生態系の劣化は,今や地域から地球規模に至るまで,私たちの生存基盤を揺るがす深刻な問題です.特に湿原・河川・湖沼といった生態系は,水質浄化や防災といった多大な恩恵「生態系サービス」を私たちに提供してくれる一方で,環境変化に対して非常に脆弱です.人間活動による水の動きや質の変化は,目に見えない速さで生態系を蝕みます.この劣化を食い止め,再生へと繋げる第一歩は,現状を正確に把握する「モニタリング」にほかなりません.私たちは,自然の「健康診断」の手法を確立し,異常の早期発見とその原因を科学的に特定することを目指しています.
世界がネイチャーポジティブ(自然再興)へと舵を切る中,監視対象は希少種から外来種,さらにはプランクトンから鳥類まで,かつてないほど多岐にわたっています.しかし,現場では,人口減少や専門家不足,高コスト化という大きな壁が立ちはだかり,調査の継続が困難になっています.異常が見過ごされたまま生態系が消失していく「モニタリングの空白」,私たちはこの危機を打破するため,最新のセンシング技術・ロボット技術(RT)と環境科学を融合させた「フィールド科学のデジタル改革(DX)」を推進しています.
既存の機器では対応できない過酷なフィールドや特殊な調査ニーズに対し,私たちは「無いものは自分たちで作る」というエンジニアリング・スピリットで挑んでいます.現場の「生の声」を形にした独自のシステムが,データの精度を飛躍的に高め,新しい自然現象の発見を可能にします.
自律航行ロボット(USV)を用いた水環境モニタリングボート,水中高解像度オルソ画像作成用ボート,アオコ・ゴミ回収ボートやAI・画像処理・高精度センサを用いた生物の自動監視システム,UAVと VR技術を用いた湿原植生マッピング,植生・水中環境のVR映像アーカイブ化,声紋解析による鳥類の自動種判別システム,高精度センサ・AIマイクを搭載したインテリジェントな鳥獣追い払い装置を開発しています.
私たちのゴールは,単なる機器の開発やデータ収集ではありません.得られたデータをGIS(地理情報システム)などを用いて時空間的に解析し,人間活動が生態系に与える影響を「定量的に評価」することです.「広域・長期・高精度」なエビデンスに基づき,湿地(河川,湖沼,湿原)の保全・再生に向けた具体的な解決策を提示する.私たちはデータ駆動型のアプローチで,将来にわたって豊かな自然環境を次世代に残すための「情報の基盤」を築いていきます.