OUR MISSION

湿地をモニタリングして守る

生態系の劣化や自然環境の悪化は,地域から地球にいたる様々なスケールで大きな問題となっています.湿原や河川,湖沼沿岸という湿地の生態系は,水の貯留や環境浄化などの生態系サービス(自然からの恩恵を得る生態系の機能)を持っていますが,それと同時に水の動きや水の質(水質)の変化に強く影響を受ける生態系であると言えます.つまり,開発などの人間活動にともなって,水の移動や質が変わってしまうと,生態系の劣化が生じ,私たちの受ける生態系サービスの質も低下してしまうと考えられます.その問題を防ぐためには,まず生態系のモニタリング(監視)が大切ですが,健康診断のように,全ての人に,定期的に実施といったモニタリングは十分に行われていません.保全のためには,モニタリングにより異常を発見し,その異常な状態をもたらした原因を探ることが必要となります.その発見のためには,広域的な視点,長期的な視点で,なおかつ適切な方法で正確なデータの取得が必要となりますが,それに関しても十分に実施されているとは言えない状況です.

私たちの研究チームでは,水質センサ,音波探査,カメラ(イメージセンサ),レーザーなどのさまざまなセンサやデバイス,IoT(モノのインターネット)で活用されている通信技術を用いて,フィールドセンシングシステムや取得したデータ処理法などの開発を行っています.その開発したシステムを用いて,特に湿地の水文や水質といった環境や植物,魚類や鳥類などの生物を対象とした生態系のモニタリングを実施しています.データ取得や評価のなかで,UAV(ドローン)やGIS(地理情報システム)も用います.そのデータを用いて,人間活動が生態系(湿原,河川,湖沼)に与える影響(例えば,生物生息場環境の変化)を評価します.これらの開発・解析を通して,生態系や環境の保全・再生に役立つ情報,具体的な方法を提供します.