れることで知らせるラムゼーの問題と関連する話題について紹介します。

2013年度

①14:00~15:00 3次元空間を見分ける ~状態和不変量入門~岡﨑 建太 (京都大学数理解析研究所・特別研究員)

曲面、すなわち曲がった2次元空間には球面、n人乗り浮き輪、クラインの壺など様々なものがあります。 そして、曲がった3次元空間(専門用語で「3次元多様体」といいます) には曲面よりもはるかに豊富な種類があることが知られています。 3次元多様体を分類したりその性質を調べることはトポロジストたちの 大きな課題ですが、今回はその取組みのひとつである「状態和不変量」 について、簡単な部分を解説できればと思います。 状態和不変量とは、3次元多様体を基本的なピース(四面体)に分割し、 その分割を用いて元の3次元多様体の情報を取り出すようなもののことです。


②15:10~16:10 逆問題と数学  大沢健夫(名古屋大学多元数理・教授)

津波観測網の整備により、東北海岸では10分間のデータからそれ以後の海面の動きが瞬時に計算できるようになったそうです。これは出来事の原因をデータか ら推定する技術に基礎づけられていますが、その数学的側面は多様で、(1) 理論的にはどこまで分かるのか? (2) 現実はどうか? (3) 数学として何が面白いのか?

の3点に留意する必要があるといわれます。逆問題とよばれるこのような分野について、いくつかの例を調べてお話しします。



①14:00~15:00「無限個の点を除いた平面の変形」藤野 弘基(名古屋大学多元数理・院生)

ある図形の各点を他のある図形の各点に対応させる規則によって、図形を"変形"する事を考えます。このとき、規則が備え持つ性質によっては変形することのできる図形が大きく異なります。そこで、どのような性質を備えればどのような変形ができるか?逆にどんな変形ができないのか?という問題について解説し、現在の私の研究についても

簡単に紹介しようと思います。


②15:10~16:10「三角形の変形と双曲幾何」大沢 健夫(名大多元数理・教授)

三角形全体の集合を一つの空間と考えると、そこには通常の平面に似た幾何学的な構造があります。その結果、たとえば「三角形の直線的な変形」というものが自然な意味を持ちます。このような観察から出発して、リーマン面の変形理論の一端に触れてみます。



①14:00~15:00「ワイルの一様分布定理」久本 智之(名大多元数理・特別研究員)

√2、2√2、3√2、4√2 ...という無限の系列を考えていったとき、これらの小数部分は区間(0, 1)の中でどのように分布しているでしょう か? 数学者ワイルは、フーリエ級数の鮮やかな応用とて、このような小数部分たちが 区間(0, 1)に「一様に」散らばっていることを証明しました。本講演では、フーリエ級数の導入から始めて、この一様分布定理の証明を紹介します。


②15:10~16:10「数の近似と関数の近似」大沢 健夫(名大多元数理・教授)

円周率が無理数であることはよく知られています。その証明はあまり話題にならないようですが、それを見てみると三角関数の性質がうまく使われていることがわかります。これを題材にして、無理数の有理数による近似と関数の有理関数による近似についてお話しします。



①14:00~15:00「やわらかい関数と堅い関数」 足立 真訓(名大多元数理・教務助教)

よい風景を見つけたとき、それを絵に描く人もいれば、写真に撮る人もいるでしょう。

現代の「解析幾何学」では、空間の性質を、空間が備える関数に写し取ることで調べます。どのような関数を用いるかで、表現できる現象が変わります。その一端を、可微分関数、正則関数、CR関数についてご紹介したいと思います。


②15:10~15:40「ものつくりに現れた関数の問題」大沢 健夫(名大多元数理・教授)

関数の研究の歴史は長く、その中で応用面が注目された研究がいくつもあります。その中からいくつか選んでご紹介します。一つは流体への応用で、大数学者オイラー以来のものですが、ものつくりということでは航空機の翼型への応用が有名です。もう一つは情報技術への応用です。 通信システムの設計の基本思想であるシャノン理論では、関数の補間公式が使われています。後に同じ形の理論が石油探査に利用され、さらに有名になりました。ついでに名古屋のものつくりに現れた問題もご紹介します。ただし(私の力不足のため)この問題はまだ解けていません。



①14:00~15:00 「ゼータ関数とL関数」大沢 健夫(名古屋大学多元数理・教授)

リーマンのゼータ関数やディレクレのL関数は、素数分布の問題などに応用される特殊な関数で、それらの零点や特殊値には数論的な情報がつまっています。未網恕一著「解析的整数論」にそってその概説を試みます。


②15:10~15:40 数学コンクール論文賞金賞論文の発表

「リーマンゼータ関数とディリクレL関数の特殊値分析」

受賞者:志賀 優一(和歌山県立日高高校)

代 読:大沢 健夫(名古屋大学多元数理・教授)



①14:00~15:00 「マッチング」 加藤 隆太(東京大学大学院経済学研究科院生2013.3迄  米国ジョンズホプキンス大学博士課程2013/9より)

伝統的な経済学では経済制度を与えられたものとして、市場の分析に力を注いできたのに対して、近年経済学では制度を設計するものと捉え、実際に市場がうまく機能するように設計する研究が進んでいる。今回はその中でも、昨年Alvin Rothがノーベル賞を受賞したことでも注目されている、マッチング理論と呼ばれる分野に焦点を当てる。研修医制度や学校選択制といった、経済学とは一見関係がなさそうな領域においてマッチング理論がどのように活用されているかについて概観する。


②15:10~16:10 「岡理論と核関数」  大沢 健夫(名古屋大学多元数理・教授)

岡潔の多変数関数論の研究は、ベンケ・ツレンの総合報告で分野の全体像をつかんだところから本格的に始まります。岡が精読したこの小冊子にはいたるところに興味深い書き込みが見られます。その中で核関数というものに関する部分に焦点を絞り、岡の疑問が最近の研究によってどこまで解き明かされたかに迫ります。これは出版予定の拙著の最終章にあたります。



①14:00~15:00 「図示される代数たち」  小西 正秀(名古屋大学多元数理・院生)

結び目理論、グラフ理論など、図を取り扱う数学は多々存在します。図を扱う、ということは幾何学か、と思われる方もいるでしょうが、実は代数を作る手段としても図は活躍しています。代数といえば身近なものは整数、実数、多項式や行列といったものですが、ある意味もっと身近な,図から生成される代数に触れてみましょう。


②15:10~16:10 「トポロジーと関数論」  大沢 健夫(名古屋大学多元数理・教授)

多変数関数論で「岡・カルタン理論」の名で知られる有名な定理があります。これについて、すべての命題の証明を読みながら主要結果に達するのは大学院生レベルの仕事ですが、宇宙の起源の研究に応用され得る数学理論として、高校生レベルの予備知識でその雰囲気を味わってみてもよいでしょう。書きかけの「多変数関数論の建設」の第5章と第6章をふまえてそんな話をしてみたいと思います。



①14:00~15:00 「演算構造の世界」  井澤 昇平(東北大学理学・院生)

古くは数学が取り扱う対象と言えば"数"や"図形"でした。現代では それらを全てを表現できるのものとして"集合"というものも数学の対象となっています。表現できると言っても、数や図形は集合の言葉で記述するにはかなり複雑な構成をしなければなりません。では、数や図形を離れて、集合の言葉で表現できるもので比較的単純な構造を一から調べてみる・・・という発想もあるでしょう。その一例として演算の構造 という、比較的ゆるい条件のみを課したものの全体を調べてみる、そんな取り組みの一部を紹介したいと思います。


②15:10~16:10 「代数的な集合と解析的な集合」  大沢 健夫(名古屋大学多元数理・教授)

岡潔の数学のうち、デカルトの座標の考えを多少大掛かりにした部分に ついて、執筆中の原稿の第3章「上空移行の原理」と第4章「岡の原理 とその展開」にそってお話しします。

2012年度

①14:00~15:00 田島 裕康 (東京大学理学部物理学科・院生)「量子もつれの測り方、使い方」

離れた二つの場所にある箱の中身の片方を「見る」事で、もう片方の箱に物理的な一切の操作を加える事無く、中身を自由に決められる-量子力学の世界では、古典力学の世界では起きないこうした「もつれ現象」がしばしば起こります。このような「もつれ」を系が「どのくらい持っているか」を如何にして測るか、という研究が、この十数年で急速に進み、「量子もつれ」が物理の重要な量であるエントロピーと深い関係を持つ事が分かってきました。同時に、「量子もつれ」を使うことで、それなしではできない様々な操作が行える、ということも分かってきました。こうした量子もつれの測り方と、その応用についてお話ししたいと思います。


②15:15-16:15 大沢 健夫(名古屋大学多元数理・教授)「岡理論の遠景」

執筆中の著書「多変数関数論の建設」(仮題)の第一章と第二章の原稿に沿って、大数学者岡潔(1901-78)の数学を、第七論文「二三の算法的概念について」の結論を中心に、論文にまつわるエピソードを交えながら紹介します。



①14:00-15:00  松岡 学 (桑名北高校・教諭)「数の体系を拡げるーアルチン環の世界」

整数全体の集合のように足し算と掛け算の定義された集合を環といいます。引き算は足し算の逆元とみなします。割り算は必ずしも出来なくてもかまいません。実数を成分とする2次正方行列全体の集合を考えると、和や積を定めることができ環になります。整数は積に関する交換法則が成り立ちますが、行列は成り立ちません。このように、環によって積の仕組みが異なることもあります。環の仕組みを考える際、「有限であること」を組み込んでおくと、便利なことがあります。そのような有限性の条件を満たす環の代表として、アルチン環やネーター環という環があります。今回は2次の正方行列を題材として、それらの代数的な仕組みやアルチン性を調べてみようと思います。


②15:10-16:10 大沢 健夫 (名古屋大学多元数理・教授)「科学の原動力」

「数学セミナー」に連載中の「ポアンカレとの散策」の最終回、「科学の原動力」の原稿に沿って、ポアンカレの数学観、科学観、そして倫理観についてお話しします。数学の話題としては、曲面上の閉測地線の本数についてのポアンカレ予想とその解決について調べてみます。これは惑星の軌道の安定性に関わる問題です。



①14:00-15:00 江尻 典雄 (名城大学理工学部・教授)「サイクロイド曲線について」

微分積分学が作られた瞬間に次の問題がヨハン・ベルヌーイによって提出された「問題(最速降下線) A地点からB地点へもっとも最短時間で降りられるすべり台がスリルがありそう、その形を求めてみよう」(こんなことを言ったかどうかはわかりません)。即座にニュートン、ライプ ニッツ、ヤコブ・ベルヌーイ、ロピタルによってそのすべり台の形はCycloidであることが示されている。リーマン幾何では  「Cycloidは曲がった世界の"直線"である」 となります。


②15:15-16:15 大沢 健夫(名古屋大学多元数理・教授)「書かれなかった不等式」

今年は19世紀後半から20世紀初頭にかけて大活躍した数学者ポアンカレの没後100年ということで、ポアンカレの数学についての著作がいくつか出ました。ポアンカレは、位相幾何学の基礎を築いたことで有名ですが、数理物理だけでも超一流の業績を上げています。今回はポアンカレが一般向けに書いた「科学の価値」をひもときながら、解析学や数理物理で基本的な「ポアンカレの不等式」をめぐる四方山話をしたいと思います。



①14:00-15:00 伊師 英之(名古屋大学多元数理・准教授)「幾何学における最大値問題・数学コンクールの問題から」

今年のジュニア数学コンクールの第3問は、与えられた凸多角形に含まれる三角形のなかで面積が最大のものについての問題でした。一般に、与えられた条件の中である量を最大または最小にするという問題は実用上非常に重要で、数学的にも内容の深い理論につながっています。この講演では、コンクールの問題をはじめとする幾つかの最大値問題をとりあげ、その本質を探ります。


②15:10-16:10 大沢 健夫(名古屋大学多元数理・教授)「マッチング」

今年のノーベル経済学賞に輝いたシャプレイは数学者でもあり、学位論文で導入したシャプレイ値は「安定配分」の決定に有用で、ゲーム理論で重要です。今回は経済学者のロスとともに、理論と実践両面の業績が評価されました。実践面で評価されたのはマーケットデザインにおけるマッチング問題の実効的な解決法ですが、その先駆けとなる論文は、シャプレイが1962年に経済学者のゲイルと共同執筆してアメリカの数学専門誌に載せたものです。二つの定理とその証明からなるこの論文を何とか読んでみたいと思います。



①14:00ー14:10 本年度の日本数学コンクール論文賞の問題と選考について大沢 健夫(名古屋大学多元数理科学研究科・教授)

②14:15-14:45 数学コンクール論文賞受賞者による研究発表 山本 悠時(東海高校・1年生)「球面上の最遠点についての解法」

③15:00-16:00「距離の定義づけについて」 大沢 健夫(名古屋大学多元数理科学研究科・教授)

距離といえば普通は二つの点がどれだけ互いに離れているかを表す数で、平面上では線分の長さ、球面上では円弧の長さになります。大きさのある二つの物体の間の距離だと、一番近い2点をとって測ります。しかし、このやり方を単純に拡げただけでは不便な場合もあります。そのような例をあげながら、いろいろな距離の測り方について考えてみます。



①14:00-15:00「ルーペ魔方陣について」 東川 和夫(富山大学理学部・教授)

数 0,1,2,..., 47,48 を7×7の正方形のますに並べて縦横斜めの和がどこでも同じになるものを7×7の魔方陣といいます。その和は、(0+1+・・・+48)÷7=168 になります。ルーペとは虫めがねのことです。方陣のルーペ性とは、方陣のどこに2×2の小正方形のますにある4個の数を取っても(そこに虫めがねを当てても)それらの数の和 A は、その正方形から右に1つ下に2つ離れたと ころ に ある横3個の数の和を B とすれば、A=168-B と計算できるという性質です。ここで、小正方形とか、横3個の形が7×7の正方形からはみ出たときは、境界で切り取って反対側にくっつけて考えます。この講演では、ルーペ方陣を作る簡単な方法を話します。また、ルーペ方陣が次のおもしろい性質をもっていることについても話します。6種類の平行四辺形があり、それを方陣のどこにおいても、それぞれの対頂点にある数の和同士が等しくなる。


②15:10-16:10「関数をつなげる話」 大沢 健夫(名古屋大学多元数理科学研究科・教授)

前回は、関数の世界にもワイアシュトラスの乗積定理という素因数分解があることを述べました。これは関数を基本的な要素に分解する話でした。今度はそれとは逆に、要素をつないで関数を作る話です。これもワイアシュトラスの理論の一部なので背景の説明が長くなりますが、結論は簡単です。この問題は多変数関数論の発展のきっかけとなりました。それについても述べたいと思います。



①14:00-16:00「量子暗号とその模擬実験」 林 正人(名古屋大学多元数理科学研究科・教授)

わたしたちの身の回りのものは、原子や電子、さらには、光の粒子である光子などの、波動性を持つ粒子が結合して成り立っています。例えば、光子のもつ波動の向きは、サングラスや携帯電話の画面に使われる偏光板によって、調べることができます。このように波動性と粒子性の双方の性質を合わせ持つ性質は、量子性と呼ばれ、これまでの情報処理では、その不思議な性質から情報処理を乱すものとして避けられていました。しかし、この性質を積極的に用いることで、これまで情報処理では、実現できなかった情報処理が可能となることが分かってきました。今回の数理ウェーブではこのような情報処理の1つとして近年、注目を浴びている量子暗号について紹介します。量子暗号では、情報の流出そのものを防ぐことが可能であるため、どのような強力なコンピュータが現れても盗聴されることはありません。今回は、量子暗号の原理について説明し、偏光板を使った道具で、模擬的に量子暗号の実験を再現します。この模擬実験を通じて、量子暗号の原理について体験します。  (5月に著書「量子情報理論入門」を出版予定)



①14:00-15:00「 分数の循環小数展開について」 北岡 良之(名城大学理工学部・教授)

分数が循環小数展開されることはかなり知られたことであるが、その性質について踏み込んで書いた教科書は一冊しか知らない。例えば、1/7=0.142857...で142857が循環するが142857を分割して加えると 142+857=999 14+28+57=99 1+4+2+8+5+7=9x3 となることなど殆ど注意されていない。循環小数展開についていくつかの性質を述べた後、時間があれば分数の循環小数展開といった簡単なことでも、見方によっては現在得られている最高の結果をはるかに超えた予想にまで到達することを紹介する。


②15:10-16:10「数の分解と関数の分解」 大沢 健夫(名古屋大学多元数理科学研究科・教授)

すべての自然数が素数の積に分解できる(素因数分解)ということは数についての深遠な理論の出発点です。分数の部分分数分解はこれと対を成しています。多項式の因数分解の公式や指数関数や三角関数についてのいくつかの公式も、素因数分解や部分分数分解と似たものと思え、19世紀にはその視点から関数の理論の基礎が作られました。岡潔の多変数関数論はそれをさらに発展させたものです。このようなことを例を中心にお話しします。

2011年度

①14:00-15:00「円と仲間たち」 講師:足立真訓(名大多元数理・院生)

円はもっとも基本的な図形のひとつで、紀元前から現代まで研究され続けています。通常は円を「ある点から等しい距離にある平面上の点の集まり」と定義します。しかし、円の性質をよく考えていくと、別の特徴づけもできることに気付かされます。そのような探求を通して見つかる円の仲間たちをご紹介します。


②15:10~16:10「循環小数」 講師:大沢健夫(名古屋大学多元数理・教授)

「数と図形」(ラーデマッヘル・テプリッツ)の第19章にそって、循環小数の周期の長さや周期がどこから始まるかについて学び、それを発展させた問題(2002年度の数学コンクール)について考えてみます。



①14:00-15:00 [正多面体の体積を計算してみよう」 講師:橋本英哉(名城大理工学部:教授)

3次元空間の正多面体は5種類しか存在しないことが知られています。この中で正6面体は簡単に計算できますがその他の正多面体の体積を求めた事はあるでしょうか。今回は特に正12面体の体積を計算する方法について考えてみたいと思います。


②15:10~16:10 「因数分解」 講師:大沢健夫(名古屋大学多元数理・教授)

因数分解には、6=2×3のような「整数の素因数分解」や、のような「多項式の因数分解」の他にも、広い意味ではなどいろいろな形があります。このような「一般的な因数分解」ついて、「数と図形」の第11章「整数を素因数に分ける方法はただ一通りか」にそってお話します。



①14:00-15:00 「結び目は4色では塗れない?!」 講師:長郷文和(名城大学理工学部・准教授)

4色と聞いて「4色問題」を連想する方もいらっしゃると思いますが,今回の内容は,全く別物です.と言っても,色を塗るという点では同じです.この講演では,結び目(の絵)の中に現れる孤(arc)ごとに色を塗ることを考えます.特に,4色で色を塗りましょう.ただし,どの様に塗ってもよいというのでは,数学の出番がなくなってしまいますので,もちろん,ある法則に従って塗っていきます.その時,結び目は4色で塗れるのでしょうか,塗れないのでしょうか?この視点から,ある結び目を具体的に塗っていくことで,色塗りのメカニズムを探りす


②15:10-16:10 「よい近似とは?」 講師:大沢健夫(名古屋大学多元数理・教授)

分数を小数で近似しようとすると循環小数というものに出会います。逆に、小数を分数で近似しようとするとどうなるでしょう。「数と図形」の第15章や拙著「寄り道の多い数学」の第3章にそって、無理数を有理数で近似する話を紹介します。関数を有理関数で近似する話もできればよいですが、多分時間が足りないでしょう。



①14:00-14:30「数学コンクール論文賞受賞者による研究発表」 中西有馬(東海高校・2年)3種理の面

②14:45-15:45「星型正多面体の話」 講師:伊師英之(名古屋大学多元数理・准教授)

「いわゆる星型(五芒星)は、たまたま辺が交わっているものの、5つの頂角と5本の辺がそれぞれ等しいので正多角形とみなせる。>これはしばしば正5/2角形とよばれ、他にも正p/q角形が同様に定義される。それでは正多角形の立体版である正多面体に対しても、類似のものが考えられないだろうか。その解答として、全ての星型正多面体を紹介する。



①14:00-15:00「ガウスの円分論について」 講師:横山治夫(熱田高校教諭)

ガウスは、xp-1=0(pは素数)の代数的解法を、彼の著書「数論研究」の最終章"円分論"で論じた。その中には、今日のガロア理論の原型がみてとれる。一番簡単な「相反方程式」から始めて、簡単な例でガウスのアイデアを説明する。そして、ガウスが数学を専攻するきっかけとなった正17角形の作図に必要なx17-1=0の代数的解法にふれる。


②15:15-16:00「ブロウアップとブロウダウン」 講師:大沢健夫(名古屋大学多元数理・教授)

400年ほど前、円や直線を方程式で表すことにより、幾何学の問題を代数学の問題に置き換えて解けるようになりました(デカルトの座標幾何)。方程式で表せる図形は円や直線の他にもいろいろあり、それらの交点の数を正しく数える方法についてはやっと20世紀に入ってから一般的な理論ができました。その理論は広中の特異点解消定理によってさらに明快になりました。広中理論では、方程式がなるべく簡単な形になるように座標を取り替える操作が重要です。そのうちで代表的なブロウアップとブロウダウンの一端にふれます。



①14:00-15:00すごい約分   講師:鈴木紀明(名城大学理工学部・教授)

大学の講義時間は90分と長いので,私はリフレッシュの意味で,途中で「数学のジョーク」を言うことにしています.この中のひとつを発展させて今年度の数学コンクールの問題にしました。高校生や中学生のみなさんの解答のおかげで,このジョークがひとつの理論になりました。


②15:10-16:10「折りたたみ」からみえてくるスウガク 講師:木地茂典(和歌山県立伊都高校・教諭)

ひとつのねじり実験から思わぬ展開図を示すことができる。そして何段重ねていってもたためることも見えてくる。こんな活動のなかからおもしろいスウガクが見えてきます。



①14:00-15:00ブラック-ショールズの公式とオプション価格付けの原理  花園 誠 (名古屋大学経済学部・准教授)

オプションなどのデリバティブ(金融派生商品)の価格は、有名なブラック-ショールズの公式に見られるように一見複雑な形をしています。しかし、その価格付けの原理は「裁定なし条件」という、経済学での「一物一価の法則」というアタリマエの事実に基づいたもので、その本質は単純です。この講演ではデリバティブの意義や簡易版のオプション価格付けとその原理についてお話し、証券およびデリバティブの価格決定について考察します。


②15:10-16:10淘汰ゲームの方程式について  大沢 健夫 (名古屋大学多元数理・教授)

経済学における市場の均衡と生物学における適者選択は、数学的にはゲーム理論として同じ形式で説明可能のようです。囚人のジレンマから出発し、ゲーム理論の可能性に的を絞りながら、J.ナッシュの均衡やG.プライスの共分散について述べてみたいと思います。



①14:00-15:00「無限大の無限性」 大沢 健夫 (名古屋大学多元数理科学研究科・教授)

日常的には、非常に大きな数のことをいうのに「天文学的数字」という言葉を使ったりしますが、「無限大」はそれらとは違った非日常的な数学的存在です。無限大足す無限大は無限大ですが、2の無限大乗はさらに「大きい」無限大であるという話をします。簡単なロジックですが、深いものを含んでいます。


②15:10-16:10「確率 0の現象」伊師 英之 (名古屋大学多元数理科学研究科・准教授)

絶対に起こり得ないことが起こる確率はゼロである。しかし、理論的には、確率ゼロだからといって絶対に起こり得ないとは限らない。確率を面積ととらえることによって、この微妙な事柄を説明したい。

2010年度

①14:00-15:00 「方程式を解いた人々」 講師:大沢健夫(名古屋大学多元数理・教授)

方程式を解くために考え出された様々な工夫を、数学者たちの仕事をたどりながら古い順に紹介します。2次方程式の解を近似的に求める方法についても考えてみます。3次方程式の解の公式など特に重要なものについての詳しい内容と、5次方程式の研究から生まれたガロア理論の説明は次の竹内先生のお話に譲ります。


②15:10~16:10 「ガロア理論とその応用ー生誕200年を記念して」 講師:竹内 茂(岐阜大学・名誉教授)

今年はエヴァリスト・ガロア生誕200年に当たる記念すべき年です。

ガロア理論に関係した話題を以下のようにお話する予定です。


2次から4次までの低次代数方程式の解法を、皆さんと一緒に考える。

5次以上の方程式が解けない理由を、ガロア理論に基づいて説明する。

最後に2.の応用として、三角形の面積を求めるヘロンの公式、円に内接する四角形の面積を求めるブラーマ・グプタの公式を、五角形以上の多角形には一般化できない、という松本幸夫氏らの研究結果を紹介します。



①14:00-15:00 石けん膜が作る最短路(日本数学コンクールの問題から) 講師 鈴木 紀明 (名城大学理工学部・教授)

昨夏の日本数学コンクールで出題された問題のひとつ「大きく切り開く」について、高校生や中学生がどのように考えたかについて解説します。この問題は、シュタイナーの最短路問題と関係しており、その最短路を極小曲面である石けん膜が教えてくれることを実験したいと思います。


②15:10~16:10 最大・最小問題の考え方 講師 大沢 健夫 (名古屋大学多元数理・教授)

一定の条件の下で得られるベストの結果を知るため、数学的な考え方が役に立つことがあります。最大・最小問題はその一例といえます。これについて、幾何的な解法の例や論理的な側面についてお話しします。



①14:00-14:30 数学コンクール論文賞受賞者による研究発表 数字の出現頻度:東海高校数学研究会

②14:45-15:45 3次方程式の種々の解法について 師 大沢 健夫(名古屋大学多元数理:教授)



①14:00-15:00 アフリカの数学--ソナの砂絵-- 講師 庄司 俊明(名古屋大学多元数理:教授)

中央アフリカに住むチョクエやルンダの人々は、部族に伝わる神々の伝承や動物達との交流を、砂地に絵を描きながら語り継いで来た。これをソナまたはルナという。ソナは一種の一筆書きであるが、数学的に興味深い図形である。講演では、ソナにひそむ数学の魅力を伝えたいと思う。


②15:15~16:15 多面体を解こう 講師 大沢 健夫(名古屋大学多元数理:教授)

数学コンクールで出現された問題のうち多面体に関連するものをいくつか選んで解説し、関連した数学の話題を紹介します。



①14:00-15:00 複素数で解く図形と方程式 講師 大沢 健夫(名古屋大学多元数理:教授)

複素数の概念は方程式の解の公式の発見に伴って整備されたものですが、ガウスによって幾何への応用が見いださ れて以来、様々な数理構造の研究に役立って来ました。その中から有名なものをいくつか選んで紹介します。


②15:10~16:10 【複素数の一般化とトポロジー】講師 小林 亮一 (名古屋大学多元数理:教授)

代数学の基本定理は、その名前からは想像しがたいが、その証明は本質的にトポロジーである。それの高度な一般化として、1958年に解決した可除代数の決定問題がある。 実ベクトル空間に入る「複素数的な体系」を分類しよう、という問題である。その解決は、非常に深いトポロジーによっている。このあたりから、話題を選んでお話したい。



①14:00~15:00 【経路積分から見るミクロの世界】講師 福田 恭平(名古屋大学理学研究科:院生)

原子くらい小さな世界になると日常経験する常識が通じなくなってしまいます。そのような世界を記述するための物理の分野として量子力学があります。そこで、今回の話の内容は量子力学の入門としてファインマンによって導入された経路積分の概念を物理の立場で紹介します。簡単な計算を通してこの不思議な世界を感じてもらいたいと思います。


②15:20~16:20【動かない点と動く座標】講師 大沢 健夫(名古屋大学多元数理:教授)

電車の窓の外の風景の移り変わりを観察することにより、電車がどう動いているかを知ることができます。この考えを発展させて幾何学を例題を解きながらご紹介します。



①14:00~15:00 3次元球面を視る(2つのボールを張り合わせよう) 講師 長郷 文和(名城大学理工学部・助教)

概要:例えば(中身の詰まっていない)ゴムボールを"赤道部分"で2つの"お椀"に切り分けてください。"お椀"を強引に平らにすると円盤になります。この現象は,位相幾何学(柔らかい幾何学)における2次元球面(原点からの距離が1である3次元空間内の点の集合)という曲面の1つの捉え方を表しています。

さて,この発想は,ちょっと変わった空想の世界に導いてくれます。例えば,"2次元人"(平面内にしか住めない知的生命体)がいたとします。彼らは,縦・横・高さの広がりを持つ2次元球面の全体像を直接見ることはできません。

そこで2次元人に『2つの円盤をその淵で貼り合わせれば2次元球面ができる!』と"3次元人のお告げ"として声をかけてあげましょう。しかし,この貼り合わせは平面内ではどう見ても無理ですから,全く信用しない2次元人も多いでしょう。

そこで,この講演では,2次元人に,この『貼り合わせ』を理解してもらえる(?)様な1つのアイデアを考えたいと思います(皆さんも考えてきてください)。

すると,4次元空間において,2つの中身が詰まったボールを,その淵の2次元球面で"きれいに"貼り合わせることも可能になりますし,完成した物体が3次元球面(原点からの距離が1である4次元空間内の点の集合)になることが視える様になります。

この貼り合わせは,3次元空間では,どう見ても無理ですから信じ難いことですが,"4次元人のお告げ"が聞こえる様,まずは2次元人の気持ちになって議論してみましょう。


②15:10~16:10 いろいろな加法定理 講師 大沢 健夫 (名古屋大学多元数理:教授)

概要:三角関数の基本的な性質としてよく知られている加法定理をとりあげます。その歴史や平面幾何の問題への応用の話からはじめて、18世紀に発見された新しい視点からの加法定理の言い換えと、それを発端として展開した楕円関数の理論の一端を紹介します。



①14:00~15:00 対数関数の多様な姿 講師 山盛 厚伺(名古屋大学多元数理:院生)

概要:対数関数は高校で習う関数ですが、この関数は現代の数学のいろいろな場面で現れます。この講演ではその中からいくつかの話題を選び紹介したいと思います。


②15:10~16:10 数の概念について 講師 大沢 健夫(名古屋大学多元数理:教授)

概要:自然数が表すものは、通常は「個数」と「順序」の二種類とされていますが、「分割」もそうだという説があります。数学者で仏教にも造詣の深い藤本坦孝氏の論説など、いくつかの「自然数論」を調べてお話します。

2009年度

①14:00~15:00 曲がった空間と平らな空間 講師 足立 真訓(名古屋大学多元数理・院生)

概要:地図の作製方法には等角図法など様々に工夫ができますが、一方で完全な地図を作ることはできないという理論的限界もあります。このことは中学校で習った数学を元に証明することができます。この講演ではその証明を深く考える所から始めて、現代の幾何学へ楽しく入門してみたいと思います。


②15:10~16:10 多弁なカタラン数  講師 大沢 健夫 (名古屋大学多元数理:教授)

概要:順列・組み合わせの話です。E.C.カタラン(1814-94)が導入した数は、多角形に交わらずに対角線を引く仕方の総数を始め、いろんな組み合わせの数を表すのに使えます。確率論ではランダム・ウォークの理論で出て来ますが、等角図法の話にも面白いところで顔を出します。その中からいくつか調べてお話しします。



①14:00~15:00 関数の補間について 講師 山路 哲史(名古屋大学多元数理・院生)

概要:2点を結ぶ直線が一本引けることは学校で教わらなくても分かりますが、それを発展させた数学はIT技術の基礎になっています。それに触れてみたいと思います。


②15:10~16:10 形と方程式  講師 大沢 健夫 (名古屋大学多元数理:教授)

概要:球面上の図形を平面上に写し取る数学は地図の作製の基礎ですが、その数学が発展して確率論などにも応用されるようになっています。その一端に触れてみます。



①14:00~15:00 16個の多角形とそれらに潜む不思議な数 講師 瀧 真語(名古屋大学多元数理:特任助教)

概要:格子点を頂点に持つ凸多角形で、内部にちょうど1点だけ格子点を含むものは16個あることが知られている。このような多角形の間には「12」という数で不思議なつながりがある。この講演ではトーリック多様体やミラー対称性などにも触れながら、 16個の多角形と「12」という数字について解説する。


②15:10~16:10 格子模様の幾何  講師 大沢 健夫 (名古屋大学多元数理:教授)

概要:格子は普段目にすることの多い図形だが、数学でも整数論や幾何学の重要な概念である。ここでは幾何学的な話題に的を絞り、対称性の高い格子の分類について基礎的な話を紹介する。正多面体の分類と同種の問題と思っても良い。最近の数学の先端的話題である「24の不思議」にもつながる話である。



①14:00~15:00 平方剰余の相互法則 講師 横山 治夫(熱田高校:教諭)

②15:10~16:10 引き出し論法と数論  講師 大沢 健夫 (名古屋大学多元数理:教授)



①14:00~14:30 数学コンクール論文賞金賞受賞者による研究発表 「親友交歓」 講師 武田 久輝(南山高校3年生)

②14:45~15:15 数学コンクール論文賞金賞受賞者による研究発表 「親友交歓」 講師 東海高校数学研究会

③15:30~16:00 確率と曲率  講師 大沢 健夫 (名古屋大学多元数理:教授)



①14:00--15:00 階乗とガンマ関数 講師 伊師 英之 (名古屋大学多元数理:准教授)

要旨: 自然数ではない数の階乗は、どのように定義できるか?この問への自然な解答がガンマ関数であり、たとえば -1/2 の階乗は √π(πの平方根)と考えるのが妥当である。この講演ではガンマ関数についての基本的な事柄を概説する。


②15:20--16:20 岡の上空移行  講師 大沢 健夫 (名古屋大学多元数理:教授)

要旨: 岡潔は多変数関数論を開拓した孤高の数学者であり、世界の指導的数学者たちの「奈良詣で」が話題になるなど、注目を集めた。岡の畢生のアイディアともいうべき「上空移行原理」について、その糸口と最近の展開について述べる。



①14:00~15:00 素数定理と関数論  講師 鈴木 紀明   (名城大学理工学部 教授)

②15:20~16:20 虚数次元について 講師 大沢 健夫 (名古屋大学多元数理 教授)



①14:00~15:00 有限ゲームの必勝法 講師 安本 雅洋(名古屋大学情報文化学部 教授)

要旨:有限ゲームに必勝法が存在することは簡単に示せますが、それを具体的に見つけるのは困難です。その困難さを厳密に表す「NP-hard」とうい概念について具体例をまじえて解説します。


②15:15~16:15 ガウスからの手紙 講師 大沢 健夫 (名古屋大学多元数理 教授)

要旨:19世紀の大数学者ガウスが友人あてに書いた手紙に沿って三角形の内角の和が180度よりも小さくなる幾何の世界を紹介します。

2008年度

①14:00~15:00 正多面体と球面分割について 講師 横山治夫(熱田高校)

要旨:民芸品の鞠の模様などにみられる球面の綺麗な分割について、オイラーの多面体定理や正多面体についての基本事項をふまえながら系統的な分類結果を紹介する。


②15:15~16:15 旅の窓から 講師 大沢 健夫 (名古屋大学多元数理 教授)

要旨:車窓風景にまつわる数理を数学コンクールの問題を例に挙げながら解説する。たとえば、外の風景の移り変わりから列車の動きがどこまで正確に分かるかなど。



①14:00~15:00 円の鎖 講師 小島 彰二(東海中学校)

要旨:今年出題した数学コンクールの問題の詳細な解説


②15:10~16:10 沈黙と雄弁の間 講師 大沢 健夫 (名古屋大学多元数理、教授)

要旨:情報というものに対する数学的認識の基礎を与えたシャノンの第1定理と第2定理の紹介



①14:00~15:00 もろ手型結び目を探せ! 講師 岡崎 建太 (京都大学数理解析研究所、院生)

要旨:鏡に映った像と自分自身がぴったり重ね合わせられるものをもろ手型といいます。例えば靴下はもろ手型ですが、手袋はそうではありません。結び目のなかでそうしたものがどのくらいあるのかを、実際にひもをいじりながら説明していきたいと思います。


②15:10~16:10 数理の目がとらえた図形たち(その3)-春秋はめぐるとも 講師 大沢 健夫 (名古屋大学多元数理 教授)

要旨:前回は曲面の話が中心であり、最後は流れの指数にふれたが、今回はそのような流れに沿って動く点の経路に関する図形的な考察を紹介した い。具体的には無理数についてのクロネッカーの定理と、そこからの展開である。



①14:00~14:30 今年度の日本数学コンクール論文賞金賞受賞者(題未定)

②14:40~15:10 今年度の日本数学コンクール論文賞金賞受賞者(題未定)

③15:20~16:00   数理の目とらえたが図形たち(その1)--膜の内と外 講師 大沢 健夫(名古屋大学大学院多元数理科学研究科 教授)



①14:00~15:00 発散級数の総和法について 講師 三宅 正武(名古屋大学大学院多元数理科学研究科 教授)

②15:10~16:10 正規直交基底について 講師 足立 真訓(名古屋大学大学院多元数理科学研究科 院生)



①14:00~15:00 FBI捜査官を救え!? 講師 小島 彰二(東海中学・高等学校)

②15:10~16:10 方程式が解けなかった頃 講師 大沢 健夫(名古屋大学大学院多元数理科学研究科 教授)



①14:00~15:00 江戸の数学クイズ 講師 深川 英俊(元春日井高校教諭)

②15:10~16:10 曲面の「へそ」について 講師 大沢 健夫(名古屋大学大学院多元数理科学研究科 教授)

2007年度

①14:00~15:00 回す四元数 講師 伊師 英之(多元数理科学研究科 准教授)

②15:10~16:10 洪水と数学 講師 大沢 健夫(名古屋大学大学院多元数理科学研究科 教授)



①14:00~15:00 あなたの美しい数学は何ですか 講師 鈴木紀明(多元数理科学研究科 准教授)

②15:10~16:10 ゲームの数理 講師 大沢 健夫(名古屋大学大学院多元数理科学研究科 教授)



①14:00--15:00 中心極限定理について 講師 布施 洋  (名古屋大学多元数理、院生)

要旨:大学の数学の内容に触れて頂くという意味で、確率論で基本的な中心極限定理を紹介します。


②15:10--16:10 数理の目がとらえた図形たち(その2)-天空からの問いかけ 講師 大沢 健夫 (名古屋大学多元数理 教授)

要旨:宇宙からは種々の対称性を持った物質や情報が もたらされる。数学コンクールの問題のうち、そんな対称性にかかわるものを選んで紹介したい



①14:00~15:00 奇妙な合同の話とパラドックス 講師 外倉 悠介(名古屋大学大学院多元数理科学研究科 院生)

②15:10~16:10 伝言ゲームの数理--シャノンの大定理 講師 大沢 健夫(名古屋大学大学院多元数理科学研究科 教授)



①14:00~14:30 平成19年度日本数学コンクール論文賞金賞受賞者

②15:00~16:00 Hilbertの既約定理 講師 安本 雅洋(名古屋大学情報科学科 教授)



①14:00~15:00 数学で最も重要な関数について 講師 山路 哲史(名古屋大学大学院多元数理科学研究科 院生)

②15:10~16:10 iは地球を救うか?(その7)--フーリエの展開  講師 大沢 健夫(名古屋大学大学院多元数理科学研究科 教授)



①14:00~15:00 コンピュータで見る複素関数 講師 伊師 英之(名古屋大学大学院多元数理科学研究科 准教授)

②15:10~16:10 iは地球を救うか?(その6)--角の幾何学 講師 大沢 健夫(名古屋大学大学院多元数理科学研究科 教授)



①14:00~15:00 複素数から四元数へ 講師 鈴木紀明(多元数理科学研究科 准教授)

②15:10~16:10 iは地球を救うか?(その5)--円周の等分 講師 大沢 健夫(名古屋大学大学院多元数理科学研究科 教授)

2006年度

①14:00~14:30 シャボン膜のつくる曲面 講師 平成18年度数学コンクール論文賞金賞受賞者

②15:00~16:00 極小曲面に関する藤本理論 講師 大沢 健夫(名古屋大学大学院多元数理学科研究科 教授)



①14:00~15:00

②15:10~16:10 iは地球を救うか?(その3)--交点の探求 講師 大沢 健夫(名古屋大学大学院多元数理科学研究科 教授)



①14:00~15:00 1対1対応の自然な証明 講師 太田稔 (愛知教育大名誉教授)

②15:10~16:10 iは地球を救うか?(その2)--ベズーの原理 講師 大沢 健夫(名古屋大学大学院多元数理科学研究科 教授)



①14:00~15:00 世界地図の数理 講師 横山治夫 (愛知県立熱田高等学校教諭)

②15:10~16:10 iは地球を救うか?(その3)--ベズーの原理 講師 大沢 健夫(名古屋大学大学院多元数理科学研究科 教授)



①13:10~15:00 折り紙と数理の科学 講師 川崎 英文 (九州大学大学院数理学研究院数理科学部門・教授)

②15:10~16:10 iは地球を救うか?(その4)--ガウスの整数 講師 大沢 健夫(名古屋大学大学院多元数理科学研究科 教授)

2005年度

①14:00~15:00 ジャグリングの中の数学---投げ方のサイドスワップ表記--- 講師 片岡俊基 (三重県 私立高田高等学校1年)

②15:10~15:50 ひもの玉手箱-平成17年度数学コンクール論文賞金賞受賞論文より)- 講師 正谷優典(名古屋市立名東高等学校3年)



①14:00~15:00 車窓風景の移り変わりと地図つくり --- 角(かく)の役割 講師 柴 雅和 (広島大学教授)

②15:10~16:10 ジョルダンの曲線定理の古典的証明について 講師 大沢健夫 (名古屋大学教授)



①14:00~15:00 等角写像とプライムエンド 講師 今田光彦(東京工業大学大学院生)

②15:10~16:10 フーコーの振り子 講師 大沢健夫 (名古屋大学教授)



①14:00~15:00 タイル張りに見る対称性(続き) 講師 横山治夫 (愛知県立熱田高等学校教諭)

②15:10~16:10 タイル張りに見る対称性 講師 横山治夫 (愛知県立熱田高等学校教諭)



①14:00~15:00 数学的な考え方について---和算「油分け算」をとおして---講師 山田雅博 (岐阜大学)

②15:10~16:10 ジョルダンの曲線定理の古典的証明について 講師 大沢健夫 (名古屋大学教授)

2004年度

14:00~15:00 ①対称行列と錐体 講師 愛知県立熱田高校(数学)教諭 横山治夫

15:10~16:10 ②いろいろな総和法について 講師 大沢 健夫(名古屋大学大学院多元数理科学研究科 教授)



14:00~15:00 ①複雑な曲線の大きさ 講師 鈴木 紀明(名古屋大学大学院多元数理科学研究科 助教授)

15:10~16:10 ②無限大自然数について 講師 安本 雅洋(名古屋大学大学院情報科学研究科 教授)



14:00~15:00 ①複雑な曲線の大きさ 講師 鈴木 紀明(名古屋大学大学院多元数理科学研究科 助教授)

15:10~16:10 ②無限大自然数について 講師 安本 雅洋(名古屋大学大学院情報科学研究科 教授)



14:00~15:00 ①交わる平行線-非ユークリッド幾何の世界- 講師 佐藤 肇(名古屋大学大学院多元数理科学研究科 教授)

15:10~16:10 ②ゲーテルへの道 講師 大沢 健夫(名古屋大学大学院多元数理科学研究科 教授)