大学:慶應義塾大学商学部
ゼミ:井口ゼミ
大会年度:2021年度
受賞成績:個人最優秀賞
現在振り返ってみて、当時の研究生活はどういったものでしたか。
<オミさん>
井口ゼミでの取り組みは、日本語で書いた論文を学内のコンテストに出して、さらに英語に翻訳してIBインカレに提出するという形です。そのため、IBインカレの準備をすることよりは、論文を書くことが活動の中心となっています。「論文を書く」という取り組みと「それをグループで行う」という取り組みの両方が初めての経験だったため、慣れないことも多々ありました。グループ内で意見の衝突が起きることもありましたが、仲が悪くなることはなく、むしろ良い方向に進むことができました。今でもたまに会うと、その時の話で盛り上がるので、難しかったけれども楽しい経験だったのだと思います。
チームで活動する中で何か意識した点はございますか。
<オミさん>
一番意識したのは、役割を決めて責任を持って取り組むことです。私たちは4人のグループでしたが、個人的にはサークル活動に集中したい時期でもありました。そのため、ゼミ長ではありましたが、グループのリーダーは他のメンバーに委ねました。特に、論文の構造を考えるような、一番頭を使う作業も他のメンバーに任せ、自分はサポート役に徹することにしました。このように、まずは話し合いでそれぞれの役割を決め、分業制で進めたのち、それを週に2回ほど持ち寄って組み合わせるという形で進行しました。そのため、途中で詰まることもありましたが、比較的スムーズに進んだと思います。
意見の相違やモチベーションの差は、かなり最後まで続きました。私は大学院進学を決めていたので、論文のクオリティーには先を見据えたものを求めていました。そのため、学部レベルに留まらない高いクオリティーを目指し、細かい部分にも気を配るタイプでした。一方、リーダーは、学部に求められるレベルを3〜4ヶ月で達成できれば良いという考えで、大枠が良ければ良しとするタイプでした。この差は卒業まで続きましたが、振り返ると「お互いゴールが違ったから仕方ないよね」という話になりました。ここでは意見の衝突もありましたが、グループでディスカッションを重ね、話し合って妥協点を見つけることができました。
向いている方向が違う中で、無理にみんなに合わせるんじゃなくて、妥協点を見つけるような形なんですね。
<オミさん>
妥協は、お互い折り合いをつけた感じですけど、リーダーも自分もちゃんと思いを言えたから最後すっきり終われたのだと思います。「誰かが言ったからそうしよう」という形ではなく、「いや、俺は違うと思うよ」と本音で言えたのが良かったのかなと思います。なので、ちゃんと言いたいことを言うというのも意識したことです。
IBインカレに出場したことで、何か変化はありましたか。
<オミさん>
まず大学院に行くという進路に関しては特に変化はありませんでした。ただ、大学院に進学するなら当然必要となる英語でのプレゼンやリスニングについて、IBインカレに出場することで「やっぱり英語をもっとやらなければならない」と強く実感しました。発表が英語で行われると、聞き取れなかったり、理解できないことがありました。事前に論文を読んでいたので大まかには分かりましたが、細かい議論についていけないこともあり、危機感を感じました。
性格や精神面で変わったこととしては、グループワークを通じて、久しぶりに激しく意見をぶつけ合う経験ができたことです。大学で本格的なグループワークをするのはゼミが初めてで、その中で好きなことに本気で取り組むメンバーと真剣に議論し合うことで、非常に熱くなれました。本気で取り組むことの楽しさを改めて感じることができました。
また、妥協も必要だということを学びました。協調性が身に付き、相手の立場や事情を考えることができるようになりました。以前はガーッと指摘してしまうこともありましたが、今では相手のことを考え、自分の基準を押し付けるのは良くないと理解できるようになりました。少し優しくなれたのではないかと思います。
研究や論文の執筆が、就職活動や現在の大学院生活にどう生きているかをお伺いしたいです。
<オミさん>
研究を通じて「楽しい」「やっていて面白い」と感じられたことが、大学院進学の確信につながりました。研究が辛すぎてやめようと思うのではなく、楽しさから「まだ続けたい」と思うモチベーションになった点で、研究活動は現在に生きています。
就職活動に関しては、インターンでのディスカッションやデータ収集において、研究の経験が非常に役立ちました。例えば、短時間で多くのデータを収集する能力や、英語の資料を読む力、適切な検索キーワードを見つけるスキル、そして得られた情報から何を導き出せるかといったスキルが求められます。これらはすべて研究活動で培った基礎が発揮される場面です。また、井口ゼミの他のメンバーからも「就活のグループディスカッションで無双できる」という声をよく聞きます。発言力や妥協点を見つけるスキルが就活でも生きているのではないかと思います。
IBインカレが学生にとってどんな場所になればいいかなと思われますか。
<オミさん>
IBインカレは、学生が本気で取り組むための場になってほしいと思います。この間、東北大学でのIBインカレを見に行った際、前で賞状を渡されたゼミの子が泣いていたり、本当に喜んでいる姿を見て、とても素敵だなと感じました。論文のコンペと聞くと、「本気で取り組めるのか」と疑問に思う人もいるかもしれません。冷めた目で見たり、「頭の良い大学に勝てるわけがない」と思う人もいるでしょう。しかし、実際には、本気で取り組んだ先には達成感や感動があり、それが青春の一部となっています。
そのため、この魅力がもっと多くの学生に伝われば、「教授に言われたから参加する」のではなく、「本気で勝ちに行こう」「下剋上しに行こう」というモチベーションに繋がるのではないかと思います。IBインカレが、学生にとって情熱を持って取り組む場として認識され、自己成長や感動を体験できる場所になれば素晴らしいと感じています。
目に見えない、数字じゃない良さがありますよね。
<オミさん>
そうなんですよね。ビジコンだと賞金が出たりとか、スポーツの大会だと新聞に載るとか、成果が数値で現れたりすると思うんですけど、論文では難しいじゃないですか。だから、初めてやる人にとっては、どのくらいそれが凄いことか、達成感があることなのか想像もできないと思います。そんな人たちにも、IBインカレで頑張ることが大学生活の一つの貴重な経験になると伝わってほしいです。なかなかないですよね、大学4年間で努力して感動して泣くっていうのは。そういう場として認識されると、見ている側としてもすごい熱くなれるので、みんなにとって良い思い出になるかなと思います。
高校生までは、部活をがむしゃらに頑張るといった経験もしやすいと思うんですけど、大学に入るとちょっと現実を見るっていうか(笑)。「将来に生きるから今はこれをやろう」みたいに考えるようになると思います。でも、そんな中でも何かに必死に頑張る経験ってすごい大事だなって思いましたよね。
<オミさん>
部活とやっていること一緒なはずなんですよ。だから。部活をやっていた人間だったら必ず熱くなれると思うんです。部活で終わりじゃないよって思います。大学で本気になっても誰も咎めないし、むしろ本気でやるのって本当にすごい素敵だと思います。
最後にIBインカレに向けて研究を頑張る学生に何か一言お願いいたします。
<オミさん>
正直、論文を読むのも、英語を見るのも、論理組み立てるのも難しいです。才能やバックグラウンドも関係あるので、できない人はできるようになるまで時間がかかると思います。でも、自分はできる・できないに関わらず、とにかく泥臭く必死に、とにかくやってみる。せっかくこんな貴重な機会を与えられているゼミに入れたわけですから、無理だと決めつけるのではなく、そこはすかさず本気で取り組んでみてほしいです。寝る間も惜しんで、数カ月部活を思い出してやってもらえればと思います。
今の風潮っていいますか、効率重視みたいなとこって最近あると思います。もちろんそれも大事ですが、ある程度量を取り組まないと分からないこともあると思います。その辺は僕たちも意識していければいいなと思いますね。
<オミさん>
人間としての個性が一番出るのって本気でがむしゃらに取り組んでいる時だなと思うので、効率重視ではなくて、たまには効率度外視で熱意だけでやってみる期間も人生の中では楽しい時間になるのかなと思います。
ご協力いただきありがとうございました!