人々の意識や行動、属性はさまざまである一方、そこには何らかの地理的な傾向(地域差)があることが知られています。ある特徴をもつ人がどこで多く暮らしており、そしてなぜそこで暮らしているのか、あるいは、そこで暮らす人がなぜその特徴をもちやすいのかという問いは、素朴でありながら答えることが難しい問いといえます。この問いに対して、一人一人の意識・行動・属性を調べた社会調査個票と、各地域の特性を表す地域統計・地理情報を紐づけた多層的なデータを構築し、定量的に分析したいというのがGULPの問題意識です。この方法は汎用性が高く、地域環境の影響に関心をもつ社会科学諸分野(社会学、教育学、政治学、あるいは社会疫学など)と地理学を横断する学際的領域を形成しています。
GULPは、個票データ利用や二次分析の促進といった地理学の課題と、地理情報を付加した社会調査データ分析という隣接諸分野の課題を橋渡しするプロジェクトとして構想され、2017年から研究活動が続けられています。2020年には3万人を対象とした大都市調査を軸として、多様な質問からなる詳細住所付き社会調査個票の横断データを構築しました。同データはデータアーカイブ(東京大学SSJデータアーカイブ:SSJDA)に寄託して公開され、学術目的の二次分析に利用されています。2025年には追跡調査による縦断データ構築が予定されています。