超伝導の最も重要な性質と言えば、ゼロ抵抗で流れる超伝導電流です。ただし、超伝導体には臨界電流が存在し、それを超える電流量を流そうとすると、物質は超伝導を維持できずに常伝導状態に転移し、有限の抵抗が発生します。この臨界電流―電流による超伝導破壊―の物理を理解することは様々な超伝導の材料応用にとって重要です。例えば大電流を運ぶ超伝導マグネット用ケーブルには大きな臨界電流が求められますし、逆に、バイアスをかけた超伝導体に光を照射したときに起こる超伝導破壊を利用することで、非常に高感度な光・赤外線・テラヘルツ波の検出器を作ることができます。超伝導体に発現する新たな機能として近年注目を集めている超伝導ダイオード効果においても、電流による超伝導破壊(臨界電流の非相反性)が本質的な役割を果たしています。