科学研究費:研究活動スタート支援(2019−2020)19K23356
「登園時の親子分離に対する保育者の意識-1歳児クラスの担当保育者へのグループインタビューから-」中国四国教育学会『教育学研究紀要』(CD-ROM版)第66巻 2021年3月
概要:登園時の親子関係を支える保育のあり方を検討することを目的として、保育者へのグループインタビュー調査を行った。その際、分離不安が強いとされる1歳代の子どもが多く在籍する1歳児クラスの担当保育者を対象とした。その結果、登園時の親子関係を支えるための4つの示唆が得られた。1つは、持ち上がりの保育者を配置するなど、保育の人的環境を工夫することにより、家庭や母親の状況変化に対する子どもの適応困難を支援することである。2つは、泣く子に対応する保育者がその子に意識を傾注できるよう連携することで、全体への影響を抑えることである。3つは、「乳児保育」における泣きに対する保育者の専門性を構築することである。4つは、保護者がどのような支援を求めているのかを明らかにすることである。親子分離が困難な子どもの保護者への聞き取り等により、実情に合った支援の方法を探ることが重要だろう。以上を踏まえ、今後の親子分離に関する研究では、分離時の泣きへの対応や保護者支援に関して、検討していきたい。
「1歳児保育を受ける子どもの分離不安の変化-登園時の親子分離場面の調査をもとに-」広島都市学園大学子ども教育学部研究紀要 第7巻2号 2021年3月
概要:本研究は、乳児保育を受ける子どもの親子分離に対する支援を確立する為の一助として、登園時の親子分離の傾向を把握することを目的に、親子分離場面の子どもの不安反応を調査し、分離不安の変化を描いた。とりわけ本研究では、先行研究で分離不安が強いとされる1歳代の子どもが多く在籍する1歳児クラスの子どもを対象とした。分離不安の変化は初期不安群 と非初期不安群とに分かれた。初期不安群には、調査期間の前半に月間不安指数の大きい時期がある 早泣きタイプ と、調査期間の前半にも後半にも月間不安指数の大きい時期がある大波タイプ があり、非初期不安群には、調査期間の中間に月間不安指数が大きい時期がある中泣きタイプと、調査期間の後半に月間不安指数大きい時期があった 遅泣きタイプ、調査期間中、不安指数の変化が少なかった 小波タイプ があった。
こうした結果から、分離不安は入園初期を過ぎれば後は減少していくようなものでは必ずしもなく、子どもごとにそれぞれ、分離不安の大きい時期や小さい時期があるということが明らかになった。また、登園時の親子分離が困難になるのは、これまで分離不安が強いとされてきた1歳代であるとは言い切れないこともわかった。本研究の対象者8人のうち5人が、入園した時期にかかわらず、2歳前後で分離不安が顕著に大きくなっていたからである。このことから考えられるのは、分離不安の高まりと、2歳前後と言われている第一次反抗期が関連する可能性があることである。 つまり1歳児クラスでは、分離不安という見方からだけではなく、第一次反抗期の子どもの登園の困難さを支援するという視点から、保育者配置や朝の受け入れ方を工夫するなど、親子分離に対する十分な支援が必要であろう。
以上より、乳児保育を受ける子どもの親子分離に対しては、年間を通して支援すること、1歳児クラスの支援を厚くする必要があることが示唆された。
「The tendency toward separation anxiety in infants attending nursery in Japan: Measurement of anxiety intensity in 1-year old children」21st PECERA International Conference ポスター発表(個人)2020年7月
「1歳児クラスの登園時の分離不安の傾向とその要因に関する考察-8ヶ月間の不安強度の測定と保育者へのインタビューをもとに」第67回日本小児保健協会学術集会 2020年11月
「1歳児の登園における親子分離の状況-不安指数の個人内平均値の推移をもとに-」第30回日本乳幼児教育学会 2020年11月
「登園時の受け入れに対する保育者の意識-1歳児担当保育者へのグループインタビューから-」 第72回中国四国教育学会2020年11月
「登園時の親子分離に対する母親の意識-1歳児保育を利用する母親へのインタビューから-」第74回日本保育学会学会2021年5月2021