クロニクル

・12月15日

釈迦堂智美が巫女をしている南の島で、写真家の〈萩尾隆人〉が行方不明になる。その日を境に、島の海底から浮上し、山の頂を目指す数多の異形の生き物が海の底から浮上することはなくなった。この日は、この年最大のふたご座流星群の日であった。

・12月20日

         釈迦堂智美が萩尾隆人の友人である、夏目霧人の元を訪れる。

・12月23日

砂の歌が聞こえた日。その日は奇妙な日であった。朝に春が来て、昼に夏になり、夕方には秋、そして夜には冬になった。まるで1年が1日でやって来たような日であった。そして高層ビルが、一夜にして砂になった日。この日、夏目霧人は砂と共に消えてしまう。

・4月1日

国家プロジェクト〈SARAN〉発足。表向きは次世代のエネルギー開発を主とする国立研究所として設立される。召集されていた坂井龍と天音虎太郎はその召集を拒否するが、協力することで合意する。その代わりに坂井龍は優秀な二人の教え子、成田牡丹と娘の坂井伊凰をプロジェクトに推す。二人は教授の推薦と元来持っている才能を認められプロジェクトに参加。同時期に鳴り物入りで召集された帰国子女である伊能みるくも参加する。

・12月16日

真壁蓮は、申の属性を持つ王候補たちを全員倒した。しかし彼は先へと進むことが出来ない。果たして自分は申年の王なのか？そしてその先、物理王への道すじとは？彼は、恩師である天音虎太郎の研究所に訪れる。そこで研究所に住んでいる巫女、釈迦堂智美と出逢う。

・12月23日

         真壁蓮が森にのみ込まれ、森そのものに成る。

・1月3日

国家プロジェクトチーム〈SARAN〉に鬼の捕獲計画が発動。捜索が始まる。

・12月18日

鬼の捕獲に成功する。しかしそのさい、鬼たちは死亡する。

・12月20日

〈SARAN〉の研究所通称〈SAA〉にて鬼の解剖が始まる。解剖の途中、鬼が息を吹き返す。

・12月21日

         鬼を治験として研究が始まる。非人道的な研究は行わない決定をする。

・12月22日

〈SARAN〉研究所から鬼が逃げ出す。

・12月23日

         酉年の戦いの日。犬飼太郎は釈迦堂智美を連れ去る。

・1月1日

天音虎太郎が鬼を見つけて研究所に連れてくる。

犬飼太郎の、戌年の干支の王候補たちと闘う日々が始まる。それは仮想フィールドでの魂をかけた騙し合い。

・2月

王候補たちは呼び合い、引かれ合い、そして戦う。

・3月1日

天音虎太郎は犬飼太郎に会いに行く。「巫女を返してもらえないだろうか？」そう言うネコに太郎は優しく言った。「知ってるか？俺の力は釈迦堂智美が巫女として真っ直ぐに生きると増大するんだ。彼女はまさに守り、力を与える巫女だよ。このまま彼女の存在が俺の力にどれほど関与できるか、その行く末を見るのはとても面白い実験じゃないかい？」ネコは瞳を輝かせる。子どもがおもちゃを貰った時のように。そして言った。「いいね。でも鬼たちに約束したンだ。だから彼らが智を奪いに行くのは止められないよ？いい？」「構わない。そうそう渡すつもりもない。俺が王になったら返すよ。あんたは塀の上から高みの見物を楽しめばいい」「楽しそうだ」ネコは本当に嬉しそうだった。

・4月1日

犬飼太郎は力を付けている自分を自覚するが、同時に限界も感じていた。そんな折、天音虎太郎に呼び出され彼の研究所へと行く。その時に、砂の中に奇妙な魂の形を見る。掘り起こしててみると、それは如来だった。世界が変わろうとしている。

         犬飼太郎から如来を渡された天音虎太郎は、如来の研究を〈SARAN〉に頼む。

・5月22日

犬飼太郎が坂井教授の研究所がある山〈霧雪山〉に、戌年の王に成るために登る。太郎は自分がもうすでに王に成っていることに気が付く。

坂井教授と話す犬飼太郎。

・5月23日

犬飼太郎は釈迦堂智美の解放を宣言するが、彼女は天音虎太郎の研究所には戻らず、山の麓で生活することを選ぶ。太郎から連絡を受けた天音虎太郎は「そうだろね」と嬉しそうに言って承諾した。

・6月

この頃から坂井龍は研究室から出て来ることはほぼなくなる。犬飼太郎との出会いは、彼に一つの変化を与えたようだ。

・7月

坂井教授のもう一人の助手が他界する。坂井龍に再び助手として呼ばれる成田牡丹。「成田牡丹をしばらく助手にしたい」との要請が坂井龍から国へ出される。

・8月1日

成田牡丹の正式な坂井教授の出向が決まり、古巣に戻る。

・9月15日

         それなりの成果を出せたと、成田は出向から〈SARAN〉へ帰って来る。

・9月28日

坂井教授に呼ばれる坂井伊凰。その時に坂井龍が消える。

・10月2日

天音虎太郎が〈翼人間〉を連れてくる。

・10月25日

坂井伊凰は〈SARAN〉を辞めることを決める。

・11月

坂井伊凰が11月いっぱいを期限に〈SARAN〉を辞めることが受理される。いくつかの情報を開示しないことを条件に。

・12月

犬飼太郎に坂井伊凰が依頼を持ち込む。

山荘に集まる坂井伊凰、成田牡丹、伊能みるく。そして鬼たち。始まりが始まる。

解放された干支は、同時多発的に干支の能力を持っている能力者たちを生みだすこととなる。

その能力者たちの間で噂される二つがあった。

一つは鬼の姫である釈迦堂智美を手入れること。

もう一つは、「如来、Borderはもともと能力を二つ以上持っている、より神に、物理王に近い存在なのではないのか？」というものだった。〈SARAN〉は2014年12月10日に施行された特定秘密保護法の元、その存在は明らかになっていない。しかし翼人間の存在が、一部の人間に知れ渡ることになる。何故か。

干支王の力を持った者たちの、物理王の座を奪い合う戦いが始まる。