干支物語 零
-未- 砂の歌が聴こえる
~バベル・シープ始まりの書
2015
-未- 砂の歌が聴こえる
~バベル・シープ始まりの書
2015
南の島から東京に、一人の少女がやって来た。彼女の名前は、釈迦堂智美。
南の島で、島の神々を祀る神社の巫女をしていた。
その少女は、東京にある森の中に立てられた高層ビルの屋上で、一人の天文学者に出あう。
彼の名前は夏目霧人。
〈二人は、ある一つの夢を共有している。〉
萩尾隆人。彼は写真家で、敬虔なクリスチャンであった。
彼は、南の島を訪れることになる。そしてその後、友人である霧人に手帳を届けて行方不明となっていた。その手帳には、彼が行ったある島に関するメモが残されていた。
「奄美諸島の外れにある小さな島」
「不思議なエアスポット」
「神と進化の両方の意味を知る場所」
そして、その手帳には一枚の写真が添えられていた。
それは、その島でタカヒトがあった神社の娘、釈迦堂智美であった。
タカヒトから手帳を受け取ったキリト、東京行きのチケットとキリトの家の住所をもらった智は、東京の森の中に建てられた高層ビルの屋上で出あう。二人は話す。世界を漂う文字のこと。神の頂を目指し神の怒りに触れたバベルの塔の物語。キリトの大好きな空と星の下。イエスやクリスマスイブ・イブについての話。釈迦堂家に伝わる祈りの文字について。コドクとはどんな感じか。
世界を漂う文字を見つめる智とキリトに、オーロラと砂が空から降り注ぐ。まるで優しく身体を包み込むような、色や濃さを絶えず変化させながら世界と溶け合うオーロラと、砂。
倒れた智に憑依したのは、タカヒトであった。タカヒトは、流星の降り注ぐ夜に、島の山を登った。それは異形の生き物たちが目指し登ったのと同じ山。これまでに、人間の姿のままその山を登った者はいない。タカヒトはその山の頂に辿り着く。そして彼は更なる進化へと辿り着く。そこで彼は〈空〉になり〈進化の砂〉を手に入れる。それは、世界を砂に変えることのできる力であった。
タカヒトに取り憑かれた智は、ある夢を語る。それは、智とキリト、二人が連動させている夢。その夢で、智は砂となる。砂になって地球の底に落ちてゆく。柏手が鳴る。ふと上を見上げると誰かが地球の底に降りてくる。ゆっくりとゆっくりと降りてくる。それはキリトであったのだと、智は気付く。小さい頃からずっと二人が見ていた夢。
キリト「やっぱり夢と連動していた。あの時は意味が分からなかったけれど。…仮にお前の夢が予知夢的意味を持つのなら、僕は地球の底までお前を探しにゆくサダメだ。…もっとも、砂になる前に僕がお前を砂にはさせない。」
キリトは、智に取り憑いていたタカヒトを引き受けることとする。智は〈神域封印〉の文字を刻む。それは、タカヒトを、神の領域を封印する文字。
まいったね。僕、砂になるよう、です!…なあ、智。思い出したんだ。…思い出す。
お前がいて、世界に音を響かせて。歌い。踊る。…智。僕が砂になったら、その砂に、
ささやかな言葉を刻んでくれないか?出来ればありふれた言葉がいい。
…先へ行け。堪能しろ。コドクを。
砂になったキリトとタカヒト。世界に柏手を響かせる智。
彼らは、辿り着くことができたのかもしれない。
砂の王はいつ復活するのか。
そして、その時、世界はどこに辿り着くのだろうか。
地球の底だろうと、キリト、探しに行くよ。
だから、響け。響け。世界に響け。そしてあの人に届け。
これは、終わりと始まりの合図だ。
釈迦堂 智美(しゃかどう ともみ)… 奄美諸島の小さな島の巫女
萩尾 隆人(はぎお たかひと) … 写真家
夏目 霧人(なつめ きりと) … 天文学者
2015年12月23日
新井薬師 Art Live Space 「Special Colors」