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文献紹介
文献紹介
このページは本研究室の主となる研究論文の要約です。
Biomedical Signal Processing and Control 2025
本研究の目的は、横隔膜呼吸中の腹部可動域がリアルタイムの換気量と関連しているかどうか、および腹部可動域測定装置(AEMD)を使用した視覚的呼吸バイオフィードバックが換気量を効果的に増加させるかどうかを検証することであった。
AEMDと呼気ガス分析装置を使用して、呼吸バイオフィードバックの有無とAEMD波形の視覚化(BFありまたはBFなし)の2つの条件下で、健康な成人42名の最大腹部可動域(AE-max)と最大吸気量(IV-max)を同時に測定した。
結果は、AE-maxとIV-maxの間に有意な関連があることを示した(r = 0.456、P = 0.002)。 IV-maxの推定限界平均値±SEは、BFありとBFなしの条件でそれぞれ2350±101 mLと2274±100 mLと有意に異なりました(平均差[95%信頼区間] = 76.3 [4.3, 148.3]、p = 0.038、Cohenのd = 0.338)。
したがって、リアルタイムの腹部可動域運動は換気量の推定に役立つ可能性があり、AEMDを使用したリアルタイムの視覚的呼吸バイオフィードバックは換気量を増加させる可能性があります。さらなる研究により、AEMDを使用した腹部可動域運動の視覚的呼吸バイオフィードバックは、呼吸トレーニング中など呼吸の視覚化が必要な場合に効果的であることが期待されます。
【背景】
この研究の目的は、腹部隆起量測定と既存の呼吸機能測定を実施し,腹部隆起量測定の信頼性と妥当性を検証することである.
【対象と方法】
40名の健康成人男性に既存の呼吸機能測定である肺活量測定,努力肺活量測定,呼吸筋力測定,咳嗽力測定,横隔膜超音波測定と腹部隆起量測定を行った.腹部隆起量測定は腹部の動きを正確に評価するために開発された測定装置(AEMD)を使用し,腹部を腹側に拡張させる量(AE-max)を算出した.AE-maxは臍の2㎝(1横指)上を測定点とし、最大努力呼気と同時に行う最大腹部収縮位と,最大努力吸気と同時に行う最大腹部拡張位の差を測定値とした。
測定は2名の検査者にて実施しAE-max測定値の検者内信頼性、検者間信頼性について級内相関係数を用いて検討した.AE-maxと既存の呼吸機能測定との基準関連妥当性についてPearsonの相関係数を用いて確認した。追加分析としてAE-maxにおける拡張変位量および収縮変位量の成分比率を対応のあるt検定、主要呼吸筋であるMIPの予測式をAE-maxを用いた回帰分析にて算出した.
【結果】
信頼性については検者内信頼性および検者間信頼性ともに高値を示した.また,基準関連妥当性についてはMIPを中心としたすべての呼吸機能評価と関連を認めた.AE-maxは拡張変位量の割合が多いことが分かった。回帰分析によりAE-maxが有意にMIPと関連を認めた.
【結論】
MIPとの関連やAE-maxにおける拡張変位量の割合が多いこと,重回帰分析の結果から,AE-maxはMIPを推定する測定値として有用であると結論づける.
Indian Journal of Gastroenterology 2021
背景
高齢者は、便秘による長時間の座位保持により呼吸機能が低下し、身体的負担が大きくなる。近年、排便時の身体的負担を軽減するために、前傾姿勢で腕を支えるアームサポート手すりが広く利用できるようになった。ただし、呼吸の快適性への影響はまだ検証されていない。この研究の目的は、従来の排便姿勢の高齢者の呼吸機能と、手すりを使用した上肢支持前傾姿勢を比較し、上肢支持姿勢がプラスの効果をもたらすかどうかを検証することである。
方法
57人の健康な高齢者の体幹傾斜角、呼吸機能、胸部可動域、および主観的快適性を測定し、3つの座位排便姿勢(直立座位、前傾座位、上肢支持前傾座位)のそれぞれで比較した。
結果
上肢支持前傾姿勢は、体幹傾斜角が61.84°±7.47°であり、呼吸機能の肺活量、胸部可動域(腋窩領域)およびこの姿勢での主観的な快適さは他の姿勢よりも有意に高値を示した。
結論
上肢支持前傾排便姿勢は、適切な前傾により腹部に高い自由度を提供し、上肢のサポートは上胸部の可動性を改善するため、高い肺気量を確保する。さらに、安定性の向上により、快適性が得られる。したがって、腕で支えられた前傾姿勢は、一般的な排便姿勢よりも排便に効果的であると結論付けることができる。
◎The effects of a defecation posture, supported by the upper limbs, on respiratory function
Journal of Physical Therapy Science 2020
目的
この研究では、排便座位時に一般的な排泄姿勢より上肢を支持した排泄姿勢がより快適で呼吸機能を助長するかを決定することを目的とした。
参加者と方法
健常成人73人を対象に3つの排便座位姿勢(直立座位、前傾座位、上肢支持前傾座位)の呼吸機能・呼吸筋力と主観的快適感を測定して比較した。
結果
肺活量(VC)、強制肺活量(FVC)、最大呼気圧(MEP)、主観的快適性は他の2つの姿勢よりも上肢支持前傾姿勢で有意に高値を示した。
結論
上肢支持前傾姿勢はVCを増加させ主観的に快適な姿勢であった。さらに、この姿勢での高いMEPは、他の2つの姿勢と比較して、いきみに必要な腹圧を高める姿勢であることを示した。一方で本研究では快適である理由については詳細な検討が進めることができていないため今後検討していく必要がある。