【セミナー開催記】令和6年度第4回北海道森田療法セミナーを開催しました。(2025年3月15日 土曜日)
第4回のセミナーでは、森田療法の理解を深めることを目的として、3名の先生方にご講演いただきました。オンライン含め40名近い参加者にご参加いただきました。お忙しいところご参加いただきありがとうございました。
講演者と講演内容
芦沢 健 先生(資生会 千歳病院) 「元気モリモリ森田療法」をテーマに、患者が抱える不安に対する森田療法の考え方と対応方法について、ユーモアを交えながらお話しいただきました。日頃からご活用されている川柳「症状を 取ろう取ろうは 徒労です」もご紹介くださり、大変分かりやすい講演となりました。
田所 重紀 先生(札幌医科大学神経精神医学講座) 「MUSへの森田療法」をテーマに、器質的な疾患が見つからず、患者が訴える身体症状の説明がつかないMUS(Medically Unexplained Symptoms)にこそ、森田療法が有効であることを解説いただきました。実際の診療で使用されているマニュアルのご紹介もあり、参加者にとって非常に実践的な学びとなりました。
高澤 祐介 先生(大通公園メンタルクリニック) 同クリニックで開始した新たな取り組み「Mut(ムート)」をご紹介いただきました。復学を目指す高校生以上の学生が必要とするサポートが不足している現状を踏まえ、Mutの誕生に至った経緯や活動内容をご説明いただきました。さらに、ご自身の経験に基づいた日記療法についてもご紹介いただき、森田療法を活用した患者支援の具体的な手法を知る貴重な機会となりました。
ディスカッションと参加者の声
講演後にはディスカッションの時間が設けられ、参加者からの質問に講演者の先生方が丁寧にお答えくださいました。森田療法の実践や患者支援の工夫について活発な意見交換が行われ、参加者の皆様にとって、森田療法の魅力とその可能性をより深く理解する機会となりました。
お忙しい中ご参加くださった皆様、そして貴重なご講演をいただいた先生方に、心より感謝申し上げます。
(文責:出利葉健太、砂川市立病院精神科 精神科医)
【セミナー開催記】令和6年度第2回北海道森田療法セミナーを開催しました。(2024年11月9日 土曜日)
今回は滋賀八幡病院 認知症疾患医療センター おうみセンター長の斎藤直巳先生をお招きし、「関西森田の紹介、森田を活かす日常臨床」というテーマでご講演いただきました。
北海道のセミナーとしては、初めての関西森田療法研究会の先生をお招きしてのセミナーとなりました。セミナーでは先生のご経験を元に森田療法の理解、そして実践へとつながる話を大変わかりやすく、実感しやすい形でお話いただきました。森田療法は他の精神療法や心理療法に比べてエッセンスを知るだけでも”ぬるっと”始めやすいものという言葉が大変印象に残っています。
今回は現地、オンラインのハイブリッドで行いました。多くの方に参加いただき、参加者からは、「わかりやすくて森田療法の理解が深まった」「さっそく明日から実践してみたい」等といった感想が聞かれました。
(文責:出利葉健太、砂川市立病院精神科 精神科医)
【セミナー開催記】令和6年度第1回北海道森田療法セミナーを開催しました。(2024年9月7日 土曜日)
今回は法政大学大学院 教授、東京慈恵会医科大学森田療法センターの久保田 幹子先生をお招きし、「外来森田療法のガイドライン、日記療法」というテーマでご講演いただきました。
前半では、森田療法の理論について、外来での症例(個人情報に留意されたもの)をもとに初心者にも大変わかりやすく説明して下さいました。後半では日記療法を実際の臨床で行う上でのポイントなどについて、より詳しく説明いただきました。
今回は現地、オンラインのハイブリッドで行いました。多くの方に参加いただき、参加者からは、「より森田療法について知りたくなった」「とてもわかりやすく勉強になった」等といった感想が聞かれました。
(文責:出利葉健太、砂川市立病院精神科 精神科医)
【学術総会報告】第120回日本精神神経学会学術総会にて、当研究会メンバーが森田療法に関する発表を行いました。(2024年6月20木曜日~22日土曜日)
2024年6月20日木曜日から22日土曜日にかけて、札幌コンベンションセンターにて第120回日本精神神経学会学術総会が開催され、当研究会メンバーが森田療法に関する発表を行いました。
当研究会メンバーによる発表は以下の通りです。
・一般シンポジウム10 Long COVIDに潜む身体症状症ー内科医および精神科医の視点からー
S10-4 森田療法のMedically Unexplained Symptomsへの活用
田所重紀先生(札幌医科大学神経精神医学講座)
・一般シンポジウム41 「心の病が治る」とはどのようなことか?
S41-3 「健常な苦悩」と「病的な苦悩」の区別は可能なのか?
田所重紀先生(札幌医科大学神経精神医学講座)
・一般シンポジウム65 日本における精神療法:受容と展開
S65-1 精神療法大国・日本への道を阻む2つの障壁
田所重紀先生(札幌医科大学神経精神医学講座)
・一般シンポジウム89 実はこんなに使える森田療法
S89-1 森田療法の神髄と総合病院における精神科診療への活用
田所重紀先生(札幌医科大学神経精神医学講座)
S89-3 慢性疼痛、薬物依存症、emotional bluntingへの応用ー患者と治療者に活かす森田療法ー
芦澤健先生(資生会千歳病院)
S89-4 産業メンタルヘルスへ森田療法を生かす~合言葉は「不安でいい、そこから始めよう」~
小笠原岳洋先生(株式会社EAP北海道、いしかわ心療・神経クリニック)
さらに、北西憲二先生(森田療法研究所・北西クリニック)、
館野歩先生(東京慈恵会医科大学精神医学講座)、新村秀人先生
(大正大学臨床心理学部)によるご講演など、今回の学術総会は
森田療法を扱った企画が例年よりも多い印象であり、コンサルテーションリエゾン精神医学やうつ病治療における活用方法、マインドフルネス、弁証法的行動療法などとの比較など、様々な観点から森田療法に関する知見を深めることができた学術総会でした。
文責者による本学会の個人的な感想)
森田療法は、一般的には敷居が高く、言語化が難しいことからわかりにくいと思われがちです。しかし、その理論をよりシンプルに理解し、症状にとらわれながらでもその理論に基づく体験を重ねていくといった視点をもつことによって、比較的理解や実用がしやすくなるといった学びがありました。その上で、知れば知るほど療法の奥深さを味わうことができるといった学術的な面白さもあると考えます。様々な疾患や分野への応用を視野に入れた研究や治療を今後も進めていき、より多くの方に森田療法を知っていただきたいと改めて感じました。
(文責:出利葉健太、砂川市立病院精神科 精神科医)
【セミナー開催記】令和5年度第4回北海道森田療法セミナーを開催しました。(2024年3月23日 土曜日)
今回は東北大学大学院教授の若島孔文先生をお招きし、「改訂スリー・ステップス・モデルについて~井上円了先生、森田正馬先生の考え方を参考に~」というテーマでご講演いただきました。
改訂スリー・ステップス・モデルとは、
・1’stステップ:症状、病気、問題を敵にまわさない態度で接すること(ノーマライズ)
・2’ndステップ:「一番ひどかったとき」の 状態を10、以前普通に生活していたときを0としたとき、今の状態を尋ね自然回復の度合いを確認すること
・3’rdステップ:問題解決のために「これまでと異なる行動」をとるようアドバイスする
以上の3段階で構成された、自然回復に着目した治療法です。
改訂スリー・ステップス・モデルと森田療法は「自然回復を尊重する」「建設的な行動を促す」点が大きな共通項で、3’rdステップにおいては「これまでと異なる行動」をとるために「目的本位(症状や気分は置いておいて、今やるべきことに着手する態度)」が有用であることを教えて頂きました。
若島先生はとても著名な先生でありながら、腰が低くユーモアに溢れたとても気さくな先生で、お話を伺いあまりに楽しい時間を共にした私はすっかりファンになってしまいました。またこよなく犬を愛するドッグトレーナーとしての顔もお持ちで、そのギャップにも惹かれます。
YoutubeやX等、SNSを通じて若島先生の活動を垣間見ることができます、ご興味のある方は是非ご覧ください!
・youtube(Wakaken Ch【東北大若島心理学研究室】)
https://www.youtube.com/channel/UCC38XNT6tpqiRcCkKjgTKVw
・X(若島 孔文 Koubun Wakashima, Ph.D.)
https://twitter.com/k_wakashima?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor
(文責:高澤祐介、大通公園メンタルクリニック 精神保健福祉士・公認心理師)
【セミナー開催記】令和5年度第2回北海道森田療法セミナーを開催しました。(2023年09月16日 土曜日)
2023年9月16日(土)、令和5年度第2回北海道森田療法セミナーを開催しました。中断していた北海道外からの講師として、慈恵会医科大学准教授の舘野歩先生と那須こころの医院院長の石川純一先生、2名の先生を久しぶりにお招きすることができました。
今回は「依存症と森田療法」というテーマで開催しましたが、当会代表理事の千歳病院院長芦沢健先生は長く依存症も専門的に診療されているため、芦沢先生からのアルコール依存症治療の歴史といったオープニングレクチャーの後に両先生から講話いただき、最後に全体でディスカッションをする流れで行いました。
「依存症と森田療法」 館野 歩先生(慈恵会医科大学准教授)
舘野先生は、森田療法の入門書の1つと言えるご著書「図解よくわかる森田療法(秀和システム社)」や海外留学のご経験を踏まえ森田療法と認知行動療法の比較論(共通点と相違点)でもご高名な先生です。当会でも過去2回これらのお話もいただきましたが、今回は、別クリニックにおける依存症外来での診療経験をもとにお話しいただきました。
今回が当会初めての参加となる方々もいるため、森田療法の基本的なお話もいただき、かねて森田療法を依存症治療に生かすことは難しいとされてきたものの、特に外来森田療法のガイドラインが示されて以降は導入しやすくなっていると思われることやアルコールの問題を抱える方に対して、不安や落ち込みを紛らわせるために飲酒している悪循環を指摘し、その感情はそのままに、今の生活場面でのしたいことに目を向け活動していく関わりを詳しく紹介してくださいました。参加者の普段の臨床に取り入れやすいものだと思いました。
季節の変わり目を実感できるこの時期の北海道の空気に触れられ、「めちゃめちゃ爽やかでいいね」とニコニコされていましたが、ご丁寧な語り口とともに我々へも爽やかな空気を与えて下さいました。
(文責:小笠原岳洋、㈱EAP北海道/いしかわ心療・神経クリニック 公認心理師)
「森田療法とアルコール使用障害」 石川 純一先生(那須こころの医院)
石川先生ご自身が森田療法に救われた体験があるといい、平成30年に開業された那須こころの医院では森田療法を用いて神経症圏やアルコール使用障害等に悩む患者さんの診察をされています。アルコール使用障害の治療といえば一般に断酒が主流ですが、最近では減酒によるアプローチも増えてきており、いずれの治療においても患者さんが治療を続ける“動機づけ”が大切であると教えて下さいました。
アルコール使用障害の治療においては、まず病的飲酒につながる生活背景を必ず訊ね、飲酒につながる感情は「自然なもの」であり、自己治療的に飲まずにいられなくなったのは「無理もないこと」であると共有した上で、酒をやめたらどんな生活をしたいかを含めて患者さんが持つ「生の欲望(より良く生きたいという気持ち)」を尊重しながら、できることから取り組んでいきつつ、健康的な生活習慣を強化していくといった森田療法に基づくアプローチを活用されているご経験を話して頂き、森田的な生活の質の向上を伴った回復につなげていく姿勢の大切さや意義を教えて頂きました。
那須こころの医院では、来院した患者さんやご家族をも歓待することをベースに患者さんの治療導入を行っていくという「ようこそ外来」(成瀬暢也先生発案)を掲げ、外来通院のハードルを下げ、通院継続をしやすくする試みもされているそうです。
今回のご講演を通して、石川先生にお会いして優しく実直なお人柄に触れることができました。そんな真摯なお人柄の先生だからこそ実現できる、温かい医療の形を知ることができたと感じています。
(文責:出利葉健太、砂川市立病院精神科 精神科医)