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私が外務省に行った開示請求(情報公開第01984号)に係る2021年1月21日付審査請求が、情報公開・個人情報保護審査会に諮問されるのに2年半以上経過する(2023年8月3日付)という事務処理がありました(以前の文章では、その問題性を具体的に指摘しました)。それを受けて、私は、外務省公文書管理室に抗議するとともに、情報公開・個人情報保護審査会に提出した理由書において、上記の事情の説明を補足するなどの対応を取りました。
その後、情報公開・個人情報保護審査会は、他に私が行っていた複数の審査請求(以前に遅滞なく審査会への諮問に回されていたもの)と本件を「併合」(情報公開・個人情報保護審査会施行令第2条)し、一体として審査した上で、2025年1月29日付で答申を行いました(令和6年度(行情)答申第838号、同第840号ないし同第842号および第845号 *2)。審査会がこの「併合」措置を行ったことで、外務省が審査会への諮問を2年半以上遅延させたことで審査会の答申も同様に遅延する、ということが回避されました。
つまり、少なくとも私の立場から見ると、実質的に諮問の遅延が帳消しにされ、直接的な不利益が生じない取り扱いになりました。
審査会の審査においては、私が審査請求の対象とした不開示部分のうち、外務省は「改めて検討した結果」、別表(*2)に掲げる部分を除く文書を新たに開示すると審査会に答える一方で、別表に掲げる部分は不開示を維持することが妥当であると主張しました。審査会は外務省の主張を確認し、新たに不開示維持部分とする部分について文書の見分結果を踏まえて検討した結果、この取り扱いを妥当と判断する答申を出しました。
つまり、少なくとも私の立場から見ると、審査請求を通じて当初の不開示の判断が見直され、開示範囲を広げて改めて開示がなされることになりました。
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審査会の答申のあと、すぐに諮問庁(この場合は外務省)にて裁決・決定が行われ、直ちに開示がなされるのが通常の事務手続きとなります。しかしながら、本件に関しては、その後1年以上にわたり裁決・決定が行われませんでした。
このような状態が事務処理として極めて不適切であることは、以下のとおり、疑いを入れません。
「不服申立て事案の事務処理の迅速化について」(情報公開に関する連絡会議申合せ、2005年8月3日)では、「各行政機関は、審査会から答申を受けた場合、的確な事務処理の進行管理を徹底することにより、可能な限り速やかに裁決・決定する。原処分を妥当とする答申などにあっては、答申を受けてから裁決・決定するまでに遅くとも30日を超えないようにするとともに、その他の事案についても、特段の事情がない限り、遅くとも60日を超えないようにすることとする」とされています(*3)。
実際、審査請求人は2020-22年頃に、他の省庁にも開示決定に係る審査請求を幾度か行いましたが、それらの省庁では情報公開・個人情報保護審査会の答申後、少なくとも1-2ヶ月の間に裁決・決定が行われ、必要に応じて新たな文書の開示手続きも直ちに実施されました。
また、上記に述べたように、今回の答申書においては、外務省は別表中の部分を除いて新たに文書を開示決定することを審査会に説明・約束しており、それを受けて審査会は別表中の部分の不開示決定の妥当性を審査する形となっていました。にもかかわらず、外務省による答申書を受けた裁決や、新たな文書の開示が長期にわたってなされないのであれば、外務省は審査会に対して虚偽の説明・約束をしたものと判断されても致し方ないのではないかと思われます。社会通念上、そのような事務処理に問題がないと考えることは非常に困難ですし、情報公開法の趣旨・目的を実質的に没却する運用であるとの誹りを免れ得ないと考えられます。
以上を踏まえ、私は、2026年3月13日付で外務省公文書管理室(室長:石井賢輔)などに抗議し、1ヶ月以内に審査会答申に基づいて裁決・決定を行うこと、不適切な事務処理が生じた理由について説明することを求めました。その後、同年4月9日付で、審査会の答申に沿う内容の裁決書が私に送付され(情報公開第00226号)、開示手続きも適正に実施されました。最終的に同年5月13日付で、私は開示文書のコピーを受領しました。
もっとも、不適切な事務処理が生じた理由については、現在に至るまで説明がなされておりません。
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今回の件の対象となった文書は、「査証関係通達(新型コロナウイルス感染症(COVIDに関する査証の取扱(第54798号)」2020年7月29日、となります。審査会答申を受けて新たに開示されたものを見ると、なお不開示部分は多く残るものの(2頁目・不開示部分の全部、3頁目・全部、4頁目・1行目及び2行目、5頁目の大部分)、4頁目の大部分が開示されるなど、内容がすべて黒塗りであった当初の開示に比べると一定程度の改善が見られました。
とりわけ私にとって重要であったのは、この開示部分が、すでに発表した拙稿「コロナ禍入国制限の同時代史的検討ー日本人の外国籍配偶者等・パートナーを中心に(一)」『法学志林』第120巻第3号、2023年1月、の議論を裏付けるものであった点です。
この論考で私は、日本人の外国籍配偶者等に対する一度目の入国制限が緩和された過程に関し、2020年7月29日に入管のウェブサイトで日本人の外国籍配偶者等の新規入国が「特段の事情」に該当すると公表されたと述べた上で、「同時に、外務省の方でも新規入国ができるよう通達が出されたものと思われる」と記述しました(148頁)。断定調ではなく「思われる」と書いた理由は、当該記述に付した脚注(83)にて説明しています。すなわち、他の開示公文書の内容を鑑みると、新規入国が認められる具体的内容は第54798号文書の(2)・(3)に記載されているはずなのですが、この文書は当初ほぼすべてが黒塗りであったため、(2)・(3)の内容を確認できず推測のまま議論を進めざるを得なかったということです(183頁)。
しかし、今回の新たな開示によって、(2)・(3)を覆っていた黒塗りが取り除かれたために、上記の記述の妥当性を直接検証できることになりました。これを見ると、(2)は査証制限措置対象国・地域の在外公館、(3)は上陸拒否の対象国・地域の公館において、「「日本人配偶者等」、「永住者の配偶者等」及び家族離散の「定住者」の配偶者等については、既に特段の事情があるもの」として、入国の必要性についての更なる確認及び本省経伺を不要とする内容でした(*4)。
つまり、拙稿にて私が予期したとおりの内容であり、推測を史料的に裏付けるものであることがわかりました。近刊予定の「コロナ禍入国制限の同時代史的検討(四・完)」にて、上記の「同時に、外務省の方でも新規入国ができるよう通達が出されたものと思われる」という記述を、例えば「同時に、外務省の方でも新規入国ができるよう通達が出された」といったように、断定的な形で修正する予定です。
なお、今般の審査会答申に沿う形の外務省からの新たな開示では、他の複数の文書についても、これまで黒塗りだった部分を確認することができました。そのため、(四・完)では、上記以外の部分についても複数箇所の修正を行いたいと思っています。
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以上の要点をまとめると、次の三点となります。
(1)情報公開・個人情報保護審査会の対応によって、外務省による2年半以上の諮問の遅延によって予期された不利益は、実質的に回避された
(2)審査会の答申を受けた裁決・決定を外務省が1年以上にわたり怠っており、私からの抗議を受けた後で裁決・決定や開示対応がなされた
(3)審査会を通じて、対象文書についてこれまで黒塗りであった部分が開示された結果、拙稿の記述内容が史料的に裏付けられた
なお本件に関連して、公文書開示請求・審査請求の現行の制度・運用に対する利用者から見た問題点や、歴史研究者が現代進行形の政治過程を研究する際の注意点など、色々と議論を深めたい部分は多いです。これらについては、(四・完)にて補完したり、別稿を用意したいと思っております。
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*1 現在までに公刊されているものとして、澤井勇海「コロナ禍入国制限の同時代史的検討ーー日本人の外国籍配偶者等・パートナーを中心に(一)」『法学志林』120巻3号、2023年 リンク;「コロナ禍入国制限の同時代史的検討ー日本人の外国籍配偶者等・パートナーを中心に(二)」『法学志林』第121巻第3-4号、2024年3月 リンク;「コロナ禍入国制限の同時代史的検討ー日本人の外国籍配偶者等・パートナーを中心に(三)」『法学志林』第123巻第3号、2025年11月
*2 こちらから見ることが可能です(https://www.soumu.go.jp/main_content/000988938.pdf)。
*3 「不服申立て事案の事務処理の迅速化について」(情報公開に関する連絡会議申合せ、2005年8月3日)
(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/gyoukan/kanri/jyohokokai/pdf/110624_02.pdf)
*4 第54798号文書の(3)では、実際には「確認及び本省経伺を不要しないものとする(ママ)」と書かれていますが、「要しないものとする」の誤記と思われます。
(2026年5月22日執筆)
私が2020年11月30日に外務省に行った開示請求(情報公開第01984号)について、外務省の方で2021年1月4日に開示決定がなされました。この決定に対して、私は2021年1月21日付で審査請求を行いました。
しかし、この審査請求が情報公開・個人情報保護審査会に諮問されたのは、請求から2年半以上経過した2023年8月3日であり、私にその旨が通知されたのは同年8月7日でした(情報公開第01073号)。現在は、情報公開・個人情報保護審査会にて審査が開始されたところです。
情報公開・個人情報保護審査会への諮問に2年半以上の時間がかかったことが、事務処理として極めて不適切であることは、以下のとおり疑いを入れません。 「不服申立て事案の事務処理の迅速化について」(情報公開に関する連絡会議申合せ、2005年8月3日)では、「各行政機関は、不服申立てがあった場合、的確な事務処理の進行管理を徹底することにより、可能な限り速やかに審査会へ諮問する。諮問するに当たって改めて調査・検討等を行う必要がないような事案については、不服申立てがあった日から諮問するまでに遅くとも30日を超えないようにするとともに、その他の事案についても、特段の事情がない限り、遅くとも90日を超えないようにすることとする」とされています。(*2)
実際、私は2020-22年頃に、他の省庁にも開示決定に係る審査請求を幾度か行いましたが、それらの省庁では少なくとも1-2ヶ月の間に情報公開・個人情報保護審査会へ試問に回されています。さらに、行政法学者・現最高裁判所判事の宇賀克也氏も、「審査請求に対する裁決をすべき行政機関の長は、本条[情報公開法19条]1項1号・2号の場合に該当しないかを迅速に調査し、該当しないと判断したときには、速やかに諮問手続をとるべきことは当然である」と述べています。(*3)
また、今般の開示請求においては、私は「令和2年度夏頃と推測される、電信番号54798号の行政文書」と、極めて特定的かつ一件のみの行政文書を請求しており、今般の開示決定もその一件の文書についてのみなされています。したがって、対象となる文書が膨大であったり、事務処理に多大な時間がかかるといったことはまず考えられず、諮問を2年半もの期間行わないという行為を支える根拠は、全く存在し得ません。
以上を踏まえ、私は、本件事務処理について外務省公文書管理室などに抗議し、一ヶ月以内にしかるべき説明を与えるよう求めましたが、期限を過ぎても回答が得られなかったため、ここに内容を公開する次第です。
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*1 現在までに公刊されているものとして、澤井勇海「コロナ禍入国制限の同時代史的検討ーー日本人の外国籍配偶者等・パートナーを中心に(一)」『法学志林』120巻3号、2023年
*2 「不服申立て事案の事務処理の迅速化について」(情報公開に関する連絡会議申合せ、2005年8月3日)
(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/gyoukan/kanri/jyohokokai/pdf/110624_02.pdf)
*3 宇賀克也『新・情報公開法の逐条解説』有斐閣、第8版、2018年、202頁
(2023年10月24日執筆)