雙表記テキスト
表記包括タグ「Yモード」による、テキストの動的變換マクロ「やちまた」の試案yati0505を公開してゐます。
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【概説】
ワンクリックで「現代仮名遣⇔歴史的假名遣」「略字⇔正字」のテキスト變換します。Windows上で動作しますが、原理としては單純な檢索置換の繰返しですので、他の環境にも容易に移植可能の筈です。特に各種ワープロなどは文字修飾情報を失はぬやう、別段のマクロを組む必要があります。
「カット&ペースト」の途中、切り取られた文章は「クリップボード」といふ場所に一時保存されます。これを横取りし、檢索置換をかけた上で元に戻す仕組みです。あたかも自動演奏のピアノのやうに、一連の動きをマクロプログラム「AutoHotkey.exe」で自動實行させてゐます。特定のソフトウェアに依存せず、たとへばブラウザ上の文字入力窓でも高い確率で實行可能です。
類似のプログラムは從來より各種ありましたが、
・ 日本語IMEのやうに、あらゆる場面のテキスト編輯で使へる。
・ ローカル環境でも作動する。
・ 必要に應じ、現代表記に戻せる。
點がこれまでにない特色です。柔軟な「動的テキスト環境」を目指し、たとへばローマ字や元號の變換などへの應用も摸索中です。
以下のフリーソフトを利用しました。多大な恩惠に感謝申上げます。
・poorsed : テキストの檢索置換。本システムの心臟部分。荒魂之會の小澤さん謹製。「ezsed」も同趣。
・AutoHotkey : 著名なキーボードマクロ。
また筆者自身は以下のシェアウエアソフトを愛用してゐます。
・換の玉 : マイクトソフトワードの連續置換マクロ。秋桜舎。
・秀丸エディタ : 定番のエディタ。テキストの色分け強調表示と縱書きが秀逸。
【注意點】
マクロプログラム「やちまた」は「キーボード操作の再現」つまり自動演奏のピアノの如き振舞ひをします。ピアノの構造が少しでも異れば、音が出ないかもしれません。文章全體が消える可能性すらあります。ただほとんどの場合、その文章は本當に失はれたのではなくOSのどこかに殘ってゐます。ほとんどの場合、「コントロール+z」もしくは「Alt+E」で復元できる筈ですが、ソフトウェアにより異同はあります。またWindows10以降「Win+v」でクリップボードの履歴を辿れるやうになりました。この機能はあらかじめ「設定」の「システム」の「クリップボード」で設定しておく事を強くお勸めします。また異常な動きが止らない場合、「無変換+ESC」で「やちまた」の動きそのものを停止できます。いざといふ時パニックに陷らぬやう、復元方法によく慣れておきませう。
以上、3種類の危機管理に御注意ください。
・ 多くの場合「コントロール+z」もしくは「Alt+E」でうっかり操作を戻せる。
・ 「Win+v」でクリップボード履歴の參照や貼付ができる。
・ 「無変換+ESC」で「やちまた」の動きそのものを停止できる。
以上、申し譯ありませんが如何なる損失にも作者は責任を取れません。自己對應で御願申上げます。
【動作】
AutoHotkeyのスクリプトの多くは以下の三段階から成ります。
(1) テキストを切り取り(範圍指定がなければ全部指定)
(2) 切り取ったテキストを連續檢索置換
(3) 元の場所に貼り付け
上記のトリガーキーのほとんどを[無変換]キー單獨、もしくは[無変換]をシフトキーの樣に各種キー押し下げで作動します。日本語Imeと竸合する可能性もありますので、できればImeのキー設定から[無変換]を外しておいた方がより安全に動きます。
原理として特に目新しいものはありませんが、
(1) 高速な檢索置換を「poorsed.exe」で實現
(2) 「AutoHotkey」により複雜な動作を自動實行
(3) 目的に沿った變換テーブルの開發と改善
の三要素により、實用的なものとなりました。
【インストール】
先づ「やちまた」の解凍とコピー、次に「AutoHotkey」のインストールへと進みます。インストールを後にする理由は後述します。
(1) 「やちまた」のコピー
「yati_r505.zip」ダウンロードはこちら
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「yati_r505.zip」を解凍すると「ahk」フォルダが生成されます。これをcドライブにそのままコピーしてください。本來、Cドライブをあまりいぢりたくはないのですが、相對パス指定がなかなかうまくゆきませんので、位置を固定して絶對パス指定にしました。
C:\ahk\
「Yati.ahk」「AutoHotkeyU64.exe」2つのファイルがある筈です。
C:\ahk\poorsed
「やちまた」用のsed、「poorsed.exe」他があります。
C:\ahk\table
變換用テーブルファイル群です。
(2) 「AutoHotkey」のインストール
配布元(https://www.autohotkey.com/)の「Download」には2つのバージョンがあります。
・Download v2.0
・Download v1.1(deprecated)
どちらのインストールでもよいのですが、v2.0をお勸めします。v1.1はインストール時の選擇項目が複雜だからです。「やちまた」はv1.1用に記述されてをり、じつはv2.0下では使へません。しかし「やちまた」を實行しようとすると「これはv1.1用スクリプトの樣なので、v1.1をダウンロードしてよいか?」と表示されます。「Yes」で自動的にインストールされ、結果として動くやうになります。v2.0は令和4年(2022年)秋の登場ですので、これから對應してゆきたく思ってをります。
(v2.0インストール中)
(インストール成功)
(ここでA:\ahk\yati.ahkをクリック。するとv1.1のインストールが促される)
(v1.1のインストール成功)
(再びA:\ahk\yati.ahkをクリックで、スクリプトが正常に開始)
この時は通知領域に緑色の[H]マークが出るだけで、目立った動きはありません。ここで重ねてA:\ahk\yati.ahkをクリックすると、以下の樣な警告が出ますが、「はい」でロードし直されます。
異るスクリプトファイルをクリックすると[H]マークが2つ現れ、兩方とも同時に利用できます。
v1.1のインストールはこちら
https://pouhon.net/ahk-install/661/
が詳しいです。
起動の都度、スクリプトファイルをクリックするのは面倒ですので、スクリプトファイルもしくはそのショートカットをスタートアップフォルダに置くと、起動時に自動實行されます。
またこれはあくまで簡易的な方法ですが、エクスプローラーなどファイルアイコンの見える場所で、スクリプトファイルを「AutoHotkeyU64.exe」へドラッグ&ドロップしても實行できます。ただしバッチファイルではうまくゆきませんでした。また「AutoHotkeyU64.exe」以外のバージョン、たとへば「AutoHotkeyA32.exe」などでは起動しませんでした。「やちまた」では上記「AutoHotkeyU64.exe」を「yati.ahk」と同じ場所に置いてゐます。
【終了】
通知領域に緑色の[H]マークを右クリック、最下段の「Exit」クリックでスクリプトが終了します。また「やちまた」の機能として、[無変換]+[Esc]で終了するやうにしました。動作が暴走した時など緊急時に打鍵してください。
【典型的使用例】
範圍指定(シフト+カーソルキー)の後、下記のトリガーキーを押す。範圍囲指定がなければ文章全體を對象とする。
[無]+Esc 「やちまた」スクリプトの停止。緊急時にどうぞ。
[無]を1囘のみ打鍵 カーソル上の漢字を正字・略字に相互變換。假名遣は「Yモード」で變換。
カーソルは必ず變換したい文字の後方に。「くゎ"」や「おう」などは最後方に。
「~してしまう」など「まう」と誤認識されるので「う」のみ範圍指定が必要。
假名文字は數文字遡って切り取るため、特に段落の冒頭近くは範圍指定する方が無難。
「ワード」などリッチテキストは文字修飾を崩す可能性あり、必ず範圍指定を。
[無]の連打 「簡易モード」の漢字・假名遣變換。タグ文字は入らない。
[無]+スペース 直前1文字の漢字を偏と旁に分解。假名文字は清音濁音の變換。OCRの修正對策。
[無]+t 縱書編輯への對應。カーソルが縱横に動いて讀んでゆく。再度押すと横方向に戻る。
[無]+x 簡易漢和辭典。「メモ帳」でデータテキストの該當字を檢索する。
[無]+v 簡易モードで正字正假名のペースト。コントロール+C などの後に實行する。
[無]+b 略字のペースト。上記と同樣に使ふ。將來は假名遣も現かなに戻したい。
[無]+F11 Yモードの假名遣變換。漢字はそのまま。
實行は必ず最初1囘のみ限定。2囘目は表示がをかしくなります。
[無]+F12 Yモードの漢字・假名遣變換
上記と同樣に實行は必ず最初1囘のみ。わざと押しにくい位置に設定しました。
[無]+g Yモードテキストで現代假名遣に變換。
[無]+r Yモードテキストを歴史的假名遣に變換。
[無]+1 漢字を略字に(第1水準の意味で「1」キー)。「弁」の區別もある程度できます。
[無]+2 第2水準の範圍内で正字に。
[無]+3 第34水準の範圍内で正字に
[無]+4 ユニコードの範圍内で正字に
【私がよく使ふ順番】
(1) 既存の文章のコピー保存。
・ 現代表記のテキストをエディタに貼つけ。ファイル保存。
・ ファイルの標題をテキスト中からコピーし、[無]+vでリネーム。
・ 再度ファイルを開き、[無]+F12で正字正假名に變換。
・ 變換誤りは[無]單打などで修正。
(2) (やむなく現代表記IMEで)文章の入力。
・ 文章を入力しつつ、[無]單打で修正。
・ あるいは現代表記でまとめて入力し、範圍指定で[無]+F12。
・ 他からのコピーは[無]+vで自動的に正字正假名貼つけ。
・ 縱書き編輯の時は必ず[無]+t指定。さもないと暴走する。再度[無]+tで解除。
(3) 正字正假名文章中の語句を檢索したい。
・ 檢索したい語句をコピーし、檢索窓で[無]+b。略字に戻して檢索できる。
・ (ゆくゆくは現代假名にも戻したい)
(4) エクセルで歴史的假名遣順・現代假名順それぞれソートしたい。
・ 必ず「Yモード」でソートデータ作成。
・ ソートしたい列をエディタにコピーし、[無]+r または [無]+g。
・ エクセルに貼り戻し、Yモードのタグを取り除いてそれぞれソート。
・ (エクセルで連續置換マクロを組めば、直接實行可能)
(5) 「必ず現代表記」の投稿。
・ [無]+g および [無]+1 を實行し、更にYモードのタグを取り除いて提出。
Yモードの插入タグは槪ね以下の樣な性格になってゐます。
「'」 「はひふへ」などハ行と、四つ假名の「ぢづ」、また撥音「-む」
「"」 「ゐゑをくゎ」などワ行と、「あう・いう・えう」の長音
「""」 「やう」「きゃう」
「"'」 「あふ・えふ」
「''」 「あふる」「たふす」
詳細は「yati0505_變換テーブルデータ.xlsx」を。
實際の活用例を示します。靑空文庫からあへて略字現カナの『吾輩は猫である』をダウンロードし、加工してみます。「秀丸エディタ」は縱書きですので、忘れずに[無]+tを押して、縱書き對應にしておきませう。カーソル位置に【縱】記號が出現します。煩はしいことですが、「やちまた」は各アプリケーションの状態を取得できないため、指定しておく必要があります。
[無]+F11だけで、以下の樣に直せます。筆者の愛機はwindows10がやっと動く骨董品ですが、それでも『猫』全文を數秒で變換できました。[無]+F12なら、漢字もふくめて變換できます。「秀丸エディタ」は特定文字を色分け表示できますので、Yモードタグおよびその前の文字を強調表示し、假名遣の變換場所が一目瞭然です。
殘念ながら全自動ではありません。未變換や誤變換もあります。
「けんとう」が「けんたう」に直ってゐません。そこで「とう」の下にカーソルをあて、[無]單打で「けんたう"」になりました。また「見当」も略字のままです。「当」の下にカーソルをあて、[無]單打で「當」になりました。「当」の方がよければ、再び[無]單打で元に戻ります。上段でも申上げましたが、必ず[無]+tで縱書き對應状態にしておかないと、カーソルが横方向に動き、文章が崩れてしまひます。萬一崩れても焦らず、コントロール+zなどで復元しませう。
ここで[無]+gを押すと、全文が一齊に現代假名遣へ、また[無]+1で略字へ戻ります。
【課題】
・ 原因は不明ですが、起動して最初の變換のみうまくゆかない時があります。1囘限りでその後は大丈夫なのですが、最優先で改善を計ってゐます。
・ 古い機種でタイミングが合はず、作業を取りこぼす場合、速度調整的な仕組を考へてゐます。
・ 「辛(から)うじて」など、本文と振假名で切り離された場合の處理に惱んでゐます。「てんわう(天皇)」など連聲も同樣です。