先進国におけるガンの発病率や死亡率の高さから、できる限り患者への身体的な負担の少ないガン治療法の発展は不可欠です。
ガンの光線力学療法は現在の主流な治療法に比べて副作用などが弱く、有望な治療法の一つです。
この治療効果は光感受性の薬剤である光増感剤を用いており、光増感剤の性能は主に以下の因子に依存しています。
1.がん部位への選択的な集積効率
2.がん細胞による取り込み効率
3.細胞内局在
4.光吸収波長領域(赤~近赤外領域が生体組織を透過しやすい)
5.光吸収効率(分子吸光係数)
6.活性酸素種(1O2など)の生成量子収率
ポルフィリン類縁体は、これら全ての因子を高いレベルで満足する化合物として知られていて、日本で認可(実用化)されている2種類の光増感剤もポルフィリン類縁体です。
そのため、ポルフィリン類に対して、上記の因子を向上させることは重要な課題です。
因子1~3は薬学的な性質、因子4~6は光化学的な性質です。
これらの薬学的および光化学的な性質を共に向上させて行くことが光増感剤の発展には欠かせません。
また、ガンの光診断(光線力学診断)を行う場合には、「6.活性酸素種(1O2など)の生成量子収率」の代わりに「発光量子収率(主に蛍光)」が重要となります。
光線力学診断は、健康診断的にガンを発見することより、以下の点において非常に有用性が高いと考えられます。
・治療時にガン組織の位置の再確認
・外科手術との併用:
脳腫瘍など、正常組織にダメージを与えてはならない際、光増感剤が発光しているガン組織のみを摘出します。その後、手術では摘出しきれなかったがん細胞は、治療用の光照射によって光線力学療法で死滅させれば再発のリスクが低下します。
この他にも、光を吸収した光増感剤から発せられる「熱」を利用した光音響診断なども注目され、多くの展開が期待されています。
光線力学療法の詳細は「日本光線力学学会HP」をご覧ください。
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