シンポジウム

2021年10月23日土曜にオンラインにて終了しました。


シンポジウム

「多様性と包摂の可能性を創出する社会科の学習評価・実践・研究」


コーディネータ   広島大学  木村 博一

筑波大学  國分 麻里

指 定 討 論 者   広島大学  棚橋 健治

桐蔭横浜大学  谷田部玲生

オペレーター   広島大学  渡邉  巧 

近年の社会科においては実践と研究の親和性が高まる傾向にある。この数年の本学会シンポジウムでも話題となってきているが,一昔前と比べると学会での議論と学習指導要領・教科書・学校現場との距離は縮まっている側面も多く,社会科を取り巻く実践や研究の環境も,表面的には落ち着いた状態にあるようにも感じられる。

しかしながら,いま学校現場や大学の置かれた全般的な環境や状況は,深刻度を増してきている。また,現実の社会を見渡すと国内外共に,これまでは見えづらかった様々な諸問題が多くの人々の生活の中で顕在化してきている。選択と集中の名の下に進められてきた世界的な構造改革のうねりは,私たちの社会において立場と立場の間に大きな壁を創り出し,その壁の内と外での排除による耐えがたい格差を生み出してきている。誰一人として取り残さない,との理念に基づく国際的な開発目標などが広く訴えかける背景には,何らかの障壁の内部の立場で安定と安心を謳歌する人々がいる一方で,その外には多くの排除された人々が内側の論理の配下で個々の人権や尊厳を侵され続ける世界や社会の現実が横たわっている。

 このような分断が進む現実社会において,学校の中での社会科はいまどこへどのような眼差しを向けるべきか。例えば,我々が良かれと思い込み突き進んでいる社会科の実践や研究のあり方が,現実社会の分断の一翼を担ってしまっている危険はないだろうか。社会科の学習評価と実践と研究において,我々が期待する方向性と学びの主権者たる児童生徒の学習の実態との間に障壁を創り出していないだろうか。一人一人の児童生徒に民主主義社会における市民としての多様性と包摂の可能性を創出する社会科の学習評価・実践・研究のあり方についての点検・検討と活発な議論を本シンポジウムでは期待する。


   (1) 小学校社会科における「社会的包摂と排除」に関する授業実践研究

    -「社会的弱者の包摂」・「知らぬ間包摂」・「多数決の排除」に着目して-

香川大学  神野 幸隆


   (2) 「多様性」と「包摂性」の基盤となる法教育の授業開発

福井大学  橋本 康弘


   (3) 社会科における学習評価の限界を踏まえた多様性と包摂の可能性

    -社会科の学習評価実践から-

鳴門教育大学  井上 奈穂