過去のお知らせ

生活心理研究所紀要より論文が刊行されました

 昭和女子大学生活心理研究所紀要24巻に次の論文が掲載されました。2021年度の日本社会心理学会にて発表した一連の研究をまとめたものです。特性的自己効力感尺度はさまざまな場面で使用されていますし、公募型Web調査はいまや調査的研究の中心的方法になりつつあります。そんな中での基礎的資料となれば幸いです。

2021年度学会発表

今年度はいろいろな方といろいろな形で共同研究を行い、それらを学会発表しました。コメントをくださった諸先生方ありがとうございました。


【概要】公募型Web調査における特性的自己効力感尺度の因子構造を検討した。不良回答および不正回答を除いた492人分の回答に探索的因子分析を行った結果、23項目中5項目が尺度構成上問題のある項目として除外され、回避傾向、対人効力感、負荷耐性の3因子解を得た。肯定項目群は二つの因子に分かれ、肯定項目と否定項目が混在する因子も存在した。さらに、男女別、年代別に同様の分析を行ったが、全体における結果とほぼ同様の3因子構造を得た。このことは、特性的自己効力感尺度が、方法因子によらない多因子構造をなすことを示唆した。

【概要】公募型Web調査において特性的自己効力感尺度が回避傾向、対人効力感、負荷耐性の3因子構造をなすことを受け、人生満足感およびビッグファイブとの関連を検討することで、特性的自己効力感尺度下位3因子の妥当性を検討した。下位3因子のうち回避傾向と対人効力感は人生満足度と正の相関関係を示したが、負荷耐性は無相関だった。ビッグファイブについては先行研究から特性的自己効力感と神経症傾向が負相関、他の4因子が正相関することがわかっているが、整合する関連を示したのは回避傾向のみであった。これらのことから、特性的自己効力感尺度の下位3因子はそれぞれ独立した特性であり、特性的自己効力感を反映しているといえるのは回避傾向因子のみであることが示唆された。

【概要】Diener, Wirtz, & Oishi (2001)は、実験参加者に肯定シナリオもしくは否定シナリオに、ほどほどに幸せな人生数年を情報として追加するかどうかを操作して提示し、登場人物の人生を評価させた。その結果、素晴らしい人生が突然終わる場合、その後程々に幸せな人生が数年続くよりも好ましく評定し、悲惨な人生の後に数年少しだけましな年月が続く場合、悲惨な人生が突然終わるよりも好ましく評定した。本研究は、このDiener et al. (2001)の追試を行った。研究1(n=237)では、元研究では参加者内要因であった追加情報の有無を参加者間要因とした。研究2(n=188)では、元研究と同様に追加情報の有無を参加者内要因とした。その結果、研究1では支持的証拠を得られなかったが、研究2では支持的証拠を得た。要因配置の違いで追試の成否が異なったことから、ピーク・エンドの法則が成り立つためには、シナリオの対照が必要である可能性が示唆された。

【概要】心理学研究の低い再現性が指摘されてから約10年が経過した。その原因の1つとして、斬新で有意な研究を好むジャーナルによる出版バイアスが指摘されてきた。しかし、そもそも心理学界には斬新で意外性のある有意な結果を重視する文化があり、編集者や査読者もそれに倣ってきたという理由もありうる。この問題を検討するために、日本心理学会ならびに日本社会心理学会の年次大会における発表論文のメタ分析を実施した。大会発表論文で報告されたp値の分布を見ることで、査読が存在しない状況下で、研究者による自発的な出版バイアスが生じてきたか検討した。対象は2013年と2018年の社会心理学系の実験研究とした。総じて出版バイアスを明示的に示す証拠は得られず、学会発表レベルにおいては比較的誠実に研究報告がなされてきたことを示唆していた。

【概要】本研究は、Krueger & Clement (1994)を感染症感染率の推測課題に適用し、サンプルサイズ・ヒューリスティックと推測の保守性が、感染症検査の陽性、陰性結果に基づく推測に対しても同様に生じるか検討した。その結果、総じて損失回避から感染可能性を見積もる傾向が見られた。陽性条件においてサンプルサイズ・ヒューリスティックが見られた。これは、同一内容の検査結果を適切に利用できた可能性があるが、感染可能性を高く見積もるために確証的な情報利用をした可能性も考えられた。ただし、検査結果がない場面においては、都合の良い結果を求める動機づけられた推論や、素朴信念の影響が考えられた。陰性条件では推測の保守性が認められた。感染可能性が低くても感染したら重大なので、感染可能性を高く見積もっておくよう補正した可能性があり、損失回避傾向を示した結果と考えられる。

【概要】自発的な向社会行動が、対人関係における満足感や効力感を通して幸福感をもたらす可能性を検討した。関係は良好だが経済的に困窮している友人がいる場面を設定し、自発的寄付条件、強制的寄付条件、自発的自己投資条件、強制的自己投資条件の4条件に無作為配置した。次に場面想定時の友人満足感、対人自己効力感、感情的幸福感を回答させた。その結果、向社会的行動を取る場合よりも取らない場合の方が対人満足感および対人的自己効力感が高く、先行研究に反する結果となった。寄付というよりも金銭搾取と捉えられた可能性がある。しかし、対人満足感は、自発的な寄付をした場合に高く保たれることが示された。したがって、自発的な向社会的行動は対人的満足感を媒介として幸福感を上昇させる可能性が示唆された。

「有斐閣現代心理学辞典」が刊行されました

有斐閣現代心理学辞典 が2021年2月に刊行されました。社会心理学の一部の項目を担当させていただきました。有斐閣「心理学辞典」といえば、心理学を学ぶ学生であれば必ず持っていた辞典ですが、これが装いも新たに生まれ変わったことになります。私としても非常に光栄な仕事でした。今回のこちらの辞典はオンライン版も用意されると伺っております。多くの人に利用してもらえると嬉しいです。よろしくお願いいたします。

(2021. 3.)

2018年度修士論文が提出されました

私が指導する学生の修士論文が無事提出されました。

1月22日の口頭試問、2月9日午前の修士論文発表会を経て認定される予定です。修士論文発表会は昭和女子大学学園本部館3階中会議室にて開催されますので、ご感心のある方はぜひ議論にいらしてください。

(2019. 1.)

2018年度卒業論文が提出されました

私のゼミに所属する学生8名の卒業論文が無事提出されました。

学科主催の卒業論文発表会が2月8日金曜日9時15分から14時50分の間に開催されます。私のゼミは10時40分からB1.5S35教室に登場します。ご関心の向きはぜひ御覧ください。

(2019. 1.)

紀要論文が公刊されました

立正大学心理学研究所紀要に,以下の論文が掲載されました.

立正大学 小林麻衣先生、明治大学 樋口収先生との共著で、Ariely風の課題成績報告不正に対して自我消耗がどのような影響を及ぼすか検討したものです。Mead et al.(2009, study1)の概念的追試に相当します。先行研究から導かれる仮説は支持されませんでした。消耗した参加者では不正報告が認められず、消耗していない参加者で不正報告が認められました。この結果が頑健であるかどうかはさらなる検討が必要ですが、興味深い知見であると考えています。

この研究は、昭和女子大学の2015年度心理実験法実習Bの中で行われたものです。当時参加いただいた皆様、実施に協力いただいた皆様に心から感謝いたします。(2018. 4.)

HI学会誌で論文が公刊されました

ヒューマンインタフェース学会誌第20巻1号「特集:研究再現性問題」に,以下の論文が掲載されました.

上智大学 樋口匡貴先生との共著で、心理学評論に掲載された藤島・樋口(2016)でのQRP(Questionable Research Practices: 疑わしい研究実践)に関する議論を再び紹介すると同時に、追試の実践とその困難について議論をしました。HI学会誌20-1の特集では拙稿の他に次の論文が掲載されています。

また、この特集は関西学院大学 三浦麻子先生のHPでも紹介されています。併せてご覧ください。なお、この論文は、科研費15K13122 挑戦的萌芽研究「社会心理学研究の再現可能性検証のための日本拠点構築」の助成を受けています。(2018. 3.)

S研にて研究報告

2017年12月16日に筑波大学が主催するS研(社会心理学研究会)に参加、研究報告をしてきました。発表題目は「社会心理学実験における再現性問題とQRP、追試の有効性とその難点」でした。事前に告知した発表概要は下記の通りとなります。

当日は多くの方にご来場いただき、また長時間に渡り議論をすることができました。あらためて感謝申し上げます。なお、この研究発表に関しては、科研費15K13122 挑戦的萌芽研究「社会心理学研究 再現可能性検証のための日本拠点構築」の助成を受けています。(2017.12.)


監訳書刊行

2017年9月に、上智大学樋口匡貴先生と共同で監訳した「社会心理学・再入門 ブレイクスルーを生んだ12の研究」(ジョアンヌ・R・スミス, アレクサンダー・ハスラム(編) 新曜社)が刊行されました。社会心理学の古典というべき研究が、どのような社会背景のもと立案、実施され、学界と社会にどのような影響を及ぼし、その後どのように批判、議論、発展してきたかが紹介されています。

原著は、"Smith, J. R. & Haslam, S. A. (2012). Social Psychology: Revisiting the Classic Studies. Sage."です。刊行後、反響を呼び、すでに第2版が出ています。ヨーロッパの社会心理学の潮流と最新を知るにも好適だと思います。監訳者ながらすごく勉強になりました。また、本書はSage社の"Revisiting the Classic Studies"の1冊です。シリーズの他書として既に「発達心理学・再入門 ブレイクスルーを生んだ14の研究」(新曜社)が刊行されています。

翻訳は、(私を除いて)日本の社会心理学を今後リードする先生方にお願いしました。そのおかげで幾分難しいところも分かりやすくなったと思います。社会心理学を専攻する学部生、院生にとって、さらには社会心理学を少しでも学んだことのある皆様にとって、とても興味深い内容だと思います。ご一読いただけると幸いです。

購入はこちらからどうぞ。 (2017.10.)

日本グループ・ダイナミックス学会第64回大会に4年ゼミが参加、研究発表

2017年9月30日、10月1日に東京大学本郷キャンパスで開催された日本グループ・ダイナミックス学会第64回大会に、私が指導する4年ゼミの面々が参加、ポスター発表を行いました。学部生の発表は、次世代を担う人材育成を目標に、第64回大会で特別に認められたものです。4年ゼミの面々は、3年次(2016年度)に実験実習としてMazer, Amir, & Ariely (2008)の概念的追試を行っていました。今回はこのデータを発表したものです。

この研究に関わるマテリアルは、osf.io/ufcv6 にて公開しています。興味のある方はぜひご覧ください。また、ここにあるマテリアルを利用して追試などしていただけると幸甚です。よろしくお願いいたします。 (2017.10.)