私たちは転写制御における基本原理の解明に取り組んでいます。転写制御において中心的な役割を担うのはエンハンサーと呼ばれるゲノム中の調節領域です。エンハンサーは配列特異的な転写因子やコアクティベーターとの結合を介して、標的遺伝子の転写活性を時空間的に制御しています。ヒトゲノムには少なくとも40万以上ものエンハンサーが存在すると見積もられており、それらを介した遺伝子発現プログラムの多様化が高等真核生物の複雑な形態形成を可能にしていると考えられています。また近年、エンハンサーの変異が癌をはじめとする疾患の原因となることが相次いで報告されるなど、その生物学的重要性が理解されつつあります。一方で、「そもそもエンハンサーがどのように転写を制御しているのか?」という根本的な動作原理驚くほど理解が進んでいません。我々はショウジョウバエ初期胚をモデルとして、ライブイメージングや超解像顕微鏡、ゲノム編集、生化学、定量画像解析など幅広い手法を駆使することにより、独自の切り口からエンハンサー動作原理を理解することを目指しています。