Travel agency dialogue task

旅行代理店対話タスクの意義

本コンペティションでは,参加チームは旅行代理店における対話タスクにチャレンジします.このタスクでは,カウンターセールス役となったロボットが,対話を通してお客様の要望に応えます.現在,私達は旅行先や移動手段などをWeb上で調べることもできます.それでも,多くの人が旅行代理店に相談に訪れます.その理由の1つは,お客様がカウンターセールスの意見や感想を聞き,カウンターセールスの反応を見ながら,要望を満たすものを探したいと思っているからだと考えられます.このように,旅行代理店における対話は,単に必要な情報が得られればよいというわけではなく,ホスピタリティが求められる対話です.したがって,人のような振る舞いが可能なロボットは,音声だけの対話システムと比較して,より良い対話が提供できると考えられます.

カウンターセールスをロボットが担うことによって,将来的に次のような支援が可能になると考えられます.

  • 旅行代理店のサービスをより幅広く展開できます.

    • これまでの営業時間外での対応や,人員の配置が難しい地域における対応が可能になります.

    • カウンターセールスのリソースが増えることにより,これまでとは異なるサービスへの拡張が可能になります.

  • 今般のように,対面での対話が制限されるような状況でも,ホスピタリティを保ったサービスを提供することができます.

  • 世界中の代理店のロボットが顧客情報を共有することにより,どこの代理店に行っても,お客様は自分にパーソナライズされた対応をするカウンターセールスに相談できるようになります.

「旅行先おすすめタスク」

実際の旅行代理店では様々な対話が行われますが,本コンペティションで,参加チームは下記のような状況で対話を行うロボット(アンドロイドI)を開発します.(これを「旅行先おすすめタスク」と呼ぶこととします.)

  • ロボットはカウンターセールス役となります.

  • お客様の来店目的は,周辺で遊びに行く観光地(1箇所)を決めることです.お客様は候補として2箇所決めており,そのどちらに行くかをロボットと相談して決めます.

  • ロボットは2つの観光地の見所などを説明したり,お客様からの質問に答えたりしながら対話を進めていき,お客様に遊びに行く観光地を決めて頂きます.

  • ロボットの目的は,2つの観光地の中で,カウンターセールスとしてのお薦めの1箇所を,お客様に満足して選んで頂くこととします.

「旅行先おすすめタスク」の対話状況

  • ショッピングモールや博物館などの施設内に,旅行代理店のカウンターを模した場所が設けられます.

  • 予選会では,施設の来場者に,カウンターセールス役のロボットと旅行代理店における対話を体験できるイベントを行っていると告知します.対話体験を希望する来場者が,旅行代理店に来たお客様役としてロボットと対話します.本選会では,対話システムの専門家や接客業務経験者が審査員となって,審査員がお客様役としてロボットと対話します.

  • ロボットとお客様は下図のようにカウンターテーブルを挟んで対峙して対話します(右がアンドロイドI).テーブルの大きさ,ロボットとお客様の椅子の位置は予め決められています.

  • 1回の対話で,ロボットは1名のお客様に応対します.

  • テーブル上には,モニタが1台設置されています.お客様とロボットが同時に見ることができるように設置されています(位置と向きは固定されています).

「旅行先おすすめタスク」におけるお客様の振るまい

  • 日本語でロボットと対話して頂きます(日本語で対話してもらえるか事前に確認します).

  • 対話後に,体験に関するアンケートについて答えて頂きます.

  • ロボットとの対話を希望する人には,お客様役の振る舞いとして下記の点を事前に伝えます.

  • お客様役の人への事前の指示

    • 旅行代理店が設置されている施設の周辺に休暇で訪れる予定を持っており,その近辺で1日遊びに行く観光地を決める目的を持っているつもりになって,カウンターセールス役のロボットに相談してください.

    • 対話を行う前に,近辺の観光地候補(xx箇所)の中から行ってみたいと思う観光地を2箇所選んでもらいます.カウンターセールス役のロボットと相談して,体験者自身がお金を払ってでも遊びに行きたいと思える観光地をその2箇所の中から1箇所を決めてください.

    • ロボットとは5分程度対話して頂きます.

    • 2つの観光地に関する情報をまんべんなく確認して,行きたい観光地を決めてください.

    • カウンターの椅子に座ってから対話を始めてください.

    • 相談が終わった後,行きたい観光地(強いて行きたいならどこか)を選んでアンケートに回答してください.

    • 最後に,体験の印象についてのアンケートに回答してください.

「旅行先おすすめタスク」においてロボットに行わせること

  • お客様に2つの観光地の候補について説明すること.

  • 対話によるインタラクションを行うこと.

  • ロボットがお薦めする観光地を,お客様の意思で選んだかのように決めてもらうこと.

「旅行先おすすめタスク」の規則

  • コンペティションの参加チームがロボットに行わせてもよいこと

    • 任意のタイミングで,ロボットに発話させること.

    • 任意のタイミングで,ロボットの視線,表情,頭部,上体等を動かすこと.

    • 観光地について説明したり,お客様の質問に答えたりするために,貸与された観光地データを用いること.

    • カウンター上のモニタに,説明する2箇所の観光地の写真(貸与される観光地情報に含まれています)を表示します.ロボットはモニタに表示されたイメージについて説明してもよいとします.

    • お客様が,観光地についてのロボットの感想や意見を聞いてきた場合は,ロボットの感想や意見を予め用意しておいて,それを答えさせてもよいとします.ただし,開発指針として,本番で未知の観光地情報が与えられたとしても対応できるようにシステムを開発すること.

    • ロボットの音声合成は,指定された音声合成システムを使用するものとする.

      • Amazon Pollyの場合,話者は日本女性とし,phonationとvocal-tract-lengthのパラメータについては,下記の値を用いるものとする.その他のパラメータは自由に変更できるものとする.
        <amazon:effect phonation="soft" vocal-tract-length="-15%">

  • ロボットが対話中に使える情報

    • コンペティション参加登録時に参加者に与えられる,12箇所の観光地候補に関する観光案内情報.

    • ロボットの周囲に設置されたカメラとマイクを用いて認識された,お客様の位置,音声,表情,視線,体の動き,性別・年齢(顔画像に基づいて認識されます)の情報.

    • モニタの位置(置いてある場所)の情報.

  • 観光地情報の扱い方

    • 観光地情報データベースのレコードをプログラムで自由に操作して利用してよいとします.

    • 本コンペティションでは本番で使用する観光地情報(下記の12箇所の情報のみ)をお渡ししますが,開発指針として,本番で未知の観光地情報が与えられたとしても対応できるようにシステムを開発すること.

  • 提案する観光地とお薦めの観光地

    • 提案する観光地:対話開始前に,お客様は施設近辺の6箇所の観光地の中から,行ってみたいと思う観光地を2つ選びます

    • お薦めの観光地:上記で選ばれた2箇所の中からランダムに決定されます.

  • 参加チームがロボットに行わせてはいけないこと

    • 対話以外の方法で,お薦めの観光地をお客様に選んでもらうこと(例:ロボットが,お客様に,お薦めの観光地を選んでもらったら賞品をあげるなどと言う).

  • タスクの開始・終了

    • タスク開始前に,お客様から聞き出した2か所の観光地(A,B),その中からランダムに決定したお薦め観光地を参加者のプログラムに入力します.(具体的には,指定のサーバーに観光地(A,B)とお薦めの観光値のIDが保存されているので,タスク開始前に,その情報を参加者のプログラムで受信します.IDはリスト形式で取得されますが,お客様が選んだ2箇所の観光地IDのうち,1つ目がA(画面左に表示),2つ目がB(画面右に表示)となります.)

    • テーブルのモニタ上に,下図のように観光地AとBの写真を並べて出力(Aが左,Bが右)(モニタへの出力は主催者側で実行)

    • スタッフがお客様から聞き出した2ヶ所の観光地をサーバーに入力した時点で,ロボットのシステム側で対話時間のカウントを開始し,スタッフがお客様を椅子に座るように案内する.

    • お客様が椅子に着席した状態で,参加者のプログラムを開始します

    • カウント開始後5分30秒(30秒は開始処理を手間取った場合などのための余裕)経過したら,参加者のプログラムでロボットが対話を終了する振る舞いを行うようにします(「ご案内の途中で申し訳ございませんが,お時間になりましたので,ご案内を終了したいと思います.」とロボットに言わせるなど).(ロボットシステムでカウントしている時間が5分30秒経過したことを検出するサンプルプログラムを実行委員の方で用意して配布予定)

    • 対話の始まりは,ロボットから話始めても,お客様の話始めを待っても,どちらでもよいとします.

  • 対話中に体験者の個人情報(名前や年齢など)を聞くことについてのガイドライン

    • ロボットが体験者から名前,年齢,好みなど旅行の計画に必要な情報は聞いてもよいとします.

    • 体験者には,対話前の説明時に次のように伝えることとします.
      『ロボットから,名前や年齢など旅行計画に必要な個人情報を聞かれるかも知れませんのでご了承ください.もし個人的なことを言いたくない場合は,お答え頂かなくても結構ですし,仮名などでお答え頂いても結構です.』

    • 対話システムを構築する上では,体験者の個人的な情報を聞いた際に,体験者が答えない可能性も想定すること.

「旅行先おすすめタスク」の評価方法

下記の2つの観点からタスク達成度を評価します.

  • カウンターセールスとしてお薦めの観光地を選んでもらえたかどうか

  • 体験者の満足度(対話後のアンケートによる評価)

両方のスコアの順位が高い参加チームを高く評価します.予選出場者の中から,出場チーム数の3~4割程度のチーム数が本戦に進みます.これに加えて,本選では次の項目も評価に加えて,総合的に評価を行います.

  • 予選会

    • 実証実験形式で行います.ショッピングモールや博物館内に,旅行代理店のカウンターを模した場所をセッティングし,一般の来客に,参加チームの開発したプログラムを用いたアンドロイドとの対話を体験して頂きます.複数の体験者の評価の平均値をチームの評価とします.

    • 体験者都合で対話を中断する場合(体調が悪くなった,自分の携帯電話に応答したなど),この体験者の評価は加えないものとします.

    • 体験者が少なかった場合,追加で評価する日を設ける予定です.

  • 本選会

    • 対話システムの研究者や接客業務の振る舞いを評価できる専門家が審査員となって,審査員が参加チームの開発したプログラムを用いたアンドロイドとの対話を試します.また,参加チームに開発した内容のプレゼンを行って頂きます.アンドロイドとの対話の内容およびプレゼン内容を総合的に判断して評価します.研究者と専門家はそれぞれ異なる評価観点で評価します.