筋肉を細かく分けていくと、 右図のような繰り返し構造 "筋原線維" にたどり着く。これは分子モーターとアクチンからなるナノマシンの集合体で、筋収縮機構の最小単位である。我々は、この筋原線維が自発的に収縮と弛緩を繰り返す自励振動 (SPOC) をすることを発見した。ナノマシンの力学と酵素活性制御の相互作用に着目し、SPOC のメカニズムの解明を試みている。そして、動物にとって重要な筋肉、特に心臓の力発生の基本原理の理解につなげたい。
すべての生物機能は、それ固有のタンパク質機能分子が組織化された階層構造によって担われている。本研究テーマでは、階層構造の最下層に位置付けられる、10から100ナノメートル(nm)の大きさのタンパク質一分子、すなわち「分子機械」を研究対象とする。光学顕微鏡システムによるナノレベルの顕微解析・操作技術を駆使し、「見る(imaging)」のみならず「操る(manipulation)」ことにより、分子機械の動作原理を解明する。
細胞分裂は複製された染色体を2つの娘細胞へ分配する過程である。この過程で染色体は、分裂面への整列(分裂前期~中期)、紡錘体極への移動(分裂後期)に伴う力を受ける。この分裂に関わる力を発生する装置が「紡錘体」と呼ばれる超分子構造である。紡錘体は微小管とさまざまな種類の分子モーターから構成され、微小管の重合・脱重合や、分子モーターが発生する力を直接的・間接的に染色体へ伝えている。本研究テーマでは、細胞分裂動態に潜む力による動作・制御メカニズム、すなわち、紡錘体内でこれらの力がどのように制御されているか、また紡錘体が発生する力が分裂にどのように関わっているかについて、イメージングと紡錘体・細胞の直接顕微操作・力測定技術を組み合わせることで解明することを目指している。
温度は細胞の多くの反応に影響することが知られています。たとえば温度が高くなると細胞分裂の周期は短くなり、心筋細胞の拍動は早くなります。ここでの温度とは、溶液全体の温度など、細胞にとって「大きな温度」です。
一方で、私たちは細胞内部の局所的な温度、「小さな温度」に注目して研究しています。そのために、①細胞の局所的な温度を測定する方法と、②細胞に局所的な温度変化を与える手法を開発してきました。