課題研究Ⅲ

2021年10月23日土曜にオンラインにて終了しました。


多様性と包摂に関する社会科の研究潮流


コーディネータ 筑波大学 唐木 清志

広島大学 川口 広美

オペレーター 広島大学 金 鍾成


 従来から,日本の民主主義社会の担い手を育成することを目的とした社会科において,多様な人々といかに共生するか,その社会をいかに構想するかは重要な命題とされてきた。そのため,実践への貢献を重視する社会科教育学においても,多文化教育・国際理解教育は従来から注目されてきたし,重要な研究分野として蓄積されてきた。

 しかし,近年,こうした多様性をめぐる議論も変化している。第1は,「内なる国際化」の状況である。外国ルーツの子どもたちが多くいる学校・教室が増えている。その中でいかに将来の社会の担い手を育成するか。第2に,「多様性」の意味の拡張である。従来,国籍や文化・民族を中心に扱われてきたが,近年では障害・宗教,セクシャリティやジェンダーも含みこむようになった。加えて,再政治化・主権者教育などの流れの中で,こうした多様性について教室内で積極的に扱うことも重視されてきている。これは,「将来的に多文化共生社会を構築する市民を育成するか」を考えてきた社会科から「現在,教室にいる多様な人々と議論しながら,いかに多文化共生社会を構築する市民を育成するか」への変容ともいえるだろう。

 こうした状況の変容に対し,社会科教育研究はいかに応えていくべきだろうか。それは,研究目的のみならず研究者のスタンスや方法論にも及ぶことにもなるだろう。本課題研究では,これまでの社会科教育研究がどのように応えてきたか,そして今後どのような研究を必要とするかを検討したい。


(1)社会・学校・教室の多様な構成員を包摂する社会科教育

 -バイリンガルのパラダイムシフトが起こす教室の変革から―

東京学芸大学 南浦 涼介

(2)アメリカ市民性教育の動向にみる多様性と包摂をめぐる課題

 -多様性や分断は教室に何をもたらし,何を生み出すのか-

大阪国際大学短期大学部 古田 雄一

(3) 「多様性と包摂」と社会科授業

 ―日本の中等段階を中心とした検討―

長崎大学 土肥大次郎