ひだまりカフェのレシピ[01]
摂食障害の“料理法”
ひだまりカフェのレシピ[01]
摂食障害の“料理法”
"レシピ"といってもカフェのメニューのレシピではありません。6年間(*2011年10月現在)続けてきたひだまりカフェでの沢山の出会いの中で、なるほどと習い覚えた摂食障害の"料理法"。ここでは、参加者の印象深い"一言"をエッセンスにそんなレシピをご紹介していきたいと思います。
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「治るというのは元に戻ることじゃない」
初回の一言は「治るというのは元に戻ることじゃない」
家族や本人たちのお話をきいていると一つの典型的な摂食障害特有のタイプが浮かびあがってきます。周囲の期待にこたえてひたすら頑張り、自分をどこかに置き忘れたまま背のびを続けてきたよい子たち。世の中のものさしにあわせて必死に歩いてきた揚句、疲れ果ててうずくまるように食の症状をかかえこんだ本人たち。
早く元に戻ってくれと心配しつつも思わず知らずに焦ってそんな本人を促すまわり。何故以前のように頑張れないのかと疲れ果てた自分を責めたてる本人。ひだまりカフェに登場したての殆んどの方々は、でもどうしてうまくいかないのだろうと困り果てたようにおっしゃいます。
今の私は思います。周囲の期待って何だろう。世の中のものさしって何なんだろう。もっと速く、もっと沢山、もっと上手に、もっと完璧に、もっともっと…。しなくちゃしなくちゃ…。もしかしたら、自然を使いつくし未来をむさぼりつくしてしまうかもしれないこんな世の中のちょっと強迫的な"常識"に、摂食障害の人たちの心と身体が非常に敏感に、きわめて正確に、否と反応したのではないかしらと。
治ることはそんな外からの窮屈な枠に再びぴったりとはまりこもうと頑張ることではないはず。"まず世の中のものさし(例えば進学、就職、結婚などを含めて)ありき"ではなく、とりあえずはじっくりと摂食障害の人たちの心と身体のかすかな声、症状となってあらわれている声にならない声に耳をすませてみてはどうかしら。どんな時に辛くて、どんな時に腹が立ち、どんな時にむなしくて孤独で食の症状にしがみつかざるを得なくなるのか。どんな時にうれしくて、どんな時に涙が出て、どんな時に誇らしく思い、生きていてよかったと思えるのか。自分の中のセンサーの正確さを信じて、ゆっくり時間をかけて、世の中のものさしから自分をひとまず解放してみたらどうかしら。そして何か小さなチャレンジ、自分というものの手ごたえを感じるための、つま先立ちせずとも手の届く小さなチャレンジから、新しい自分自身のものさし作りを始めてみてはどうかしら。
回復にとって大事なのはたぶん、新しい自分のものさしを使って生き始めること。そこに至るまでの作業は、容易なことではないかもしれない。長く険しい道のりなのかもしれない。けれどそこでの経験はきっと、今まで生きにくさを感じながら暮らしてきた摂食障害の人たちのこれからの人生を、色どり豊かな手ごたえのあるものにしてくれるでしょう。その苦しい努力はきっと、まわりの人にも、また世の中の人たちにも、新しい大事なものさしを提供することになるでしょう。どうか新しく見つかった生き方が"一人勝ちの幸せ"ではなく"皆に少しずつの幸せ"をめざすものでありますように。
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MK/yy[201110ひだまりカフェbooklet No.3掲載]
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