PC環境

我がPC環境について書いておかう。

大學を卒業したばかりの頃、昭和61年に初めて PC-9801Vm2 を買った。それがどういふ役にたつのかよくわからず、ただ〝活字〟を使へるといふ期待からだった。數年後にはワープロ專用機が大流行したから、少し時代を先取りしてゐただけである。今でも「コンピュータ」を使ってゐる意識は薄い。ただ、漢字などを自在に扱ひたいといふ思ひで此處まで來た。やっと最近になって、その願ひが叶へられた氣がする。

40年弱の間に、個人用途のパソコンはすっかり成熟した。もはや新機種への期待は薄く、どれも同じやうに使へる。むしろデータの管理こそ大切と思ひ至り、少し頑張って自宅にネットワークHDD(NAS)を据ゑつけた。グーグルドライブなどとの組合せにより、場所と移動の束縛から解放された。

以下、自分にとって影響が大きかった事柄を列擧してゆかう。最近の出來ごとから逆に遡ってみる。

國會圖書館のweb閲覽と全文檢索】

古書の閲覽は國會圖書館に限った話ではないが、規模の大きさと(未だ誤認識は多いものの)全文檢索がとにかく便利である。特に令和4年には閲覽範圍が大きく廣がり、古書店散策もすっかり御無沙汰となった。

正字正假名の基盤は平安朝以來の文語文と近代日本の文獻である。ローマ字國字論にはこの背景が無く、また新字新カナも過去を葬り去る事はできなかった。web閲覽を大切にしてゆかう。

【電子書籍】

コロナ禍で蟄居の暇な時間を利用し、本棚のスキャンを敢行した。大した架藏も無いが、やはり背中の截斷は隨分ためらった。しかし亂雜極まる机邊が次第に片附くにしたがひ、物を持たない身輕さが勝ってきた。崩れた表紙で手が黒く汚れる事もなくなった。「Everything」で管理も樂である。

【キーボードマクロ】

筆者のやうに本格的なプログラムを組む能力がない者でも、バッチファイルの感覺で決まりきった操作を自動化できる。特に「AutoHotkey」は威力絶大で、「やちまた」として結實した。

【OCR(光學的文字讀取り)】

昔から印刷物のテキスト化はさまざま製品化されてきた。ある年、グーグルドライブのOCRが急に「ゐ」「ゑ」を讀み取り始めて驚いた事がある。しかもどうやら文脈をちゃんと押へてゐるやうだ。恐らくどこかの段階で「さういふ方式もある」として組込んだに違ひない。世の中で使はれてゐるといふ事は何より大切だ。

今はほとんどの場面で「quickOCR」を使ってゐる。何の用意も要らず、ひたすらディスプレイで見てゐるものを讀み取ってくれる。Windows標準機能を應用してゐるとの事で、反應が壓倒的に速い。識字率もさほど惡くない。Webサービスの場合、jpegをアップロードする手間が馬鹿にならない。手持ちのスキャンや國會圖書館の古書を閲覽しつつ、その場で本文中の語句を讀み取り、略字に戻して再檢索といった一連の流れを上記AutoHotkeyで組んでゐる。

【エディタ・ワープロ】

エディタは長いこと「QXエディタ」を使ってゐたが、最近は「秀丸エディタ」が主になった。「WZ Writing Editor2」もよささうだ。どれも縱書き表示可能が嬉しい。

オフィス系は「2003」を手放せない。32ビットだから日本語Ime契冲が使へる。それに2007バージョンからショートカットが大きく變り、まったく馴染めなかった。「.docx」「.xlsx」ファイルを開くには、コンバーター(ここの「Download3k US」ボタン) をインストールすればよい。ただし「令和」年號だけは流石に扱ひが難しい。ワード用の連續檢索置換マクロ「換の玉」を使ってゐる。

【pdf】

PDFの閲覽には「SumatraPDF」と「Foxit Reader」を愛用してゐる。海外製でも右開きのものが多いのは、日本發「Manga」の需要が多いのださうな。編輯には 「PDF画像抽出ツール」「pdf_as」「PDF_R2L」「ImagePageSplitter」  などを使ひわけてゐる。

【日本語入力】

ATOKに「文語モード」ができる前から、日本語Imeは「契冲」。殘念ながら32ビットプログラム上でしか使へない。よってフリーソフトなど32ビット64ビット兩方の用意があれば、迷はず前者をインストールしてゐる。office系も2003バージョンのまま。日本語入力として非常に古い設計だが、基本はきっちりしてゐるし單純明快で快い。ファンクションキーの設定や配色など少し變へると、より自分好みに洗煉できて嬉しい。

Windowsとしてはあまりに古いプログラムなので排除したがってゐるやうだ、それでもWindows11でインストールできた。ただし通常の方法では拒否される。管理者權限のコマンドプロンプトか Windows PowerShell で Setup.exe を實行する。たまにOSの大規模アップデートで不具合がおき、インストールし直す事がある。またなぜかローマ字入力に指定してもカナ入力で立上がる場面が増えた。その都度ファンクションキーに指をのばすのも面倒なので、ローマ字入力のキー設定を「コントロール + 変換」に改め、やっと煩はしさから解放された。

自分用の日本語入力として、30年間つねにお世話になったし、できれば今後もずっと使ひ續けてゆきたい。文字文化協會で「契冲64」の開發計畫があり、もし乘り換へる事ができたらそれはそれで幸せであらう。

【その他】

暫定正字明朝」が安定してきた。

windowsの漢字表示は「メイリオ」ゴシック體が標準であるが、これを明朝系に指定すると雰圍氣ががらりと變る。「Tahomaなんて大っきらい!」・「Meiryo UIも大っきらい!!」・「Re-Metrics」などにより、まるで活版印刷のやうな畫面表示となった。いづれ「暫定正字明朝」に移行してゆきたい。

windows10から、ディスプレイ表示を「白黒」にできる。「Windowsの設定」→「簡單操作」→「カラーフィルター」で、目が疲れた時にとてもよい。