レッスン1
音楽の基礎(楽典)1
音楽の基礎(楽典)1
まずは、やはり、音楽の初歩的な知識は避けて通れないでしょう。
それは「楽典」(音楽の約束ごと)とよばれているものですので、その本を持っている人は、それをそばに置いて、このサイトを読むといいでしょう。また、持っていない人は、音楽の教科書に書かれていることを参考にするといいでしょう。
1)【音階】
重要!和声では、長調を基準に考えます。短調はその派生的なもの(長調の理論から引き出されたもの)と考えられるのです。
以下がハ長調の音階(長音階とよばれる)です。
いわゆる「ドレミ」というやつですね。
<ちょっと考えよう!>
まずこうした何も説明の付いていない楽譜が表示さます。そこで、皆さんは、これがどんな意味があるのかを考え欲しいのです。地理の勉強で「白地図」というのがありますが、それに似ていて、最初は、単なる無意味な線か丸にしか見えないものが、理解して行くことで意味あるものになります。そうした意味の見えない状態から自分で読み解いて欲しいのです。
例えば、次の図のように、この音階の音と音の間の音程を<図形>を用いて記入することが最初に考えられるでしょう。
ここに用いた<図形>を以下のように記号をもちいて、区別(分類)をしてみましょう。
これらのおおよその意味は;
A 標準的なもの、ここでは「全音」(長2度)、その他「長3度」(長3和音)などの表記にも同じ記号を用います
B 狭いもの、ここでは「半音」、「減音程」(減3和音)など
C その他、後で述べる「和音の種類」にA やBと区別する意味で用いています
上記の図形は、他の意味にも用いることもできるでしょう。例えば、少し記号を加えて、後に用いるように更に広い音程(増音程)などにも使用できるでしょう。
重要!記号を用いた「分類」(同じと違いを分けること)は、ものごと(状況)を科学的にとらえる重要な方法の一つです。
更に上の音階に記号を加えてみると、次のように全音2つと半音1つ(全+全+半)からなる2つの同じ音のグループ(テトラコルド)*を見つけることができるでしょう。
この音階では「テトラコルド」はどうなっているかわかりますか?
答え)この音階では同じ形の「テトラコルド」が見つけられませんね。これは異なる2つの「テトラコルド」が組み合わされたものとみることができるでしょう。2つの同じテトラコルドからできているという解釈もあります:2つ目をReからはじめてみると見えてくるでしょう。(属音<>Miを中心(共有する音)に考えることもできますね)こういう形は「コンジャンクション」(結合型)と呼ばれます(<—>「ディスジャンクション」(分離型)
このように、記号を使うと、その性質や特徴がよく見えてきませんか?
こうした記号化して、ものの構造をより分かりやすくする方法は、科学や数学でも取られる方法ですね。
これまで挙げた音階をもう少し掘り下げてみます。
実は音階には、上に書いた長調、短調以外にも、さまざまな音階があります。(自分でつくることもできますよ)
前にも書きましたが、和声の学習の基準(勉強の出発点といってもいいかな)になる音階は長調の音階です。音階上の音にはそれぞれ様々な呼び方があります。主なものは階名(かいめい)と音名(おんめい)です。
階名はド、レ、ミ、ファ、・・・
音名はC, D, E, F, etc.(「以下省略」ということ)
のように書きます。これはどこかで目にしたことがあるでしょう。
階名はその字の通り「音の階段」ということです。ただ、これは後に使う様々な調によって移動する、つまり、ドは調によって場所が異なることになります。
(もっとも「固定ド」という呼び方では、次の「音名」と同じ読み方をするので、ややこしいですね。)
音名は「音のなまえ」であり、音につけられた名前で、通常はドイツ語読みしてC(ツェー),D(デー),E(エー),F(エフ)と発音します。
なぜ英語の発音でなくて、ドイツ語の発音を使うかというと、音楽の理論が完成されたのは主にドイツ人(あるいはドイツ語圏)の作曲家が活躍した古典派の時代だからです。ちなみにそれ以前の音楽文化の中心はイタリアであったため、今でも「速度記号」(Andante, Allegro, etc.)や「表情記号」(dolce, leggiero, etc.)や「奏法」(pizzicato, arco, etc.),「強弱記号」(crescendo, diminuendo, etc.)などの記号はイタリア語を使っています。ただしワーグナーWagnerやマーラー Mahlerなど後期ロマン派のドイツの作曲家は、それら(表情記号、奏法)も母国語であるドイツ語で表現しています。ジャズやポピュラー音楽では英語を使うのは、それが中心となったアメリカなどの英語圏で発展したからです。音楽のみならず、文化で使われる言語はそれが発展した国や地域の「用語」(ことば)が使われているのです。
少し混乱を生むのがb(ベー)という音です。これはシ♭の音ですが、英語では、b(ビー)はシ♮です。ですからオーケストラの楽譜では、B(ベー)管の楽器(ドの音を吹くとシ♭になります)はin B と書かれ、吹奏楽では in B♭と書かれます。
ちなみに♭(フラット)記号もドイツ語では「ベー」と発音されます。小文字のbに形がそっくりですね。
(上にあげたイタリア後の言葉の意味も調べておきましょう! わからないことがあったら、そのままにしないことが「学問」をする上でとっても大切かと思います)
重要!このほかにも「音の機能」(音の役割)を示す言い方もあります。主音や属音などがそれです。
主音は、その調(調については後述する)の中心の音で、もともとは「終止音」(Finalis フィナリス)、つまり「音楽の終わる音」という意味を持っていました。属音(Dominanteドミナント)というのは、5度上から主音を支える音で、下属音(Subdominante サブドミナント)は5度下から音楽を支える音という役割を持つ音です。「ドミナント」はもともと「支配音」とも呼ばれていました。また導音というのは和声では重要な音でこれは「主音を導く音」で、初歩の段階では、導音は必ず主音に進まなければならないのです。
これら音の呼び方を以下に一覧表(の1番したの段)にしておきます。
ドイツ語でシ♮はH(ハー)と呼びます。
この表で、中音が2つありますが、音階の上方に書かれている「ラ」の音が下中音(かちゅうおん)となっているのはなぜでしょう?下にその理由がわかるような図を書いておきます。
5度上から主音を支える(上)属音
5度下から主音を支える下属音
主音と(上)属音の中間にあるのが(上)中音
主音と下属音の中間にあるのが下中音
「上」は省略されます。
ちなみに Subdominanteの”sub”は「下」を意味します
英語のsubmarine: 潜水艦(=海の下)
つまり下属音は、単に属音の下にある音という意味ではないことを理解しなければならなりません。(多くの楽典の本では、そのような「あやまり」をしています)
このほか、上主音は、単に主音の上にあるというだけでなく、この音から2度上行(じょうこう)すれば、音楽の流れの継続感を生み、2度下行(かこう)すると、終止感を生むという機能(役割)があるのです。
上記、ハ長調の音階の横に書かれたC:は「ハ長調」(C-dur ツェー・ドゥア)という意味で、二長調ならD:というように大文字で書かれます。また短調は、小文字でa:「イ短調」(a-moll アー・モル)、h:(h-moll ハー・モル)というように省略してかかれます。これらは、音部記号(ト音記号、ヘ音記号)の下に書かれます。
ハ長調 C:とハ短調 c:は区別がしにくいでしょう。大文字と小文字を区別するように表記する工夫が必要になりますね。
ここで機能という言葉を繰り返し使っていますが、ここで学ぶ古典和声は、ドイツ古典派(あるいはその直前)で完成した和声で、音楽の材料である音や響き(和音)が機能を持っています。つまりそれぞれ「役割」を持っているという考え方による理論で「機能和声」とも呼ばれています。これから説明する和声学は「機能和声」であることを前提としています。
機能(Function)は f(x)= X+ 〜 といった数学の式のf にあたるもので、Xに数を入れるとf (x)の答がえられるという機能を示しています。少しムズカシイかな? 例えてみると、自動販売機で140円なりお金をいれて飲み物が得られるのも、その販売機がそうした機能を持つことと似ています。