2025年2月19日から28日にかけて, 父と妻と海外旅行へ出掛けた. 我が家 (父子家庭である) は父が大変な旅行好きで, 私が小学六年生の頃から断続的に海外へ連れてもらっていたが, コロナ禍や私の大学受験などが重なり, 海の向こうは2018年夏以来ご無沙汰であった. その間に私が結婚をして, 妻は海外へ出たことがないというので, 父の好意で3人旅行ということになった. 覚えている限りでは, 過去に父と行ったのは (1) シンガポール, 2015年3月, (2) 香港, 2015年夏, (3) アメリカ(NY), 2016年夏, (4) イギリス縦断, 2017年夏, (5) チェコ~オーストリア~ドイツ, 2018年夏, の五つ, 七か国である.
今回の旅は父の希望で, デンマーク, ベルギー, ドイツの順に回ることになった. もともとは父が仕事で付き合いのあるS氏 (大阪に職場のある日本人である) がベルギーに長期滞在しており, その方に会いに行きたい, ということであったが, 折角なら周囲の国もと言い始めて結局三つの国をめぐることになった.
往路は関空から, トルコで乗り換え待ちの休憩を挟んだ. 現地時間の早朝に着いて6時間と少しの待ちが発生したので, 食事やカフェなどの時間を過ごした. 最初の計画では6時間もあるのだから少し街に出て遊ぼう, ということになっていたのだが, 皆久々の長時間フライト (妻に至っては初めての経験である) でどっと疲れたので, 空港に居座ることにした.
(heavyな度合ではないと自負しているが) 喫煙者である私にとって何より厳しいのは13時間のフライト中煙草が吸えないことである. これを最後に我慢の時間だ, と思って何とも言えないさみしい気分になりながら誰もいない関空の喫煙所で煙草をふかしていた. すると, 喫煙所のドアを開けて一人の女性が顔を出した. 大規模な空港なので外人も多いが, 見るからに日本人である. 「やってます?」と訊かれ, 何のことだと思っていると, 「いま22時じゃないですか」と女性. そこで表の看板を見ると20時までと書いてある. 私はまったく気づかずに営業の終了した喫煙所を利用していたのである (KIX制限エリアスタッフの皆様, ご迷惑をおかけして本当にすみませんでした). あわててまだやっている喫煙所に場所を移し, 件の客と駄弁っていると, お互い煙草を吸い始めてからはじめての長距離フライトだということがわかった. 私はもうあきらめるつもりで空港まで来ていたのだが, 先方は「いちおう対策を持ってきました」といって, なにか小さいガムの箱のようなものを出してきた. 曰く, これはニコチンの経口薬のようなものであり, 小さな袋を上の歯茎と唇の間に挟んでおくと, 煙草を吸えないときに成分を補給できるのだそうだ. ご厚意でそれを二つほど分けていただき, 無事にフライトを乗り切ることができた. この偶然の出会いには感謝してもしきれない.
イスタンブール空港に着いてようやく煙草にありつけたわけだが, トルコではどうも屋内に喫煙所を設けること自体が (きっちりゾーニングしてあっても) 法律に抵触するようで, 喫煙所の案内に従って回転扉をくぐるとその先は屋外のベランダであった. 制限エリア内なのに屋外に出られることには驚いた. 早朝の喫煙所は2月ということもあって雪が舞っており, よく考えずにロンT一枚で出た私は大変寒い思いをした. ここの外人はしょっちゅうライターを忘れるようで, 5回ぐらい人の煙草に火をつけた.
喫煙所でもうひとつ驚いたことがある. ようやくフライトが終わったという解放感に浸り, 煙草を吸いながら喫煙所に着いた様子をInstagramのストーリーにアップした. すると随分長いこと話していなかった高校の同級生から連絡があり, 「飛行機が見える回転扉のところだろう」と言われた. まったくその通りだ, と返すと, 昔に私と同じようにトランジットでイスタンブール空港に立ち寄ったのだという. とくに居場所など言っていなかったので皆わからないだろうと思っていたが, 思わぬところに経験者はいるものである.
そのほか, 空港ではハンバーガーとフライドポテトのセットを食べた. フライドポテトはその後に行くベルギーの名産品なのであるが, 旅行を通して食べた幾多のポテトの中でトルコのこれが最も美味であった. 父も同じ意見であったが, 「ポテトそのものよりも上にかかっていた海苔塩のようなフレーバーが良いのではないか」ということだった.