福岡大学では定期的にトポロジーセミナーを開催しております(月曜日16:20〜17:50)。講演をご希望の方は上記メールアドレスまでご連絡下さい。
2024/1/15 16:20〜 堀内遼氏(佛教大)
タイトル:単体的集合の安定化と複層化
アブストラクト:空でない有限全順序集合と順序を保つ写像のなす圏の骨格をΔと書いたとすると、単体的集合とはΔ上の前層のことである。この圏Δに安定化という操作を施して別の圏が得られる。その圏上の前層がスペクトラムのモデルを与えることや、そのモデルと整合的な積の構成などが知られている。また、Δをある意味で複層化することで別の圏が得られる。その圏上の前層のなす圏にモデル構造が入り、それが弱ω-圏のモデルを与えることが期待されている。本講演ではこれらを解説した後に、Δの複層化の安定化を考え、その上の前層のなす圏に自然に誘導されるホモトピー論や積の性質について述べる。
2023/12/18 16:20〜 小原まり子氏(富山県立大)
タイトル:A model structure on the category of H-equivariant A-modules
アブストラクト:Hopf代数の作用する加群のなす導来圏やそのホモロジー群はKhovanovやQiにより発展してきた。QiはHopf代数の作用する加群の圏においてcofibrant加群を定式化した一方でモデル構造については言及されてこなかった。本研究ではQiのcofibrant加群とcofibrant対象が一致するあるモデル構造が入ることを示す。更に、その双対をとったH余加群の圏はTannaka recovery theoremより離散H加群の圏と圏同値になるが、もし時間が許せば、HがK(n)の次数付きホモトピー群の場合に本研究のモデル構造とK(n)-local categoryのモデルを与えるモデル構造は同じ構成であることを見る。さらに時間が許せば、type k spectrumと類似の条件として入射次元を考察していることを述べたい。
2023/11/20 16:20〜 吉田純氏(理化学研究所)
タイトル:パーシステントホモロジーの直感論理による実装と応用
アブストラクト:パーシステントホモロジーは位相的データ解析の基本的な道具の一つである。その数学的定義は、実数によるフィルトレーションを入れた単体複体のホモロジーとして理解され、マグニチュードホモロジーなどをはじめ、多くの興味深い数学的対象との理論的共通点が見られる。本講演では、このようなパラメータ付けされたホモロジーの、排中律を認めない直感論理における単体複体のホモロジーの意味論としての定式化を導入する。
直感論理の一つの利点は、Curry-Howard 対応によって、その証明が直接的に実装と対応することである。そこで、講演者によるパーシステントホモロジーの証明支援系 Lean への実装の試みを紹介し、上の理解を通じて、何故それが正しい実装であると保証されるのか説明する。また、時間が許せば、時間などのさらに一般なパラメータに依存した構造のパーシステントホモロジーの一般化の可能性についても議論する。
2023/10/2 16:20〜 正井秀俊氏(東京工業大学)
タイトル:On distances on distances
アブストラクト:空間上の距離からなる空間を考え,その上の距離を考えたい.念頭にある曲面のタイヒミュラー空間は,曲面上の双曲距離の空間とみなせる.近年,タイヒミュラー空間上には様々な距離が定義されており,それらの距離の関係性を考えるのは自然な着想である.本講演では,"距離の作り方"からはじめ,タイヒミュラー空間に関連する動機づけをお話した後,より素朴な状況について距離の空間上の距離についてお話ししたい.