Research

私たちは、発生や生殖において、細胞が集団となることで生み出す豊かなダイナミクスに興味があります。バイオイメージング測定やデータ解析、数理モデリングを有機的に結びつけ、生命現象に特有な多細胞システムや仕組みの理解を目指します。

研究手法

バイオイメージング

さまざまな蛍光顕微鏡や観察技術、蛍光バイオセンサーを使います。代表的な例を下にいくつか挙げますが、これらを日常的に行えることが私たちのグループの強みです。主に、蛍光生体イメージング室所有の共通利用機器を利用します。

数理モデリング

細胞を主体とするエージェントベースモデルや微分方程式系の定式化により、実験データを基にした数理モデルを構築します。多くはシミュレーション研究ですが、力学系理論に基づく数理解析も行います。目的に応じてアプローチを決めますので、モデリングの様式は何でもありです。

研究テーマ

以下にいくつか互いに関連したテーマを挙げますが、a. 個人が研究活動を楽しめること、b. 研究活動を通して得られる成果が何らかの形で社会に貢献できること(*)、の2点を満たしていれば、現象や対象、手法にこだわりはありません。それぞれが抱く科学的好奇心を優先します。多くの人が競争する分野で重要課題に取り組むよりも、興味深い問題を発見・設定し、科学的価値を創造できる独創的な研究を進めたいと考えています。

* 単に役に立つこと、ではない

1)力や幾何に対する細胞集団応答システム

細胞は、化学物質のみならず、機械的な力や周囲環境の硬さ、形状などから入力刺激を受容し、さまざまな運動に変換する巧妙な仕掛けを持っています。複雑な入出力応答を示す細胞が多数集まることで生み出される特徴的な分子・細胞の集団ダイナミクスは、高次生命機能を支える生命の基礎過程です。私たちは、『力』や『形』の受容に対し能動的に力を生み出し変形する細胞応答の性質に着目し、その集団制御システムの機構解明を進めています。また、本テーマを通して、メカノバイオロジーや生物物理学の観点から、生命科学の発展に寄与する新しい技術の開発にも取り組んでいます。

2)多細胞組織の形態形成・パターン形成

自然界では同じようなパターンや構造が繰り返し出現します。私たちの体の中の臓器も例外ではありません。たとえば、肺や腎臓は樹木のように幾重にも枝分かれし、内耳の蝸牛管は巻貝のようにぐるぐると螺旋をかたち作ります。これらのパターン形成過程を眺めていると、単純な形態形成のモチーフが繰り返されているように見えます。形態形成のモチーフが適切な順序・配置で出現することが、複雑な臓器形態形成を理解する鍵である、と私たちは考えています。それでは、細胞集団はどのようにして基本単位であるモチーフを作り上げるのでしょうか?あるいは、適切なモチーフの出現を調節する制御システムはどのようなものでしょうか?これらの問いを中心に、下記のトピックの研究を進めています。

これらの基礎研究を通して、臓器のかたち作りの理解を深めるとともに、所望の生体組織をかたち作るための応用研究へと発展させたいと考えています。また、生体組織の形態形成と自然界に見られる非生命パターン形成現象との比較から、普遍的なパターン形成原理を探究していきます。

3)生殖機能を司る分子・細胞集団ダイナミクス

生殖は生命情報を未来につなぐ重要な仕組みであり、不妊という人類が抱える世界的な課題を含みます。私たちは慣習的なアプローチに捉われず、生体イメージング技術を軸に、生殖に関わる分子・細胞のダイナミクスと機能を定量的に結びつけることを目指しています。具体的には下記のトピックの研究を進めています。


本研究テーマは、加齢による影響などライフサイクルにおける生殖機能の変化にも着目し、医学の諸問題への関わりも意識しながら進めています。