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書籍紹介
書籍紹介
このページは最近読んだ書籍のメモ書きです.研究・教育において必要な要点のみ記載しているので興味があれば確認してみてください.
◎呼吸法にまつわる書籍
No.1.原式呼吸法
原 久子:免疫力を高めウイルスに克つ すごい原式呼吸法.KKロングセラーズ,2020年6月 発行
・人は死ぬまでに60憶回以上の呼吸をする.その呼吸の方法によって心をコントロールできる.それが「原式呼吸法」である.
・呼吸は「肋骨の挙上下制」と「横隔膜の収縮・弛緩」により生じ,意識呼吸と無意識呼吸(延髄の反射呼吸)の2つがある.正しい意識呼吸を無意識呼吸へ変換することで自立神経やホルモンのバランスを整えることができる.
・通常呼吸数は1分に14~18,原式呼吸法は1分に7~8回にまで減少する.呼吸が深くなると脳波はα波になり,さらに深い呼吸状態や深い眼想状態ではθはがでる.禅の高僧が深い呼吸で瞑想をしているときは1分間に2回ぐらいしか呼吸をしていないと言われている.アイデアのひらめきが起きるときはα波が出ていることも認められている.
・私たちのこころは10%が表面意識,90%は潜在意識から形成されている.この潜在意識の奥底に「真我」と呼ばれる部分があり心の真髄である.私たちのこころは意識していないと消極的な方へ,なびく傾向にある.そのため,思い方の癖が人生を決めている.
・西洋医学で治らないものの原因のほとんどはストレスである.腸はストレスに敏感で,便秘等もそのストレスサインになる.例えば,全身の凝りの主な原因も精神的ストレスでありストレッチでリラックスさせるとよい.緊張の緩和には手足のストレッチがよい.短時間で血行をよくして落ち着くことができる.頸椎のゆがみは周りの筋のこりをほぐすほうが有効.また,ツボは「経路」という気の通り道によって,体の各部分と深いつながりを持っているため以下の部位を押すことも有効.指のツボ:肺や気管など呼吸器系が弱い人は「親指」,便秘や下痢をしやすい大腸が弱い人は「人差し指」,心臓,血液など循環器系の弱い人は「中指」,エネルギー代謝が悪い人は「薬指」,小腸・心臓系統に問題のある人は「小指」など,,,
・原式呼吸法の基本は「丹田呼吸法」.式呼吸法は毎回息を吐くときに丹田(へそから9~15センチ下がったところ:膀胱のあたり)を引く(呼気時腹部の収縮させる).鼻から吸気を行い同時にやや体幹前傾する.その際,「イメージ」を思い浮かべる.呼気は背筋を伸ばすのみで特に意識しない.この「イメージ」が大事.例えば,自己の目指すべきイメージを思い浮かべる.健康になりたいのであれば自己の健康な時の写真をみるなどしたあとにイメージを膨らませるなど.また,マイナスの感情を持つと呼吸が浅くなると言われている.逆に言えば深い呼吸をしながらマイナスの感情をもつことができないため,深い呼吸はプラスの感情に変換することができる.※詳細は本書で
No.2.横隔膜ほぐし
京谷達矢:隠れ酸欠から体を守る 横隔膜ほぐし.青春出版社,2020年7月 発行
・ストレスがかかると交感神経優位に働き呼吸が浅くなる.浅くなると酸素を十分にとりこめなくなる.(酸素不足)この酸素不足は当然内臓をはじめあらゆる組織や気管が機能低下し,免疫力も低下させる恐れがある.
・現代人は「隠れ酸欠」酸素不足の状態にあるにも関わらずそれに気づいていない.この隠れ酸欠の予防が「横隔膜ほぐし」.横隔膜はストレスや不良姿勢,加齢で硬くなる.これをほぐすことで自然に深い呼吸ができるようになる.
・そもそも横隔膜は随意筋と不随意筋双方の働きがある.普段は意識せずに動くがその気になれば意識的に動かすことが可能.横隔膜は最もストレスの影響を受ける筋.
・人間は1日2万回呼吸するが肺は自力では動けないため横隔膜をはじめとする呼吸筋により動いている.
・消化器系の酸素不足により便秘を引き起こす可能性がある.また,脳の酸素不足により記憶力低下等も十分に考えられる.そもそも体内に取り込まれた酸素の内25%が脳へ移動するため割合は大きい.認知症予防に運動が良いとされる理由として「運動によって大量の酸素を取り込める」ということもその一つと言える.
・50年ほど前は日本人の平熱は37°近くであったが現在は36.6度である.食生活や運動不足,ストレスがその原因.免疫細胞は36.6°以上ないと十分に働かないと言われているため免疫力アップのためにも体温アップが必要.酸素不足を防げば自ずと低体温を防げる.
・「横隔膜ほぐし」免疫アップにつながる.理由は「体温上昇」「血流アップ」「腸内運動の活性化」.
・横隔膜ほぐし:基本は,横隔膜の位置する部分に手を押し当て前傾しながら腹式呼吸を行う.(手の当て方がポイント)詳しくは本書で,,,
・腰痛は腹圧低下が原因の一つ,肩痛,膝痛はそれと共に連動して起こるもの.しかし,現代医療では体のゆがみを整えることに焦点をおいていない.横隔膜ほぐしは腹圧を高め,ゆがみを整えることに繋がる.
・腰痛の内特定できるものは15%,医学的に原因不明(診断がつかない)の85%非特異的腰痛に横隔膜ほぐしは効果を発揮する.
・脊柱のゆがみは筋肉による締め付け(腹圧)の低下が原因.横隔膜ほぐしで腹圧を高めることができる.
・膝痛は軟骨のすり減りだけではない.その根底に骨盤のゆがみがある.
・膝に水がたまる(関節水)=滑液(潤滑油)が膝関節の酷使(ねじれ)により減少すると関節水を代償的に使用する.
・転倒予防は足腰の筋力強化を考えがちだが横隔膜を柔らかくすることでお腹を緩め,柔軟性や体幹の遊びを得ることができる.※腹圧を高める+しなやかな体幹の動きが転倒予防に必要.介護者などにおいても体幹のしなやかさがあれば力みが消え,体幹が安定する.腰痛等の軽減にも繋がるので横隔膜体操はおすすめである.
・横隔膜の動きがよくなって呼吸が深くなることで,脳にたくさん酸素が供給され,その結果リラックスしたときの脳波(α波)が出現する.
・腸と脳は深い関係にある.腸と脳は双方向に情報交換しあう.両者のこの結びつきを「脳腸相関」という.過敏性腸症候群はその関係を表す代表的なもの.
・腸は全身の70%もの免疫組織が集まる最大の免疫器官である.腸は幸せホルモン「セロトニン」を作る.セロトニンは痛みの感覚を抑制する際も使用される.※深い呼吸=副交感神経優位=セロトニン分泌↑
・足が冷たい人は体内も冷えていることが多い.体が冷えている人こそ横隔膜ほぐしが重要.暴飲暴食が横隔膜を硬くするので注意.
・「横隔膜ほぐしはセルフケア」続けることが重要である.
No.3.酸素たっぷり呼吸法
河合隆志:腰痛が楽になる 酸素たっぷり呼吸法.笠倉出版社,2020年7月 発行
・慢性腰痛のほとんどは腰痛は治っているのに脳(偏桃体)が誤作動を起こして疼痛を感じている。その脳の誤作動は酸素不足が原因の一つと言える。
・日本人では2800万人の腰痛者がいる。健康な人の76%が椎間板ヘルニアである。脊柱管狭窄症も同様、40歳過ぎると脊柱は狭くなり神経が圧迫される。しかし、痛い人は痛い、痛くない人は痛くない。なぜ?
・腰痛の方はみんな脳が酸素不足になっている。痛み治療の最先端の研究では慢性疼痛の人と健康な人の脳血流量を調べると慢性疼痛の方の方が脳の血流が少ないことがわかった。脳には偏桃体(痛みを感じる部位:感情脳)、DLPFC(背外側前頭前皮質)(痛みを鎮める部位:理性脳)がある。慢性疼痛の人はこの理性脳の活動が衰えている。
・呼吸が浅くなると自立神経が乱れ、全身への血流が低下する。脳は全身の20%の酸素を消費する。「酸素たっぷり呼吸法」=横隔膜を動かす深い呼吸である。横隔膜周囲には自立神経が集中しているため、呼吸をするだけで自立神経のバランスを整えることができる。
・脳で使われる酸素の大半(60-80%)はデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)とういう回路に使われている。=何もせずぼんやりしているときに働く回路。なにもしていないときにいろいろと考え事をする。そのときに酸素を消費する。酸素たっぷり呼吸法を行うと酸素を取り込むほか、腰痛から意識をそらすことができる。
酸素たっぷり呼吸法のやり方・・・
・事前チェック:呼吸数20回/分以上でないか。剣状突起部でメジャーを巻き立位で深呼吸。3センチ以上離れたらOK
・眼を閉じ座位にて体を反らしながら鼻から息を8秒吐く。その後腹部を膨らませるように4秒鼻から吸う。肺を大きく膨らませるイメージをもつこと、秒数を頭で数えることがポイント。頭で数えると意識を呼吸に集中することができ脳はひととき「痛み」を忘れる。
・深い呼吸とは横隔膜を上下に大きく動かす呼吸である。息を吸い横隔膜が下がると内臓も連動して下がり、骨盤部分で吸収される。その他の内臓がお腹を膨らませる。内臓と骨格の兼ね合いがあるため膨らみやすさには個人差がある。特に女性は膨らみにくい。骨格には個人差があるため無理に腹式呼吸を意識して、お腹を膨らませる必要はない。酸素たっぷり呼吸法は「胸式+腹式」呼吸法といえる。
・痛みを感じているのは腰ではなく、脳である。慢性腰痛の人は健康な人に比べて、脳の血流が全体にわたって少なくなっている。全身の毛細血管は地球2周半の長さと言われており、そのすべての血管には自立神経が沿って走っている。ゆっくり深く呼吸すると、横隔膜の周囲に集まった自立神経が刺激されて、全身の血流量がアップすることがわかっている。
・マインドフルネスは脳の疲労回復やストレス軽減に役立つがその代表的な実践法が呼吸法である。これは呼吸に集中することで脳を休めるというもの。マインドフルネス・ストレス低減法は痛みを緩和するための瞑想法(呼吸法)で脳の萎縮に対しての改善効果が認められたとのこと。
・モンキーマインド⇒いろいろな考えで頭の中が満たされた状態この状態であると痛みや苦しみからは解放されない。その解消法は「一つのことに集中すること」熱中すると痛みや苦しみを忘れさせる。酸素たっぷり呼吸法で秒数を数えると自然に呼吸に集中できる。
・だるさや疲れは「呼吸の質」によるところが大きい。呼吸を変えることによる好循環。呼吸を深くする⇒副交感神経の動きが高まる⇒自立神経のバランスが整う⇒血流がアップする⇒脳の機能が正常化する⇒痛みが消える
・血流が悪くなると老廃物が筋肉や神経の細胞に溜まってしまう。それを放置すると「発痛物質」という痛みの原因物質が生まれてしまう。痛いから安静は筋肉を衰えさせるためかえってよくない。20秒伸ばすだけストレッチで1日2回動かすとよい。
他の効能・・・
・呼吸筋は体幹を安定させて姿勢をよくするため呼吸が浅い人は猫背になる。横隔膜を上下に動かすことで体幹の筋肉を刺激し柔軟性を生み出すため骨盤のゆがみが解消される。
・平均寿命が長い職業の第1位はお坊さん(1980年国勢調査より)健康的な食事・規則正しい生活は持ち論であるが、呼吸の力も大きいと言われている。禅の修行で瞑想する際、深い呼吸となる。
・慢性疲労者は多く、厚生労働省疲労研究班が2000人に調査したところ約4割の方が6ヵ月以上続く慢性的な疲労を感じている結果となった。疲労は様々な種類があるが、肉体的疲労、精神的疲労、脳疲労そのすべてにアプローチできるのが「酸素たっぷり呼吸法」である。
・生命維持には関係ない「肌」「髪」のトラブルにも血流アップさせることは有効である。腸の蠕動運動を良好にするため便秘が解消される。免疫力アップにもつながる。
・うつ病予防にもつながる。うつ病はセロトニンの減少することで発症するとも考えられている。セロトニンは腸で作られるため腸内環境を良好にすることはよい。
・認知症予防にもつながる。2025年には65歳以上の高齢者の約5人に1人は認知症になると言われている。認知症の発症メカニズムは完全には解明されていないが脳の血流を増加させると脳が若く保てることから脳の酸素不足が影響していることは間違いない。
No.4.長生き呼吸法
小林弘幸:自律神経を整える「長生き呼吸法」.アスコム,2020年5月 発行
・自分の呼吸を意識するのは多くの場合、体力の低下や何らかの不調が自分の体に現れたときである。24時間で2万回以上する呼吸をつかさどるのは自立神経。現代人の多くは交感神経優位の生活である。不安や緊張、怒りなど負の感情を抱えているときは1分間に20回以上の速い呼吸に知らず知らずのうちになってしまう方が多い。その呼吸は速く浅い。それが習慣化すると脳の酸素量が減少しネガティブな感情から抜け出せなくなる。不安定な心は自立神経のバランスを乱し、血流が悪くなり、「だるさ」「慢性疲労」を引き起こす。
自律神経がつかさどる生命維持機能は呼吸のほかに脈拍・血流(心臓)や消化・吸収(腸)・免疫など多岐にわたるが意識して行えるものは呼吸だけである。
・腸は自立神経の影響を大きくうける。人体には2兆におよぶ免疫細胞があると言われている。免疫細胞が体内に侵入したウイルスや細菌を退治してくれるから日々の健康は保たれる。免疫細胞の約7割は腸に集中しており、全身の免疫システムは腸が担っている。腸内環境と血流これにより免疫力アップが見込める。つまり、深い呼吸で自立神経のバランスを整えれば全身の免疫力を高めることに繋がる。
・呼吸は体のみでなく心の状態をもコントロールする。ため息は不安や不調をリセットするための無意識的な深い呼吸である。
・本書で紹介する長生き呼吸法は肺を鍛えつつ、腸内環境を良好にする。ポイントは呼気時間を長くする。
・長生き呼吸法のやり方:1日1分、立位で両手は腹横に両足は肩幅に開く。6秒呼気(体幹前屈しながら)、3秒吸気(体幹伸展しながら)試行タイミングは自由であるが不調時がおススメ(昼食後、集中力が続かないとき、不安なときなど、、、)不調=自立神経の乱れの可能性あり。効果:①自立神経のバランスが整う②免疫力UP③腸内環境が良好になる④血流UP⑤生活習慣病が改善する⑥メンタルトラブルを防ぐ⑦慢性疲労が改善する⑧老化を抑制する。
・長生きする人は自立神経と腸内環境が整っている。便秘が治るとその他の病気まで治るという事例もある。呼吸は自立神経を直接コントロールできる手段である。交感神経・副交感神経を高いレベルで作用できることが重要。息を吐く時間が長いほど圧受容体に圧力がかかる。この圧受容体が血流量をコントロールしており、息を吐く時間が長くして圧力をたかめれば血流がアップし副交感神経が高まる。長生き呼吸法は吐く時間を長くしている。普段からゆっくり深く呼吸することが大切である。
・横隔膜の運動は同時に腸のマッサージとなる。腸は「第2の脳」と言われ腸のぜん動運動と自立神経は連動している。また、全身の免疫には腸が関与していると言われている。免疫細胞の7割は腸に集中している。腸には1000種類、100兆個を超える腸内細菌が住んでおり、腸内細菌は免疫細胞を活性化させたり、暴走した免疫細胞の興奮を鎮めたりする役割がある。また、腸は自立神経の影響をダイレクトに受けるためストレスや緊張で腹痛が起こる。
・呼吸は血流量への即時効果が高く、数値でも明らかな変動を示す。世界一長寿が多い香港は早朝の太極拳が要因ではないかと言われており、呼吸法の関連が感じられる。
・スポーツのルーティンは呼吸と大きく関連があり、交感神経が優位な状況ではパフォーマンスが落ちる。
・呼吸数は通常12~20回(成人)呼吸数は心理面と直結するため調整が必要。
・鼻呼吸が免疫力アップにつながる。鼻の気道(副鼻腔)で一酸化窒素という物質が作られこれが酸素の取り込みに大きく関与している。また、一酸化窒素は血管を拡張させる働きもあるため血流アップにもつながる。口呼吸と鼻呼吸は同じ呼吸でも酸素の取り込み量や血流量が大きく異なってくる。
・腸内環境は整えるだけでダイエット効果がある。体外から腸をマッサージするのに加え、呼吸による横隔膜の動きで体内から腸のマッサージを行うと腸の活性化によい。
長生き呼吸法は生活習慣病を改善できる。特に高血圧・脳梗塞・心筋梗塞・糖尿病などは自立神経や血流が関与するところが大きい。呼気を長く行う長生き呼吸法は副交感神経を高め、血流量を促進させるため有用である。また、その他にも息切れ予防は勿論のこと更年期障害・うつ症状・認知症・肩こり・冷え性・むくみ・腰痛などの改善も十分に期待される。
・この本ではベースの長生き呼吸法をもとに各症状に合わせたアレンジ方法が紹介されている。特に呼吸法を行うポーズがそれぞれ異なり、得られる効果も変わってくる。詳しくは本書で、、、
No.5.丹田呼吸法・養生訓
河越八雲:「呼吸法」で強い身体と心をつくる.KKロングセラーズ,2020年5月 発行
・本書は丹田呼吸法の祖である白陰禅師の呼吸法や「軟酥の法」、また貝原益軒の「養生訓」の紹介である。
・養生訓は貝原益軒が実体験に基づき健康法を開設した書である。長寿には身体と精神の養生が必要との内容であり寝るときの姿勢と呼吸法のヒントが記されている。「獅子眠」での呼吸を推奨しており、横向きになって膝を曲げ、両足を縮めるようにして鼻呼吸で眠るという方法である。これ以外にも養生訓には眠り方、息の仕方眠るときの姿勢呼吸法の回数など詳細に記載されている。古来より健康生活には睡眠と呼吸が大事であった。
・心を穏やかにすることは潜在意識に平和や健康をプログラムし、自然に健康へと導いてくれる。安定した呼吸を手に入れることで健康や幸福に変えることができる。
・人間は一度に2つ以上のことは考えられないため、数を数えながら呼吸を重ねると半ば強制的に悩みなどから遠ざかることができる。「数息観」はこれにあたる。
・数息観:基本は座禅を組み合掌するが椅子に腰掛け楽な姿勢でよい。「吸って吐く」で1と数え100まで頭の中で数える(10までいったら1に戻す数え方)。ルールとして、数を飛ばす、間違える、雑念を沸かすことを禁ずる。効果的であるが速攻性はない。
・口からでなく鼻から呼吸する。そもそも鼻は呼吸器官、口は消化器官であり鼻腔の鼻毛や線毛は吸気時の異物(チリやごみ)をキャッチするフィルターの役割を果たしている。そして粘液(鼻水)で異物を体外で排出する。
・人間は約60兆個の細胞で成り立っており、1日に1兆個の割合で作り変えられている。これが新陳代謝である。免疫システムはこの新陳代謝を利用した細胞レベルの消化、吸収、どうかなど一連の生体反応によるものである。
・軟酥の法:免疫力を高めることで有名。軟酥(黄金のバターのようなもの)が頭の上にあるイメージを持ちそれが溶け全身にしみていくイメージを持つ。そのイメージが足の土踏まずまで達するまで行う。これにより心身が快適となり五臓六腑の気の滞りがなくなる。
・酸素の取り入れ効率は腹式呼吸が胸式呼吸の3~5倍高いことから、多くの呼吸法は腹式呼吸、または腹筋等によってパワーアップされた胸式呼吸が基本となる。
・西原克成先生考案の西原式逆複式呼吸は息を吐くときお腹を膨らませて、息を吸うときお腹をへこませる。これにより胸腔を最大限まで拡大させることが期待できる。
No.6.きほんの呼吸
大貫 崇 :きほんの呼吸.東洋出版社,2019年11月 発行
・「きほんの呼吸」=赤ちゃんの時代の呼吸。呼吸の基本は横隔膜を上下させて、吸って吐く。この横隔膜が変な呼吸や代償運動によって、きちんと動けるポジションにない人が多い。横隔膜の動きは自ら感知することが難しい。
・赤ちゃんや子供の頃は横隔膜を使った呼吸ができているが大人になるにつれて大胸筋を引き上げたり、広背筋を使ったり、鎖骨を上げたりなど、きちんと横隔膜で横隔膜を使っておらず別のところを使って吸うクセがついてしまう。
・横隔膜を使って呼吸ができると運動時のパフォーマンスが上がりやすい状態をつくることができる。
・呼吸は動作の基本となる。立つ座るだけでなく、投げる、回る、蹴る、打つなども呼吸の上に組み合わさっている。
・胸骨の状態:臥位時、床に対して胸骨の角度を確認する。45°は肋骨がうまく動いていないということ。平らに近づく方がよく理想は10~20°くらいの傾き。
・肋骨の開き:四角のファイル等の角を剣状突起部に当てたとき肋骨が90°以上開き空間が余っている人は肋骨が開いた状態で固まっています。理想はファイルがちょうど収まるくらい。
・基本の呼吸のポイント:鼻の奥から吸って、鼻から吐く。口呼吸はNG。鼻腔の奥を使用することで横隔膜が動きやすくなる。吸気1に対して呼気3~4倍の時間をかける。手は胸部と腹部それぞれにあてる。呼気・吸気それぞれ2か所の高さが揃うようにする。臥位で行う際は膝を曲げ、腰をそらないよう注意。10秒程度呼気後3秒間息を止める。
・基本の呼吸はペアで行うことも可能。腹直筋が固い人は腹部ストレッチを行う。風船を使用した方法もある。
・呼吸をするとは、横隔膜が上下すること。横隔膜がメインの呼吸筋として働いていること。これはどんな呼吸理論の持ち主も納得する一番適格な表現である。問題は横隔膜という筋肉にはその状態を感知するためのセンサーが少ないので、自覚できないことである。横隔膜が緊張しているという感覚はわからない。多くの人は生活習慣などから「息が吸えているけど吐けていない」に陥り、横隔膜が収縮して短い状態「Stuck(はまりこむこと)」になっている。つまり横隔膜が下がったままになっている。それを補うために胸をそって胸部を引き上げたり、鎖骨を上げたりすることを行う。それにより腰痛や肩痛を引き起こす。
・きちんと吐くことができるとガス交換が改善され呼吸数が減少する。それに伴い、副交感神経が有意になり、心拍数が減り、血圧が下がり、ストレスと向き合えるようになる。
・きちんと吐くためには肋骨の内旋が必要。肋骨の内旋により横隔膜の形を整え、胸椎が回旋でき可動域が広がり運動時のパフォーマンスが上がる。
・骨盤底筋群は横隔膜と連動し、横隔膜が下がると骨盤底筋も下がる。互いは向き合っている状態が体幹を機能しやすい。
・息を吸うときは胸部と腹部の両方を膨らませる。横隔膜が下がってくればお腹が膨らむ。お腹の前だけがふくらんでしまい圧力が前に漏れることを注意する必要がある。後ろも横も全体的に膨らむようにすべき。骨盤が前に出て下腹がポッコリしていたりするのはちゃんと呼吸ができていなくて、腹腔内圧が高まらず漏れている証拠。
・息を吐いたとき肋骨とお腹の境目がなくなり、「ずん胴」のようになるのがよい
・人間はそんなに息を吸わなくてもよく、数時間と吐く時間を調整することが重要。
No.7. 超呼吸法
根来秀行 :ハーバード&ソルボンヌ大学根来教授の超呼吸法.株式会社KADOKAWA,2018年9月 発行
・「tactical breathing」「ドローイン」「完全呼吸法」「マインドフルネス呼吸法」など呼吸法は多岐にわたる。
・自立神経のバランスを整える目的の呼吸は呼吸の長さや回数に執着すると逆にバランスを崩すことになってしまう。
・根来式呼吸法:腹式呼吸で大切なのは吐くときにお腹を絞るようにしてしっかり凹ませながらゆっくり鼻から息を吐く。吸うときはお腹を膨らませながら行う(慣れないうちは腹部の動きを意識するために臍の上に手をのせ確認しながら行う)。
・本書では脳を自在に操りパフォーマンスを上げる10の呼吸法が紹介されている。①ベース呼吸法、②4・4・8呼吸法、③1:1呼吸法、④CO2呼吸法、⑤リンパ呼吸法、⑥10・20呼吸法、⑦下腹部呼吸法、⑧ドローイン、⑨完全呼吸法、⑩マインドフルネス呼吸法
・脳で機能的に集中力を保てるのは約90分。90分単位で5~10分程度の小休憩を入れつつ進めた方が集中力を低下させることなく仕事の効率をアップできる。その休憩時に呼吸休憩(呼吸法)を取り入れるとよい。
・特別な集中が必要な際は15分単位の「ひと呼吸休憩」がよい。集中力の波が最初に落ちるのが約45分経過したときその後徐々に下降していく。ひと呼吸休憩で集中力のベースラインはキープできる。
・ポモドーロテクニック:短い作業時間と休憩時間をこまめに繰り返すことで長時間集中力を切らさず作業に没頭できるテクニック。この休息に呼吸法を取り入れるとよい。
・脳は5分程度、酸素供給がストップすると壊死が始まる。脳にとって酸素は重要なエネルギー源。脳の重量は体重の約2%であるが酸素消費量は全体の20%。脳は酸素を大量に消費する臓器である。脳は酸欠に弱い。立ち眩みやめまいは酸欠の1症状。自立神経の乱れから心拍数や血圧変動がうまくいかず症状が起きる。脳の酸欠は集中力や眠気、だるさも引き起こす。
・細胞呼吸(内呼吸)が大事。一日の換気量は1万ℓ以上(500mlのペットボトル約2万本分)その空気の出し入れは肺胞で行われており2~6億個(1つ10分の1mmから5分の1mmほど)であり表面積は約80㎡(バレーボールコートの約半分)
・1日の換気量は、個人差はもちろん精神状態や行動状態で変化する。就寝時は1分間につき8L、起床すると倍の16L程度に増加する。また、安静就寝時と比べ歩行時は1.5倍になる。ランニングは歩行時の倍程度の換気量となる。無意識の呼吸は呼吸中枢(延髄)でコントロールするのに対して意識的な呼吸は大脳皮質がコントロールする。
・モチベーションを高めるドーパミンには呼吸が直接働きかけることはできないがドーパミンを制御しているセロトニンは呼吸で増やすことが可能であり、モチベーションコントロールに関与しているといえる。
・呼吸筋は姿勢保持筋でもあるため呼吸筋を使用しないと姿勢が悪くなる。
・呼吸は一種のリズム運動でありセロトニンを活性化させる。セロトニンの効果の内鎮痛効果があるため呼吸法で痛みと上手につきあうこともできる。
・呼吸はある程度自立神経をコントロールすることが可能。例えば深呼吸で心拍数やストレスを減少させたりすることが可能
・交感神経優位で顆粒球が増え、副交感神経優位でリンパ球が増える。呼吸で副交感神経優位な状態にすることでリンパ球を増やし、免疫機能を高めることが可能。
・呼吸が習慣的に浅くなっていないかのテストとしてbreath-hold time testというものがある。これは「30秒間、苦も無く普通に息を止めていられるかどうか」を調べるもの。交感神経優位による浅い呼吸が続いている状態では、二酸化炭素に対する耐性が落ちるため、呼吸を止めておける時間が短くなる。
・呼吸の基本は鼻呼吸。鼻毛や鼻腔粘膜に相当するものが口にはないため空気が浄化されない。また、鼻の穴は口と比べ小さいため空気抵抗が大きく、意識しなくても自然とゆっくりとしたペースの呼吸が可能。
・浅い呼吸は呼吸数を増やし、同時に二酸化炭素濃度を低下させる。二酸化炭素の減少はボーア効果によりヘモグロビンの酸素の切り離し不良が起き細胞呼吸が低迷する。
・さらに呼吸数の上昇は血中に必要以上の酸素が存在するようになるため余った酸素の一部は細胞を傷つける側に働く「活性酸素」になってしまう。呼吸数の速さは日々の疲れや倦怠感など不調を蓄積することに繋がる。
・ボーア効果とは、血液中の二酸化炭素の変化による赤血球内のpHの変化によってヘモグロビンが酸素を切り離す割合が変化すること。
・呼気吸気の成分
吸気:窒素78%、酸素21%、二酸化炭素0.04%、その他1%
呼気:窒素78%、酸素16%、二酸化炭素5%、その他1%
・二酸化炭素濃度が低下すると平滑筋が収縮し血管や気管が狭くなる。濃度が高いと反対に拡張する。過呼吸や喘息の呼吸が苦しいのもこれが原因。血管は濃度が低いと収縮するため、全身の血流量が減少する。
・体は取り入れる栄養素を代謝する過程で約2万mEqの酸が作られ、尿や呼気の二酸化炭素として排出される。
・ストレスや加工食品などにより体は酸性に傾くと免疫力低下を引き起こす。体が酸性に傾くと酸を体外に二酸化炭素として排出するため、呼吸数が増加する。「pHが酸に傾く
⇒呼吸数増加⇒二酸化炭素減少⇒ヘモグロビンの酸素切り離し困難⇒細胞呼吸の停滞⇒血管・気道収縮⇒呼吸困難」体内の二酸化炭素を適正量に保たないとこういった悪循環に陥る。
・猫背は肩で息するような状態になり呼吸が浅くなる。仰臥位は背中が床に接触しているため、自然とお腹を使った腹式呼吸になる場合が多く、睡眠中も同様と言える。
・胸式呼吸は交感神経を活発化させるためインナーマッスルにアプローチするようなエクササイズに利用されている。