折紙テセレーションの力学系
Dynamical Systems of Origami Tessellations

Waterbomb Tubeの振動・ソリトン
今田凜輝、舘知宏 2022
Oscillation and Soliton of Waterbomb Tube
Rinki Imada, Tomohiro Tachi 2022

折り線パターンが繰り返し対称性を持った折紙は、“折紙テセレーション”と呼ばれます。折紙テセレーションは、そのパターンは単純な規則によって生成されているにも関わらず、折られた形状は非自明な性質を持つことがあります。例えば、Waterbomb Tubeと呼ばれる円筒状の折紙テセレーションでは、ある同一の折り線パターンから、波のような周期的形状や、変形がある部分に局在した形状を作ることができます。

このような折紙の性質を数理的に理解するために有用なのが、“力学系”という数学です。折紙テセレーションの繰り返し単位は“モジュール”と呼ばれますが、実はWaterbomb Tubeでは、あるモジュールを折ると隣接するモジュールも連動して折られてしまいます。力学系とは、このような折りの連動関係を漸化式で表したものです。力学系を解析することで、Waterbomb Tubeの波状の状態が振り子の振動と等価であることや、変形が局在した状態とソリトンと呼ばれる波との類似性などが観察できます。— 今田凜輝

折紙テセレーションにおける保存系の相図
今田凜輝、舘知宏 2022
Phase Diagrams of Conservative Dynamical Systems in Origami Tessellations
Rinki Imada, Tomohiro Tachi 2022

適当なモジュールの折りを初期値として与えると、力学系によって1番目のモジュールから2番目のモジュール、2番目から3番目...というように次々にモジュールの状態が決まっていきます。様々な初期値に対してこのようにモジュールの状態列を計算し、プロットしたものが“相図”です。相図は力学系、あるいは対応する折紙の性質を反映し、準周期解に対応した同心円状の曲線群やカオス領域などからなる美しいパターンが生じます。力学系の性質は折紙テセレーションのパターンに依存するため、折り線の長さをほんの少し変化させただけで全く見た目の異なる相図が得られることもあります。— 今田凜輝

折紙のパターンを繰り返すだけで、振り子のように往復する波や、ピークが一つ立って移動するソリトンなど、思いがけない挙動が現れます。この一連の研究の中で特に着目されるのが折紙の系が「保存系」となることです[Imada Tachi 2022]。振り子において力学的エネルギーが保存されるのと同様に、「何らかの量」が保存されていることが分かっています。が、この「何らかの量」が何なのか、どのような意味を持っているのかは未解決です。–  舘知宏

本作品はJSTさきがけ数理構造活用領域「自己組織化による構造折紙パターンの創生」の研究成果です。Rinki Imada, Tomohiro Tachi, "Geometry and Kinematics of Cylindrical Waterbomb Tessellation," Journal of Mechanisms and Robotics 2022Rinki Imada, Tomohiro Tachi, "Conservative Dynamical Systems in Oscillating Origami Tessellations," International Conference on Geometry and Graphics 2022