当診療室で扱う

主な疾患について

頬粘膜の扁平苔癬

<口腔扁平苔癬>

明らかな原因は不明だが、細菌、ウィルス感染、ビタミン不足、アレルギーなどが原因と考えられている。前がん状態の1つとされている。

症状 :頬や舌の粘膜、歯肉部、口蓋粘膜などに白斑やただれを形成する。一部に潰瘍を形成することもあり、ごく稀にガンになることもある。口腔カンジダ症や歯周病が併存すると症状が増悪することがある

治療 :急性症状が強ければステロイドの軟膏やステロイドうがい薬を用いる。 内服薬としてはセファランチン®、半夏瀉心湯、黄連湯などを用い、 うがい薬ではアズノール®、桔梗湯などを用いる。

上顎の口腔カンジダ症とグラム染色

<口腔カンジダ症>

口腔内に常在するカンジダ菌が唾液分泌低下、 免疫能低下など口腔環境の変化により 増殖し、カンジダ菌の活動性が上がったもの。

症状 :点状の白斑形成を口腔粘膜に認め、一部に粘膜の発赤やただれを生じることがある。粘膜内に侵入して増殖する肥厚性カンジダ症もある。

治療 :カンジダ培養検査で、カンジダの存在が確認されたら抗真菌剤の投与を行う。 抗真菌剤は種類によって降圧剤など他の内科薬との相互作用が認められることもあるので、担当医、薬剤師と相談して薬剤を選択する。また義歯に住み着くので、義歯のカンジダ除菌も重要である。更に口腔内の保湿も重要で、口腔保湿剤も積極的に使用した方が良い。

<口内炎(写真上:アフタ性口内炎・写真下:薬物性口内炎>

尖ったり割れたりした歯の鋭縁や合わない金属冠、入れ歯などの刺激、口腔清掃の不良、細菌・ウィルス感染、ビタミン不足、微量元素不足、薬剤性など様々が原因で発症する。

症状:数ミリ程度の浅い潰瘍を形成するもの、水疱を形成し、その後水疱がやぶれてただれとなるもの、粘膜が萎縮したり、びらん、発赤を認めるものなどある。

口唇炎は口唇の荒れ、口唇の亀裂などがみられる。

治療:症状に応じて内服薬では抗ウィルス薬、グリチロン配合錠、漢方薬(半夏瀉心湯、黄連湯、茵蔯蒿湯、平胃散など)を用いる。また各種うがい薬、ステロイド軟膏塗布、アズノール軟膏なども投与される。

歯痕舌

地図状舌

<舌 炎>

鉄欠乏、ビタミン不足、義歯などによる外傷、細菌・ウィルス感染、体水分バランス異常、肥満、消化不良など様々な原因でおこる。

症状:舌乳頭の萎縮、ただれ、歯型が舌に付く(歯痕舌 写真)、舌苔が部分的にはがれる(地図状舌 写真)、溝状舌などが認められる。

治療:不足している鉄やビタミンの補充、歯牙や義歯など鋭縁部の調整、各種含嗽剤、消化機能を調えたり、水分代謝の改善などの効果がある漢方薬を使用することもある。

口腔内水分計で粘膜の湿り気を チェック

必要に応じて口腔保湿剤も使用します。

<口腔乾燥症(ドライマウス)>

脱水、糖尿病、腎障害、貧血、うつ病やストレスなど心因性の場合や、 自己免疫疾患で唾液腺がダメージを受ける場合(シェーグレン症候群 etc.

)など様々な全身的原因または局所的原因により唾液の出が悪くなった病態です。また、薬剤性、放射線性の口腔乾燥症もあります。

症状:食事がとりづらい、飲み込みづらい、味がおかしい、口臭がひどくなった、口の粘膜や舌が乾く、う蝕・歯周病になりやすい。

治療:シェーグレン症候群の場合ステロイド剤、セビメリン塩酸塩などの投与を行う。それ以外の口腔乾燥症は対症療法が一般的で、口腔保湿剤の使用、含嗽などで様子を見る。

当院では漢方薬(五苓散、白虎加人参湯など)の内服、唾液腺マッサージ、 理学療法、円皮鍼治療を取り入れている。また、経口保湿剤も適宜用いる。カンジダが繁殖する場合もあるので定期的検査も必要です。

マイオモニター:電気的神経刺激装置(30分施行します)

<顎関節症>

物を咬むときの筋肉や顎の関節の痛み、口が開かない、顎の動きがおかしい、顎関節の雑音などの症状を認めます。原因としては顎関節や周囲筋肉が弱かったり、咬み合わせが悪い、不良な姿勢、口の異常な癖、ストレス、精神的緊張や不安などが関連するといわれています。

顎関節症は4つのタイプに分類されます。

1)咀嚼筋痛障害(Ⅰ型):筋肉部の鈍痛、圧痛、咀嚼時疼痛

2)顎関節痛障害(Ⅱ型):関節周囲の圧痛、顎運動時の疼痛。

3)顎関節円板障害(Ⅲ型):関節円板の位置や形の異常

開閉口時にカクカク音がする(クリック音)(Ⅲa型、復位性)、口が開かなくなる(Ⅲb型、非復位性)

4)変形性顎関節症(Ⅳ型):骨の変形や破壊、開閉口運動の時のジャリジャリ音(クレピタス音)

症状によって鎮痛剤や筋弛緩剤、漢方薬などの投与、ナイトガードやスプリント装着、電気的神経刺激、疼痛部位へのレーザー照射、鍼治療などの理学療法を行います。手術が必要になることもあります。

<味覚障害>

味覚障害の原因は神経障害、亜鉛欠乏症、薬物性、内分泌異常、口腔カンジダ症、貧血、細菌感染、口腔乾燥、舌乳頭萎縮や心因性などである。テーストディスクでは酸味、鹹味、苦味、甘味の4味をチェックする。尚、渋味は五味に入っておらず、痛みや触覚に近いとする説、また、渋味を苦みの一部に分類する説もある。

西洋医学的対処としては一般的に亜鉛製剤、鉄剤、ビタミン剤などが用いられる。また必要に応じて抗真菌剤、唾液分泌促進剤、抗不安薬などが用いられることもある。また、味覚消失した場合は補中益気湯が奏効する事がある。

<疼痛性疾患>

(三叉神経痛、舌咽神経痛、舌痛症、特発性歯痛、非定型顔面痛など)

慢性痛は一般に侵害受容性慢性疼痛(局所に原因があるなど)、神経障害性疼痛、心理社会的疼痛(心因性疼痛)の3つに分類される。外傷、炎症、末梢神経障害、血行障害、抑うつなどで疼痛が惹起され、疼痛が持続することにより精神不安、意欲の低下などが現れ易い。

三叉神経痛、舌咽神経痛では特徴的な痛みや痛みを誘発するポイントを見極めることである程度診断は可能であるが、脳の近くの神経の出口付近で血管が触っていたり、腫瘍が存在することもあり、脳外科的診断が必要である。治療としては薬物療法ではテグレトール®の投与が第一義であるが、副作用も多く長期に内服できない場合には漢方薬が代用されることもある。

舌痛症、特発性歯痛、非定型顔面痛は侵害受容性慢性疼痛と心理社会的疼痛が混在する場合が多い。また鎮痛剤などが無効である場合もあり、治療が難渋することもある。

当診療室では東洋医学を応用して、気・血・水の状態、基礎代謝の低下による低体温傾向も考慮して治療方針を決定するしている。神経障害性疼痛では水滞、冷え、神経周囲の炎症所見などを考慮し、五苓散、柴胡桂枝湯、桂枝加朮附湯、柴苓湯などが用いられる。侵害受容性疼痛では立効散、柴胡桂枝湯、葛根湯、柴苓湯、半夏瀉心湯、白虎加人参湯、心因性疼痛では加味逍遙散、抑肝散、柴胡加竜骨牡蛎湯、半夏厚朴湯などが用いられる。

癌治療時の口腔内異常:現在工事中m(__)m