2024年には、2023年から広がった生成AI技術がさらに発展し、エージェント技術やLLMを活用した社会シミュレーションの研究など、LLMを核としたエコシステムとしての研究群が発展した。ロボティクスの分野でもロボティクス基盤モデル(VLA models)が発展し、言語と実世界タスクをつなぐ新たな研究課題群が浮上している。このような状況下で、記号/言語の社会的・認知的な動的特性、それらを扱う人工システム、そしてその生命的本質を理解することの重要性は、かつてないほど高まっている。私たちは、その突破口として「集合的予測符号化」に注目する。これは、記号創発システムを人間の個体および集団の予測性に基づく環境適応として捉える新しいアプローチである。
記号創発システム論は人間の認知や社会システムにおける記号と言語の動的な性質を捉えようとするシステム論である。人間とAI・ロボットが共生する社会において、人間にとっての言語の動態や、それらを扱う人工システムの在り方について、より深い理解が求められている。これに対する新たなアプローチとして集合的予測符号化の理論が形成されつつある。2024年は特に「集合的予測符号化に基づく言語と認知のダイナミクス」および「Collective Predictive Coding Hypothesis: Symbol Emergence as Decentralized Bayesian Inference」の出版を通じて、このアプローチが明示的に示された。さらに、「記号創発システム論」(新曜社)の出版により、法律システムや倫理システムといった社会的規範を記号創発の文脈から考察する新たな視座が開かれた。また、「Collective Predictive Coding as Model of Science」のプレプリントでは、科学哲学への展開が示され、AIによる科学の自動化に関する議論も深化している。自由エネルギー原理との数理的な接続性や、大規模言語モデルが持つ知識に関する示唆など、人文社会科学と認知科学・情報科学・工学を架橋する様々な可能性が現出しはじめている。
本研究合宿は、この理論的枠組みの可能性を徹底的に議論する場として企画する。人文科学から自然科学まで、幅広い分野の研究者が一堂に会し、合宿形式での密な議論を通じて、新たな知見の創出を目指す。本合宿を契機として、文理の垣根を越えた研究プロジェクトが生まれ、日本発の新たな学術的潮流が形成されることを期待する。研究者間の活発な対話と議論を通じて、記号創発システムと集合的予測符号化の理論をさらに発展させ、人間と機械が共生する未来社会の基盤となる知見を見出していきたい。
言語創発/記号創発/言語進化、AIアラインメント、記号創発/認知発達ロボティクス、マルチエージェントシステム、科学発見の自動化、記号接地問題、記号論とプラグマティズム、ネオ・サイバネティクス、法/倫理/規範システム、協力行動の数理、情報の経済学、人工生命、計算論的精神医学、心の哲学、科学哲学、計算言語学
日時: 3月15日(土)昼頃~3月17日(月)
場所: 白浜荘(〒520-1223 滋賀県高島市安曇川町下小川2300-1)
(※計画当初、京都開催を予定しておりましたが、適切な宿泊施設が確保できず滋賀県湖西での開催となりました)
プログラム(予定):
3月15日の午後3時頃のスタートとなる予定です。(※ 前日まで長崎でNLP 2025があるのでそこから移動可能な時間でスタート)
3月16日は終日議論を行います。一部、講演と各自の自己紹介を行った後に、アンカンファレンス型での開催を予定しています。
3月17日は2日目の続きの議論と、これからの展開や発信等のとりまとめを行います。夕方5時頃に終了予定です。
参加費:
無料を予定
交通費に関して希望に合わせてご支援を予定
京都大学大学院情報学研究科・教授
立命館大学総合科学技術研究機構・客員教授
AI Alignment Network 理事
実行委員長 谷口忠大(京都大学/立命館大学)
副実行委員長 林祐輔(AI Alignment Network)
委員 片岩拓也(静岡大学)、丸山隆一(フリーランス)、杉山滉平(立命館大学)、田島潤(静岡大学)
主催)CPC Camp 実行委員会
共催)立命館大学グローバルイノベーション機構(R-GIRO)第4期研究プロジェクト「記号創発システム科学創成:実世界人工知能と次世代共生社会の学術融合研究拠点」、一般社団法人AIアライメントネットワーク、一般社団法人Tomorrow Never Knows
協力)
JSPS科研費・学術変革領域(A)「クオリア構造学」計画研究「クオリア構造の記号創発システム論」
JSPS科研費・基盤研究(A)「記号創発システム論に基づく共創的学習の基盤創成」
ムーンショット型研究開発事業 目標1「誰もが自在に活躍できるアバター共生社会の実現」研究開発項目4:CA協調連携の研究開発
本会議は招待制の会議です。取材やお問い合わせは代表の谷口までお問い合わせください。
谷口忠大(秘書) secretary@em.ci.ritsumei.ac.jp