・研究生の期間は、基本的に、修士課程出願までの半年間ないし一年間を標準とします。現在のところ本研究室では、研究生は、院ゼミへの参加や興味のある講義などを聴講しつつ、修士課程でやりたい研究テーマを模索したり、指導教員との相性を確かめたり、日本での生活に慣れたりするためのPre-Masterとして運用しています。本研究室への進学を希望する際には、必要に応じて研究計画などへの指導・助言を行いますが、自動的に修士課程に進学できるわけではもちろんなく、修士課程入試を突破する実力が必要になります(研究生を経ずに修士課程に出願していただいても、そのために入試で不利になることは全くありません)。本研究室とは別の大学院へ出願・進学しても全く問題ありませんので、適宜ご相談いただければと思います。なお、研究生の興味関心や適性などに応じて、別の大学院への進学や異なる進路の模索などを、私の方からご提案することもあり得ます。
・歴史学の中でも私が指導可能な領域は、日本政治外交史・東アジア国際関係史となります。時代的には近世後期〜現代(現時点から約30年前までが目安)、テーマ的には政治・外交・国際関係・帝国/植民地などが主となります。これらから外れる時代・テーマであっても指導可能な場合もあり得ますので、具体的には直接ご相談ください。
・人文社会科学系の研究においては、自然科学系の研究室のように教員から研究テーマを与えられたりすることは基本的にはなく、ご自身で独創的なテーマを構想することが求められます。したがって、私自身の研究に無理に寄せたようなテーマでご相談される必要はありません。ご自身の素直な直感やこれまでの経験、知的な興味関心などに根差したテーマでご相談いただけると、私としても知見を広げることができて楽しいです。
・現代日本の移民研究や入国管理政策などに関する研究テーマでのご相談を受けることもあります。私がコロナ禍入国制限論を書いているためかと思われますが、これは私の研究上ではいわば「夜店」(丸山眞男)です。「歴史学」として研究するのが王道と言えるテーマでもありませんので、これらのテーマで院生を指導することはありません。私よりずっと指導教員として適切な教員が日本の大学には多数いらっしゃいますので、そちらにご相談いただけると幸いです
・現在進行形(約30年前〜現在)の日本外交や国際情勢などに関する研究テーマでのご相談を受けることもあります。私自身は現在進行形の国際関係について強い関心を持っており、「歴史学」の観点からどのように現在・未来を考えることができるかについて試行錯誤しているところではありますが、やはり「歴史学」として扱うのに王道と言えるテーマではありませんので、これらのテーマで院生を指導することはありません。私よりずっと指導教員として適切な教員が日本の大学には多数いらっしゃいますので、そちらにご相談いただけると幸いです。
・社会・人間科学コースでは、フルタイムの学生はもちろん、社会人院生も多く所属しています。他大学と比べて履修に関する制度や運営もフレキシブルで、遠隔地に居住しつつ研究を進めることも一定の場合可能です。ご状況にもよりますので、まずはご相談ください。
・社会・人間科学コースでは留学生も多く所属しています。自由・公開性・多様性を旨とする学術研究において、国境を超えて学問を求める留学生の存在は、学問の進歩や公益の観点から大変重要であると考えています。留学生の方々に対しては、私自身が各国で留学生活を送っていたこともあり、留学して他国で学位を取得することに関する様々な困難について、ある程度内在的に理解・共感しつつ、丁寧に指導することが可能です。また、日本語非母語話者と日本語を用いてコミュニケーションをとる機会が個人的にも多く、日本語非母語話者の書く日本語の文章を読むことにも慣れています。日本の歴史学界では内心「鎖国」「攘夷」の気分のような研究者も未だに多いわけですが、日本出身の日本史研究者で上記のような経歴や志向を強く持っている者は比較的珍しいと思いますので、これらの点では他の研究者よりも比較優位があるかと思っています。
・社会・人間科学コースの入試では、専門にかかわらず、外部英語テストの成績提出が必須です。日本史研究者に英語力が必要ない時代はとうに過ぎ去っていることから、私としてもこの点を軽視することはありません。このため英語非母語話者の場合、一定の英語力、可能であればCEFR B2水準以上のスコアがあることが望ましいですが、 具体的にはご相談ください。
・本学の入試における外部英語試験の有効期限は過去2年間となっています。過去に十分高いスコアを取ったことがあったとしても、ブランクがあると、思っていたよりも低いスコアしか取れないことがあります。出願時に低いスコアしかない状態になってしまっても、私の方で特別に配慮することなどは不可能です。そのため、外部英語試験については早くから準備し、出願時に有効なスコアをすでに所持した状態で、受け入れ相談のご連絡をしていただくことを推奨いたします。
・コミュニケーション自体は英語(一定程度であれば中国語)でも可能ですが、日本の大学に在籍し日本を対象に研究する以上、四技能のすべてにおいて高い水準の日本語能力が求められることは論を俟ちません。大学院の入試でも日本語で面接が実施されますし、大学院のコースなどでも基本的には日本語が用いられます。このため日本語非母語話者の場合、日本語能力試験N1相当以上の日本語能力を有していることが必須となりますので、ご理解ください。
・私自身が学生・院生時代に(あくまで大学・学界内の特殊な環境下で、周囲と比べて相対的に)経済的に非常に恵まれているとは言えない状況にあったこともあり、研究に没入するためにも、院生が必要な経済的支援を受けられる環境にあることが死活的に重要であると十分に理解しています。アカデミアが、経済的状況や社会階層、文化資本、世襲などの点で有利な家庭の出身者ばかりが集い、社会的不平等の拡大再生産に加担するような環境になってしまっては、長期的な意味での学問の発展や公益の追求は困難であると思われます。日本学生支援機構や日本学術振興会、民間財団の奨学金・研究助成、謝金の発生する研究・教育関連業務などには、私もとても助けられて来ました。院生が必要な給付型奨学金や研究費その他を獲得できるよう、自身の経験も踏まえてしっかりとサポートします。
・歴史学、なかでも日本政治外交史・東アジア国際関係史の分野では、過去であれ現在であれ、シニアであれ若手であれ、ジェンダーバランスがいわゆる男性に大きく偏っているように思われます。これは人権擁護の観点や自由・多様な学問の発展の観点から非常に問題が多いことから、私としては、いわゆる女性はもちろん、様々なジェンダーアイデンティティを有する研究者の育成に貢献したいと考えています。
・澤井研究室では、ハラスメントのない研究環境の形成・維持に努めています。私と院生との関係、院生同士の関係においてハラスメントを起こさない/起こさせないのはもちろん、学会や研究会といった研究室外での活動において生じたハラスメントについても、(院生が加害者となる場合でも被害者となる場合でも)指導教員として厳正かつ適切に対処します。私自身のハラスメントに対する指針としては、こちらをご参照ください。もし私自身がハラスメントの加害者となっていたり、ハラスメント事案に対する私の対応が不十分であったりした場合には、東京科学大学のハラスメント対策(詳しくはこちら)をご確認・ご利用ください。その場合、私から相談者に対し、教育・修学その他において不利益を生じさせるようなことはありません。
・何らかの事情のため、十分な能力があっても受け入れができない場合があります。ご了承ください。