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昔は水たまりがあれば冬にはカチカチに凍りスケートができたり、学校にはエアコンがなく 夏に熱中症が心配でプールで水泳ができないことはなかったことからも 地球の温度がどんどん上がっているのがわかります。地球の上で人間の活動がさかんになり そのために石炭とか石油といったむかしの生物の化石ともいえる燃料をもやして二酸化炭素をだしたり、ほかの温室効果ガスを大気のなかにだされてそれらの濃さが濃くなり 結果として温室効果がつよくなっているのが温暖化の原因のひとつです。二酸化炭素のほかの温室効果ガスには おならやウシのゲップに含まれるメタンとかいくつかのガスがあります。温暖化をせきとめるには温室効果ガスの濃さを増やさないこと、それらのガスを出さないことが求められます。
人間は食べ物を食べて 体の中で食べた成分をもやすことで、体をあたためたり 体をうごかしたり ものを考えます。その結果として、一人1年でおよそ370kgの(燃えてできる)二酸化炭素をだします。私たちはただ生きているだけではなく いろいろな活動をしていて、そのためのものを作ったり 運んだり 最後はゴミを始末するために 口から出す二酸化炭素の20倍の量の7,200kg(一人1年あたり)もの温室効果ガスを出しているのです。
下の図では ただ生きるだけでない私たちの活動を おおきく6つに分類しています。そのそれぞれでどんなものがあるかもしめしています。6つのグループの中では「食」が2番目におおいのです。食べるものをつくる農業では温室効果ガスを人間が出すうちの30%もの量だともいわれています。食べることででてくる温室効果ガスは多いので その量を抑えることができると 温暖化防止の効果があがります。
食べるものをつくる農業から 食べるものを加工したり 運んだり、店で売るために包装したり冷たい売り場にならべたり、家庭で料理したり、食べ残しのゴミを処理するまでの全部のステップで温室効果ガスがどれほどでるかを調べます。食べるものの重さあたりに出る温室効果ガスの重さをカーボン・フットプリント(CFP:でてくる炭素の足跡の大きさ)とよびます。二酸化炭素のほかのガスについては 温室効果の強さを考えて二酸化炭素の量に換えます。
CFPを見ると、出るか出ないかではなく どのくらいの量が出るかを いろいろなもので比べることができます。次の図は店で売るステップまでのCFPを いろいろな食べるもので比べています。それぞれの食べものでの 各ステップでの出方の内訳もステップごとの色の帯の長さで示しています。
上の図からいくつかのことがわかります。
ウシやヒツジ、そして乳製品のチーズなどは CFPがとても多いのです。これらの動物には大きくて複雑なしかけをもつ胃があります。たくさんの草をたべて胃のなかでこなれさせて消化した成分を腸からからだに取り込みます。そのため、胃の中でできるメタンなどのガスがゲップで口からでてくるのです。私たちもオナラをするとそのなかにメタンが含まれていることがあるのですが、ゲップにはたくさんの量のメタンがふくまれています。
ブタやニワトリ、そして養殖されるエビや魚もCFPが大きいのです。天然ものの魚もそこそこに大きなCFPであるのは 漁船の燃料がたくさん必要なためかもしれませんね。
植物の食べものの中では、コメが高いCFPです。この図では4(kgCO2換算/kg食べもの)という値ですが、日本で念入りに調べた結果は1.8とそれよりは低い値であったといわれています。このごろコメの値段が高くなったこともあって、ご飯以外のパンや麺といったたべものをより多く食べるようになってきているのかもしれません。これは食のCFPを抑えるという点からも良いことかもしれません。ただコメは日本の食文化のはしらでもあるので、CFPを下げる工夫がなされているところです。
コメのCFPが高いのは、コメを栽培するのに水田を使っているからで、水田の底泥のなかでは酸素があまりないので、微生物のはたらきでメタンがでてきます。ウシの胃の中とにたようなことがおこるのです。
温室効果のあるガスには 二酸化炭素(H2O)のほかに水蒸気(H2O)やメタン(CH4)、聞き慣れないですが亜酸化チッ素(N2O)などがあります。いずれも地球の表面から空にむかってでる赤外線を吸うことのできるガスです。ガスが吸った赤外線はすぐにはき出され、地表にもむかいます。地表は 太陽からの光のほかに入ってくる熱が加わるので、宇宙にその熱を逃がし 入りと出をつり合わせるために、地表の温度を上げるのです。これが温室効果ガスによる温暖化のしくみです。
https://ccsr.aori.u-tokyo.ac.jp/old/jondanka/jwarming1.shtml
左は温室効果ガスがないときには地面の温度は -18℃になることをしめしています。地面からは赤外線という目にはみえない光が空にむかってでています。
右は温室効果ガスがある場合で、地面からの赤外線が温室効果ガスに吸われ すぐに地面にむかっておなじ赤外線がてりかえします。地面の温度が15℃にあがることで、てりかえしの赤外線を余計に宇宙にむかって出すことができます。温度があがると 地面からでていく赤外線の量はとてもびんかんにふえるのです。
温室効果の半分以上は水蒸気が原因なのですが、人間が工夫して減らせないので、法律などでは「温室効果ガス」を人間の活動をくふうすれば減らせる水蒸気以外の赤外線を吸うガスとしています。農業からの温室効果ガスでは ウシや水田からのメタンや 土を掘り起こすとよく出る亜酸化チッ素がとても多いのです。
もうひとつ 食べもののCFPの図からよみとれるのは、食べものを運ぶことでのCFPは その食べものの全体のCFPからすると小さな部分であることです。これについてはフードマイレッジ・地産地消との関係もふくめて くわしく説明しましょぅ。
食べものを少し遠いところから運ぶには いくつかのやリかたがあります。飛行機や船、鉄道や大小のトラックなどです。食べもののなかには冷蔵してはこぶ必要のあるものもあります。コールドチェーンができるようになって新鮮な魚をたべるのができるようになったのはさほど昔のことではありません。傷みやすい新鮮さがうりものの高級な食べものを地球の反対側からはこぶには飛行機が使われます。果物を南アフリカから北欧の国にはこぶときに船やトラックをつかうと、CFPは0.31 から 0.84 kg 二酸化炭素相当/kg食べもの であるのに対して、飛行機では 11.35 kg二酸化炭素相当/kg食べものと とても大きな値になります。
フードマイレージとは 食べものの重さと運ぶ距離をかけた量です。昔は四里四方の範囲で食べものをやりとり・ゆうづうしていたのが、遠いところや地球の反対側の外国からも運ぶようになり、地球の環境にとって重荷になるのではと心配されています。
食べものを輸出する地域での食べものを育てるための水などを お金で買うからといって奪ってしまいその土地の人達の食べものや自然にわるい影響をおよぼしているのではないかとか いくつかの理由で 地産地消をこころがけようと呼びかけられています。そのほかにも、土地土地につくられてきた食文化を めずらしい食べものに目移りしてかえてしまってもよいのかという考えです。
お雑煮やおせち料理を正月の松の内にたべる風習は、百年少し前くらいの明治時代にはじまったともいわれています。松の内がおわると「春の七草がゆ」を食べます。春の七草は、せり・なずな・ごぎょう・はこべら・ほとけのざ・すずな・すずしろの7つの植物で、お正月あけのスーパーで縁起物のようにそのセットがならんでいました。
それぞれの原産地をみると、セリ:日本原産、ナズナ:弥生時代に伝来、ハハコグサ:日本原産、イヌハコベなど:ユーラシアから弥生時代より前に伝来、コオニタビラコ:日本原産、スズナ(カブ):中央アジアから弥生時代より前に伝来、スズシロ(ダイコン):中央アジアから弥生時代より前に伝来したようです。
セリ、カブ、ダイコンは普段から野菜として売り場にならんでいますが、ほかは野原にはえている野草です。
日本では春の七草のような古来からの植物の食べもののほかにさまざまな野菜が売り場にならぶようになりました。サツマイモは400年前に中国から伝わったとのことです。
いろいろな野菜の原産地が世界のどんな地域にあるかの地図、また日本につたわった時代の表を下にしめします。いろいろな種類のジャガイモやトマトが生まれたのは宇宙放射線のつよいアンデスの3000mほどの高地であるといわれています。たくさんの種類の生物が生きているのは赤道近くの暑い地帯です。野菜の多くは もともとはそのような暑いところの植物で 日本やヨーロッパの北のほうでは うまく育たない種類の植物もあるのでしょう。
ヨーロッパの北のほうは トナカイにひかれるソリにのって旅をするサンタクロースのふるさとでもあります。食べることのできる植物がよくは育たないために、人がたべることのできないコケを食べてそだつトナカイやほかの動物を狩りしてその肉をたべたり、あるいはいろいろな動物を家畜にしてそだて、乳をしぼって飲んだりチーズやバターにして食べていました。イギリスほか寒いヨーロッパの地方で学問が発達して産業革命がおこり、成功した人たちが多くでました。ビーフステーキやミルク・酪農製品の食文化は成功した人のたべるものという考えが日本にまで伝わったのですが、もとをただせばおいしい野菜はてにはいらず、肉しか食べれなかった昔のなごりなのかもしれません。
人間は生まれてまもなくのあかちゃんはミルクでそだちます。ミルクのなかには乳糖という物質があって、あかちゃんのおなかのなかでは乳糖を分解することのできる物質(酵素)がつくられて消化されます。ところがおおきくそだつとこの酵素はできなくなってしまい、ミルクをたくさんのむと具合のわるくなる人がでてきます。しかし、ミルクをたくさん飲まなくてはならなかったヨーロッパの北のほうの人たちは、具合がわるくなってもほかに食べものがえられませんでした。
そこで、おとなになっても酵素を作りつづける性質(遺伝子できまる)のひとたちの割合が大変におおくなったのです。乳糖を分解できない人は はや死にしてしまったり 子どもの数が他の人よりすくなければ、分解できないという性質は そのひとたちの間では少なくなるのが その理由です。
このように地域の風土は 住んでいるひとたちの遺伝子にまで影響することがあります。その地域でえられる食べものは住んでいる人の性質ととてもよくマッチするのかもしれません。地域にそなわっている風土、自然から 食べものの選び方はよくかんがえるとよいですね。
野菜の多くが熱帯原産であると説明しました。コメでは 日本にまで伝わるうちに日本の四季にしたがって成長するような性質のコメの品種ができてきました。いまでは北海道でも育つイネの品種が作られています。ただ熱帯原産という性質ののこっているさくもつの植物も多いのです。また季節外れにさくもつをそだてようとすることもあります。さくもつをそだてるのに野外(露地)ではなく 温室などのなかでそだてるのを「施設園芸」とよびます。温度をあげるのに電気をつかったり石油をもしたりします。日の光の長さを長くするには電気ランプをともします。
これらのことをすると、再生可能エネルギー(太陽光、風力など)をつかわないと温室効果ガスをたくさん出してしまうのです。
トマトを南の暖かく光も十分なスペインで育てたときと、北のオランダ、イギリスで育てたときのCFPを比較すると 栽培のための電気の使用量がたかく再生可能エネルギーの割合も低いイギリスでのトマトのCFPはスペインのCFPの値の11倍ととても多いのです。イギリスの人たちが地産地消だといってイギリスのトマトをえらぶのは温暖化防止からするとよいことではありません。
ただし地産地消や国内産優先とするのは温暖化防止では不利になっても ほかの事情もかんがえてのことかもしれません。エネルギーや食べものを自分の国でまかなえるか(自給率)は日本の場合 エネルギーで13%、食べもので38%です。エネルギーや食べものを売ってくれている国が突然もうやめるとなったときにこまらないようなくふうを いろいろな国とよいおつきあいをしておくとか ふだんからこらしておく必要があります。
日本料理、中国料理、洋風料理では それぞれにいろいろな料理のやりかたがあります。日本料理のやり方の種類はすくないほうで、次の5つです。
生(切る)-刺身
煮る-煮物
焼く-焼き物
蒸す-蒸し物
揚げる-揚げ物・天ぷら
ここではコメのご飯を炊飯するのに いろいろな調理器具を使ったときに、料理のCFPがどのような値になるかを1合(160g)のコメを炊いて340gのご飯にする条件で 比べてみましょう。学校の家庭科での炊飯実習ではガスコンロで鍋をつかってご飯を炊くかもしれません。
便利さを買うレトルト・パックご飯のCFP値は原料のコメも含んでいます。都市ガス炊飯器は化石燃料でも水素のおおいメタンを燃やしているのでCFPは電気炊飯器よりも小さな値になります。電子レンジによる調理は 食べるものだけを熱するので電気炊飯器よりも小さくなります。化石燃料によらない発電、たとえば太陽光や風力、水力、原子力などにより得られる電力をつかうと 温室効果ガスはださず 0になります。
国立環境研のグループが どのように変えるとCFPの1年あたりの値をどれくらいへらすことができるかを いくつかあげています。たくさん減らせるのは、動物の肉を食べないことです。完全に植物しか食べないと1年で340kg二酸化炭素相当もへらせます。食全体では1330kgですから、1/4を減らせることになります。
なにか気をつけることはないでしょうか。昔の日本ではおもてむき4つ足動物の肉はおおっぴらには食べませんでした。しかし鳥や魚は強いタブーではありませんでした。ただ豆腐でつくったガンモドキという食べものがあるのですから 鳥は食べるのを(お寺では)遠慮していたのかもしれません。インドの僧侶階級の人たちはベジ食をまもり、ニワトリの卵も(有精卵は)すでに命がやどっているとして食べません。
動物からの食べものをたべないと、健康にとってこまるのは、動物からしかとれないビタミンB12や 植物の油と動物の脂はちがうので、たとえばコレステロールといった動物に特有な物質を食べれないことです。インドの僧侶階級の人たちは ウシのミルクをよく飲んで動物からしかえられない食べものを体の中にとりこんでいます。
いまは人がとらなくてはいけない栄養はなにか、それがどんなたべものに含まれているかが よくわかっていて、どんな食べものを組み合わせると栄養が完全になるかを簡単に計算することもできるので、健康のためのてだてをつくすことができます。
IDEA 産業技術総合研究所(産総研) Inventory Database for Environmental Analysis (有償)
3EID 国立環境研究所 (産業連関表による環境負荷原単位データブック)2020年のデータ・ダウンロード
コメの3EIDデータについてのメモ :3EIDではコメについては生産者価格ベースの値なので、農水省の統計でのコメ生産量のデータとあわせて計算すると、日本のコメの温室効果ガス排出係数は2.12 t-CO2eq/t となる。水田の底泥での嫌気的なメタン発酵が大きな値を与えている。
気候変動をじぶんごとにする (国立環境研究所)
CarbonCloud スウェーデンの組織(ヨーテボリに本拠)情報
The Big Climate Database version 1.2 Download デンマークの環境シンクタンク CONCITO による運営
Our World in Data イギリス・オックスフォード大学の組織
J. Poore, et al: Reducing food’s environmental impacts through producers and consumers, Science (2018) Resouces のところのエクセルファイルに食品のCFPデータが示されている
Shrink That Footprint オーストラリアの組織
FOODPRINT CALCULATOR 米国、英国の人たちによる組織、食品のCFPが輸送でどうかわるかがわかる
Eat Low Carbon 米国、アイコンの上にカーソル置くとCFP値が表示される
Quiz: How Does Your Diet Contribute to Climate Change? 米国 NY Times
Harvard FOODPRINT CALCULATOR 米国 Harvard 大学
左側の列は調理時間を示し、右側の棒グラフは各料理のカーボンフットプリントを二酸化炭素換算値で表示 しています。青色部分は調理に関連する直接排出を示し、赤色部分は食材の生産に由来する間接排出を示し ています。
ウシは反芻動物で 胃の中で嫌気発酵して生成するメタン(温室効果がある)がゲップで出るので、カーボンフットプリントの値が大きい
イネは水田で栽培すると、嫌気状態になる底泥での嫌気発酵によるメタンが大気中に放出されるので、カーボンフットプリントの値が大きい
農業での温室効果ガス排出は二酸化炭素のほかにメタンや土壌中からでる亜酸化窒素が多い
旬をはずして 加温する施設栽培で野菜などを生産すると 旬の地場野菜にくらべ カーボンフットプリントの値は跳ね上がる
食材を空輸するとカーボンフットプリントの値は大きくなる
どのような調理の方法によるかで レシピのカーボンフットプリントの「加工」部分の値が左右される
食品成分データベース (文科省)
日本人の食事摂取基準 (厚労省)2025年版