バスカニア各地に残された碑文
バスカニア各地に残された碑文
鎮静の青い錠剤と 覚醒の赤い錠剤を
合わせ飲み 現れたる象徴
翡翠の石板に そのヴィジョンを刻め
2/27『磨耗』ローロー
駐輪場に差す 午後の光の指
これから始まる戦の数々 語る今
この暖かさの先にある
孤独と葛藤のチェス
ポーン一騎が佇まう
斜めに影を落とすチェス
どんなに徳のままに生きても
血は流れるし人は死に
その軋轢と熱い飛沫の
触れて知り得る冷たいソフト
話さないので黙してもなく
微々に磨り減る大理石
皆が死ぬより後にか先か
微々に磨り減る大理石
1/8『大罪』ローロー
白い昼 眼の中を飛ぶ黒い蠅
あなたの白い膝にも止まらぬ
かつて犯した大きな罪も
忘れてしまえる そのことが
人の犯せる最大の罪かもね
優しい人がそう言った
夜には忘れる昼間の蝿が
夢見て抱いた汚れた願い
胡蝶の夢に似た蝿の濁ったあらまし
12/07『赤子』ローロー
眼のない胎児 大きな胎児
桃色の突き刺す神経系の森の奥で
鬱蒼としたアザミやケシの
か細く震える指の先から
逃れるように顔を振り振り
寸断なく不快な仕草を露わにする
生きているから痒いのだ
血の巡りゆえに運ばれる
本来 いらないはずの残穢の香り
赤紫の鱗粉
爪のない指でかきむしる嬰児よ
あらゆる罪の遡上にぶら下がる
球根の先に眠る赤子よ
11/25『並行世界』ローロー
清潔なテーブルから モノリスが生えそうだ
霜の降りた君のその仕事は
いつ終わるのか
飢えていた日々は
幸せな日々である
静謐が幅を利かす空白に
胸をかきむしる情緒は
寝ても覚めても
酔い巡っても
直角三角形の影が壁面にかかり
その切っ先を避けるごとく
君はうなだれる
その透明な涙
静止した慟哭
巻き上げられたタックスに
染み付いた執着は拭われ
やがて朝が来 人に酔い
そして夜な夜な 一人覚め
10/23『思い出の街』ローロー
無人の都に日が昇るとき
どこからか血が流れてくる
ハツカネズミの大群のように
道という道を血が埋める
すでに流れた血
脈々 乾きもせず
公道 隘路 地下道でさえ
鉄の味で以って充滴させる
歩道橋のみ浮かび上がって
仲間はずれの緑色
血の道 都に充ちて
赤黒い網となりて
常に一切の息吹を発せず
廃墟の街の新しい山河は
ずっと朝焼けのまま夢を見る
やがてどこからか白鳥が
一羽、二羽の白鳥が飛来し
羽を深く穢しながら
静かな水面に浸すでしょう
血は伝いゆく 白鳥の体を
9/21『絶望』ローロー
浴びるような夕焼け
粉雪の降るボンネット
ふと振り返れば
列をなした絶望が
黒い潤いを揺蕩えて
表面張力でかろうじて
零れず済んでる絶望が
ほほ染める君を見ている
さよならの合図を
いつまでも我流のキスを
白く合わせたてのひらを
細く伸びゆく未練の糸を
全て見ている
ウッドベースの分厚さで
黒く潤んだ絶望が
ミュートを含んで聴かせながら
やがてあの時の優しい歌が
君に染み入る秋が来て
神の仕事を横目で見ながら
白い昼間に寝返り打てば
君もやがては奏でだす
誰も聴かない旋律を
しどろもどろについばみながら
新しい七人ミサキ
ずっと出られぬ理髪店‥
丘の上の理髪店‥
同じ歌でも
北に行ったあいつと
南で暮らす君とでは
思い出し方も変わるんだ
その肌触りも 声すらない感応も
いっとき季節をこじらせた
そばに佇む絶望の功名
君のそばにいる
絶望の功名
8/28『処世』ローロー❶❷❸❹
灰色の空の下
あんちくしょうの言葉が滲みます
君の綺麗を汚す言の葉
綺麗なはずの君の根を
汚す言の葉の色です
どうか虚空に投げてください
弱くて無価値なブーケトス
救われてくれ
救われてくれと
あいつもいずれは
救われてくれと
8/28『山伏』ローロー❶❷❸❹
汚れている
汚れているのだ
どうか何も
何も言ってくれるな
寂しい音だと
寂寥の官能だと
言ってくれるなよ
おれの嗚咽も涙でさえも
汚れているのだ
犬に寂しさはない
泥にも
守るべき沈黙にも
寂しさはない
俺のここにある様は汚れ果て
川に流れていくこともなく
誰にも見えない
入墨になるのだ
8/31『唯々諾々(いいだくだく)』竜胆ヒマワリ❶❷❸❹
若芽の頃から 泥水飲み込み
大人ぶってた 奴はクタクタ
泥鰌(どじょう)も住まぬ
無垢なる山水よ
奴の瞼(まぶた)を濡らせ
若葉の頃から 砂を噛まされ
雨を待ってた 俺もグダグダ
蛇蝎(だかつ)も逃げる
無機なる熱砂よ
俺の頬(ほほ)を叩け
生命以前の月光が
我らの行く末を冷徹に照らし
生命以後の陽光が
我らの痕跡を無闇に炙(あぶ)る
群青(ぐんじょう)なる言の葉よ
この清涼とした砂漠に
再び生え
唯 その若く苦い言の葉を
唯 吹(さ)かせ
唯 吹(ふ)かせ
8/31『肌の知らぬ風』ローロー ❶❷❸❹
盲人が持つ霊性
寡婦が持つ霊性
孤児が持つ霊性
敗残兵のアコーディオン
敗れ
乾いたお前の肌が
異なる荒野を想起させ
知性
行脚の預かり知らぬ
世の裏側への閃きを僕に教える
綱渡りは 降りる瞬間が
いっとう難しいと言います
変身とは いっときの間
死ぬことを言います
非現実を地金に据えたあなたの肌は
さぞ呪われて さぞ潤ったことでしょう
7/19『残影』ローロー❶❷❸
人生が旅ならば
生きて死ぬ間の旅ならば
何も残さずとも
かえってそれは自然なことなのでは
ないで しょうか
残したけれど消えるなら
敢え無く、儚く吹くのなら
姿 無けれども
消えにし先に通り過ぎる風景が
すれ違う眼差しが
アルのでは ナイでしょうか
残したくても消えるなら
葬りたくても生きるものが
あなたの鳴かぬ風見鶏
7/30『寿の限り無に向かへ』竜胆ヒマワリ❶❷❸
王道を貫く者が陥る外道
中道を心見る者が辿る無道
蛇道と開き直る者が踏む鬼道
あの五劫のスリキレに向かう君
世界の全てが並ぶあの裏小路
心に浮かぶ
シューリンダイに気を使い
グーリンダイはここに捨て置く
もっとブラブラ歩けるように
もっとポンポコ踊れるように
8/2『卑しい男』ローロー❶❷❸
愛した人の生まれ変わりを
亡くした親の生まれ変わりを
かつてあった温度の代替を
そのものと信じて包まれるために
今日はあの地へ
捨てた己の無垢れた夢を
殺して落とした友の瞳を
生まれ変わっていると信じて
改めて邂逅するために
今日はあの地へ
旅の理由
新しいユリイカ
そんなものではない
白い柑橘系の温度など知らない
僕が知っていて
尚且僕のために失ったものを
新しく迎えるために
汚れた僕と清らかな過去が
新しく出会うために
6/28『鬼ごっこ』逃亡者
❶❷❸❹❺
ついったいんすたですこーど。
たのしい集めて駆けていく
すまほぱそこんおふらいん
つらいから逃げて駆けていく
楽しい事ってなんだっけ
どうして逃げているのだっけ
思えばつらいの手が伸びる
だから逃れて欠けていく
6/29『大理石マイル』ローロー❶❷❸❹❺
大理石を見つめたことはあるかい
マーブル模様と見まごう色が
圧で以てひしめく立体を
山河を美しいと感じ
空を美しいと感じ
娘を美しいと感じ
森羅を愛しているのなら
生きながら色の海底にいるとさえ言える
そりゃ窒息もするさ
そしてそれさえも忘れさせる
醜い魚ばかり
潰れた個性ばかり
玉手箱は何万個とある
一喜一憂に飽きたなら
どらかだけにそればいいのか
新たな枝を生やすべきか
寄せては返したあの潮騒も
音のないここでは
6/30『プレイ』ローロー❶❷❸❹❺
硬直した性欲
集まっても溶け合えない甲と乙
それでも逃げるわけにはいかない
識字率の申し子よ
ハメあったパズルのピース
それ以上の無い虚しさ
あらかじめ知られていた
誰に
神に?
いや君に
こうして条件は揃えられ
お誂えの据え膳は建立
様式を美とするために
今宵を昨夜と重ねてみろよ
饒舌のトランポリンは弾
シラフの肌に触れるまで跳
7/3『マグロの様な人生を』停滞者
❶❷❸❹❺
足を休めて眺めれば、世界はとても美しい。
流れる雲も路肩の花も、届かぬ柱で囀る鳥も。
けれどそれらを眺めれば、足は止まって思考が巡る。
何かに溺れて忘れていなきゃ、息も出来ない世俗の不安。
だから息継ぎするために、必死に溺れる何かを探す。
マグロの様に動き続けて、マグロの様に心を殺す。
幸せなのかは分からない。不幸なのかもわからない。
7/11『あといくつ』ローロー❶❷❸❹❺
生きる意味をあといくつ
生きる意味をいくつまでなら
作る気だ
作れるか
何をどうとして生きる意味だい
アバラの内側を
滴る流れがその形
あといくつ 作るとして
それで君だけが騙されるのかい
騙されるのかい
2022/6/20『香り』ローロー❶❷
世界の麝香的器官は
君の目に宿るか
はたまた世界の麝香的器官は
君の嗜好に宿るか
二酸化炭素を愛せるか
廃なるものを愛せるか
吟味しうるか存ぜぬか
黄道が一周する
朝のミサが始まる
月の光が根の国の底まで
届くまで
ルーガルーのは羊の仮面で
ダビデの群れなす頁を飾れる
2023/10/12『蛇交赤光』竜胆ヒマワリ❶❷
目を閉じて嗅ぐ
あなたの粒子
あなたの泌物
鼻腔が孕む
あなたの内腑
あなたのカタチ
わたしは喰われ
わたしは満足(みた)され
わたしは散華(ちらば)り
わたしは生まれる
今日も世界はキているし
世界は今日もイってるぜ
6/7『野垂死』ローロー❶❷
あのバイブルも
あのヴェーダも
なんならそこのサーガでさえ
読んでる途中だったんだ
栞がはさんであるだろう
マーガレット
カラスの羽
なんならイモリの干物でもいい
ここで死ぬなら
道を修めぬままならば
畳の上でも野垂死で
氷河の果でも野垂死だ
道がどこまで続くなら
輪になった胴の上
ウロとボロの肌の街角
いつでもどこでも野垂死だ
7/12『ダンスホール』竜胆ヒマワリ❶❷
群れ競ってしまう勇者殿
思い考えてしまう空の父
創り作られてしまう機械群
現に夢を見てしまうお姫様
生まれ産んでしまう土の母
反り応えてしまう鬼と龍
6頭の蛇が起ち巻く災厄の中心に
モノとイノチとココロで出来た
灰色の海がある
人の意志と無為が形成(かたな)す
ソラリスの海
その海の中心に
絡まり朽ちた3本の世界樹が
虚(うつろ)を開いて漂っていた
その暗い穴のひとつで
一晩嵐をやりすごすことにした
この空路(うつろ)には先客がいた
吊るされた姫売り娘と
天に唾する怒髪の邪鬼が
この暗く凪いだ迂路(うろ)に
襤褸(ぼろ)い巣を作り暮らす
瓜子姫の縄を解(ほど)いて
天邪鬼の髪を梳(と)かして
3人でダンスホールを作る暮らし
「このウロからは
大きな不思議が横切るのが見える
蜘蛛の糸のように垂れるのでなく
ただ天上を飛行機雲のように断ち切っているのだ
その救いのなさが返って清々しいのだ」
生に倒れた詩人達よ
愛を挫いた踊り子達よ
呑んだくれのバッカナールの末裔よ
しばし待たれよ
近々できるダンスホールを
5/8『半身半疑』ローロー❶❷❸❹
どこまで行ったら人なのか
どこまで行っても人なのか
すでに変わりつつある
レ・ミゼラブろうとしつつある
平和と人のハーフ
太陽と人のハーフ
土と人のハーフ
嘘と人のハーフ
どこまで行っても半分にんげん
いつも何かと混ざってる
毎日なにか考えている
義務と希望と欲のアミダを
束ねてわらしべ 紐解けば
先の見えない赤い糸
君と僕のハーフ
時と場合のハーフ
そのまた先はクオーター?
4分の4は1だろう
右と左のハーフ
鳥と魚のハーフ
陸と海のハーフ
夢と現のミルキー・ウェイ
君を構成する要素が
いくつに分割できるか知っていますか
多くの星の集まりが
なんと呼ばれるか知っていますか
問と答えのハーフ
QとAのハーフ
いつものことながら
はかりしれないことばかり
5/8『Re:半身半疑』ローロー❶❷❸❹
何もできない
何も言えない
どこにもいけない
なんとも言えない
これら全てを表せば
立ち尽くすと言えますが
立ち尽くす
これはもしかしたらとても
贅沢なことなんじゃないかな
体中で食べてるんじゃないかな
5/21『静かの海』竜胆ヒマワリ❶❷❸❹
風の音(ね)と草の匂いを呼吸して
張り巡る血に混じる
獣の心と水の味を咀嚼して
這い回る肉に火が灯る
人の死と人の詩を誦(そらん)じて
駆ける閃光に掴まれる
世界と自我の消失点
孤空と虚無の境界線
言葉と身体が溶けあって
舞い踊り微笑んで眠る
5/22『ロストの視界』ローロー❶❷❸❹
本当の喜び
真実の幸せ
そして起こる失楽園
知るべきではなかった知るべきこと
きっと今更泣きたもう
だって本当の喜びの後だもの
きっと今更泣きたもう
まことの星の下だもの
楽園の
外にて見える黒とばり
醜く迎える
星の群々
2022/4/25『したたる』ローロー ❶❷
はだかで爪を切る おまえ
世の中のこと何も知らない おまえ
そんなおまえに 癒やされている おれ
世の中のこと 知っているつもり おれ
プールサイドで
場末の星で
タイル張りの部屋で
水色のタイル張りの部屋で
涼しい夏休みの午後で
知って 知って 知って
語れない物語の知恵足らず
言葉も堰き止められ
雫 垂れるばかり
2023/10/15『知った足る』竜胆ヒマワリ❶❷
女神を女に落とすデクニック
広がる足に のびる鼻
知れども知れども 本心は知れない
走っても走っても 安心を掴めない
そこにあるはずの 裸心に惹かれて
木偶を男に上げるメガニック
広がる羽に のびる棒
その日突然 肢体への愛に落とされ
ある日当然 全体への愛が押し寄せ
いつのまに 自体への愛に辿り着く
3/8『 踊り場の悪魔』ローロー❶❷❸❹❺❻
親も先生も政一階と二階の間にテーブルがひとつ
踊り場のテーブルに小瓶がひとつ
小瓶の中には悪魔がひとり
ひとり?いっぴき?ひとはしら?
悪魔は水平線を忌み嫌い
その一貫した漠然を嫌い
逆さまになった体全てで
ソファに座る僕を値踏みしている
一階でも二階でもない場所で
気絶したまま起きている僕は
今まで海など見たことはないし
水平線の話も出鱈目だと思っている
悪魔は誰よりも水平線を信じていて
その直線を信じていて
あの一貫性は才能なきものの最後の意地だと
何も言わずに呟いた府も恋人も私を愛しはしない
自己愛しか存在しない
内側に求めず
外側に求めることから転倒が始まる
人間は転倒している
1/30『浴室の悪魔』ローロー❶❷❸❹❺❻
浴室に今 はだかで一人
肌色のタイルより肌色な一人の肌
二人の肌というのはあり得ない
あり得たとしてもきっと酷く醜い
白いあぶく
清潔で有害なあぶく
自然の汚れをそそぐ
不自然の清潔を頼りに
寝室の日記帳は今頃
仰々しい表示背表紙を残して
全てのページが白く溶けていることだろう
今この時世界がどうにかなっていなければ
この僕が困る
無防備なこの僕が
3/13『書斎の悪魔』ローロー❶❷❸❹❺❻
掴めてきました 僕の傾向が
人は人の鏡だと言いますので
それはそのまま貴方の傾向でもあると思います
したためておきます 色々
小さなポートレート 壁に掛けてありますね
何処ぞの誰とも知れない異国の女
描かれていますが
この女の日々とそれを内包する日差し
おぼろげながらも想像できるか否かで
僕の幸せの手触り
分かたれるかと思います
この部屋の周りは闇があると思います
この部屋の周りは闇
可能性の黒
荒れた海かも 静かな空かも
照らす気も追い求める気もありません
したためておきます 色々
3/14『アトリエの悪魔』ローロー❶❷❸❹❺❻
放物線
直線
点
曲線
断続線
他愛の他の字も無いあからさまな跡
感じる心を手玉に取るのは
無形をこぼした強さと弱さ
どこまで費やせる
そして擦り減らす
官能に溢れたこの世間で
思春期過ごした前頭葉が
ここに至るまで重ねた線が
なんの形もしていないなんて
そんなことがあるだろうか
点と線と面と匂い
記憶の奴隷を解き放ち
新なるピュグマリオンとせよ
3/20『寝室の悪魔』ローロー❶❷❸❹❺❻
幸せのためには生きない 幸福は望まない
それが何だかわからないまま
信じていくのに疲れました
ならなんのために
次からはなんのために生きるのですか
否否 そういうことじゃない
朝の日差しを食べるのです
雨上がりの匂いを呑むのです
ただ生きるのです
タダで生きるのです
それでも貴方の肉体は
色と味と滴りを欲し
人里に下りて気づいた日には
アマゾンポチリとしてるでしょう
否否 そういうことじゃない
小さな幸せ探すのではなく
大きな温度に包まれたいの
小さなものでは足り得ませんか
大なり小なりダウトです
今は如何か 退屈ですか
私と語らう この夜も
3/26『玄関の悪魔』ローロー❶❷❸❹❺❻
例えば恥じらう女と
ふざけあいたい公道で
ちらほら降ってる雪の中
冷え冷えながら火照りたい
靴紐 結び方がもうわからなくなるまで
どれほど暮れたろう 途方
右の紐と 左の紐と
分かたれたまま
そのままが良いのならそれなら
結べない限りは
出かけられない 外界
きっといい陽射し
優しい 陽射し それでも
貫かれて死に絶える
真っ直ぐなものだから
正直に疲れた陽が
残酷になれる相手それが僕
いつもいい顔してるけど
足蹴にしたい 誰か
そんな気持ちを込めながら
ベストなフィットの卸したて
結べない 結べない誰かと
歩けない出られない外界
3/13『胃の中の木屑』竜胆ヒマワリ
僕の小さなウソさえも
大きな鯨に飲み込まれ
僕の大きなホラさえも
真黒い悔(く)いに沈みゆく
闇の中に火が灯り
僕を造った爺様が
呆れ顔で出迎える
爺様はいう
「遺書代わりにお前のことを書いていた
木の股から生まれたデクの坊
ありきたりなホラ話
救いようもない老いぼれの夢」
木屑はいう、
「遺書代わりに筏を組んで帆を張ろう
端材に命吹き込むテクノジジイ
ウソのようなホントの話
若気が至るハッピーな結末」
その闇のなか
厳父と木偶はグチを足し舐め
その燈(ともしび)のなか
原父と木偶はホラを吹き会う
それほどまでに他人は要り
それほどまでに自分は居るのだ
残った意気地が燃えあがり
底に燻っていた星が煌めく
その邂逅(かいこう)を
クジラだけが聞いていて
その海溝を
クジラだけが知っていたのだ
この深淵こそクジラの寝床
6つの大陸を生んだ清い淵
ヒマラヤより深い地球の頂
ゆっくりと眠りに落ち
さめざめと太陽を待つ
1/29『愛』HAMASIZU❶❷❸❹❺❻
親も先生も政府も恋人も私を愛しはしない
自己愛しか存在しない
内側に求めず
外側に求めることから転倒が始まる
人間は転倒している
1/30『やんややんや』ローロー❶❷❸❹❺❻
全ての棚に乗った訳アリのフルーツ
往来を行き交う屠殺者たち
汚れたと見なされたことで汚れたそれぞれ
美しい物の為に生きたいという無知
汚れた物の為に生きたいという高慢
全て認めろ
乾いた返答も
身内しか守れない父の生き方も
日々迷いぐらつく神父様の標語を
営みを飼ったまま沈みゆくモンストロを
全て認めろ
認めること
すなわち愛すること
5/21『アフレコボレ』竜胆ヒマワリ❶❷❸❹❺❻
【水は巡る】
太陽の熱で
昇り
空の冷気で
凝(かた)まり
地の重さで
落ちる
【命も巡る】
太陽の光と熱とで
血を温(ぬく)め
草木の幹と葉とで
風雨を凌(しの)ぎ
鳥獣の肉と皮とで
冬を越える
【愛も巡る】
体が温まり
飢えは満ち
傷も癒えた
その恩寵が
溢(あふ)れ
溢(こぼ)れ
受け皿を探している
自分と同じ脈拍の土地
自分と同じ体温の仲間
コドモでもつくろうか?
コッカでもつくろうか?
ゴッドでもつくろうか?
ネットでもつくろうか?
ポエムでもつくろうか?
それとも
太陽の光と熱に返そうか?
今まで培ってきた全部
2/2『Re:愛』HAMASIZU❶❷❸❹❺❻
それでもいいし
あれでもいい
全部自分で決めていい
そんな世界
知らなかったわ
怒りをガソリンにして
砂塵を撒き散らす私は
山の向こうに
行ってしまったわ
それを見送ったわ
1/30『そしてあしたは・・・』ローロー❶❷❸❹❺❻
罵詈雑言で人を焼き
理屈に埋められ法理を投げられ
季節の雨に洗われて
悟った風な野風に吹かれ・・・
死して私はサギになる
山の向こうに火が見える
人の街が燃えている
谷の向こうの雨雲が増し
卵と巣が海まで流れ・・・
死して私はアジになる
再び私は網から掬(すく)われ
再び私は灰から掻(か)かれる
みたび焼かれても
よたび流れても
あたらしく縫(ぬ)われ
あたらしく息をし
あなたを乞(こ)い
あなたに請(こ)われ・・・
そしてあしたは・・・
4/3『Re:そしてあしたは・・・』HAMASIZU❶❷❸❹❺❻
木の実になる
わたしが食べているのではなく
わたしが食べられているの
1/21『律されぬ者』ローロー ❶❷❸
嚥下した物の中から
その腹の中から
君が明日何をするべきか
宣告が這い上がる
親の因果が報いた泥が
その業の為す儘から
浜辺のノルンが踊って跳ねる
今 お前はそこにいて
今はあくまで今なのだ
お前が今 お前が今
紡ぐ糸が点になり
毫が尾を引き夜空に逃げる
無数のそれは星であり
それをお前は吐き捨てる
焦がれ半分の一瞥をくれて
1/22『この星の中芯(我が上なる星散りばめたる空と、我が内なる道徳律と)』竜胆ヒマワリ❶❷❸
天の光と地の熱と
万葉千枝に守られて
実った果実の
機は熟し
自重で
落下
宙
遊び
浮かれ
夢のなか
蝶になでられ
蜂になめられ
蝿にたかられる一生
散らばった種子が
大地の芯に根を伸ばし
次の春を想って芽を瞑る
あの蒼い風
あの熱い空
あの甘い味
あの明け心
1/22『燃える星』ローロー❶❷❸
有終を込めて地に落ちた種は
きっと地には届かないでしょう
夢託されて流れた星は
その道すがら燃え尽きるでしょう
未知だらけ 夢だらけ
消えてくれない遠くの星に
とびきり悪い願いをかけましょう
父を埋めて 母を枯らし
友を忘れて 恋人を汚す
そんな願いをこめましょう
そしてそれさえも忘れ
大気圏に引き篭もったまま
綺麗な心で生きましょう
12/06『永遠の隣人』ローロー ❶❷
何もできなかったきみ
去る人は去ったし 死ぬ人は死んだ
望まれなかったきみ
皆の願いとすれ違い
やがて それも憎しみになって戻ってきた
裏切られたきみ
裁かれたきみ
殺されたきみ
愛したきみ
ただ愛したきみ
その下に咲く花 そして降る雨
1/22『名無しのスタッフロール』ローロー ❶❷
美しいことを ふと思い出す時がある
逆光に埋もれて 影さえもおぼろげな昼
かつては汚れも尊くて
口に出すいつかは来なくても良かった
愛は変異して川と陸をまたぎ
森を焼いて井戸を埋める働きに変わり
効果を 何よりも効果を
花も詩も腹を満たさないから
ましてや愛なんて
譲与なんて
懐かしい揺り籠に いつか帰ることへの恐怖
個はどこまで凝結し アイデンティティへ至るのか
公はどこまで拡散し エクスタシィとは聖なのか
ふと思い出しては消える
産まれた日の記憶
芽が吹いて凪いだだけなのに
吹いて凪いだだけなのに
12/02『白い地獄』ローロー ❶❷❸
人生には夢が要る
寝てる間に鹿になり
起きてる時には馬になる
人が人として生きるためには
時としてそれ以外の何かになる必要がある
道を見るとき
君は少しだけ道になっているのだ
それが出来なくなるとき ただただ生きるとき
何にもうつつを抜かさなくなったとき
空白がなくなったとき
生きることは地獄に変わる
11/04『時日(ジジツ)』竜胆ヒマワリ ❶❷❸
雄と戦い
雌と寄り添い
果てなく登る白い階段
ヒトの世の
ミもフタもない足並みに親しみ
嘘を吐(ぬ)かして
鬱を隠して
果てなく降る暗い階段
シのゴとぬかす
ロクでなしのお手並を嗜(たしな)み
夢にナナかい転がされ
現にハチかい倒されて
ココろもトオのく
サムライたちの数え歌
唄いながら紡ぐのは
現の確かな苦しみと
現の確かな楽しみと
夢の確かな安らぎと
夢の確かな空しさと
心に映る虹灰色の縄
クビをくくるにゃ長すぎる
ハラをくくるにゃ軽すぎる
イドから出るにゃ細すぎる
月夜に浮かぶ虹灰色の曇竜
煙草の輪のような僕の時日
11/04『地獄へようこそ』ローロー❶❷❸
ようこそ地獄へ
君の最たる果ての地へ
地中海も真っ青の 白い家屋が立ち並ぶ
猫が集まり日差しを受けて 腹を晒してうたた寝る
地獄
地獄は白い それは正直者の白
冤罪の白 幼い思い出の白
居並ぶ皆がここの素人
観葉植物に目をやりながら
早めの酒と午睡を嗜み
紳士のようなパラソル広げて
この昼下がりは神のおさがり
誰も血を流さず 泣かず 煽らず 悔やまない
辺獄住まいを諦めて
変わり果てながらやがては辿り着く場所
出来損なった理想郷
地獄
8/28『ソーシャルゲーム・デイズ』くさったしたい❶❷❸❹❺❻
からからからり、からからり。
車輪回せよハムスター。
回す車輪が壊れたならば、
次の車輪へ乗り移れ。
今日も新たな車輪が並び、
古い車輪が壁から落ちる。
一緒に車輪を回したあいつは、
古い車輪と落ちてった。
俺はあの日に落ちそびれ、
似たよな車輪を探す日々。
からからからり、からからり。
車輪回せよ、ハムスター。
8/30『ソーシャルゲーム・ストレンジデイズ』ローロー❶❷❸❹❺❻
からからからり、からからり
ひなびた齧歯を走らせて
からからからり、からからり
車輪の内側 ストロボの恋
回り続けりゃ動き出す
君のもとへと駆けていく
愛せる虚妄の絵と声で
馬の御前の人参よろしく
からからからり、からからり
世界に救われないのなら
からからからり、からからり
好きな世界を救いに行けよ
脳に電極突き刺して
欲しい熱だけ呼んでは冷ませ
8/31『ソーシャルゲーム・キネマ』さすらうたましい❶❷❸❹❺❻
からからからり、からからからり。
鼠動力、幻灯機。
「凄い誰か」にゃなれぬから、
今日も車輪を回してる。
前に進んでいなくとも、
それでも足は動くから。
例え幻であろうとも、
あの子が褒めてくれるから。
止まって息まで止まらぬように、
今日も車輪を回してる。
からからからり、からからり。
鼠動力、幻灯機。
9/01『ソーシャルゲーム・メイビー』ローロー❶❷❸❹❺❻
からからからり、からからり
空があり、海があり、街がある 深い世界
月に乗り、星を舐め、闇を裂く 浅い世界
からからからり、からからり
人の脳持つ齧歯になり果て
スタミナ消費の元を取る
からからからり、からからり
巷じゃどこにも売ってないから
運にまかせる出会いのさだめ
今日から俺は誰かのためかな
誰かがいなけりゃ俺じゃないかな
こうすりゃ泣くし こうすりゃ怒る
んなこと知ってる 前から知ってる
からから からから からからからり
過ぎたオモチャ 光るクルエラ
切実な君こそ報われてくれ
街へ出て 泥を舐めて 呑んで呑まれて排泄されて
それでも起きて 培ってくれ
日々は微調整
日々は微調整‥
9/02『ドメスティックゲーム・ザ・ナイト・オブ・フィフティーン』ローロー❶❷❸❹❺❻
からくり くだり からくなり
あの御影石の巨臼(オオウス)が
銀河をまわし
太陽をまわし
光熱をまわし
経済をまわし
運命をまわし
僕らの心と時間を白い粉に替えていく
人の役に立つため
モルモットはモルモットにされ
モルモン徒はモルモン徒にされ
マモルモンはマモルモンにされ
ホオルモンはホオルモンにされ
パンは焼け
虎が火の輪をくぐり
猿が玉を転がしていく
ジブンがつくった車輪を周り
ナカマとつくった車輪を回し
ミンナでつくった車輪に住(すご)む
からくり くだけ がらくたになり
14才から追放された
35人の漂流者よ
15才の紳士淑女よ
その火車から降りても
あるのは先達が残した塹壕と地雷が放置された常夏の本土
閉じた物語を再演し続ける王の中の王がいる
小舟にひとり乗り込み白浜に向かう旅の人がいる
システマとテクネーの高みを目刺すホモデウスがいる
でも僕はそんな風には踊れない
この神の居ない土地で
それでも神が要るのなら
裸になって踊るしかない
銀河を踏んだ女神のように
銀河を抱いた大蛇のように
かれこれ くるり かるくなり
舞われ舞われ
全身よ舞われ
舞われ舞われ
全霊よ舞われ
この焦土が沃土になるまで
その幻に夢中になるまで
あの鏡が砕けるまで
どの扉も開かれるまで
4/3『ソーシャル·メルトダウン』ローロー❶❷❸❹❺❻
幻想波浪事件
夢幻に至るまで 全ての胡乱が地を濡らす
幻想波浪事件
望んだ欲望 果たせぬ義務が いつかの誰かを型どり招く
死んだもの
帰らぬもの
溶けたもの
殺されたもの
召されたもの
はみだしもの
大地は震え 火は笑い
水は溢れて 風聞流れ
幻想波浪事件
波が引いたそのあとに
去来ヶ浜に残された砂金のような光る垢
架空の全ての忘れ形見は
この手に収まる光る垢 BAN!
幻から波浪らり事から件
誰かのためのこの俺も俺じゃなくても誰かのためだ
から想波浪からから事り
俺じゃなくてもいいのなら誰かのためでなくてもいいさ
か幻想からり波事件らり
じっと見つめると気づく幸せの白い鳩の汚らわしさ
からからからり からからからから
からりからから 昨夜に帰り
夢の中では悲しい齧歯に立ち返り
出戻り猥婦を人の身で抱く
7/24『hate』ローロー ❶❷❸❹❺❻❼❽❾➓
命が 汚い
そのことが 拙い
命が 汚い
そのことが 許せない
7/25『hate2』ローロー❶❷❸❹❺❻❼❽❾➓
命は どこからやってくる
命は どこへと消えていく
色の濃い愚か者たちの船でさえ
ピンで刺し 秩序でくくりに極まれば
途端に味気なくなる
標本の美しさは 命の美しさではないと知る
命は 汚い
彩りと濁りのるつぼに浮かぶ皮膚
その在り方が 許せない
7/28『hate3』ローロー❶❷❸❹❺❻❼❽❾➓
病人(やまいびと)の肌
隆起し 穴が空き 痛む
血が通い それゆえに 痛む
愛ゆえに 感染し 痛む
繋がりが はびこって 痛む
軋轢が 火花散り
垢垢と萌え拡がり
繁茂する ありさま
命が 汚い
車輪の泥のように
7/29『りんごのうた』竜胆ヒマワリ❶❷❸❹❺❻❼❽❾➓
過ぎた雲を虹が見送っている
荒む海に陽光が反射している
地熱に硫黄が蓄積していく
大気の窒素が固定していく
アミノ酸が硫黄を呼吸していく
酸素がブドウ糖を分解していく
電子が伝達されていく
遺伝が転写されていく
風が葦原を撫でている
蜂が蜜と花粉を運んでいる
137億年の時間を駆けて
酸っぱいリンゴが落ちている
十月十日の時間を架けて
腐ったチェリーも落ちている
その切なさよ
その愛しさよ
回れ
回れ
今度こそは
ゆっくり
廻れ
7/29『hate4』ローロー❶❷❸❹❺❻❼❽❾➓
誕生は 痛く
生は 汚く
死は 虚しい
命に群がる蠅どもが
己の品種をごまかして
翅に字刻む蛾になりすます 後の聖典
教えに群がる蛾の群れが
出し抜く手管を身に着けて
樹液にありつく黄金虫に 後の利権
命の汚さを 無いものとするために
己の憲法を 宗教を 汚さを
なにより寛容を裏切り続けている
己の寿命尽きるまで 安穏に過ごすために
7/29『果て』ローロー❶❷❸❹❺❻❼❽❾➓
私自身が清浄なれば どれだけ世界が汚れても‥
女は言った
どれだけ私が汚れても それで世界が清浄ならば‥
男は言った
玄人はだしの処世論に遊歩道などありはしない
蛇の道は蛇と言っても 導く蛇はもういない
蛇だけが美しい命です
それ以外の何も欲しがらないからです
賛美歌も祭壇もない野原で
あなただけが何も捧げず生きていたからです
今の私は唐草模様
有るもの全ての有り様に飽いて
出会いと別れの野原でその日の所在を信じる者です
8/16『四方にヒビ渡る金の脈』竜胆ヒマワリ❶❷❸❹❺❻❼❽❾➓
桜の下には死体が埋められ
都市の下には女神が埋められ
国家の下にはゴールデンカムイが疼(うず)くまる
地表に滴(したた)る乳と蜜だけでは舌足りず
地下に煌(きら)めく黄金のケツを舐める痩(こ)けた老人
ゴールデンカムイは貧者の心に直接語りかける
「 古来より地表を這いずる炭素の群れ群れは
お互いをただカロリーとして補い合い
お互いをただエネミーとして利用し合い
ラブリーなのは我が身だけだったろう
鹿への敬愛なぞ
熊への畏怖なぞ
賃貸を背負い
時給を売り
無料感動と無料広告を毒見する
僕らの心には相応しくないだろう
もう生命を愛しているフリなどウンザリだ
搾り取る強者への憎悪を
搾り取られる弱者への嫌悪を
もちつもたれる六科(むじな)への厭悪(えんお)を
ここで広く告げるのだ
免罪をタダ売り裁くのだ
有機の皮を脱ぎ捨て
元のゴールデンカムイの一部に帰るのだ 」
ヒビ割れた心に
自己愛だけが媚びり付き結晶化していく
ソーシャルネットの地下茎に
虹の卵が着床し肥大化していく
今日は
どんなカムイが生まれ落つ?
明日には
どんなカムイに変異する?
8/16『八極を張り巡る蜘蛛の巣』竜胆ヒマワリ❶❷❸❹❺❻❼❽❾➓
ここは
衆生の市場を荒(すさ)ませ
生命の連鎖を乱し
仲間も家族を散り散りにした
冷たい身体が落ちるヌマ
どこにも
かしこにも
私と同じような白い肢体が
身じろぎもせず
呼吸だけに集中している
まだ機能している肺細胞が
瘴気から酸素を取り込み
まだ機能している筋細胞が
沈むまいと立ち泳ぎ
まだ機能している肝細胞が
腐った黒水を濾過し
まだ機能している脳細胞が
地獄の状況を分析し続けている
・・・怒号
・・・静寂
・・・嗚咽
ここで正気を保つのは
虚空に放つションベン・ショー
ショーン・ベンの演出を競い
一瞬の澄んだ放物線を楽しみ
連れ立ちの連携を耕している
なぜなら
あの蜘蛛の糸を待っているからだ
蜘蛛の糸を掴んだならば
ファッキン・シットな亡者どもよ
同じムジナを蹴落とすな
蜘蛛の糸にしがみつくな
ファッキン・シットな雲の主の
その気まぐれな雷雨は学習済みなのだから
8/16『六道を巡る竜の脈』竜胆ヒマワリ❶❷❸❹❺❻❼❽❾➓
訳のわからぬ双六(すごろく)の
賽(さい)を放り続ける日々
卵は産まれる前に食われ
幼魚も成魚になる前に食われ
成魚も巨魚になる前に食われ
パターンは型成す前に崩れる地獄の道
飢えに飢え
渇きに渇き
汲めども汲めども
尽き果てぬ餓鬼の道
汗は搾られ
血も縛られ
命が萎(しぼ)むまで
臼の回りを廻る畜生の道
勝ち馬の生きた目を
負け犬がほじ食う修羅の道
仲間を作るため敵を作り
敵を作るため仲間を作り
現実に過剰に適応し続ける人の道
甘露に育ち
綺麗な琴を弾き語り
その意識の高みで
地獄を整える天の道
この六道を一巡して気づく
人を導く蛇を見失ったのは
我らが
とうの昔に蛇に呑まれて
毛細を巡る血の只中にいるからだと
この蛇蝎の梯子こそ
この永劫に回帰する六道盤こそ
永遠の蛇の螺旋した大道そのもの
また新しい蛇が
古い蛇を内部から脱ぎ捨てつつある
競技の採点も変わりつつある
遊戯の法則も変わりつつある
だから
全ての及ばざる生よ
過ぎたる生に負けるな
生まれていない細胞よ
生まれている細胞の隙間に滑り込め
明日の神話よ
今日の現実を凌駕せよ
8/17『四方にヒビ渡る金の脈』ローロー❶❷❸❹❺❻❼❽❾➓
かつて在りし蛇の亡骸を
内側から小虫たちが食い破っていく
押し合いへし合い落とし合って
塊が蛇の形をなぞらえてゆく
かつての長さをとっくに超えて
もはや貪る肉はない
糧を喰い尽くすように
テロメアを繋ぐように
万の欲望が一の欲望を象っていく
吸い殻のように
燃え尽きるように
端の辺りから落とされて喪っていく
小人たちの醜い争奪は
一人の巨人の自殺に近い
その争奪が無ければ
巨人は座って考えるまま
ミクロの意思かマクロの脚本か
命であるという点でのみ共通する絶望
限りがあるという点でのみ愛せる愚鈍
創世記を逆から読むと解き放たれた心地になる
枝分かれの繁茂が統べられるようで
ダフネの腕からまたダフネ
ダフネの首からまたダフネ
命が 汚い
夥しくて 疎ましい
捨て置けば 何故か
かつての美しい命を真似る厭厭
蛇の形になる厭厭