これまでの日本数学コンクール

日本数学コンクールのあゆみ

日本数学コンクールは愛知、岐阜、三重の3県の大学、高校、中学の先生のボランティア組織を母体として1990年11月に第1回が開かれました。

第1回は499人の高校生、64人の中学生、そして3人の小学生の計566人が集まりました。

その後、夏休みに開催日を移し、名古屋大学の先生方の強力な支援のもとに回を重ねました。

1997年からは高校生を対象とする数学コンクールと、中学生を対象とするジュニア数学コンクールに分けて開催、第1回ジュニアコンクールには854人の中学生、小学生が参加しました。

さらに2000年から論文賞を新設しました。

同時に大阪会場も開設しました。

日本数学コンクール委員会設立趣意書 (1990年9月)

日本数学コンクール委員会 (Japan Mathematical Concours Commission) 設立趣意書


最近の日本の産業・経済発展は目覚ましく、世界の注目するところであり、新世紀に向けて更に一層の発展と世界への貢献を考えるとき、理数科学を含む諸科学や高度技術の進歩に必要な数学や数学的思考力の育成が必要であろう。

一方我が国の現状を見るに、進路の分かれ道である高校は、優れた数学教育のカリキュラムを目指しながら、大学入試などに圧迫されて、そのことが必ずしもうまく機能しているとはいい難い。平生からゆっくり考えさせるなど、大学入試などの改善も考えられるが、一律にそうするには種々の困難があろう。そこで、数学教育にも多様化や個性化が必要になってくる。

今年京都で開催されたInternational Congress of Mathematiciansで日本の数学者森重文教授がフィールズ賞を受賞したこと、International Mathematical Olympiadに日本が初参加したことは意義深い。優秀な生徒を見つけるばかりでなく励まし、数学の問題解決力をさらに伸ばすことは、コンクールに参加した多数の生徒などの数学教育に役立つものと我々は考える。

世界には。国内選抜を始め地域別選抜や、それらと直接関係のない数学コンテストなど種々の数学コンクールが競い合っている国も少ない。しかし日本には。上記国際コンクールの国内選抜が今年開催された以外に、高校生を含む全国展開の数学コンクールは無かった。

そこで我々は下記のような特徴を持った時間的にも解法的にも自由なコンクールを目指して、下記委員を含め40余名の大学・高校教員で日本数学コンクール委員会を発足させることになった。

平成2年(1990年)から新たに“日本数学コンクール”を開催する意義と特色をあげる

日本の高等数学教育の内容に沿うものであるが、解法的には自由なコンクールで多方面の才能を調べる。これによって、21世紀の新しい科学・技術の基盤を担っていく夢とロマンを秘めた若い人材を発掘していきたいと考えている。

数学的才能には、通常の試験で試される決められた範囲の技巧で決められた時間内に与えられた問題を解くというものの外に、もっと本質的なものがあるように思われる。それはこれらの技巧自身を自ら作り出し、それによってその問題を含む一つの分野を開拓していく力であろう。これを試すために、時間にあまり制限を設けずに、多面的に本当に考える問題を与える。

優秀な数学的才能を持った生徒や隠れた才能の持ち主に励みを与えるために、各種の賞を設ける。

数学的本質に根ざした楽しい問題や、特別訓練しない中学生にも意味が分かる問題なども含めるため、高校数学のカリキュラムには必ずしもとらわれない。一般の批判を受け、それに耐える数学コンクールにするため、問題は広く公表する。一般の人にも頭の体操として楽しんでいただきたいと考えている。

参考書、ノートなど持ち込み自由のコンクールであり、弁当・コーヒーもかなり白由に飲食できる。

平成2年(1990年)9月8日日本数学コンクール委員会(以下委員名略)

日本ジュニア数学コンクール設立趣意書 (1997年6月)

日本数学コンクールジュニア版 趣意書


今の学校教育の数学は、受験を意識しすぎるあまり、「型にはまりすぎてしまった」きらいがあります。

数学が本来もっていなければならない「考える力」や「創造性」はどこかに置き去りにしているようにも見えるのです。そのためか、「数学は(受験以外では?)役に立たない」、「数学は暗記物だ」に始まって「(センターテストでは?)数学よりコンピューターの方がましだ」とさえ言われています。


このような状況に、我々は我慢ができませんでした。

本来の数学

=「考える力」や「創造性」を養う数学・未来を拓く素晴らしい数学=

に戻りたかったのです。それで、1990年、少々の悪口は覚悟の上で、高校生向けの数学コンクールを始めたのです。


宇宙技術なんかを西欧先進諸国から学んでばかりいた時代ならともかく、今の日本は「何ができるか」と世界から問われている時代であり、それに答えを出さねばならない時代です。

 すこし身の回りを見回すと、我々は実に多くの不思議に取り巻かれていることに気づきます。数学コンクールにも出題しましたが、水の中に一滴落とすと、たちまちドーナッツ型に変わって沈んでいくミルクや、風呂敷に包んで振り回すだけで、きれいにそろうコイン等、数えればきりがありません。これらの謎のそれぞれが、だれかが解き明かしてくれるのを待っているのです。


数学コンクールのねらいは、

 「不思議なものを不思議だと思う心」

 「それを何とかしてやろうと考える力」

 を日頃から大切にすることです。


これらの、未来を背負って行くべき「心」や「力」が最近では、子供から大人になるにつれて失われていくような気がしているのです。

 高校生レベルでは、数学コンクールによって、このような「心」や「力」をすこしばかり取り戻せたと考えているのですが、その一方で、コンクールの問題のレベルが、高校生を中心に高くなりすぎてしまったことにある種の抵抗も感じていました。

 そして、こんな問題に素晴らしい答えを書く中学生を見たり、また、ある先生から、「小学生に問題がちゃんと読めれば、もっと奇抜なアイデアが出るかもしれないし、本当の未来のためには、その辺から伸ばさなければいけないよ」と言われたりしました。同じ考え方に立脚して、少しは正解の多い、易しい文章で書いた小学生(高学年)、中学生向けの数学コンクール「ジュニア版」が必要であると思うようになりました。


私たちは、この数学コンクールジュニア版によって、数学が本来持っている「考える力・想像する力」の認識を、中学生・小学生(高学年)にまで広げていきたいと思います。そして、その上に、わが国の未来、ひいては、世界の未来を拓きたいと願っているものです。この趣旨にご賛同をいただき、是非ともご協力を賜りますようお願い申し上げます。