それぞれのエッセー[10]
摂食障害は、『食』のトラブルではなく『心』のトラブル
それぞれのエッセー[10]
摂食障害は、『食』のトラブルではなく『心』のトラブル
私は、このひだまりカフェの参加者の一人です。かつて、128キロまで太り、4ヶ月で40キロのダイエットをして、摂食障害の苦しさに振り回され続けた男です。真剣に自殺を考えた時期もありました。
しかし、今の私は本当に生まれ変わりました!昔の自虐的な自分が嘘のように、今の自分を好きになり、食べ方も落ち着いていて、人生が楽しいです。私は今、サラリーマンを続けながら、摂食障害と引きこもりで苦しんでいる仲間に寄り添う活動をしています。
今回は摂食障害の回復の為に、私なりに学んだ事を、短くまとめてみました。摂食障害者やご家族の方のお役に少しでも立てたら幸いです。
まず、これを読む前に、次の言葉を必ず頭に叩きこんでから読んでください!
《勇気を出して回復できる事を信じてください!》
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(1) 摂食障害の「原因」をハッキリと知ること!
摂食障害が治りにくいと言われる理由の一つに、根本的な原因が正しく理解されていない事があると考えています。
今までは、「痩せた方がいいと思い込んだ女性が過剰なダイエットに走って摂食障害になる」という説が主流でしたが、それがそもそも誤っていると思います。
私は摂食障害の原因は、「ほぼ全ての人が幼少期に心に傷をつけられている」ところから来ると考えています。言い換えれば、摂食障害は、「食」のトラブルではなく「心」のトラブルなのです。もちろん、人によってその理由は様々ですが、根本的には「心の傷」が起点になっていることをまず知ってください!
あえて極端に言いますが、「何をどう食べるかについては全くこだわる必要はありません!」「食の暴走」は、表面に出てきた現象に過ぎません。根本的に回復する為には、原因を突き止めて、本人の苦しみを取り除いてあげることが必要です。つまり、心の傷を癒やして、自我を確立すること。それが本当の摂食障害の回復の道だという事を、まず本人も家族にも分かって戴きたいのです。
あえて最初に極端に言いましたが、当然、「回復の道を進む為の最低限の体力は必要」です。従って、よほど身体が深刻に弱っている場合には、入院をして、医学的な治療を受けながら、必要な食事量を摂取するように努めてください。
私がここで説いているのは、その後の話です。
ある程度体力が回復してから、引き続き病院で、「食生活の改善や身体の不調に対する対処療法」を中心に受けていても、根本的な解決にはならないと断言します!
何故ならば、「本当の原因=心の傷」に何も触れないまま、ただ患者を入院させて規則正しい食生活へと戻そうとしているだけだからです。これでは仮に治っても、なぜ摂食障害になったのか分からないと同様に、どういう理由でその患者が治っていったのかが明らかにされていません。
よって、こういう表面だけを治療しようとする病院は、一時的に避難するのには良いですが、継続して治療を受ける事はオススメしません。
摂食障害は、
「きちんと愛されたいよ~!」
「安全に保護されたいよ~!」
「今の自分が何者なのか分からないよ~!」
「自分の生き方が苦しいよ~!」
と心が悲鳴をあげて、「食事」の分野で表面化して奇行するのです。
これが違う分野、つまり違うアディクト(症状)になって表れる人もいます。アルコールやギャンブルや、薬物やひきこもりなども根本的な原因は同様です。
つまりは心の傷です。摂食障害は、親や家族に「もっと私を分かってください!パパ、ママ、助けて!」と知らせようとするサインなのです。その苦しさを分かって貰えるまでは、「食にこだわった心のストライキ」は永遠に続くと考えてください。
摂食障害は治療しても回復しないのではなくて、摂食障害の原因を取り違えていた為に、誤った治療法が主流となって行われてきただけです。
必ず回復する病気です!私が「生き証人」ですから。
希望と勇気を持って、まず本当の原因=「心の傷」と向き合って治療していきましょう!
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(2)本当の原因から正しい回復方法へ = 心の傷を癒やして自我を育てていく
幼少期の子供は、心身共に未発達です。些細な事が心の傷となって跡に残ります。医学的な観点から見ると、子供の「脳の発達」と深い関係があります。子供、特に4~6歳にもなると、家族や周囲を認識する力がありながら、それでいて一人で生きていけるほどの体力がありません。もしも、家族間にトラブルがあったりすると、「両親が別れるのではないか?」「家庭が破綻するのではないか?」「自分は家族から捨てられてしまうのではないか?」「親が離れていってしまうのではないか?」などと考え、そうなったら自分は生きていけないと知らず知らずのうちに「本能的な危機感」を感じてしまうのです。
両親の夫婦喧嘩や、家族間のトラブルなどがきっかけで、一度心が傷つくと、子供は「家族の破綻を自分が食い止めよう」と懸命になります。特に幼少期は、家族が仲良くしてほしいという「共感本能」が強くなっている為に、そこに傷がついた時には本能的になんとかしようとします。
そして自分自身でも心の傷を広げないように「イイコ」になろうとします。本当は両親にもっと甘えたいし、自分を認めてほしいのに、家族が破綻しそうだから、自分が見捨てられないように必死に行動します。
そして、子供本人も無意識のうちに、親の為に迷惑をかけないように「イイコ」になろうとして、いつの間にか「親の為の自分」を作りあげながら生活していくのです。子供の体が大きくなった時には、「自分の為の自分」はどこにもないのです。
この世界に、完璧な親など存在しません。100点な家庭も存在しません。もっと言えば、親自身も弱いのです。愛情をうまく受け取れない環境で育った人は、誰でも自分に自信が持てずに「自我」が育たたずに大人になります。「自我」が未熟な状態のまま尾を引いて、やがて結婚・出産していきます。そして、「自我」という中心軸がない親はいつも「借り物」の考えで子育てをしなければならず自信を持って子供を愛する事が出来ないのです。自分が愛情をうまく受け取れなかったから、自分でも愛情を上手に手渡せないのです。「親の弱さ」は子供の心に不安を抱かせます。
しかし、恥じることはありません。親も人間です。完璧な子育てが出来る親なんか皆無です。
では、どうすればよいのか?
親の方からアレやコレやと指示するのではなく、ただ、摂食障害の子供を理解しようとしてあげてください。それだけで十分です!
感受性の強い子供は無意識に、「親の弱さ・孤独さ・淋しさ」を受け止めてしまいます。「私の親は生活に追われて、自分を愛してくれるどころではない」「私の親は自分が苦しくて、私の事なんて構っている場合じゃない」などと考えます。
家庭に問題がある子供は、摂食障害を発症する何年も前から、親の愛情を無意識に疑っています。やがて本能的な自己防衛の為に、親にとってイイコであろうとして、「自分の為の自分」ではなく「親の為の自分」として成長してしまうのです。そして、心を閉ざし殻を被ってしまって、自らも愛情を上手に受けられない人になってしまうのです。子供にとっては、心を閉じなければ傷つけられる一方だったので、やむを得ない生き方なのです。結局、親に愛されていない不安(心の傷)から、自我をうまく育てられないので、自信が持てません。やがて子供は、まるで土台がない雲の上に家を建ててしまったような空虚感に襲われることになります。
本人も家族も自覚できないまま、子供は、イイコ→反発→発症への経緯を辿っていく事が多いそうです。それは、親の愛情を諦められないまま心が折れてしまい、自分の苦しさや淋しさを何かにぶつけようとしているのです。荒れた言動は、荒れた心の風景を表しています。子供は、親の愛情をどうやって確かめたらいいのか?その方法が分からないまま、「食や体重にこだわった心のストライキ」が始まり摂食障害になるのです。
しかも、この摂食障害は決して精神論だけの問題ではありません。医学的な観点で見ると、脳の障害に関わりがあるそうです。
人間の大脳の中心に位置する視床下部には、「愛情を感じる中枢」と「食欲を感じる中枢」が隣同士にあるそうです。心の傷により、「愛情を感じる中枢」が異常を起こし、その影響で隣り合っている「食欲の中枢」まで変調をきたし、拒食・過食になって表れます。
何かによって心の傷を受け、「愛情の中枢が過敏になり異常発生して、たくさんの愛情を必要としているのに必要な分だけ得られない時」に悲しさが募るあまり、「食欲の中枢」まで壊してしまう。これが摂食障害の原因だと考えられています。
従って、私が冒頭から述べてきたように、「食欲の中枢」が壊れているので、自分の意志では正常な食事を取れない為、「食生活」を立て直す治療方法ではうまくいかないというわけです。本人にはどうすることも出来ない「心身の病気」だからです。
親自身が幼児期に傷つきながら育ってきたのに、病気として表面化されなかったケースは、個人差の問題だけではありません。時代背景や環境の違いもあるので、子供本人のせいではない事も重ねてご理解ください。(地域の人間関係が薄れ、親以外からの愛情が受けにくい社会になっている事や、パソコンなどのネットワーク、スーパーやコンビニの普及なども、病気を発症する時代・環境要因に挙げられます。)
親の中には、「自分は問題なく子育てをしてきた!」と自信たっぷりに思っている方もいるでしょう。親が子供の為に精一杯やってきた苦労を、私は否定するつもりは微塵もありません。ただ、自分が生き抜いてきた価値観を、今の時代の子供に当てはめようとしても、それが必ずしも子供にとって愛情として伝わり、子供の為になるとは限らない事を分かってあげてください。
理由はどうあれ、摂食障害になった人は、愛情が足りていないのです。摂食障害者は、本当に理解されたくてされたくてたまらない気持ちでいっぱいなのです。摂食障害とは、「私の辛さを分かって!そして私の本当の気持ちを、私と一緒に探してほしい!」という心の叫びが、食の分野で奇行に表れてしまったのです。本人も家族もまず、その「根本的な原因」に目を向けて、心の傷を癒やす作業に力を当ててください。
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(3)回復の道のヒント
では、どうやって心の傷を癒やしていけばいいのか?それにはその人に合ったやり方があります。
とにかく共感出来る人を見つけてください。そして、どうか自分の居場所を見つけてください。それには、ひだまりカフェのような同じ病気の仲間との触れ合いが、心の癒やしになると思います。医者やカウンセリングはもちろん必要です。しかし彼らは資格者であり、資格は「知識」を問うもので、その人の「感受性」を問うものではないので、必ずしも治療者に相応しいとは限りません。医者やカウンセリングだけでは、必ずしも「心の傷」を癒やすのに十分とは言えないでしょう。同じ病気の仲間同士で分かち合い、共感しながら、心を癒やしていってください。
それから重要な事は、「どうやって回復していくか」を仲間同士で話し合い、捜していく事です。そういった分かち合いの中で、自分は何が心の傷になっているかを慎重に探ることが大切です。そんな場所を持つことにより、自然と心が癒され、自我を少しずつ育て直し、回復の道筋が見えてくることでしょう。
幼少期の心の傷を癒やすのは、はじめのうちは、親や家族同士ではどうしても難しいのです。なぜなら親は、つい自分の考えを押し付けてしまうし、立場や見方が違うので、どうしても共感しにくい場合が多いからです。
本人の当時の苦しみ・心の傷を、生傷を癒やすように一緒に悲しむことができる事が大切で、それが出来るのは、その人と同じだけ傷ついた経験のある「回復した仲間」が、私はいいと思います。
一方的に可愛がったり心配することだけが愛情ではありません!愛情は一方通行ではなく、双方的に同じ量が流れて初めて愛情になると思います。だから、親は一方的に押し付けたり逃げたりしないでください。それがとても大切です。分からないことは分からないと正直に話して、「どうして欲しいか?」をじっくり時間をかけて聞いてあげてください。分からなくても理解しようとする姿勢を見せてあげてください。親は子供と真剣に真正面から本音で向き合ってください!ただただ、味方になってあげてください!
今まで、親子で心の底から本音で話し合ったことはありますか?親から子供に「愛してるよ」と言ってあげた事はありますか?逆に子供から親へ「私のこと好き?」と聞いた事はありますか?逃げずに真正面から向き合うということは、決して無理に合わせようとするのではなく、それだけ分かり合おうとする事であって、それだけお互いの愛情を深めようとしている事なのです。
親も人の子。自分に自信がないまま親になっていきます。そんな中で、子供の個性と自分の個性を照らし合わせて、本当に子供を心から絶やさず愛すことなど、おそらく神以外は出来ないでしょう。ですから、身体的な虐待があったわけでなければ、もし子供の心に傷をつけてしまったとしても、必要な癒やしを与えてなかったとしても、それは許されることだと思います。
子供は、自我を取り戻す為に、一度親を思いっきり責めて反抗しますが、もし子供が摂食障害になったとしても、何ら恥じることはありませんし、親が責められるべきものではないと思います。
ただ、子供が摂食障害になった時、子供と一緒に自分の半生を振り返ってみてはいかがでしょうか?この機会に、何よりも親自身に癒やしが必要だったのだと感じて欲しいのです。子供と一緒に、自分も癒やしを得ようという気持ちになってほしいのです。子供が摂食障害になったら、それをきっかけにして家族がお互いに心を開きながら向き合うように努力してみてほしいのです。
親自身が、自分の今までの生き方を見つめ直すのは、相当な痛みが伴いますし、心を開いて向き合うには勇気が必要です。しかし、親がその勇気を持たずに、他人事のように「子供に摂食障害を治せ!」と言っていたら、子供は回復なんて出来ないでしょう。
「我が子に癒やしを与えることは、親が自分の癒やしを得ること」です。
そして、本人や家族が摂食障害に立ち向かう時間は、実は、「家族や周囲にいる人々が、摂食障害の人から、本当の愛はどういうものかを一緒に考える為に与えられた勉強期間」なのです。それは苦しい日々かもしれませんが、その痛み・苦しみから逃げずに正面から向き合って乗り越えた時、「その道が神様が与えてくれた本当の幸せへの道」だったと気付く事が出来るのだと思います。
これから、親子で距離を取りながら、親子でそれぞれ愛情の受け直しをしていってください。親子間では得られない愛情を補う回復の旅に、親子で別々の道を歩くのです。親子それぞれが自分の心の傷に気づき、回復の道を進もうとしていたら、私はその時点で「最高の親子」だと思います。だから、「家族の会」と「本人の会」がある、このひだまりカフェは、「最高の回復場所」であり、一緒に協力してそれぞれの会に参加している親子は、私は間違いなく「愛し合っている親子」の形に進化していると思います!
その後、親子共々にお互いが自立した時には、依存関係でも一方的な関係でもない、温かい親子関係が知らぬ間に築きあげられるのだと思います。そうなった時には、摂食障害だった子供は、ハンバーグを鱈腹食べて、笑って家族の中にいると、私は信じています。
最後に、私はあくまで、医者やカウンセラーでもなく、ただの摂食障害者本人、ただのモテない会社員の男です(笑)。私は学歴もないですし、専門的な分野では間違っている箇所が多々あるかもしれません。しかし、私は、人一倍、摂食障害の回復への活動をしていると自負しています。もし良かったら、一摂食障害者本人の意見と捉えて考えてみてください。私からのメッセージが、同じ病気で苦しんでいる誰かのお役に立てればこのうえない幸せです。
●profil●201407
ずんずん進んでいましたが、ちょっと立ち止まってあれこれ考え中です。みなさんと同じく、自分もまだまだ山あり谷ありです。