1:1 ① Ἀποκάλυψις Ἰησοῦ Χριστοῦ,
イエス・キリストの黙示
Ἀποκάλυψις:動詞のない名詞句➡書物タイトル「イエス・キリストの黙示」
主格名詞「黙示(Ἀποκάλυψις)」+ 属格「イエス・キリストの(Ἰησοῦ Χριστοῦ)」
1:1 ② ἣν ἔδωκεν αὐτῷ ὁ θεός,
神が彼(キリスト)に与えられたものである。
ἣν ἔδωκεν αὐτῷ ὁ θεός, は先行詞 Ἀποκάλυψις(女性・単数)を修飾する関係代名詞節
主語: ὁ θεός(神が)
動詞: ἔδωκεν(与えた)
直接目的語: ἣν(それを=黙示を)
間接目的語: αὐτῷ(彼に=キリストに)➡「神が彼(キリスト)にお与えになった(黙示)」
1:1 ③ δεῖξαι τοῖς δούλοις αὐτοῦ ἃ δεῖ γενέσθαι ἐν τάχει,
これは、すぐに起こるべき事柄を自らの僕(しもべ)たちに示すため、
動詞 δεῖξαι(示すために):目的を表す目的不定詞
間接目的語: τοῖς δούλοις αὐτοῦ(彼の僕たちに)
目的語となる節: ἃ δεῖ γενέσθαι ἐν τάχει
ἃ(先行詞を含み「〜することども」を表す関係代名詞・中性複数対格)
δεῖ(〜する必要がある)+ γενέσθαι(生じること) = 生じるべきこと
ἐν τάχει(速やかに) → 「すぐに起こるべき事柄を、ご自分の僕たちに示すために」
主動詞: ἐσήμανεν(お告げになった/シンボルで表した)
分詞: ἀποστείλας(主格・男性単数:神が「遣わして」)
手段: διὰ τοῦ ἀγγέλου αὐτοῦ(ご自分の御使いを通して)
伝達相手: τῷ δούλῳ αὐτοῦ Ἰωάννῃ(ご自分の僕であるヨハネに)
➡ 「そして、(神は)ご自分の御使いを遣わして、ご自分の僕ヨハネにお告げになった。」
主格分詞 ἀποστείλας の扱い:
アオリスト分詞の主格(ここでは主語である「神」と同格)
➡「遣わして(〜した)」という先行動作、または手段を表す
ἐν τάχει(イディオム): 前置詞 ἐν + 与格 τάχει で、「急いで」「素早く」「間もなく」という副詞的意味を作る
「彼は、神の言葉とイエス・キリストの証し、すなわち自分が [見た]すべてのことを証しした。」
(口語訳風➡「その人は、神の言とイエス・キリストのあかしと、すなわち、自分が見たすべてのことを証しした。」)
ὃς(関係代名詞・男性単数主格)が文の主語(前文の先行詞「ヨハネ」を受ける)
動詞 ἐμαρτύρησεν は、語頭に過去増設 ἐ- が付き、語尾が -σεν になっているため、μαρτυρέω(証言する)のアオリスト(過去の点的な動作)3人称単数形
骨組み:「彼(ὃς)は証しした(ἐμαρτύρησεν)」
動詞「証しした」の対象となる対格が3つ(καὶ で並列、および同格で)置かれている
第1の目的語: τὸν λόγον(言葉を)
後ろに属格 τοῦ θεοῦ(神の)が続いて修飾
意味:「神の言葉を」
第2の目的語: τὴν μαρτυρίαν(証しを)
καὶで第1の目的語と接続
後ろに属格 Ἰησοῦ Χριστοῦが続いて修飾
意味:「イエス・キリストの証しを」
第3の目的語(まとめ・補足): ὅσα(すべてのことを)
関係代名詞 ὅσος(どれほど多くの〜)の中性複数対格
直後の動詞 εἶδεν(ὁράω「見る」の第2アオリスト3人称単数「彼が見た」)の目的語
前半の「神の言葉」と「キリストの証し」を同格的に「彼が見た限りのすべてのこと」と言い換え
定冠詞と名詞の一致
τὸν λόγον(男性・単数・対格)
τοῦ θεοῦ(男性・単数・属格)
τὴν μαρτυρίαν(女性・単数・対格) 名詞の「性・数・格」に合わせて冠詞も正確に変格
冠詞の形を覚えていると➡名詞の格を一目で判別できる
属格の役割(限定)
τοῦ θεοῦ や Ἰησοῦ Χριστοῦ のように、名詞の後ろに置かれた属格は「〜の」という意味で前の名詞を限定・修飾(「神が語られた言葉」「イエス・キリストについての、あるいはキリスト自身による証し」)
不規則動詞のアオリスト形
εἶδεν は原形(現在形)が ὁράω(見る)という不規則変化動詞(第2アオリスト)
見た目が全く変わる➡頻出する重要語として丸ごと覚える➡ポイント
μακάριος ὁ ἀναγινώσκων καὶ οἱ ἀκούοντες τοὺς λόγους τῆς προφητείας καὶ τηροῦντες τὰ ἐν αὐτῇ γεγραμμένα,
ὁ γὰρ καιρὸς ἐγγύς.
「この預言の言葉を朗読する者と、それを聞いて、そこに書かれていることを守る人々は幸いである。
なぜなら、時が迫っているからである。」
この文章には ἐστί(~である)のような be動詞が存在しない
古代ギリシャ語では、述語が形容詞(μακάριος)の場合、be動詞がよく省略される
述語補語:μακάριος(幸いである)
主語グループ:ὁ ἀναγινώσκων… καὶ τηροῦντες…(~する者および~する者たちは)
➡構造としては 「[主語グループ] は μακάριος(幸い)である」 という倒置形
ὁ ἀναγινώσκων
「定冠詞 ὁ + 分詞 ἀναγινώσκων(男性・単数・主格)」の組み合わせで、「朗読する(男性一人)者」 という名詞の役割を果たします(分詞の名詞的用法)。
接続詞 καὶ(と)の後に、複数形の主語が続く
οἱ ἀκούοντες = 「聞く人々(男性・複数・主格)」
何を聞く? ➔ 対格 τοὺς λόγους(その言葉を)
どんな言葉? ➔ 属格 τῆς προφητείας(預言の)
さらに καὶ τηροῦντες = 「そして守る人々」
※ τηροῦντες も前の定冠詞 οἱ にかかり ➡「聞いて(かつ)守る人々」
τηροῦντες(守る人々)の目的語:τὰ ... γεγραμμένα(書かれている事柄を)
「中性・複数・対格の定冠詞 τὰ + 完了受動態分詞 γεγραμμένα」で 「書かれている(複数の)事柄」
ἐν αὐτῇ(それの中に)
前置詞 ἐν は与格を取る。αὐτῇ は女性・単数・与格なので、前に出た女性名詞 προφητείας(預言)を指す
➡「その預言の中に(書かれていること)」
カンマの後は、理由を表す独立した節
γὰρ は「なぜなら」を意味する接続詞で、必ず節の2番目の位置(後置詞)
主語:ὁ καιρὸς(その時は / 男性・単数・主格)
述語:ἐγγύς(近い / 副詞)※ここでも be動詞省略
意味:「なぜなら、時が近いからである。」
定冠詞 + 分詞(名詞的用法) 「定冠詞 + 分詞」の形で「~する人」「~すること」という名詞句を作る
ὁ ἀναγινώσκων(読む者)
οἱ ἀκούοντες(聞く人々)
τὰ γεγραμμένα(書かれている事柄)
完了受動態分詞のニュアンス(γεγραμμένα) γράφω(書く)の完了受動態分詞
単なる過去(「書かれた」)ではなく、「過去に書かれ、その結果が今も効力を保って書かれたまま残っている」という完了相(Aspect)の状態を表す
be動詞の省略(Elegance of Greek) 格変化(主格・対格など)が明確なため、
is や are に相当する動詞がなくても文の意味が成立
格の色分け(特に赤色の主格)に注目すると、文の骨組みが一目瞭然
Ἰωάννης ταῖς ἑπτὰ ἐκκλησίαις ταῖς ἐν τῇ Ἀσίᾳ· χάρις ὑμῖν καὶ εἰρήνη ἀπὸ ὁ ὢν καὶ ὁ ἦν καὶ ὁ ἐρχόμενος, καὶ ἀπὸ τῶν ἑπτὰ πνευμάτων ἃ ἐνώπιον τοῦ θρόνου αὐτοῦ,
「ヨハネから、アジヤ州にある七つの教会へ。今おられ、昔おられ、やがて来られる方から、また、その御座(みざ)の前にある七つの霊から、恵みと平安があなたがたにありますように。」
古代の手紙は 「差出人(主格)+ 宛先(与格)+ 挨拶」 で始まる
差出人: Ἰωάννης(主格)=「ヨハネは」
宛先: ταῖς ἑπτὰ ἐκκλησίαις(与格)=「7つの教会へ」
限定句: 後ろの ταῖς ἐν τῇ Ἀσίᾳ(冠詞+前置詞句)が「アジヤ州にある(教会)」と前置詞句全体で「教会」を説明
主語: χάρις(恵み)と εἰρήνη(平安)という2つの主格名詞
対象: ὑμῖν(あなたがたに)
動詞の省略: ギリシャ語の手紙の挨拶文では「〜でありますように(εἴη / ἔστω)」という動詞が省略されるのが一般的
「恵みと平安」がどこから与えられるのかを示す前置詞 ἀπὸ(〜から)が続く
本来 ἀπό の後ろは属格が来るルール(属格支配)だが、ここでは主格(ὁ ὢν...)がそのまま並ぶ
ὁ ὢν: 定冠詞 + εἰμί(〜である)の現在分詞 =「今おられる方」
ὁ ἦν: 定冠詞 + 未完了過去 =「昔おられた方」
ὁ ἐρχόμενος: 定冠詞 + 現在分詞 =「来られる方(未来の表現)」
これら3つのフレーズがセットで神の不変の神聖不可侵な固有の称号(名刺)として扱われる
καὶ ἀπὸ...: ここでは前置詞 ἀπό が正しく属格(τῶν ἑπτὰ πνευμάτων)を従える
関係代名詞句: 主格・中性複数の関係代名詞 ἃ(それらは)に導かれ、τοῦ θρόνου αὐτοῦ(彼の御座)の ἐνώπιον(〜の前にある)と描写を付け加える
黙示録特有の「文法的破格(Solecism)」
前置詞 ἀπό(〜から)は必ず属格を支配するというギリシャ語の絶対的ルールがある
しかしここでは ἀπὸ ὁ ὢν と主格
理由: 著者ヨハネは、出エジプト記3:14の「わたしはある(ヤハウェ)」という神の永遠不変の御名をギリシャ語に訳したフレーズ(ὁ ὤν)を、文法変化(属格化)させて傷つけないよう、意図的に不変化の神名として主格のまま置いたと考えられる
定冠詞による「名詞化(冠詞の用法)」
「定冠詞 + 分詞」や「定冠詞 + 活用変化した動詞」で「〜する者/こと」という名詞句を作ることができる
ὁ ὢν (現在分詞の名詞化:存在する者)
ὁ ἦν (過去動詞に冠詞をつけた破格の名詞化:かつて居た者)
ὁ ἐρχόμενος (分詞の名詞化:来る者)
二重冠詞による形容表現(Repeating Article)
ταῖς ἐκκλησίαις ταῖς ἐν τῇ Ἀσίᾳ のように、「名詞+冠詞+前置詞句」の形を取ることで、「教会、それもアジヤにあるやつ」と後ろから前置詞句を名詞と同格として強く限定・修飾するギリシャ語特有の表現技法
①καὶ ἀπὸ Ἰησοῦ Χριστοῦ, ὁ μάρτυς ὁ πιστός, ὁ πρωτότοκος τῶν νεκρῶν καὶ ὁ ἄρχων τῶν βασιλέων τῆς γῆς.
①「また、忠実な証人、死者たちの中からの初ごしらえ(最初に復活された方)、地の王たちの支配者であるイエス・キリストから(恵みと平和が、あなたがたにあるように)。
②Τῷ ἀγαπῶντι ἡμᾶς καὶ λύσαντι ἡμᾶς ἐκ τῶν ἁμαρτιῶν ἡμῶν ἐν τῷ αἵματι αὐτοῦ
②私たちを愛し、ご自身の血によって私たちの罪から私たちを解放してくださった方へ(栄光と権能が永遠にありますように)。」
前文(4節)からの流れで ἀπὸ(~から)という前置詞がある。
前置詞 ἀπό は必ず属格を取るため、後ろの「イエス・キリスト」は Ἰησοῦ Χριστοῦ と属格になっている
前置詞の直後にある言葉を補足(同格)する場合、同じ「属格」にするのが通常の文法
しかしヨハネはイエスを称える3つの称号をあえて主格で提示
(これを「同格の主格」または「不規則な同格」と呼ぶ)
ὁ μάρτυς ὁ πιστός(忠実な証人)
ὁ πρωτότοκος τῶν νεκρῶν(死者たちの中の初ごしらえ=最初に復活された方)
ὁ ἄρχων τῶν βασιλέων τῆς γῆς(地の王たちの支配者)
属格の「~の」の修飾関係が重なっており、「地の(τῆς γῆς)王たちの(τῶν βασιλέων)支配者(ὁ ἄρχων)」と、後ろから前に向かって掛かる
文章の後半からキリストに対する賛美(頌栄)へと展開
文頭の Τῷ(与格冠詞)は「〜である方へ(栄光がありますように)」という与格(〜に、〜へ)の文脈を作る
この Τῷ にかかる形で、2つの分詞が並列
ἀγαπῶντι ἡμᾶς(私たちを【対格】愛しておられる[現在分詞]方へ)
καὶ λύσαντι ἡμᾶς(そして、私達を【対格】解放してくださった[アオリスト分詞]方へ)
どこから解放されたのか?
ἐκ(〜から)+ τῶν ἁμαρτιῶν ἡμῶν(私たちの罪【属格】)=「私たちの罪から」
どのような手段で解放されたのか?
ἐν(〜によって/〜において)+ τῷ αἵματι(血【与格】)+ αὐτοῦ(彼の【属格】)=「彼(ご自身)の血によって」
冠詞 + 分詞(名詞的用法):
Τῷ ἀγαπῶντι(冠詞与格 + 現在分詞与格)のように、「冠詞 + 分詞」の形は
「〜する(者・人・方)」という名詞としての役割を果たす
今回は与格なので「〜する方へ」
黙示録特有の「文法の揺れ」:
通常、前置詞 ἀπό の後にある属格 Ἰησοῦ Χριστοῦ を修飾する語はすべて属格(τοῦ μάρτυρος...)になるが、強調したい特定の称号(神やキリストの名など)を文法的な不一致を省みず主格(ὁ μάρτυς)で置く表現スタイル(Hebrewismや強調用法)を多用
時制による意味の違い(現在とアオリスト):
ἀγαπῶντι(現在分詞):現在も「継続して愛してくださっている」
λύσαντι(アオリスト分詞):十字架の出来事によって「一回限りの完了した事実として解放された」
この時制の使い分けが、キリストの愛と救いの性質を鮮やかに表す
καὶ ἐποίησεν ἡμᾶς βασιλείαν, ἱερεῖς τῷ θεῷ καὶ πατρὶ αὐτοῦ· αὐτῷ ἡ δόξα καὶ τὸ κράτος εἰς τοὺς αἰῶνας [τῶν αἰώνων]· ἀμήν.
「また、私たちをご自分の父なる神のための王国とし、祭司としてくださった方に、栄光と権能が世々限りなくありますように、アーメン。」
冒頭は動詞 ἐποίησεν(彼=キリストは〜となさった)
「A(対格)を B(対格)にする」 という二重対格構文が使われている
目的語 (A): ἡμᾶς(私たちを)
補語 (B): βασιλείαν(王国 [として])および ἱερεῖς(祭司たち [として])
➡「私たちを王国(または王なる民)、また祭司たちとなさった」という意味
τῷ θεῷ καὶ πατρὶ αὐτοῦ は与格(〜のために)
冠詞 τῷ が θεῷ(神)と πατρὶ(父)の双方にかかっており、同格表現を作る
➡「ご自身(キリスト)の父である神のために」
文の後半 αὐτῷ ἡ δόξα καὶ τὸ κράτος では、動詞(あるように=εἴη など)が省略
頌栄(栄光をたたえる表現)では動詞を省略するのが一般的
与格: αὐτῷ(その方に / 彼に)
主格(主語): ἡ δόξα(栄光)と τὸ κράτος(権能)
「その方に、栄光と権能がありますように」と解釈
最後にある εἰς(前置詞) + τοὺς αἰῶνας [τῶν αἰώνων] は、直訳すると「世々の世に至るまで」となり、
ヘブライ語的な強調表現で「永遠に」「世々限りなく」という意味の決まり文句
二重対格(Double Accusative): ποιέω(作る)などの動詞は、対格を2つ取って「AをBにする」という意味
ἡμᾶς(A)と βασιλείαν / ἱερεῖς(B)の関係をしっかり捉えよ
グランヴィル・シャープの法則(Granville Sharp's Rule): 定冠詞が1つ(τῷ)で、接続詞 καὶ で結ばれた2つの単語(θεῷ と πατρί)は同一の対象を指す
➡「神であり、同時に父であるお方」
テキストの異読(カッコ書き [ ] について): [τῶν αἰώνων] がカッコに入っているのは、写本によってこの部分があるものとないものがある(校訂本上の表記)
あってもなくても「永遠に」という意味自体は変わらない