組市松紋(東京2020エンブレム)は正12角形を充填する菱形3種類を骨格とし、菱形を辺の中点を結ぶ長方形で半分ずつ二色に塗り分けることでできています。3種類で計60個の菱形を正12角形の中に隙間なく重なりなく敷き詰めるには、570,702,721,864通りの組み合わせがあります [Windomら 2005], [Hamanaka, Horiyama, Uehara 2017]。この膨大な個数の敷き詰めをよく見てみると、1つの頂点の周りの3個の菱形を見つけてクルッと回すという微小な変化で、別の敷き詰めが得られることが分かります。Time measurement vol. 1では、アルゴリズムの設計と理論的性能保証の分野での「列挙アルゴリズム」や「組合せ遷移」に関する技法を活用しながら、時の流れに沿って敷き詰めの世界をそぞろ歩きします。敷き詰めが少しずつ移ろいつつ、何気ない顔で1時間に1回だけ最初とピッタリ同じ敷き詰めになり、そしてまた、何事もなかったように時が進みます。— 堀山貴史
野老の 5050 DOTS は、1点を中心に、徐々に広がる同心円の上に、まず 2点、その外側に 3点、その外側に 4点と、最外周の 100点まで、合計 5,050 個の点を配置することでできています。各円周上の点は正多角形を描くように配置されており、その正多角形を描く際の位相を少しずつ変えることで、全体として見た時に美しい配置になっています。Time measurement vol. 2 では、中心点から最外周円上の 60点まで、合計 1,830点の配置を、時の流れに沿って動かしてみます。各円周上の点が持つ律も、時の流れに沿って、前の点に追いつき追い越していくようにしてみます。これらの点の配置を考えることは、野老の言葉を借りると、星を数えるようなこと、無限の可能性を数えること。円周上の点の追いつき追い越しがちょうどバランスしてシンプルな配置になる 5分に 1回の機会を愛でるもよし、その間の星々のきらめきを愛でるもよし、移ろい行く時を共に楽しみましょう。— 堀山貴史
最も外側の正12角形に正11角形が内接し、その正11角形に正10角形が内接し、正12角形の中に正11角形から正3角形までを順に内接させて配置します。そのような配置は、12 × 11 × … × 4 = 79,833,600 通りあります。Time measurement vol. 3 では、時の流れに沿って、正多角形の 1つを隣の辺に内接するように転がして、配置を変えていきます。野老は、一番外側の正12角形から一番内側の正3角形への連続に凹みを見出して、インドの階段井戸を想起し、また逆に凸みを見出して、公園の小山を想起しています。別の捉え方として、堀山は、アルゴリズムの設計と理論的性能保証の分野での「組合せ遷移」の問題として捉え、最初の配置から、ちょうど 5分後 (= 300秒後) に望みの配置へと導くにはどうすればいいのかを考えています。時の移ろいと共にたくさんの可能性を紡ぐことができるといいですね。 — 堀山貴史