MIU404

(2020)

2021.6.30

遅ればせながら見たー。

うう、警察バディものでかつサブカルチャーエンターテイメントなドラマなんて、SPECとSHERLOCKが好きな私なんぞ簡単に食いついてしまうに決まっている……。とおもいました。十年前に見てたらどっぷりと好きになったに違いない。

『アンナチュラル』に比べて随分とエンターテイメント寄りになった作品だなあ。

楽しい、けど、面白いかというとちょっと考え込んでしまう。

そりゃあ、星野源の顔の重い過去を持った切れ者刑事と綾野剛の顔の明るくてワンコな刑事な男同士が、怒鳴りあったり肩を組んだりしてイチャイチャしてるのを見るのは楽しいよ。(SPECとSHERLOCKの二人は喧嘩も対立も重いので、みうの二人はイチャイチャしてるようにしか見えないわたし)

私は『インスタント沼』という映画がとても好きなので(見てください)、麻生久美子が好きで、頼りになる隊長を彼女がやってるのは嬉しい。嬉しいけど、「ただここにいて仕事してるだけ」っていうセリフも良かったけど、やっぱりまだ紅一点として周囲から見られているという文脈上にいる役としてしか出てこられないのかと思うと、もう、嫌になるよな。

もう私は、男同士がキャッキャしながら理不尽と立ち向かって華麗に問題を解決して大団円を迎えるお話はお腹いっぱいのはずなんだよー。でも、これまでそういう話を面白いものとして浴びるように摂取してきて慣れていて、だからこういう作品を脳は喜んで見ている。

それを思うと、『アンナチュラル』でやりたい放題の中堂さんに怒鳴り返さない、人としてまともな対応のミコトが主人公ってだけでアンナチュラルのほうが好きだし面白いと思う。(比べやすいからアンナチュラルと比べてるけど別の作品でもいいです。)

ほんとは、こういうご都合主義のお話こそ女性バディで作って欲しい。女性の隊長も紅一点的扱いを受けず当たり前に男性と同じようにただの頼れる上司として描かれていて、女性として許される役回りの枠からはみ出てて男性に引けを取らない体格や特技のある女性が特にその点についてたくさん説明されることもなく主役としてバディを組むようなのがいい。

あと、このしんどい世の中を生き延びていくための要素として、こういう、テンポが良くて頭を空っぽにして楽しく見ることができるドラマに頼ること自体がしんどくなってきたのもある。気分転換にはなるけども。ドラマの中で提示されている問題たち(技能実習生の話とか少年犯罪とか女性が頼る場所がないとか五輪とか、全部)は問題として考えるべきことだけど、でも、私たちはそれが問題だととっくに知っているはずだ。小中学生がドラマでこういう問題に触れるきっかけを持つことは大事な機会だけど、私は、ドラマでこういう問題を消費したくない。それなら、心ある記者が書いた記事を一本でも読んで問題に関わりを持とうとする方がいい。

こういうことを考えていると、みんなで楽しく見ているものに水を差しているような気分になるから、嫌だ。別に、水を差すも何も、どんな感想を持とうと私の自由だしそうやって考えを交換していくのが面白いんだと分かっているのに、付和雷同の癖が全然抜けていない自分に出会ってしまう。だから流行りのドラマを流行っている時に見るのが苦手。別に面白くないと言ってるわけではないけど。


というような感想とは別にして、楽しくドーパミンが出てる私の感想も書くね。


・伊吹めっちゃいいやつだね!聴覚嗅覚その他が鋭敏で足が早いという設定、好きです。この設定のおかげで後半の久住を追い詰めるヒントを掴む伊吹を無理なく見ていられるんだねえ。

・志摩は、終始かわいかったです。ちゃんと伊吹の下らない話にも反応して答えるし、それがちょっと漫才ぽいくだらなさだし、たまに伊吹にも優しく話すし、ゆるっとした服装も。にゃん、って言ったしな。メロンパン追加オーダーしてくれてるし。なんなんだ。かわいいな。

・意外と伊吹が暴走しないのも良かったなー。素直に志摩の「待て」と「GO」を聞くし(仲良しだねえ)、自他共に認める馬鹿という扱いだけど優秀だし。

・はむちゃんの「一緒に戦ってくれてありがとう」、良かったです。一緒に戦う人になりたいですね。

・キューちゃんも、めっちゃいいやつだったな。グレないで刑事としてすくすくと成長していくのがよかったね……服を選んであげてニコニコしてるシーン、よかったね〜〜〜。志摩にルールを守れってちゃんと言えたシーンもぐっときました。

・誰もが何度も「相棒」という言葉を使ってるのがあざとくてずるい、そうだよ、好きだよ!

・相棒だけじゃなくて「キャッキャうふふ」とか「機捜うどん」とか「メロンパン」とかキャッチーなセリフが多くて、うん、そういう言葉遊びって楽しいよな……脚本の掌で踊らされている。そもそも「みゅうよんまるよん」がキャッチーだ。

・糸巻さん率いるスパイダーな人たちが出てくるのも楽しいねえ。

・志摩が探偵的な役割も持っているのがミステリっぽくて面白い。

・分駐所がリビングっぽいのも、擬似家族っぽい風景でニコニコする。カウンターに並んで事件の話をしながらうどん食べてるシーンとか。

・主題歌がもうすでにイメソンなのも楽しいね〜〜歌詞とリンクしあって作ってあるのいいな〜〜


そんな感じ!

・・・追記・・・

この感想文はちょっと、冷笑っぽさがあったな、と反省しました。ドラマが物語として私たちに問題を投げかけるのは、無駄ではないしそういう機会がたくさんあるに越したことないよな、と思い直した。物語を手がかりにして自分の考えを手繰り寄せたり、視界が開けること、あるよな。