中国発展モデルの潮目到来! 2026年10月21日
2026年7-9月期(第3四半期)のGDPの伸びは前年同期比4.5%、1-9月計では4.6%、大方の予想通りでしたね。
これで、今年のGDPは5%近くになることは間違いないでしょう。中国のGDPは第3四半期の流れが年度全体につよい影響を与えてきました。ことしも、そうなるのではないでしょうか。
中国でも海外でも、今回の4.5%という伸びをみて、肩の荷を下ろしたようなところがあります。もっと悪いかも、という心配や不安があったことが事実ですからね。
でも、なかみを見るとまだまだですね。
以下は、1-9月計についてのデータです。
第一に、製造業の伸びは3.8%でしかなく、今回のGDPの牽引役が6兆5千億元(約155兆円)の貿易収支の黒字に依存したものだったことは、内需がなお回復途上にあることを物語るからです。輸入も伸びてはいるのですが、絶対額では輸出に及びませんでした。
でも貿易収支の黒字がそのままGDPの伸ばすわけではありません。別の指標、GDPの伸びに対してどのくらい寄与したか、という寄与度を知る必要があるからです。ややこしいことです。
その寄与度ですが、モノとサービスを合わせた方が分かりやすいので、財・サービスの純輸出がいくらで、それがGDPの何割を占めるか、という見方をします。
それはGDPの伸び4.6%の1.2%を占めます。つまり寄与度は1.2%。そして12÷46ですから26.1%が寄与率になる、というわけです。最大の最終消費支出の半分以上を財・サービスの順輸出が占めるのが、いまの中国経済の姿なのです。
中国は巨大な、世界一の貿易立国なのですね。
第二に、それは固定資産投資がマイナス7.2%とふるわないこと、住宅・不動産関係が依然として暗いトンネルのなかにあることにも表れています。そして自動車が売れないこと・・・・・。
自動車に熱狂した人々が、いまや、むらにもいなくなりました。たしかに豊かとはいえないけど、むらびとは、なんでも買ってしまいました。
家電、自動車、家、服、靴、スマホ・・・・・。たまに感じることですが、マナーだけはまだ買っていない人が残っていますね。
消費は昨年の1-9月計にくらべて、実質わずか1%しか増えていません。
ほとんどのモノは、みんな買ってしまって、買い替え需要しかなくなったのです。EVやスマホは海外市場開拓に成功して、それが輸出を牽引する要因にもなってはいますが・・。
そんな中、固定資産投資の低迷は、過去の中国の経済発展モデルを根底からゆるがす直接的な要因となっています。
中国も発展モデルの潮目が変わりましたね。
今後の発展モデルはあるのかですって?
ありますよ!
土地制度の自由化です。ただし、これは国家の建て前にかかわる大問題ですから、すこしずつ、みえにくいかたちで進めていくはずです。
あたまが石のように硬いひとには解らないでしょうけど、固い中国革命は何だったのか? という疑問が噴出してもおかしくない時代がやってくるでしょう。
そうしないと、国家や共産党自体の継続が危ぶまれるからです。皮肉なことです。かしこい、党の指導者や優秀なとりまき学者が、この点に気づいていないはずはありません。
歴史は時代と同時にではなく、時代から後れてやって来るものです。
「不景気」と「成熟」を見違えるなかれ 2026年10月7日
中国国家統計局が先きごろ報じたところによると、今年1-8月期の全国の消費小売額が前年同期(2025年1-8月期)にくらべ1.1%しか増えなかったことがわかりました。前年1-8月期はその前(2024)の同じ時期にくらべ4.6%増えていたので、大きな落ち込みと言っていいでしょう。
大きな落ち込みを招いたのは、内燃自動車(ガソリン・ディーゼル)の大きな販売不振です。今年1-8月期、自動車を除くと2.7%の増加だったのです。昨年1-8月期ですと、自動車を除くと5.1%の増加でした。
全体の約50%を占めるEV車の販売はけっこう順調ですが、人気が大幅に落ち込んだ、もう一つの50%を占める内燃自動車が足を引っ張るかっこうですね。
図は、消費小売額の月ごとの前年同月比の動きを示しています。月単位で見ると、その落ち込み具合がよくわかりますね。
中国経済は地方経済の積み上げで動いていますから、ここで、地方の代表として北京、上海、甘粛の3つの地方について見てみましょう(それぞれデータは、地方政府統計局)。
★ 北京市は前年同期比2.1%減少、EV車類の小売額は4.7%増加。しかし、自動車全体は17.6%減少し、特に内燃車の減少幅が大きかった。
★ 上海市は、前年同期比1.0%減少、自動車は19.1%と大幅に減少した。
★ 甘粛省は、前年同期比1.0%増加、EV車は10.8%増加した。
この3つの地域で増加したのは、中国の西部に位置する甘粛だけでしたね。増加、とはいってもわずか1%です。おそらく、小売額の低迷は、乾いた地面に水が染み渡るように、全国に広がっているのでしょう。
しかしこの現象は景気が悪いから、とだけの理由で説明しきれるものではないでしょう。
私は、中国が消費の飽和時代に入った、のだと見た方がいいと思います。最近の一人当たり可処分所得は5%以上も増えていますので、供給に需要が追い付かない、ということではありません。
ですから、もし景気が悪いことを強調するとすればそれは誤りで、消費の成熟、買うものがなくなった、というのが実態ではないでしょうか? マンションもそうなんです。売れない理由の一つは、買う必要のある人が減ったから、かもしれないんです。
人口減と高齢化がこれに拍車をかけています。もう、この二つについて説明する必要はないでしょう。
中国経済は、消費構造の変化に見られるように、成熟から、いかにして次のレベルの違う成熟の扉へ向かうのか、ということで苦悩しているのです。
日本経済にも重なることですよね?
利潤動向にみる中国産業間の大きな格差
―明瞭な業種間の明暗― 2026.10.5記
中国の産業では企業利潤に業種間の格差が明瞭に現れており、これが、現在の中国経済の景気動向の特徴を知る上でおおいに参考になると思われる。
景気が悪い。とはいっても、全産業がそう言う事でもなく、産業間のバラツキが大きいうえに、景気の悪い産業では、目を被いたくなりそうな利潤の減少もみられる、ということである。
しかし、利潤が減少したことと利潤がなく損失であることと同じではなく、ここでは、利潤の増加と減少を基準としている。
2026年1~8月期の中国の一定規模以上企業(売上高2千万元≒4億8千万円)では、利潤総額が前年同期比15.7%増加した。しかし、業種別にみると増益と減益の差は大きく、利益回復が産業全体に均等に広がっているわけではない。
増益産業
むしろ、資源・素材産業と電子・ハイテク産業に利益増加が集中する一方、相変わらず、不動産関連、耐久消費財、伝統的製造業では収益悪化が目立つという「明暗」が鮮明になっている。
増益側で特に目立つのは、コンピュータ・通信・その他電子機器製造業で、利潤は109.9%増、非鉄金属製錬・圧延加工業は82.9%増、非鉄金属鉱採掘・選鉱業は71.8%増、石炭採掘・選炭業と化学原料・化学製品製造業も約51%増加した。化学繊維製造業も107.7%増である。電子産業については、AI、データセンター、半導体、通信設備などの需要拡大が大きく、国家統計局によれば電子産業だけで工業企業全体の利潤増加額の62%を占めた。また、非鉄金属や化学工業では国際的な原油・非鉄金属価格の上昇も採算改善に寄与している。つまり増益業種には、戦略資源、先端技術、デジタル化、新エネルギーなど現在の中国の産業政策と需要構造に結び付く分野が多い。
減益産業
これに対し、減益業種では鉄鋼製錬・圧延加工業が62.4%減、家具製造業が51.8%減、非金属鉱物製品製造業が46.7%減、酒類・飲料・精製茶製造業が34.7%減となった。自動車製造業も16.0%減、農副食品加工業は17.4%減、電力・熱供給業は15.1%減である。
特に興味深いのは、電気機械・器材製造業では売上高が11.5%増加しているのに利潤が5.2%減少し、自動車でも売上高2.9%増に対し利潤は16.0%減少している点である。これは需要そのものの消失だけでなく、価格競争やコスト上昇によって利益率が圧迫されていることを示している。
一方、家具、非金属鉱物、木材加工、酒類・飲料などでは売上高そのものも減少しており、需要低迷の影響がより直接的である。不動産開発投資は1~8月期に19.9%減、新築商品住宅等の販売額も13.0%減少しており、建材、家具、鉄鋼など住宅・建設関連産業の不振と整合的である。また社会消費品小売総額の伸びも1.1%にとどまり、消費関連産業の弱さを説明する要因となっている。
鮮明な利潤産業と弱体産業の二重構造
したがって現在の中国産業の利潤構造は、「新しい成長分野と資源部門は強いが、不動産・内需・伝統産業は弱い」という二重構造にあることが鮮明である。
全体の利潤増加率15.7%だけを見れば企業の収益回復は力強く見えるが、その実態は電子産業や非鉄金属など少数の高成長分野への依存度が高い。中国経済の現状を判断する際には、総額の改善だけでなく、この業種間格差を見ることが重要だといえよう。
中国不動産業界で常態化する「オーバー担保ローン」
1,オーバー担保ローン
中国では、不動産・土地不況(私は土地恐慌と呼んでもいいと思う)が全国に広がり出す2010年代の初頭、資金借入者が差し入れる土地の担保評価額を20%以上も超える融資が頻発し出しました。
「オーバー担保ローン」とでも呼べる、とんでもない事態が起きていたことになります。この問題は、多くの論者が見逃してしまった大問題なのですね。
通常の融資業務において、土地担保評価額が融資額を下回ることは、無担保融資の割合を増やし、信用リスクを高めることにつながります。
通常、欧米・日本の土地担保物件の評価額に対する融資額の割合―担保掛目―は担保物件時価の80%程度が最大とされているんです。土地担保の時価が仮に20%下がっても、担保物件を処分すれば、リスクがヘッジできる担保評価の方法なのです。
ところが中国では、この逆のことが日常化しているので、銀行をはじめとする金融機関の融資リスクは、歯止めなく膨張しつづけたのでした。
この事実を、土地を含む不動産業政策を管轄する中国自然資源部の公表データから、いくつか紹介しましよう。
2016年9月の事例。住宅用地、担保差入れ者・不動産開発会社、担保権者・中国銀行、融資額・5億5,325万元、担保評価額3億6千万元、担
保不足1億9,325万元。
2017年12月の事例。住宅用地、担保差入れ者・不動産開発会社、担保権者・農村合作銀行(農村商業銀行)、融資額3011万元、担保評価額
2,100万元、担保不足額911万元。
2018年1月の事例。商業用地、担保差入れ者・商業会社、担保権者・融資リース会社(ノンバンク)、融資額5千万元、担保評価額5千万元、担
保評価額・融資額同額(潜在的高リスク)。
2021年12月の事例。商業用地、担保差入れ者・コンサルタント会社、担保権者・農村商業銀行、融資額・7億200万元、担保評価額5億32
9万元、担保不足額1億9,871万元。
2022年2月の事例。工業用地、担保差入れ者・工業会社、担保権者・中国農業銀行、融資額・2025万元、担保評価額・876万元、担保不
足額1,149万元。
2022年3月の事例。工業用地、担保差入れ者・個人、担保権者・商業銀行、融資額・7,350万元、担保評価額・5,168万元、担保不足額
2,182万元。
金融機関の融資は、2018年頃から担保不足額の案件が多くなる、すなわち融資額が担保評価額を上回るオーバー担保ローンや担保評価額と融資額が同額の案件が増えはじめました。それまで担保不足案件は少なめで、貸し手のリスク管理も融資リスク管理上、適正なレベルにあったのです。
2,三位一体カルテル
土地担保評価額と融資額との間のこのようないびつな関係が生まれる背景には、中国の不動産業界・金融業業界・担保物件提供者である土地の収用者(地方政府)、これら三者間における意識・無意識の「コンセンサス」があったのではないかと、私は推測しています。
ここには、中国の土地レジームに潜む構造的欠陥があるというのが私の見方です。
すなわち中国の信用補完措置の基本点な方法は土地担保金融で、土地評価額次第で、融資額が変わりやすいが、実態は、担保評価額が膨らむ方向へ変化すると見ていた可能性が高かったのです。
担保評価額が大きくなると思えば、融資額も膨らみやすいですよね?そのことが、不動産信用を実力以上に膨張させ、不動産バブルに似た状態を作ってしまったのではないか、と考えるわけです。
1995年以降、2014年まで都市の地価は毎年5パーセント以上、高い時は30~40パーセント(2007、2008年)と上昇していました(中国自然資源部、地価観測調査)。
しかしその後の地価は上昇するどころか、下落傾向に変化したのです。2019年から2021年まで住宅用地価格の平均上昇率は、消費者物価指数の半分から3分の1、0・8~1・0ペーセント程度に落ち込んだのです(同調査)。この落ち込み方をもってバブル崩壊と言うのならば、日本の不動産バブルとはまったく別物です。
ここには、中国における土地問題の特殊性を見なければなりません。地価が下がると担保価値が下がり、ただちにオーバー担保ローンが広がる金融機関の信用リスク上昇を招くことは想像がつくます。
担保価値と融資額とのバランスはすでに崩れているところに、さらに担保価値が下がると、担保権を先行取得していた案件の含み損が拡大、加えて、この点が最も懸念されるところですが、金融機関の融資上限に帽子をかぶせることになりやすいのです。
リスクが上昇するのは金融機関ばかりではありません。不動産開発業者、マンション販売業者、そして土地を供給する地方政府にとっても、利害は共通します。農用地を住宅地に転換しながら利益を得て来た地方政府にとって、地価の低下は受け入れがたい現象だったのです。