(半谷吾郎、本田剛章、He Tianmeng )
人為的影響の少ない環境にすむ野生のニホンザルが自然環境から受ける影響に着目し、屋久島の海岸部から山頂部まで多様な環境において、個体群生態学、採食生態学、行動生態学などの観点から研究を進めています。
半谷は、屋久島において個体群動態の継続調査を毎年実施しています。屋久島の瀬切川上流域では、森林伐採と果実の豊凶の年変動がニホンザル個体群に与える影響を明らかにする目的で、調査を継続しています。「ヤクザル調査隊」という学生などのボランティア調査グループを組織し、夏季に一斉調査を行って、人口学的資料を集めています。また、屋久島の上部域と海岸部の間で、食性、密度、活動時間配分、体温調節行動、採食中の攻撃的交渉の頻度、社会関係、食物選択の化学的基準などについての比較生態学的研究を行っています。
本田は屋久島山頂部で、ニホンザルの土地利用と食性の季節性について研究を行っています。
屋久島海岸部で、Heは食物の固さと咀嚼について研究を行っています。
(湯本貴和、半谷吾郎)
森林の構造や果実生産と霊長類群集との関係を調べることにより、とくに熱帯林や亜熱帯林の分断化や劣化が進行するなかで、適切な保全策を提案するための基礎研究を推進しています。
湯本は、アフリカ熱帯林に生息する大型類人猿(チンパンジー、ボノボ、ゴリラ)が、植生の異なる多様な生息環境をどのように利用しているかについて調べています。
半谷は、屋久島のニホンザルを対象に、果実や葉、キノコの採食を通じて、霊長類が森林に与える影響について研究しています。また、哺乳類のDNAを集めてくれる動物として、ヤマビルやハエの生態についての調査も行っています。
(半谷吾郎、澤田晶子、Lee Wanyi )
霊長類がさまざまな食物を食べるための適応として、腸内細菌に着目して研究を行っています。
澤田、Lee、半谷は、屋久島など各地のニホンザル、マレーシアのオランウータン、ウガンダのクロシロコロブス、マダガスカルのバンブーレムール、ガボン、タイ、中国、モロッコに生息する複数の野生霊長類を対象に、食性の季節変化と腸内細菌相の関連についての分子生態学的研究や、試験管内発酵実験による発酵能力の評価を行っています。
(橋本千絵、竹元博幸、毛利恵子 、徳重江美、峠明杜)
人類が誕生し、現在も4種の類人猿を含む多様な霊長類が生息するアフリカ熱帯林において、生態学的研究を行っています。
橋本は、ウガンダ共和国カリンズ森林とコンゴ民主共和国ワンバ地区において、それぞれチンパンジーとボノボの社会学的・生態学的研究を行っています。チンパンジーの遊動や行動のデータを収集するとともに、定量的な植生調査や果実量調査を平行して行い、チンパンジーの行動や社会関係が環境からどのような影響を受けているかという点に注目して、研究を行っています。また、毛利とともに、糞や尿などの非侵襲的試料を用いた遺伝学的研究も行っています。
また、カリンズ森林では、同所的に暮らす3種のグエノン(レッドテイルモンキー、ブルーモンキー、ロエストモンキー)を対象とした行動生態学的研究も行っています。徳重は、3種の寄生性線虫叢を比較するため、糞を採集・分析して研究をすすめています。峠は、3種の食性を比較するため、行動観察と糞中DNAの分析を組み合わせて研究をすすめています。
(湯本貴和、半谷吾郎、金森朝子 )
マレーシア領ボルネオ島・サバ州で、多種の霊長類が共存する生態学的メカニズムと腸内細菌叢、レッドリーフモンキーの採食生態などについて、東南アジア熱帯林に特有の一斉開花結実現象に着目して研究を行っています。
金森は、サバ州のダナムバレー森林保護区で、2004年以来、オランウータンの長期研究を行っています。
(湯本貴和、武真祈子 )
アマゾンに生息する新世界ザルを対象として、採食生態学的研究を行っています。
武と湯本は、京都大学とブラジル国立アマゾン研究所(INPA)が共同で行っているSATREPSフィールドミュージアムプロジェクト・森林研究班のメンバーとして、アマゾン地域に生息するサルの生態研究を行っています。とくに、アマゾン最大の都市・マナウスの都市孤立林に同所的に生息する3種の新世界ザル(フタイロタマリン、コモンリスザル、キンガオサキ)を対象にしています。人為的環境に対する彼らの適応能力を解明し保全の策につなげていくために、大都市の小さな森で3種のサルがそれぞれ何をどのくらい食べているか調べています。