あにー(代表)
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panon(編曲者)
この曲は対談形式で紹介します
―曲の順番や構成はどのように決められたのですか。
あにー「まずテレビアニメを見ているかのように演奏を聴いてほしいと思い、30分アニメのように冒頭にOPテーマがあって、サブタイトルのあとにAパートがあって、途中でCMを挟んでBパートがあってEDテーマと次回予告があって、という構成を決めました。」
Panon「デジモンアドベンチャー(以下、無印)の物語はボスキャラクターによってざっくりデビモン編→エテモン編→ヴァンデモン編→ダークマスターズ編のように4章に分けられるので、各章のイメージにあった楽曲を起承転結が感じられるように並べていきました。編曲中もストーリーや自分の視聴時のことを思い出して懐かしくなりました。」
あにー「実は奏者の楽譜では1楽章、2楽章、3楽章、4楽章の標記なのですが、2と3の間で休憩も挟んでしまうのと、お聴きいただく皆さまには物語を見ている感覚でお楽しみいただきたくて「~章」の標記に変更しました。」
―テレビアニメ2話分の長さでアニメ全54話の物語を表現されているのですね。
あにー「デジタルワールドで何か月も冒険したけど、現実世界では数日しか経過していなかった無印の物語みたいですよね!曲は無印のオリジナルサウンドトラックCD「歌と音楽集」(以下、OST)から選曲したのですが、エテモンやヴァンデモンは原曲に名前を冠した曲があるのでそれを軸に章のイメージを固めていきました。」
Panon「編曲時のオーケストラの編成は「『ボレロ』の管弦打」+「バンド(E.Gt、E.Bs、Dr)」との指定だったのですが、劇伴曲において管打楽器は使いたい場面がピンポイントになりがちでいかにまんべんなく活躍させるかが当初悩ましかったです。ただ、編曲を進めていくにつれて「あの音色ここでも欲しいなぁ〜」と感じるようになってきて、楽器の組み合わせによって生まれる雰囲気を楽しみながら編曲を進められました」
あにー「楽器数に比例してスコアの段数も多く、なお且つ1~4章で一つのファイルにしてくださっていたので、修正が入ると該当箇所を探すのが大変でしたね!」
Panon「修正したはずなのにきちんと保存されていなかったり…(泣)。苦労した分、奏者の皆さんが演奏してくださるのを聴いたときの感動もひとしおでした。」
Panon「1章はデビモンのイメージというよりはデジタルワールドへの導入・物語のはじまりらしいポップな曲が中心になっています。冒頭はもちろん『Butter-fly』です!」
あにー「デジモンアドベンチャーを象徴する名曲ですね!『ボレロ』ではお休みだったE.Gt、E.Bs、Drの3名が加わってがらりと世界観が変わります!」
Panon「まさにエレキ=電子の世界に突入するわけですね。オーケストラとバンドのサウンドのジョグレス(融合)をお楽しみください!
そんな1章の中で『襲撃!そして』は僕がデジモンBGMで1番好きな音楽です!子供達が敵デジモンに襲われていたり、戦闘の場面でも使われる曲で、アニメで頻繁に使用されるので視聴された方にとっては耳なじみがあるのではないでしょうか。」
あにー「私はこの曲を聴くと1話のクワガーモンの襲撃シーンを思い出します!
未知の生物・デジモンとの出会いと交流があり、嫌な予感と陰謀が忍び寄り、敵の襲撃があり、と1章は曲名通りのストーリー展開です。
最後の『Seven』は『Butter-fly』と同じ和田光司さんの歌ですが、アニメでは数回しか流れないので隠れた名曲かもしれません。アニメ第14話で7人の子どもたちと7体のパートナーデジモンたちが次の冒険の地・サーバ大陸を目指してイカダを作るシーンをイメージしてここに入れていただきました。」
Panon「2章はアメリカンギャングというか、敵だけどちょっとコミカルで「悪」じゃなくて「ワル」のイメージのエテモンらしい曲とそれに対抗する快活な子供たちのイメージに沿って選曲しました。」
あにー「アイキャッチはCMの前後に流れる曲です。実はアニメで一番多く耳にする曲かもしれませんね。」
ー2章の冒頭ではギターとテナーサックスが大活躍しますね。せっかくなので奏者のお2人にお話を聞いてみましょう。
せんじゅ(E.Gt)「デジモンの曲は全編に渡ってE.Gtが大活躍するのですが、中でも僕は2章冒頭の2曲が1番の見せ場だと思っています。E.Gtが奏でる往年のアメリカンロックンロールフレーズで幕をあけますのでご注目ください!」
みのるん(T.Sax)「エテモンはストーリーの中でもかなり異色のキャラクターで印象に残っています。(腰に下げてるもんざえモンが可愛いですよね…ほしい…)『ラブセレナーデ』は作中でも度々流れますが、T.Saxがメインのロックンロールで全楽曲の中でもエテモン同様に独特な存在感を放っています。
ハイテンションな曲調ですが、実はT.Saxにとって「キー(調性)」と「オーケストラとのバランス」がすごく難しい曲なので少し紹介させていただきます。
①キー:曲には調性と言って、カラオケでいうところのキーという概念があります。楽器ごとに得意不得意があるのですが、この曲はテナーサックスにとっては鳴らしにくいキーなんです。これを見事に演奏されているOSTの奏者の方は本当にリスペクトです。
②バランス:恐らくOSTではスタジオ収録で音量のバランスが整えられているかと思います。これがよく響くホールでDrやE.Gt・E.Bsと一緒に演奏となると、曲のニュアンスを守りつつしっかり音量を鳴らしていかなければいけないのでとても難しく感じています。
しかしこれらの難所を感じさせずにどのように皆様に届けるのか試行錯誤してきましたので、是非お楽しみください!
あにー「みのるんさんがたくさん語ってくださったのをパンフレットでは文字数の都合でカットせざるを得ず、このWeb全文公開で披露させていただきました。」
ー曲名のとおり爽快な『さあ,走りだそう!』の後には『Digital Scratch!~光子郎のテーマ~』です。OSTには子どもたち全員のテーマがありますが今回演奏するのはこの曲だけなんですね?
あにー「時間と構成の関係で断腸の思いで割愛しました…(涙)。この『光子郎のテーマ』が流れるシーンはデジタルワールドの真相に迫ったり物語の鍵となる場面が多い印象なので、この曲だけは入れていただきました。
他の曲も各キャラクターの気質が現れた明るく元気になれる曲ばかりなので、ぜひ皆さんOSTをお聴きください!」
Panon「続く『悪のテーマ』は弦・管・打楽器とバンドパート全ての見せ場が交錯するので、今回の編成の良さを最大限発揮できる曲だと思います。」
あにー「そして『brave heart』1回目。アニメではBパートの半ば9時20分くらいに流れて、デジモンが進化して敵を倒して話が終わるのが定番でしたね!冒頭のE.Gtソロのデジヴァイスの効果音が超かっこいいです!」
Panon「『勝利(善のテーマ2)』はマーチっぽく明るい曲ですが、中間部がしっとりしていて少し切なさをはらみます。
EDテーマの『i wish』はぜひ演奏会のパンフレットの裏表紙をご覧になりながらお聴きください。」
ー3章はアバンとサブ・タイトルのあとバロック音楽風の『闇からの目覚め(ヴァンデモンのテーマ)』から物語が始まります。
あにー「アバンのしっとりとしたVcのソロと、サブ・タイトルの明朗快活なTp主体の旋律のギャップがとてもいいですよね!」
Panon「ヴァンパイアを模したヴァンデモンの雰囲気に合わせて、この章はクラシカルな曲中心になりました。弦楽器とチェンバロ(シンセサイザー)が大活躍するのですが、不規則なリズムや連符が多くて演奏難易度は非常に高いと思います。」
あにー「スコア(総譜)を見ただけで背筋が凍りそうでした(苦笑)。
『ワンダーランド』は少し剽軽な雰囲気ですが、そのあとは『恐怖の足音』から『悪夢』まで静かな緊張感と闇から何かが忍び寄るかのような曲が続きます。
『黒い影』はまさにヴァンデモンが従えるコウモリの大群を体現するかのようです。」
ーヴァンデモンは8人目の選ばれし子どもを探してデジタルワールドから現実世界に侵攻しましたね。
あにー「それまで異世界の冒険だったのが一転して現実世界での戦いになりました。選ばれし子どもたち以外の一般人も敵に攫われたり操られたり、フジテレビの社屋が破壊されたり、視聴していた当時は少し怖かったのを覚えています。」
ーまさに『死闘』が繰り広げられた後、『勝利~善のテーマ~』に入ります。
Panon「アニメでは究極進化のお披露目があるので挿入歌を入れようか悩んだのですが、次の4章もシリアスな曲から始まるのでここで曲調を盛り上げすぎないようにしました。
『勝利~善のテーマ~』は子どもたちが一度再会できた家族と分かれて、再びデジタルワールドへ行くシーンで流れました。」
あにー「2章の『勝利(善のテーマ2)』よりスローテンポで、どこか子守歌のような優しさと懐かしさを感じます。」
Panon「4章の冒頭『異常事態発生!!』は、実はアニメ1話で子どもたちが初めてデジタルワールドに行くときにも流れました。曲の中程で潮が引いたかのように静まり返った直後「何か」が起こった情景が音楽だけで伝わる名曲です。」
あにー「4章では新たな敵・ダークマスターズが登場し、かつて子どもたちと親交があったデジモンが次々と倒されてしまいます。『哀しみ』は無印のみならず続編の02やテイマーズでも葬送曲として使用されましたが、曲を聴いて思い出すシーンがどれも悲しくて…。」
Panon「強すぎる敵を前にして子どもたちの戦う意思に齟齬が生じて何名か別行動を取ることになります。子どもたちそれぞれの苦悩にスポットが当たりました。」
ー続く『夕暮れ』『涙の行方』と鍵盤ハーモニカが活躍しますね。
あにー「個人的に『夕暮れ』は太一、『涙の行方』はヤマトのイメージなんです。悩んだり落ち込んだ時に、太一は内向的で静かに言葉を零すのに対してヤマトは外向的で感情のままに言葉を吐き出します。
そんな2人の対比を鍵盤ハーモニカで表現してくださるのはPercのマヤウルさんです!」
マヤウル(Perc)「自分は普段A.SaxやPercを演奏していますが、鍵盤ハーモニカは未知の領域への挑戦でした。哀愁に満ちた2曲を通して、キャラクターの心情や物語の情景を表現したいと思います。」
あにー「ソロは基本的に各奏者のお好きなように演奏していただきたいと思っていますが、この2曲は先述の太一とヤマトの対比を表現してください!と強くオーダーしてしまいました(笑)。」
Panon「続く『友情~闘いのテーマ~(From”Seven”)』は曲名のとおり、1章で演奏した『Seven』の弦楽四重奏バージョンです。同じメロディでもテンポや楽器の組み合わせによってがらりと印象が変わります。アンサンブルの距離感での「対話」をご堪能ください。」
あにー「1章では「Seven=7人の子どもたちと7体のデジモンたち」だったのですが、4章では8人目の選ばれし子どもとそのパートナーデジモンが加わっています。先述のとおり別行動をした子どもたちが「Seven=自分以外の7人」に思いを馳せながら自分自身と向き合うことをイメージして、この4章に入れていただきました。
自分自身、そして自分の分身のようなパートナーデジモンとの対話のシーンをイメージしながらお聴きください。」
ーしかし敵は再び迫りくる。『拡がる不安』ですね。
Panon「ダークマスターズ編は倒しても矢継ぎ早に敵が襲ってきて太一たちにも疲労が募ります。続く『悪の出現』は無印で特によく流れた曲のひとつで、呻き声のようなギターがかっこいいです。『戦いの時』は戦略的に子どもたちを追い詰めて畳みかけてくるムゲンドラモンのイメージです。」
あにー「そしてここでOST未収録の2曲です。『地獄の道化師のテーマ(仮題)』はピエモンのイメージですが、静かな曲調がピエモンの不気味さ・底知れぬ強さを感じさせます。
『聖剣士のテーマ(仮題)』は最後の切り札・ホーリーエンジェモンのイメージです。無印の第27話でEDテーマが後期の『keep on』に変わって本編未登場の進化先デジモンが何体かお披露目されましたが、その中の1体であったホーリーエンジェモンに進化するのはなんと全54話中第52話!焦らされた分、圧巻の強さとかっこよさでした!
2曲とも好きすぎて後から追加していただきました(笑)」
Panon「そして安心の『brave heart』。もう勝確(勝利確定)というやつですね。『明日に向かって』はTpのファンファーレで始まる大円団のマーチです。EDテーマ『keep on』は僕も大好きな曲で、冒頭のE.Bsが渋い!
そしてデジタルワールドに平和が訪れ、子どもたちは現実世界に戻ることが出来て、たどり着いたのは『安息』。という構成にしています」
あにー「X(Twitter)で事前に告知していたとおり、アンコールは『作品No.2「春」イ長調~ぼくらのウォーゲーム!~』です。本演奏会の1曲目が劇場版第1作で使用された『ボレロ』なので、もうひとつの劇場版「ぼくらのウォーゲーム!」までプログラムに含めたくて主題歌だけでも入れていただきました。コンサートマスター・ねずみさんのソロにご注目ください!」
あにー・Panon「みなさま、どうぞお楽しみください!!」