いじめの経験が心の傷となり、その後、成長しても、大人になっても、対人関係などに困難さを抱える症状のこと。
"いじめ後遺症"という病気の定義はまだ明確には定められていません。
どんな症状があるのか?、どんな影響があるのか?、症状と原因の結びつき、有効な改善の仕方などいじめ後遺症の実態はまだ研究段階です。
以下はいじめ後遺症ドットコムが作成&実施しているアンケートの結果&ご意見、いじめ後遺症ドットコム独自の考察に基づく記述となります。
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●主な症状●(特に票が多かった症状)
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他にも、
・人と関わるのが怖くなった
・人間不信になった
・加害者に似ている人も苦手
・摂食障害(過食や拒食)になった
等、いじめ後遺症の症状は人それぞれです。
※症状はいじめ経験によるものだけでなく、生まれつきの発達障害やその後のうつ病等から2次発生した症状の可能性もあります。
※実施したアンケートはいじめ後遺症ドットコムが配置した項目の選択式(+自由回答)であり、項目を設置していない症状の回答は低くなっている可能性があります。
いじめ被害を受け、その後何十年にも渡って重い症状を抱える方もいらっしゃれば、現在は改善しているという方もいらっしゃいます。
いじめ被害を受けたとしてもいじめ後遺症を発症する方・しない方もおられ、症状やその重さ、発症期間や頻度、継続的か断続的な症状かどうか等も本当にその方によって様々です。
症状の改善法も人それぞれ。ご自身に合った改善法を見つけていきましょう。
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●いじめ後遺症の影響●
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いじめ後遺症とはどんな症状が出て、どのように生活に影響するのか?「いじめの記憶が何度も思い出される・蘇る」という症状を例に見てみましょう。症状によってどのような影響が出るのかはさまざまです。また、ここでは二次的に発症したうつ病等から起きている症状も含めて例を挙げています。
症状
(例)いじめの記憶が何度も蘇る
悪夢をみる、ビクッとする、怒り・悲しみを感じる、
ぼんやり・どんよりとした気持ちが続く、
腹痛、胃痛、耳鳴り、トイレが近くなる
など
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影響
・引きこもり・人が怖くなる・関係する場所や付近を避ける ・人混みを避ける
・人間不信・ 自己肯定感が下がる ・行動が消極的になる・何かに依存する
・感覚が麻痺する ・被害妄想しやすくなる・人にマイナスな意識が向く
など
※関係する場所とは、いじめが発生した場所や地域を指します。
※依存の例としては、食物(過食)、酒、パートナー、買い物、ギャンブル、薬物などが挙げられます。
※感覚が麻痺するとは、つらい経験から自己防衛するために、つらい、苦しいなど自分の気持ちががわからなくなることを意味します。
※人にマイナスな意識が向くとは、いじめを受けたことによってできた、怒りや悲しみなどが、いじめに一切関係ない人にも向けられてしまうことを意味します。このことが、自己嫌悪に繋がる方もいます。
症状が2週間以上継続して続いている・生活に支障が出ている等の場合には、心療内科など専門機関への相談が必要となる可能性があります。
~~参考にしたい文献紹介~~
・論文『大学生の過去のいじめ被害経験とその後遺症の研究 : 対人恐怖心性との関わり 』(石橋・若林・内藤・鹿野,1999)
いじめ被害経験のある大学生は被害経験のない大学生に比べて社交場面において過度な不安や緊張が起こり、対人恐怖傾向が高まる。その傾向は当時の苦痛の強さに比例する。
・論文『PE104 "心のしこり"として残る過去のいじめ被害体験の検討 』(亀田・相良,2007)
過去にいじめ被害を経験した方について、未だに"心のしこり"情緒的不適応が残る人と残らなかった人の被害を受けた時期・内容・方法からの比較。
・論文『過去のいじめによる心的外傷体験と否定的認知の変容に関する調査 』(寺井・石村,2016)
95名のいじめ被害経験者のうち、37名(39%)がPTSD症状の基準を満たしていた。自身と他者が共に あるというような自他連帯感を持つこと、ポジティブな感情を持てるような周囲からの長期的なケアが否定的認知の変容を抑えると示されている。
・論文『過去のいじめ被害経験と心理症状との関連―緩和要因の比較を通じて―』(横田・伊與田・鈴木・今井,2019)
いじめ後遺症の回復のためには、自分と他者が共に あるというような自他連帯感を持つこと、対人関係における恐怖心やストレスを自分自身で対処する方法を身につける、他者の存在を受け入れながら、自分自身の感情を客観視するスキルを身につけることが有効である。