私たちのグループでは、その構造によって巧みに調節されている蛋白質の機能とその分子メカニズムを解明することを目標に、古典的な生化学的、分子生物学的手法から最新の計算科学を使って、分野横断的に研究を行っています。研究を通して、蛋白質の未知の機能の発見、疾患の治療標的の開発、薬剤の創製、機能性食品の開発、蛋白質の人為的デザイン等のアウトプットを目指しています。
Phospholipase A2sの機能解明とその分子メカニズム
ホスホリパーゼA2(PLA2)は、細胞膜の主要構成成分であるグリセロリン脂質を加水分解し、リゾリン脂質と遊離脂肪酸を生成する酵素である。PLA2は多くの生理活性脂質や脂質メディエーター産生、細胞膜の恒常性維持等に関わる非常に重要な酵素であり、癌や神経疾患をはじめとする数多くの疾患への関与が明らかになっている。PLA2に分類されている酵素はヒトで50種類あり、それぞれのPLA2はその発現、局在、活性、基質特異性によって特異的な役割を担っている。従って、その特性の分子基盤を理解することは、関連する生物学的機能や疾患を理解する上で極めて重要である。しかし、一部のPLA2分子種を除いて、それらの機能や、その機能を発現する分子メカニズムが明らかになっているとは言い難い。私たちのグループでは、この問題を解決するために、従来の生物学的・分子生物学的アプローチに加えて、計算科学的・構造学的アプローチを活用して、PLA2の機能とその分子基盤を解明することを通じて、蛋白質の機能の本質を理解することを目指しています。また、私たちの研究を通じて、新しい治療標的の発見や、強力な薬剤の創製、機能性食品の開発、蛋白質の人為的デザイン等を目指しています。我々の主な研究テーマは以下の通り。
PLA2酵素の活性と機能制御の分子メカニズム解明
FerroptosisにおけるPLA2の機能解明
PLA2の特異的阻害剤または活性化剤の開発
PLA2の基質特異性予測方法の確立
PLA2の構造解析
Ribosomal Protein SA (RPSA) の機能とその分子メカニズム
リボソームタンパク質SA(RPSA)は、リボソームの小サブユニットの構成成分であるだけでなく、細胞表面で受容体としても機能する非常にユニークなタンパク質である。RPSAは、細胞外基質であるラミニンや、緑茶ポリフェノール、ウイルス、プリオンタンパク質、ビタミンEの受容体であることが分かっており、様々な生理機能を担っている。しかし、RPSAがどのようにしてリボソームの構成要素としての機能と受容体としての機能を使い分けているのか、どうやって膜に存在しているのか、機能の分子メカニズム等については未だに不明である。この疑問を解決するために、我々はヒトRPSA及び、ヒトRPSAと相同性が高く、その機能が未解明である植物RPSAに注目し、面白くて厄介なRPSAに関する基盤的研究を展開している。現在の研究テーマは以下の通り。
植物とヒトのRPSAが細胞膜に局在するかどうか、またどのように局在するか。
植物のRPSAも緑茶ポリフェノールやビタミンEと結合するのか、その生物学的役割は何か。
RPSAのレセプターとしての機能とリボソームタンパク質としての機能を分離することが可能か。
リガンドとの結合メカニズム解明と、RPSAのアンタゴニスト/アゴニストの開発。